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サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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注目選手

5回のアタックが掴み取った勝利――「王者」にして「挑戦者」であり続けた男ジュリアン・アラフィリップの世界選手権とキャリアを振り返る

決して、彼と、彼のチームは、今大会における優勝候補筆頭ではなかった。 石畳の激坂が用意された「フランドリアンサーキット」ならまだしも、最後の戦いの舞台となる「ルーヴェンサーキット」には200〜300m程度の短い登りしかなく、そこでのアタックで後続…

プリモシュ・ログリッチ——決して「最強」ではないが、誰よりも「不屈」だった男が、ブエルタ・ア・エスパーニャ3連覇に至るまでの軌跡

それは、決して彼が本来望んだものではなかったかもしれない。 本来であれば彼は、ツール・ド・フランスの頂点を2度、掴み取ってもおかしくないだけの実力と実績を兼ね備えていた。 しかし一方で、彼はその栄光を目の前で奪い取られるという悔しい思いを経験…

ブノワ・コヌフロワ——「チーム・クイックステップ」を打ち破った、フランスの新たなる英雄(ブルターニュ・クラシック2021)

残り150m。背後のジュリアン・アラフィリップがスプリントを開始したのを悟った彼は、自らもほぼ同時にペダルを強く踏み出した。 ただちに横一線に並ぶ。相手は元世界王者の「フランスの英雄」。登りだけでなく、ときにスプリントですらピュアスプリンターた…

タデイ・ポガチャルと「UAEチーム・エミレーツ」は、「5勝クラブ」を実現できるのか ツール・ド・フランス2021のポガチャルの戦略とアシストたちの働きを振り返る

タデイ・ポガチャルが圧勝した。2位以下に5分20秒もの大差をつけて。 これは、2014年にヴィンツェンツォ・ニバリが2位に7分37秒差をつけて大勝したとき以来の記録である。 ニバリのときにクリス・フルームやアルベルト・コンタドールらが相次いでリタイアし…

ヨナス・ヴィンゲゴーはどこから来てどこへ行くのか――新時代のデニッシュオールラウンダーのこれまでとこれから

2021年のツール・ド・フランスにおける一つの目玉となった、第11ステージの「モン・ヴァントゥ2回登坂」ステージ。 しかし、今年のツールは第1週終盤のアルプス2連戦ですでに前回覇者タデイ・ポガチャルが圧倒的な力を発揮しており、対抗馬と考えられていた…

ツール・ド・フランス2021第4ステージ——マーク・カヴェンディッシュはいかにして「31勝目」を成し遂げたのか

「言葉が出てこない。僕はここにいるだけでもう十分なはずだった。このレースに戻ってこれるなんて思ってもいなかったから」 「ドゥクーニンク・クイックステップにきたとき、そこには世界最高のライダーたちが揃っていて、その中で僕がツールのメンバーに選…

ジロ・デ・イタリア2021――いかにして「イネオス」はエガン・ベルナルを勝たせたのか

モンタルチーノ、ゾンコラン、そしてコルティナ・ダンペッツォ・・・第2週最終日に至るまでの2週間で、エガン・ベルナルは彼が最強であることを証明した。 そうして得た総合タイム差は、総合2位ダミアーノ・カルーゾに対して2分24秒。あとは、これをいかにし…

ジロ・デ・イタリア2021――いかにしてエガン・ベルナルはもう一度「スタートライン」に立ったのか

残り300mで上体を上げ、レインジャケットのファスナーを下ろす。 残り200mで両手を離し、完全にジャケットを脱ぎ捨てた。 その下にはマリア・ローザ。イネオスのロゴが大きく表示された、栄光のピンクジャージ。 残り25mで彼は両手を広げ、高く空に突き上げ…

マーク・カヴェンディッシュの「復活」とその3連勝の勝因を探る――ツアー・オブ・ターキー2021を振り返る

私にとって、マーク・カヴェンディッシュという男は、決して「リアルタイムに追い続けていた存在」ではない。 私がロードレースを見始めたのは2015年からだし、そのときにはすでに彼はいわゆる「落ち目」になりつつあった。 同年に台頭しつつあったトム・デ…

ミラノ~サンレモ2021 「敗北を恐れなかった男」が掴み取った、2度目の栄光

「やるしかないと分かっていた。 スプリントに挑んで5位や10位で終わるよりも、すべてを失うほうがまだマシだって分かっていた。 そうやって何も得られないことの方が多かった。けれど時折、とてつもなく大きなものを手に入れるんだ。 今日はその日だった。 …

ストラーデビアンケ2021 マチュー・ファンデルプールが再び「常識」を超えた瞬間

その男が強いことは誰もが知っていた。 それでも、彼はグランツールライダーたちと同じように走ることは難しく、3,000mを超える獲得標高をもつこのストラーデビアンケで結果を出すことは簡単ではないだろうと予想されていた。 しかし彼は、最終盤まで残り続…

ルシンダ・ブラントが女子シクロクロス史上初となる「グランドスラム」を達成するまでの軌跡

グランドスラムといえばテニスにおける四大大会制覇を意味する言葉であるが、シクロクロスの世界においてもこの言葉が使われる。 それは3大シリーズ戦(UCIワールドカップ、スーパープレスティージュ、X2Oバドカマー・トロフェー)と世界選手権の全てを同年…

バイクエクスチェンジ、その2021シーズン序盤の「苦戦」と「歓喜」とを振り返る

バイクエクスチェンジ、昨年まではミッチェルトン・スコットと呼ばれていたこのチームは、新型コロナウイルスの影響を大きく受けて昨年、スポンサー危機に瀕する。 この状況を打破しようと動いたのが当時のGM、シェーン・バナン。チーム立ち上げにも大きく関…

ルーク・プラップ、今最も注目すべき20歳のオージーライダーについて

「1周目を走り終えたとき、僕はこのレースを勝てるかもしれないということに気がついた。それは本当に手の届くところにまでやってきていて、すべては最終周回での走りにかかっていた」 「(ゴールしてからの)数分間は、とても緊張していた。正確な時間はわ…

「4勝4敗」で迎えた「9回目のアルカンシェル争奪戦」の行方は? シクロクロス世界選手権2021オーステンデ男子エリート

自転車ロードレース界には今なお語り継がれるライバル関係というものがいくつも存在する。 ジャック・アンクティルとレイモン・プリドール、ベルナール・イノーとグレッグ・レモン、ファビアン・カンチェラーラとトム・ボーネン――そして今、最もこの「ライバ…

トム・デュムランに関する個人的なメモ

トム・デュムランが無期限の活動休止を発表した。 今年のツール・ド・フランスもプリモシュ・ログリッチと共に出場することが発表された翌日の、あまりにも急で衝撃的すぎる発表であった。 www.cyclingnews.com 「昨日、これを決心した。チームも僕を理解し…

「怪物」マチュー・ファンデルポールを打ち破った男、「小さな天才」トム・ピドコックの描き出す新時代の「イネオス」

Embed from Getty Images // 難攻不落の「怪物」を、わずか21歳の「小さな天才」が打ち破った。 それも、真正面から、純粋な力で。 スリッピーな重い泥を軽快に駆け抜けていく新時代の英雄に、全世界を震撼させ続けた25歳の男がなす術もなく突き放されていく…

世界を変えた15分。タデイ・ポガチャル、逆転総合優勝の瞬間と、彼のこれまでの走りについて。

自転車ロードレースというのは、非情なものである。 8時間に及ぶ戦いを最後のわずかコンマ1秒の差で天国と地獄とを分けることもあれば、21日間、84時間にわたって積み上げてきた確信を、わずか15分の間に打ち砕いてしまうものでもある。 だからこそそれは美…

ミラノ〜サンレモ2020 いかにしてワウト・ファンアールトはアラフィリップを打ち破ったのか

ミラノ〜サンレモは毎年、ドラマを生み続ける。 2017年はポッジョでのサガンのアタックにクフィアトコフスキとアラフィリップが食らいつき、3人によるギリギリのスプリントバトルが展開された。 2018年はヴィンツェンツォ・ニバリがポッジョで単独で抜け出し…

エヴェネプールとアルメイダ、新時代の最強コンビはジロ・デ・イタリアを討ち取れるのか

新型コロナウイルス蔓延による自転車ロードレースの「中断」後、初のUCIプロシリーズのレースとなったのが、7/28(火)から8/1(土)にかけて開催されたブエルタ・ア・ブルゴス。 スペイン北部、ブルゴス県(カスティーリャ・イ・レオン州)を舞台に行われた5日…

ワウト・ファンアールト、その栄光と挫折と復活の輪廻

Embed from Getty Images // 「2週間の入院のあと家に帰ってから、ちょうど1年が経った。もし今日のことをあのときの僕に伝えても、決して信じてはくれなかっただろう。だけど一方で、僕はどんなに困難なときでも自分の復活を信じ続けてもいた。そうして苦し…

強風吹き荒れるパリ〜ニース2020第2ステージで展開した「ボーラ劇場」と、最後に勝った男とは

「太陽へと向かうレース」が意味するところは、太陽とは真逆の過酷な環境からスタートするということ。 昨年もプロトンを大混乱に陥れた強風が、今年も数多くの総合勢に致命的な打撃を与えると共に、この日の優勝候補と思われていたトップスプリンターたちを…

日本人33年ぶりの快挙! 梶原悠未のマイヨ・アルカンシェルがもたらす意味とは?

ついに、このときが来た。 日本のトラック競技・・・いや、日本の自転車界における最高の逸材である梶原悠未(22=筑波大学)が、ベルリンで開催されていた世界選手権オムニアム種目で頂点を掴み取った。 日本人としては実に33年ぶりのマイヨ・アルカンシェル…

サウジ・ツアー2020  マーク・カヴェンディッシュが見せた「新しい走り」とは

サウジ・ツアー第3ステージ。バーレーン・マクラーレンがトレインを形成し集団の先頭をひた走る。 残り500mでハインリッヒ・ハウッスラーが離脱し、先頭はフィル・バウハウスに。その背後にマーク・カヴェンディッシュが控えており、この日は彼がエースであ…

タダ乗り、登りスプリント、なかなか勝てない? 「次代のサガン」候補ジャスパー・フィリプセンのこれまでとこれから

ツアー・ダウンアンダーも前哨戦クリテリウムから第2ステージまで進み、クリテリウム、ラインレース、ピュア平坦スプリント、パンチャー向け登りスプリントなど、バリエーション豊かなフィニッシュを迎えてきた。 ここまで、カレブ・ユアン2勝、そしてサム・…

マーク・カヴェンディッシュの移籍、コルブレッリとバウハウス、シックス・デイ

Embed from Getty Images // ツール・ド・フランス現役最多ステージ優勝記録(30勝)保持者であるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、34歳)が、来期、バーレーン・メリダに移籍する。 理由として考えられることはいくつかあるだろう。 現チームが彼をツ…

ペテル・サガンがジロに出場することについて、ツール、春のクラシック、オリンピックは?

10月23日、ペテル・サガンが自らのツイッターで意味深な発言をポストした。 Hey you! Something important will be announced tomorrow! pic.twitter.com/GR7fkoxI1p — Peter Sagan (@petosagan) October 23, 2019 「明日、大切なことをお知らせするよ」 す…

ケニー・エリッソンド——フランスの「小さな巨人」の未来

ケニー・エリッソンドがスカイ*1を去る。 2016年にブエルタの山岳賞を争い、2018年にフィネストーレでフルームのジロ初優勝を支えたフランスの「小さな巨人」。 しかし彼は結局のところツール・ド・フランスへの出場を許されることはなく、スカイでの最後の…

サム・ベネット、その勝利の秘訣と弱点

8月中旬のビンクバンク・ツアーにおいても開幕3連勝を成し遂げた今最も勢いのあるスプリンターの1人、サム・ベネット(ボーラ・ハンスグローエ)。 現在開催中のブエルタ・ア・エスパーニャにおいても、序盤の数少ないスプリントステージである第3・第4ステ…

新たな時代の幕開けを告げる勝利【レムコ・エヴェネプール19歳の衝撃的な逃げ切りーークラシカ・サンセバスティアン2019】

今年すでにいくつもの信じられない記録が生まれている。 タデイ・ポガチャルのワールドツアー総合優勝最年少記録。 エガン・ベルナルのマイヨ・ジョーヌ最年少記録。 あるいはマチュー・ファンデルポールの、アムステルゴールドレースにおける衝撃的な勝利の…

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