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ジロ・デ・イタリア2023 コースプレビュー第1週

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Class:ワールドツアー

Country:イタリア

Total km:3,489.2km

Altitude gain:51,400m

First edition:1909年

Editions:106回

Date:5/6(土)~5/28(日)

 

ご無沙汰しております。

およそ半年ほど、諸事情で更新を停止しておりましたが、今回のジロ・デ・イタリアを機に少しずつ復活していければと思います。

 

と、言うことで最近のレース事情は全く分かっていないものの、今回のジロ・デ・イタリアはブエルタ総合優勝を引っ提げてのレムコ・エヴェネプールの「リベンジ」、同じくツールを回避してこれもある意味「リベンジ」と言えるプリモシュ・ログリッチなど、どうなるか全く予想のつかない面白いメンバーでの戦いとなり非常に面白そう・・・そして、TTの総距離も長く、かつ山岳TTもあるというバリエーションに富んだ3週間となりそうだ。

その中でもこの第1週は比較的おとなしめ(第1週は普通、そうなんだけど)。激しい総合争いが巻き起こることはあまりないかもしれないが、それでもTT、スプリント、逃げ、登りと十分に楽しめる1週間となっている。

 

それではいってみよう。

 

目次

 

注目選手プレビューはこちらから

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第2週目はこちらから

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第3週目はこちらから

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第1ステージ フォッサチェジーア〜オルトーナ 19.6㎞(個人TT)

総獲得標高100m

第1ステージはグランツール初日としては定番とも言える個人タイムトライアル。但し、初日TTとしては珍しく20㎞弱の中距離TT。そして完全な平坦ではなく、最後の3㎞から1.7㎞にかけては最大勾配8%の登りが待ち構えている。

スタートはイタリア中部東岸アブルッツィオ州にある小村フォッサチェジーア。そこからアドリア海沿いにまっすぐ海岸線を北上し、最後にオルトーナの街に入り小高い丘の上でフィニッシュするレイアウトだ。

工程の8割近くが平坦直線であり純粋なパワー系TTスペシャリストに有利そうだが、海風によるアクシデントの可能性もあり、一筋縄ではいかない展開も予想できるだろう。

 

 

第2ステージ テラモ〜サン・サルヴォ 201㎞(平坦)

総獲得標高1,400m

前日同様、アブルッツィオ州のアドリア海沿いを利用した平坦スプリンターズステージ。スタート/フィニッシュは異なるが2021年の第7ステージとほぼ同じコースを辿っており、当時はカレブ・ユアンが完勝した。

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今年は所属するロット・ディスティニーが(出場権はありながらも)辞退したことで残念ながら欠場。ニューヒーローは現れるか。

 

 

第3ステージ バスト〜メルフィ 216㎞(丘陵)

総獲得標高1,400m

前日のフィニッシュ地点にほど近いアブルッツィオ州のバストから出発し、最初の50㎞はアドリア海沿いを進む。そこから内陸に進路を変え、フォッジャの街で中間スプリントポイントを経て少しずつ標高を上げていく。

残り33㎞地点で今大会最初の3級山岳となるヴァリコ・デイ・ラギ・ディ・モンティッキーノ(モンティッキーノ湖の峠)が登場。立て続けに4級山岳を越え、その頂上からフィニッシュまでは25.9㎞となる。

ピュアスプリンターたちによる集団スプリントバトルを望むのは難しそうだが、マウヌス・コーやマイケル・マシューズ、あるいはヴィンツェンツォ・アルバネーゼなどの登れるスプリンターたちによる戦いはあるかもしれない。もし逃げ切りが決まれば、それはすなわち意外なマリア・ローザ着用者が生まれるチャンスとなるかもしれない。

 

 

第4ステージ ヴェノーザ〜ラゴ・ラチェノ 175㎞(丘陵)

総獲得標高3,500m

全部で3つの2級山岳が用意され、最後の2級山岳はフィニッシュまで3㎞地点で頂上を迎える「ほぼ山頂フィニッシュ」。その最後の登り「モレッラ峠」も、残り7㎞地点(山頂まで4㎞地点)から平均勾配9%超の難関ゾーンに突入し、残り5.7㎞(山頂まで2.7㎞)ほどで最大勾配12%を迎える。小さな総合争いが巻き起こったとしてもおかしくはないステージである。

この有名なスキーリゾートであるラゴ・ラチェノ(ラチェノ湖)がフィニッシュ地点に選ばれるのはこれで4回目。前回登場の2012年大会では、頂上まで2㎞の地点で集団からドメニコ・ポッツォヴィーヴォがアタック。そのまま独走でフィニッシュし、ジロ初勝利を果たした。

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前日に続き意外なマリア・ローザ獲得者が生まれる可能性もあり、逃げの価値が高いステージとなるだろう。

 

 

第5ステージ アトリパルダ〜サレルノ 171㎞(平坦)

総獲得標高2,400m

アペニン山脈山中に位置する前日のフィニッシュ地点近郊から出発し、いよいよプロトンは半島の西側、ティレニア海沿いへと至る。フィニッシュ地点のサレルノはヨーロッパ最古の医科大学が開設された街である。

コース全体はひたすらでこぼこしており平坦区間はほぼないが、かと言ってスプリンターたちの足を苦しめるほどではない。ラスト50㎞はほぼ緩やかな下り基調が続くため、最後は3日ぶりの集団スプリントで締め括られる可能性が高そうだ。

 

 

第6ステージ ナポリ〜ナポリ 162㎞(平坦)

総獲得標高2,800m

ジロ・ディ・ナポリ。南イタリアの中心都市ナポリを出発し、ヴェスヴィオ火山を横目にしつつ「埋められた街」ポンペイを通過。そのまま南下して中世地中海貿易の中心都市アマルフィに到達。進路を西に取り、「青の洞窟」のあるカプリ島を臨むソレント半島へと突き進み、最後は再びナポリへと回帰する。

ラスト35㎞はほぼド平坦だが、前半に2級山岳が登場するなど逃げ切り向きのステージ。昨年のナポリステージは「逃げ王」トーマス・デヘントがその強さを存分に見せつける勝利を果たしたが、今年も同じくスリリングなエスケープドラマを見ることはできるのか。

 

 

第7ステージ カプア〜グラン・サッソ・ディタリア 218㎞(山岳)

総獲得標高3,900m

今大会最初の本格的山頂フィニッシュは「イタリアの背骨」アペニン山脈の最高峰グラン・サッソ。

その中で最も有名な「カンポ・インペラトーレ(皇帝の野原)」へと至る200㎞超のロングステージで、2018年に登場したときとほぼ同じコースとなっている。

そのときは「あの」ジロだった。サイモン・イェーツが絶好調で、この日マリア・ローザを着用したまま自身初のジロ勝利を記録。逆にクリス・フルームは失速し、1分以上の差をつけられて敗北し、時代の転換を感じさせた瞬間だった。このときは。

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なお、このときは残り3㎞を切ったあたりからジュリオ・チッコーネが繰り返し加速して集団が活性化。フルームは残り2㎞で脱落した。先頭11名のままラスト1㎞を越え、残り500mでドメニコ・ポッツォヴィーヴォが加速するとここにサイモン・イェーツ、ティボー・ピノ、エステバン・チャベス、リチャル・カラパスが反応し、最終コーナーでイェーツがスプリントを繰り出してライバルたちを振り切った。

実際、長い登りの中でも勝負どころは勾配が厳しくなる残り4.5㎞から。最大勾配13%はラスト1.5㎞地点に用意されている。

まだ最初の本格的山頂フィニッシュということで、5年前同様にある程度大きな集団で終盤戦に突入する可能性はあるだろう。

 

 

第8ステージ テルニ〜フォッソンブローネ 207㎞(丘陵)

総獲得標高2,500m

グランサッソでの激戦を終え、総合優勝候補たちは翌日のTTに向けて英気を養うべき日となるだろう。すなわち、逃げスペシャリストたちにとってのチャンスの日だ。

その「逃げスペシャリスト」の1人であったアレクセイ・ルツェンコが、同じフォッソンブローネ周回コースフィニッシュを使用した2019年のティレーノ〜アドリアティコ第4ステージで「劇的」な勝利を果たしている。

この周回コースはフィニッシュまで5.6㎞地点で頂上を迎える4級山岳イ・カップチーニとその頂上からのテクニカルな下りで特徴付けられているのだが、当時集団から50秒差をつけて独走していたルツェンコは1周目のその下りでまさかの落車。

とはいえ大きくタイムを失うことなく最終周回に突入した彼はそのままリードを保って最後の登りもクリアするが、ラスト1.5㎞で再び落車。最後の登りで集団から抜け出していたプリモシュ・ログリッチ、ヤコブ・フルサン、アダム・イェーツに追いつかれてしまう。

それでも最後はその4名のマッチスプリントを制して勝利。まさにドラマチックな勝利であった。

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このときは下りがドラマを生んだわけだが、登りもかなりパンチ力のある厳しいレイアウト。最後の1.5㎞の平均勾配が10%超。最大勾配19%。

ステージ勝利は逃げ屋の手に収められても、総合優勝候補たちの間では数秒の戦いが繰り広げられる可能性はある。なにしろ今年の優勝候補たちは、ログリッチやエヴェネプール、アルメイダといった、ロードレースの「常識」を無視したアグレッシブライダーたちばかりなのだから。

 

 

第9ステージ サヴィニャーノ・スル・ルビコーネ〜チェゼーナ 35㎞(個人TT)

総獲得標高50m

35㎞の長距離個人タイムトライアル。しかもド平坦でテクニカルなカーブも少ない高速パワーTTとなりうるレイアウトだ。現世界王者トビアス・フォスやフィリッポ・ガンナが絶対的有利の中、総合争いでリードを得たいレムコ・エヴェネプールやプリモシュ・ログリッチがどれだけの走りを見せてくれるのか、楽しみだ。

なお、第1ステージの19.6㎞、そして山岳TTとなる第20ステージの18.6㎞と合わせ、今大会のTT総距離は72㎞にも及ぶ。山岳TTがあるとはいえクライマータイプの総合勢(ピノやバルギル、チッコーネ等)にとっては苦しい戦いとなるだろう。

特にこの日は長く、平坦。どれだけタイムを落とせずに済むか。それは、TTが苦手な選手たちだけでなく、苦手ではないがレムコやログリッチほどではないウラソフやゲイガンハートたちにとっても。

 

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