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読み:アージェードゥーゼル・シトロエン・チーム
国籍:フランス
略号:ACT
創設年:1992年
GM:ヴァンサン・ラヴニュ(フランス)
使用機材:BMC(スイス)
2021年UCIチームランキング:8位
(以下記事における年齢はすべて2022年12月31日時点のものとなります)
【参考:過去のシーズンチームガイド】
AG2R La Mondiale 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
AG2R La Mondiale 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
AG2R La Mondiale 2020年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
AG2R Citroën Team 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
目次
※各グラフのポイントは独自に集計した2021シーズンの実績に基づきます。
同じポイントに基づいた各脚質ランキングは以下の記事を参照のこと。
各チームのプレビューをPodcastでもやっています!
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2022年ロースター
※2021年獲得UCIポイント順。
新スポンサー獲得と、バルデ・ラトゥール退団による大きなチームカラー変更を迎えた昨シーズン。その1シーズン目は、ベン・オコーナーによるツール・ド・フランス総合4位とブノワ・コヌフロワによるブルターニュ・クラシック勝利を筆頭に、決して悪くはない結果を持ち帰ることには成功した。
2022シーズンも、決してグランツール総合などには甘い夢を持たずに、堅実にワンデーレースやステージレース逃げ切りを中心に、勝ち星を稼ぐ方向で狙っていくことになるだろう。上記グラフでも、(ワンデーレースに多い)丘陵系レースと逃げを得意とするチームという分析結果となっている。
そのうえで重要になるのは、昨シーズン、本来持っている実力から考えると期待外れの結果となってしまったマルク・サローやナン・ピータースの活躍であり、あるいは昨年のU23版イル・ロンバルディア(ピッコロ・ロンバルディア)優勝のネオプロ、ポール・ラペイラの活躍などであろう。
もちろん、これもまた十分な活躍とは言い切れなかったグレッグ・ファンアーヴェルマートとオリバー・ナーセンのクラシックコンビにも本来期待したいのだが・・・ここはちょっと、様子見となる気はする。
注目選手
ベン・オコーナー(オーストラリア、27歳)
脚質:クライマー
2021年の主な戦績
- ツール・ド・フランス区間1勝&総合4位
- ツール・ド・ロマンディ総合6位
- クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合8位
- モン・ヴァントゥー・デニヴレ・チャレンジ4位
- UCI世界ランキング40位
2018年ジロ・デ・イタリアで総合12位のままリタイア。いつか来る男、と信じながら言応援してきていたが、2020年のジロ・デ・イタリアでついにステージ勝利。そのままAG2Rへの移籍を勝ち取った。
ロマン・バルデ、ピエール・ラトゥールといった総合系エースを放出したチームにおいて、最も総合を狙える選手という前評判ではあったが、とはいえ山岳アシストが豊富なわけでもなく、引き続きグランツールでの山岳逃げ切り勝利を期待する、そんな選手だと思っていた。
しかしまさか、ツール・ド・フランス総合4位というリザルトを残すとは。
もちろん、そのきっかけはやはり得意の山岳大逃げであった。ツール・ド・フランス第9ステージ、冷たい雨が降りしきる中、標高2,109mのティーニュ山頂フィニッシュをメイン集団から6分差をつけて制した彼は、そのまま総合2位に上り詰める。
それ自体は、ここ近年のグランツールではよく見られる光景であった。その後、総合勢が本気を出せば一気にまた圏外に追いやられ、かろうじてしがみつけば総合7位〜10位程度には残ることができるかもしれない、そんな走り方の典型であるように思われた。
だが、その後の彼はそんな「逃げ得」選手とは一線を画していた。
フランス革命記念日となった第17ステージ、標高2,215mのポルテ山岳山頂にフィニッシュする超級山岳ステージで、彼はポガチャル、ヴィンゲゴー、カラパス、ゴデュに続くステージ5位でのフィニッシュを果たす。
ケルデルマンに14秒、イギータやウランに23秒差をつけてのフィニッシュとなった。
続く第18ステージでも、ポガチャルから34秒遅れの区間8位。前日まで総合4位だったリゴベルト・ウランがこの日大きく遅れたことにより、オコーナーはポガチャル、ヴィンゲゴー、カラパスの3強に次ぐ総合4位をほぼ確定させた。
それは、単純な逃げで獲得した成績では決してない。それはオコーナーという選手がグランツールレーサーとして十分な素質を持つことを意味する走りの結果であった。
もちろん、この成績が今後も続くかどうかは、まだ分からない。
上記のグラフを見てわかるように、登坂力ランキングでは20位につけるものの、絶対比較でみるとまだまだ実績は伴っていない。
一つの殻は破った。この後さらに、継続して結果を出し続けることができるか。ぜひ注目していきたい。
ブノワ・コヌフロワ(フランス、27歳)
脚質:パンチャー
2021年の主な戦績
- ブルターニュ・クラシック優勝
- ヨーロッパ選手権ロードレース3位
- トレ・ヴァッリ・ヴァレジーネ4位
- ツール・デュ・フィニステーレ優勝
- ツール・デュ・ジュラ・シクリストゥ優勝
- UCI世界ランキング43位
彼にとって2021シーズンの最大の成果は何と言ってもブルターニュ・クラシックでの勝利であろう。レース自体の格はもちろん、その勝ち方が実に素晴らしかった。
残り50㎞を切って、先頭に残ったのは逃げ残りで体力が尽きかけていたアレッサンドロ・デマルキを除くと実質的に3名。
そのうちの2人がドゥクーニンク・クイックステップのジュリアン・アラフィリップとミケルフローリヒ・ホノレ。その2人に対し、ブノワ・コヌフロワはたった一人で挑む必要があったのだ。
だから、彼は自ら仕掛けることにした。残り22㎞。平均勾配9%の激坂「マルタ」直後の登りで、最初のアタック。デマルキと共にホノレも突き放す。
しかしもちろん、アラフィリップはここで牽こうとはしない。チームメートのホノレを待つことで、優位を保とうする。コヌフロワも右手を挙げて抗議するが、彼自身もどうしようもないことは分かっていた。
一方で、この時点で、アラフィリップは保守的な走りに徹さざるをえない状況に陥っていたとも言える。
その後ホノレが復帰し、2vs1の状況のまま終盤へ。残り3.3㎞。最後の登り「ボン・ヌフ」で、コヌフロワが再びアタックを繰り出した。
ただちにこれに食らいつこうとするホノレ。しかしその後輪との間に小さなギャップを作ってしまい、それに気づいたアラフィリップは慌てて自らダンシングでギャップを埋める。コヌフロワはもちろん、これをしっかりと見ていた。
残り2.7㎞。今度はアラフィリップが仕掛ける。自らホノレを犠牲にすることも厭わない、必殺を意図した一撃。
しかし一呼吸おいてこれを追いかけ始めたコヌフロワは、アラフィリップ以上の勢いでこれに反応し抑え込んだ。
その後のコヌフロワのカウンターアタックには何とか食らいつき、再びホノレを戻すことにも成功したアラフィリップだったが――すでに、コヌフロワの優位は確定していた。
そしてラスト150m。
アラフィリップとのマッチスプリント。
スプリンター顔向けの加速を見せることすらあるアラフィリップとの一騎打ちは、実績で言えば勝ち目のないものではあったが、しかしこの日、誰よりも強かったのは間違いなくコヌフロワであった。
さて、これで一つの到達点を迎えたコヌフロワ。この後も、丘陵系ワンデーレースを中心に勝利の数を揃えていくことになるだろう。
たとえば2020年に2位になっているフレーシュ・ワロンヌ。あるいはクラシカ・サンセバスティアンやツール・ド・フランスでの区間勝利など。
世界最強のパンチャーとして相応しい成績を積み重ねていきたい。
クレモン・シャンプッサン(フランス、24歳)
脚質:クライマー
2021年の主な戦績
- ブエルタ・ア・エスパーニャ区間1勝&総合16位
- フォーン=アルデシュ・クラシック2位
- トロフェオ・ライグエーリア4位
- UCI世界ランキング122位
2018年ツール・ド・ラヴニール総合5位、2019年ツール・ド・ラヴニール総合4位。「ダヴィド・ゴデュの次のフランス人期待の若手」としてAG2R入りした男。
トレーニー時代の2019年にいきなりグラン・ピエモンテで9位に入るなど、その才能を遺憾なく発揮していた彼は、今年もシーズン序盤のフォーン=アルデシュ・クラシックで2位、トロフェオ・ライグエーリアで4位など絶好調であった。
そして迎えたブエルタ・ア・エスパーニャ。積極的に逃げに乗り続け、第10ステージでは3位、第14ステージは5位など、上位に入り込み続ける。しかし、その第14ステージではむしろチームメートの同じく若手であるニコラ・プロドムの方が目立ったりと、実績の割にはそこまで存在感を示せていなかった。
が、そんな中、最後のチャンスとなった第20ステージ。リエージュ~バストーニュ~リエージュ風の激しいアップダウンステージで、彼はついに頭角を現した。
しかも突然、誰も想像していなかったタイミングで。
ミゲルアンヘル・ロペスの突如のリタイアなど、波乱に満ちていたこの日、残り50㎞でシャンプッサンを含む16名の逃げ集団の中から単独で抜け出したライアン・ギボンズ。
逃げ残りのメンバーたちは皆、残り10㎞を切った段階でプリモシュ・ログリッチを含むメイン集団に飲み込まれたにもかかわらず、彼はまだ1分半以上のタイム差を残して先頭を独走していた。
そんな彼がついに捕まえられたのが残り3㎞。これで、先頭にはマイヨ・ロホのプリモシュ・ログリッチと総合2位エンリク・マス、あるいは総合6位のアダム・イェーツなど、総合上位の精鋭陣ばかりが集まり、この日は逃げ切りではなく、彼らの中でのボーナスタイム争いになるだろう――と、誰もが思っていた。
しかし、まさかの残り1.7㎞。
完全に飲み込まれ突き放されていたと思われていた後方の集団から単独で飛び出して、この先頭の精鋭集団の中に飛び込んできた白い影――それが、クレモン・シャンプッサンだった。
しかも、それだけではなかった。彼はその勢いのまま、ログリッチたちの先頭集団を突き放し、一人フィニッシュに向かって突き進んでいった。
困惑するログリッチやマス。しかし彼らは互いを牽制し合い、飛び出せない。
それは、2015年のツール・ド・フランスで、ロマン・バルデとティボー・ピノが牽制し合う中突如これを追い抜いていったスティーヴ・カミングスを思い出させるものだった。
そしてそのまま、3度目の正直で勝利を掴み取ったシャンプッサン。
バルデ、ピノ、ゴデュに続く期待の存在というのは伊達じゃない。あるいはその大金星ぶりは、2016年のブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージで突如勝利して見せたピエール・ラトゥールを彷彿とさせる。
そんなバルデやラトゥールが去ったこの新生AG2Rにおいて、彼もまた、中心となるべき男であることを、見事証明して見せた。
今後は、総合においても結果を出せるかどうか。まだまだ発展途上、ある意味最も楽しみな男の活躍をこれからも見守っていきたい。
その他注目選手
オレリアン・パレパントル(フランス、26歳)
脚質:パンチャー
AG2Rの下部育成チーム「シャンベリーCF(現AG2RシトロエンU23チーム)」出身の生え抜きで、2018年シーズン途中からAG2R入り。そこから2021年に入るまで、一度も勝利はなかった。
そんな中、2021シーズンの「開幕戦」となったグランプリ・シクリスト・ラ・マルセイエーズでいきなりの勝利。しかも終盤に一度アタックして引き戻されているにも関わらず、最後のスプリントでトマ・ブダとブライアン・コカールの2人を相手取っての勝利であった。
※詳細はこちらから
なお、2020年のこのレースで勝利しているのはブノワ・コヌフロワ。
同じAG2Rの若手として勝利したパレパントルも、コヌフロワのように飛翔していくことができるか。
ニコラ・プロドム(フランス、25歳)
脚質:クライマー
パレパントル同様にシャンベリーCF出身。2018年には一度AG2Rのトレーニーとなったが、そこでは正式契約をせず。2020年にはコフィディスのトレーニーにもなるなど、紆余曲折を経て昨年ついにAG2R入りを果たした。
そんな、ネオプロ1年目にして、いきなり掴み取ったブエルタ・ア・エスパーニャへの出場。そのチャンスをものにする、第14ステージでの活躍。
18名の逃げの中に入り込んだプロドムは、3級と平均勾配14%の超激坂1級山岳を越えたあとのアップダウンの中で、たった一人で抜け出すことに成功。
追走を仕掛けるのはダニエル・ナバーロやセップ・ファンマルク、アンドレイ・ツェイツなどの実力者たち。
にも関わらず彼は、フィニッシュに用意された1級山岳の中腹となる残り6㎞地点までたった一人で逃げ続けたのである。
最後は18名の中から飛び出してきたロマン・バルデによってぶち抜かれ、最終的にも9位で終わってはしまう。
それでもその走りは本物だった。何しろ、ネオプロ1年目の初のグランツールで、いきなり逃げに乗ってのこの成績なのだから。
今後確実にビッグレースを獲りうる選手。
今後も必ず、名前を覚えておくべき存在であろう。プリュドムじゃないよ!
ポール・ラペイラ(フランス、22歳)
脚質:パンチャー
毎年名選手を輩出しているU23版イル・ロンバルディアこと「イル・ピッコロ・ロンバルディア」を昨年制した男。過去の優勝者にはジャンニ・モスコン、ファウスト・マスナダ、ロバート・スタナード、アンドレア・バジョーリなどの実力派パンチャー、クライマーたちの名前が並ぶ。
パレパントル、プロドム同様のAG2Rシトロエン育成チーム出身で、昨年は津田悠義のチームメートでもあった。イタリアの2クラスのレースでは逃げ切りの後に小集団スプリントを制するなど、決定力のある男でもある。
2022年もAG2Rのメインターゲットは非スプリントでの勝利数稼ぎ。その方針に、彼もまた貢献できるのか。ネオプロながら、最注目の選手だ。
各チームへのリンク
トタルエナジーズ
チーム・アルケア・サムシック
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