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読み:ボーラ・ハンスグローエ
国籍:ドイツ
略号:BOH
創設年:2010年
GM:ラルフ・デンク(ドイツ)
使用機材:スペシャライズド(アメリカ)
2021年UCIチームランキング:6位
(以下記事における年齢はすべて2022年12月31日時点のものとなります)
【参考:過去のシーズンチームガイド】
BORA - hansgrohe 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
BORA - hansgrohe 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
BORA - hansgrohe 2020年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
BORA - hansgrohe 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
目次
※各グラフのポイントは独自に集計した2021シーズンの実績に基づきます。
同じポイントに基づいた各脚質ランキングは以下の記事を参照のこと。
各チームのプレビューをPodcastでもやっています!
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2022年ロースター
※2021年獲得UCIポイント順
2021-2022移籍市場最大のトピックの1つが、ペテル・サガンとその仲間たちのボーラ脱退であろう。
とはいえ、それは以前から予想されていたことであり、そしてこのチームはもう、彼に頼らなくとも十分に世界トップクラスに君臨することのできるチームとなっている。
マキシミリアン・シャフマン、ニルス・ポリッツ、エマヌエル・ブッフマンといったドイツの才能たちは十分にその実力を発揮できており、かつウィルコ・ケルデルマンやマシュー・ウォルスなどの新加入選手たちもその存在感をしっかりと放っている。
そして、アレクサンドル・ウラソフやセルヒオ・イギータ、ジェイ・ヒンドレーといった、さらなるエース級の選手たちの獲得。パスカル・アッカーマン離脱の穴も、サム・ベネットの復帰によって十分に埋められ、ヨルディ・メーウスもベネットと共にグランツールでのステージ勝利を狙える十分なタレントだろう。
すなわち、2022シーズンもこのチームは強い。課題があるとすれば、グランツールでの成績。ラファウ・マイカもエマヌエル・ブッフマンも果たせないグランツール総合表彰台を、シャフマンやケルデルマン、ウラソフらが掴み取ることができるか。
注目選手
マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、28歳)
脚質:オールラウンダー
2021年の主な戦績
- パリ~ニース総合優勝
- ツール・ド・スイス総合4位
- アムステルゴールドレース3位
- リエージュ~バストーニュ~リエージュ9位
- ラ・フレーシュ・ワロンヌ10位
- 東京オリンピックロードレース10位
- UCI世界ランキング22位
昨年は何と言っても、一昨年に続くパリ~ニース総合優勝の達成。一昨年の総合優勝時も驚きだったが、それでもやはり、新型コロナウイルス等の影響もありユンボ・ヴィスマもイネオス・グレナディアーズも出場しない中での総合優勝ということで、ややその実力を疑う向きがあったのも確かだ。
だが、昨年はしっかりとフルメンバーでの参戦。もちろん、プリモシュ・ログリッチが最終日に2回落車したことで、本来であれば圧勝であったはずの彼の代わりの総合優勝者になった、という面はある。とはいえ、そこまでのステージでクライマーたちに混じってしっかりとタイムを護り、総合2位の座を守り続けたことでこの結果となった。
ツール・ド・スイスも総合4位ということで、引き続きステージレーサーとしての実績も積みつつ、あとはグランツールライダーとして覚醒するかどうか。
そして、相変わらずのアルデンヌ・クラシックの強さ。アムステルゴールドレースもリエージュ~バストーニュ~リエージュも、いつ勝ってもおかしくない走りはできている。ビッグレース勝利まで、あと一歩だ。
アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、26歳)
脚質:クライマー
2021年の主な戦績
- ジロ・デ・イタリア総合4位
- パリ~ニース総合2位
- ツアー・オブ・ジ・アルプス総合3位
- フォーン=アルデシュ・クラシック6位
- ツール・ド・ラ・プロヴァンス総合10位
- UCI世界ランキング35位
2018年ベイビー・ジロ(U23版ジロ・デ・イタリア)覇者にして、2020年イル・ロンバルディアではヤコブ・フルサンの優勝を強力にサポートし、自らも3位。18歳からイタリアで生活を続けているためイタリアへの愛は強く、2020年は待望のジロ・デ・イタリア出場を果たす――が、胃腸トラブルによる2日目にリタイア。
しかし、その実力は着実に増してきている。2020年はそのジロのリタイア後、ブエルタに出場し、序盤こそ尾を引きずっており大きくタイムを失ったが、その後はプリモシュ・ログリッチやリチャル・カラパスらトップライダーたちに引けを取らない走りを見せて最終的には総合11位で終えることに。
そして2021年。パリ~ニース総合2位、ツアー・オブ・ジ・アルプス総合3位で迎えたジロ・デ・イタリアでは、怪我明けのレムコ・エヴェネプールやエガン・ベルナルに不安要素が囁かれていた中で、サイモン・イェーツと並び総合優勝候補の1人として名を連ねての出場となった。
その結果は総合4位。表彰台には惜しくも届かなかったが、彼にとって実質2回目とも言えるグランツールでのこの成績は、十分すぎるほど期待に応えたと見て良いだろう。
総合エースという意味では、シャフマンよりも彼やケルデルマン、ブッフマン、そしてヒンドレーが中心を担っていくことになるだろう。
タレントは揃った。あとは、実際にこれでユンボ・ヴィスマやイネオス・グレナディアーズ、UAEチーム・エミレーツの3強グランツールチームに食い込むことができるか。
サム・ベネット(アイルランド、32歳)
脚質:スプリンター
2021年の主な戦績
- オキシクリーン・ブルッヘ~デパンヌ優勝
- パリ~ニース2勝
- UAEツアー2勝
- ヴォルタ・アン・アルガルヴェ2勝&ポイント賞
- シュヘルデプライス2位
- UCI世界ランキング80位
2020年ツール・ド・フランス2勝&ポイント賞の男が、3年ぶりに古巣へと復帰。当時はあまり良い抜け方ではなかったが、その際に懸念であったサガンもアッカーマンもいなくなったことで、彼にとっては十分理想的な状況が残る結果となった。
2021年のドゥクーニンク・クイックステップの抜け方も、決して褒められたものではなかった。ツール・ド・フランス直前のツアー・オブ・ベルギー前に膝を負傷し欠場。そのままツール本戦も出られなくなり、かわりにカヴェンディッシュがセンセーショナルな4勝を叩き出した。
その事実が、彼のチームでの居場所を不安にさせたのか。その後も膝の手術を行いシーズンを早めに切り上げたうえでボーラ・ハンスグローエへの復帰を発表。パトリック・ルフェーブルGMとの間も非常に険悪な状態となってしまった。
「ドゥクーニンクを抜けたスプリンターは弱体化する」というジンクスは、今回のサム・ベネットには適用されるのか? そんなことはない、と思いたいが、それでも、彼が絶好調だった3年前とはまた、色々状況が変化しているのも事実。一応、盟友のシェーン・アーチボルドは再び引き連れながらの復帰ではあるけれど。
プレッシャーは絶大に違いない。若手のヨルディ・メーウスも結果を出しており、新たなライバルになることは必至。
今年1年間は決して気楽な1年ではないことは、彼自身が一番よく知っているだろう。
ダニー・ファンポッペル(オランダ、29歳)
脚質:スプリンター
2021年の主な戦績
- バンシュ~シメイ~バンシュ優勝
- エグモント・サイクリングレース優勝
- シュヘルデプライス4位
- ユーロメトロポール・ツアー4位
- パリ~ツール5位
- ロンド・ファン・フラーンデレン16位
- UCI世界ランキング30位
さて、そんなベネットの新たな発射台候補として加入したのが、元アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオのダニー・ファンポッペル。2015年には初出場のブエルタ・ア・エスパーニャで22歳の若さながらいきなりステージ優勝をしてしまうなど、期待されていた男も、いよいよエースの座を捨てての移籍を決断した。
・・・と思ってはいるし、大方のメディアの見解でもあくまでも立場は「ベネットのアシスト」として一致しているのだが、しかし2021年シーズンの実績だけ見ると、彼はチーム2番目のUCIポイント獲得者であり、筆者が独自で集計した2021シーズン実績ポイント獲得量でもチーム随一なのだ。
もちろん、2021シーズンはベネット、アッカーマン、ユアンなどトップスプリンターたちが軒並み怪我や不調に悩まされ伸び悩んだ例年以上の戦国時代だったこともあるし、ファンポッペル自身も勝ってるのは1クラスの2つだけ。あとは1クラスやProシリーズの2位や4位や5位に入って細々とポイントを稼いでいるだけとも言えるので、決して数字が実力を反映しているとは言い切れない。
が、なかなか表には出づらいこういった数値が、実際に翌シーズンの活躍を占うパターンというも非常に多い。
サム・ベネットの調子次第では、もしかしたらこのダニー・ファンポッペル、2022シーズンのボーラ・ハンスグローエにおける台風の目となる可能性はある。注目しておいても損はないだろう。
その他注目選手
セルヒオ・イギータ(コロンビア、25歳)
脚質:クライマー
2019年シーズン途中にEFエデュケーション・ファーストでプロデビュー。最初はパンチャー系という印象で、コンチネンタル所属時代にブエルタ・ア・アンダルシアの登りスプリントで区間2位などに入り込んでいたが、その後プロデビューを果たした直後のツアー・オブ・カリフォルニアの山頂フィニッシュで区間2位と総合でも2位。さらに同年のブエルタ・ア・エスパーニャではいきなりの逃げ切りステージ勝利を果たした。
チームの新たな総合エース候補として注目を集め2020年もパリ~ニース総合3位・新人賞などを獲得するが、その後はやや失速してしまった。2021年のツール・ド・フランスでも、総合25位。
とはいえ、まだまだ若く、可能性に満ち溢れた存在であることは間違いない。多少の回り道も、焦る必要はまったくない。
そして今回、ボーラ・ハンスグローエへの移籍が決定。他にもエースの多いチームではあるが、ここで刺激を受けながら、焦らず2~3年後の大ブレイクに備えて経験を集める1年、くらいに見ておいてよいだろう。
ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、26歳)
脚質:クライマー
2020年ジロ・デ・イタリア総合2位のオーストラリアの才能。同年3位のウィルコ・ケルデルマンはすでに昨年ボーラ入りを果たしていたが、これで2位もまたボーラに入ることに。
とはいえ、それなりの活躍を見せてくれたケルデルマンに比して、2021シーズンのヒンドレーはやや期待外れではあった。ジロ・デ・イタリアでは途中リタイアだが、それまでも総合22位や25位のあたりを右往左往している感じで、総合TOP10入りはツール・ド・ポローニュの7位くらい。
むしろ彼にとっては、2020年の活躍が突然で意外過ぎたとも言える。が、それはチームの問題だったとも言えなくもないので、今年、あれはフロックではなかったんだと証明できる走りをしてみせてほしい。
マシュー・ウォルス(イギリス、24歳)
脚質:スプリンター
2018年のトラックワールドカップ・ロンドン「オムニアム」金メダリストにして2020年のトラック世界選手権「オムニアム」銅メダリスト。2019年にはベイビー・ジロで区間1勝もしており、そのときはイーサン・ヘイターやケイデン・グローブスを退けている。
その実績から、2021年のボーラ加入時には「即戦力になる!」と注目していたが、意外にもその後は割と大人しく・・・と思っていたらやはりやってくれた! 左手からマッテオ・トレンティンが早駆けし、右からジャコモ・ニッツォーロが追い込んできていた中で、その中央から突如現れたボーラのジャージ・・・実況も誰かすぐわからなかったが、彼こそが約束された才能、ウォルスであった。
すでに8月にはツアー・オブ・ノルウェーでも1勝しており、プロ1年目にしてProシリーズで2勝。まだまだ多くの視聴者には認知されていない可能性もあるが、2022シーズンは誰よりも爆発するスプリンターかもしれない。
なお、東京オリンピックでは得意のオムニアムで見事金メダル獲得。昨年前半の「大人しさ」は、このオリンピックに照準を合わせていた可能性はある。
2年後のパリ五輪でも、引き続き活躍してくれる可能性はありそうだ。
ルイス=ヨー・ルュース(ドイツ、19歳)
シアン・エイテブルックス(ドイツ、19歳)
脚質:パンチャー
今年の移籍市場の一つの(ややマニアックな)話題の1つであった19歳の(今はもちろんまだ18歳の)2人組。いずれも、ボーラ・ハンスグローエのジュニア育成チーム「チーム・アウト・イーダー」からの、U23カテゴリをすっ飛ばしてのプロデビューである。
まだまだ、その実力のほどは不明。いずれも、ジュニアでは抜けた成績であったのは確かで、とくにエイテブルックスはジュニアレースで7勝し、そのうちの1勝はドイツ国内選手権TTジュニアカテゴリでの優勝。TT能力の高さは、選手としての基礎値の高さを意味するため、期待したい。
レムコ・エヴェネプールが嚆矢とも言えるこの「U23すっ飛ばしデビュー」の潮流はしばらく続いているが、当たり前だがエヴェネプールのようにいきなり活躍するパターンは多くはない。
注目しすぎるのも良くないため、ほどほどに、その名前を覚えつつ様子を見ていくようにしよう。
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