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読み:アスタナ・カザフスタンチーム
国籍:カザフスタン
略号:AST
創設年:2007年
GM:アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)
使用機材:ウィリエール(イタリア)
2021年UCIチームランキング:12位
(以下記事における年齢はすべて2022年12月31日時点のものとなります)
【参考:過去のシーズンチームガイド】
Astana Pro Team 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Astana Pro Team 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Astana Pro Team 2020年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Astana - Premier Tech 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
目次
※各グラフのポイントは独自に集計した2021シーズンの実績に基づきます。
同じポイントに基づいた各脚質ランキングは以下の記事を参照のこと。
各チームのプレビューをPodcastでもやっています!
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2022年ロースター
※2021年獲得UCIポイント順
カザフスタン一国スポンサー状態から、カナダの企業プレミアテック社による援助へ。しかしそれは援助という域を超えて支配とも言えるものとなり、その結末はアレクサンドル・ヴィノクロフGMの追放――そこからカザフスタン側の反撃が始まり、最終的にプレミアテック社はスポンサーを撤退。ヴィノクロフGMの復活に加えてヴィンツェンツォ・ニバリやミゲルアンヘル・ロペス、あるいはアンドレイ・ツェイツらの復帰といった、かつての栄光を取り戻すかのような獲得を行った。
とはいえ、財政難という根本の問題は解決せず。むしろそれはより深刻化したともいえ、ついに、昨年は留めることができていたチームの主力選手たち――すなわち、ヤコブ・フルサンやルイスレオン・サンチェス、イサギレ兄弟といった選手たちを一気に手放すことを意味した。
チームの半分近くが入れ替わる大変革を経て、決して総合力が高いとは言えないこのチーム。とはいえ、モスコン、デラクルス、ドンブロウスキ―など、補強選手たちは決して悪くないメンバーが揃っており、十分にワールドツアーチームに相応しい活躍は見込めるだろう。
あとはニバリ、ロペスの2大エースがどれだけ活躍してくれるか。
とくにロペス。モビスターチームに後ろ足で砂をかけて出てきてしまった以上、結果を残さざるをえない。フルサンも去ったチームでのエースとしての活躍は、今後の彼の行く末を踏まえてみても必達目標となるだろう。
注目選手
ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、28歳)
脚質:クライマー
2021年の主な戦績
- ブエルタ・ア・エスパーニャ区間1勝
- ブエルタ・ア・アンダルシア総合優勝
- モン・ヴァントゥー・デニヴレ・チャレンジ優勝
- クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合6位
- 世界ランキング91位
2014年ツール・ド・ラヴニールの覇者で、翌年にアスタナでプロデビュー。2016年には早くもツール・ド・スイスを総合優勝するなど、瞬く間に世界トップクラスのクライマーへと成長した若き才能の1人であった。
ヴィンツェンツォ・ニバリやファビオ・アルなどがチームを去る中、アスタナの次代を担う存在として期待されていたが、チームが財政危機を迎える中で昨年、放出される。エース格を多く手放したスペインチームにおける新たなエースとして注目されていたが・・・。
最後にケチのついたシーズンではあったが、調子は良かった。ブエルタ・ア・エスパーニャではリタイア直前に総合3位。2020年もツール・ド・フランスでクイーンステージを優勝したうえで第19ステージ終了時点では総合3位と、その実力は十分に上がってきている。
ただそのツールも最後の山岳TTで大失速するなど、安定感に欠けることもまた事実。
今のところ出場を予定している今年のジロ・デ・イタリアはTTの総距離も短いので向いているかも? ヴィンツェンツォ・ニバリもダビ・デラクルスも出場する予定とのことで主導権争いに不安が残るが、新生アスタナの柱となれるよう、活躍に期待する。
アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、30歳)
脚質:オールラウンダー
2021年の主な戦績
- ツール・ド・フランス総合7位
- クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ区間1勝&総合2位
- セレニッシマ・グラベル優勝
- コッパ・アゴスティーニ優勝
- グラン・プレミオ・ミゲル・インドゥライン2位
- UCI世界ランキング39位
かつては逃げスペシャリストという印象だった彼も、2018年・2019年とツアー・オブ・オマーン総合優勝、2020年UAEツアー総合3位など、ステージレーサーとしての才能を発揮しつつあった。
2021年のシーズンチームガイドではツール・ド・ポローニュあたりも総合優勝できてしまうのではないか・・・などと書いていたが、とんでもない。その年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネを総合2位、さらにはツール・ド・フランスでもまさかの総合7位・・・!
彼がグランツールライダーとして活躍していく姿はまだまだ想像できないのだが、これまでも想像を超え続けてきた彼だけに、果たしてどうなるか。
ヴィノクロフに次ぐ祖国の英雄であることは間違いない。引き続き、カザフスタンチームを引っ張っていってほしい。
ジャンニ・モスコン(イタリア、28歳)
脚質:パンチャー
2021年の主な戦績
- パリ〜ルーベ4位
- ツアー・オブ・ジ・アルプス区間2勝
- グラン・プレミオ・チッタ・ディ・ルガーノ優勝
- 世界ランキング77位
間違いのない才能と、たびたびトラブルを引き起こす性格とを併せ持ち、イネオスからの離脱も時間の問題だと思われていたが、ついにこれが現実のものに。
しかしやはり天才であることに違いはなく、昨年もツアー・オブ・ジ・アルプスで2勝。しかもこの2勝とも、ステージ終盤の残り2〜3㎞で集団からアタックして逃げ切るという匠の技で、シーズン緒戦のツール・ド・ラ・プロヴァンスでも成功はしなかったが同様の試みを行っていた。
レイトアタックの名手ルイスレオン・サンチェスが抜けた穴を埋めてくれるか。
そして極め付けが、シーズンラストのパリ〜ルーベ。20年ぶりの大雨の中のパリ〜ルーベは混沌の極みとなり、アランベールを越えた時点でメイン集団は一気に数を減らし、残り54㎞から独走を開始し始めた彼はそのまま逃げ切りも充分にありうるような状況であった。
だが、クラシックの女王は天才トラブルメーカーに対して実に手厳しかった。残り31㎞で後輪がパンク。さらに交換したバイクの空気圧が合ってなかったのか、残り26㎞地点の石畳で後輪を滑らせて落車してしまった。
ギリギリまで諦めようとしなかった彼は最後の5つ星カルフール・ド・ラルブルまで先頭を維持し続けたが、最後はついに捕まえられてしまった。
あのままパンクしなければ、落車しなければどうなっていたのか?
気になりはするが、その物語の続きはまたこのアスタナで描かれることになるのだろう。
クラシック要員が決して充実はしていないチームだけに、その存在にかけられる期待は大きいはずだ。
その他注目選手
ヴィンツェンツォ・ニバリ(イタリア、38歳)
脚質:オールラウンダー
現役で2人しかいない3大グランツール制覇者にして4回のグランツール制覇を達成している男。すでにかなりの年齢だが、それでも2019年のジロ・デ・イタリアで総合2位や2020年のパリ〜ニースで総合4位など、その実力はなかなか衰えない。いい加減今年もジロ・デ・イタリアに出るとはいえ、デラクルスやロペスにエースの座は譲り後方支援かステージ狙いに集中するだろう・・・とは言い切れない怖さがある。
何しろ、2回のジロ・デ・イタリア制覇とツール・ド・フランス制覇を成し遂げたアスタナへの復帰なのだ。チームとしても歓迎ムードの中、キャリア晩年にもう一花咲かせることができるか。
サミュエーレ・バティステッラ(イタリア、24歳)
脚質:パンチャー
2019年U23世界選手権ロード覇者。その鳴り物入りで2020年にNTTプロサイクリングでプロデビューを果たしたが、その年はチームの混乱もあり、なかなか活躍の場はなく・・・早速移籍を経験した昨年、シーズン最終戦のヴェネト・クラシックでの勝利など、一定の成果を残すことができた。
その他、コッパ・ベルノッキで4位、トロフェオ・マッテオッティで6位。さらにジロ・デ・イタリアでも逃げ切り集団の中で区間6位。
すなわち、ワンデーレース、それもイタリア系の、アタック所の明確な実力の出やすいレースとの相性が非常に良い。
と、なれば次に狙って行きたいのはトロフェオ・ライグエーリアやグラン・ピエモンテ、あるいはツアー・オブ・ジ・アルプスでの逃げ切り勝利など。
もちろんジロでの区間勝利も1つの大きな目標だ。ルイスレオン・サンチェスが去ったアスタナで、アグレッシブなレイトアタックをどんどん狙っていってほしい。
シモーネ・ヴェラスコ(イタリア、27歳)
脚質:パンチャー
これまでイタリア、そしてロシアのプロチームを転々としてきたイタリアンパンチャー。今年はティレーノ〜アドリアティコ区間3位やジロ・デ・シチリア総合6位、さらにはツール・ド・リムザン区間1勝など、1クラス以上のレースで次々とTOP10入りを果たしその名を売り込んでいった。
財政難に苦しむアスタナチームにおいて、まずはどんどん勝利を掴んでいく要員として期待していきたい。
各チームへのリンク
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