読み:アスタナ・プロチーム
国籍:カザフスタン
略号:AST
創設年:2007年
使用機材:ARGON18(カナダ)
2018年UCIチームランキング:6位
(以下記事における年齢はすべて2019年12月31日時点のものとなります)
2019年ロースター
ヴィンツェンツォ・ニバリ、ミケル・ランダ、ファビオ・アルと、総合エースが次々とチームを去る中で、弱体化は避けられないと思われていたこのチームだが、叩き上げの若きコロンビアン、「スーパーマン・ロペス」の期待以上の活躍ぶりで、最強チーム復活の兆しが見え始めた。
2018年に補強したフライレ、ヒルト、ヴィレッラあたりも山岳アシストとして十分な働きを見せてくれており、2014年~2015年頃の黄金期が復活する可能性は十分にあるだろう。
その意味で、バーレーンからやってきたイサギレ兄弟はロペスに続く第2エースとして期待が懸けられる。また、アフリカ期待の星クドゥスも、総合系を大事にしてくれるこのチームで飛躍のチャンスを与えられるか。
ルツェンコやギディッチなど、地元カザフスタン勢もエース級の活躍を見せるようになっているのも嬉しい。同じアジア人として、頑張ってほしい。
注目選手
ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、25歳)
脚質:クライマー
- ジロ・デ・イタリア 総合3位
- ブエルタ・ア・エスパーニャ 総合3位
- ミラノ~トリノ 2位
2016年、22歳のときに、ツール・ド・スイスの総合優勝とミラノ~トリノの優勝により、一気に頭角を現したコロンビアの新星。ツール・ド・ラヴニールも制しており、キンタナの再来と呼ばれた。折しもニバリ、ランダがチームを去るタイミングでの登場に、チームの新たな総合エース候補として期待された。
2017年は得意のスイスで大落車を経験し、不安も感じられた。しかしその年のブエルタでステージ2勝と安定した強さをみせる。そして、その年の終わりに脱退したアルに代わってエースを務めた2018年のグランツールでは、期待以上の働きを見せてくれた。
フルサングが不調続きの今、2019年のツールは彼がエースで臨むことになりそうだ。まだ、総合優勝を期待にするにはさすがに早すぎるが、総合表彰台と新人賞くらいは望んでも問題ないだろう。とくに、苦手な個人TTの総距離が短い2019年のツールは、彼にとっても大きなチャンスなのは間違いない。
ヨン・イサギレ(スペイン、30歳)
脚質:オールラウンダー
- パリ~ニース 総合4位
- イツリア・バスク・カントリー 総合3位
- ブエルタ・ア・エスパーニャ 総合9位
- イル・ロンバルディア 6位
- クラシカ・サンセバスティアン 7位
元はモビスターの次期エース候補だった。
2017年にニバリに次ぐエース待遇を約束され、新創設のバーレーン・メリダに移籍。その初年度はツールのエースを任されるという大抜擢だったものの、初日でまさかのカメラに映ることすらないままのリタイアという最大級の憂き目に遭ってしまう。
2018年は急成長を遂げて合流した兄ゴルカの陰に隠れやや目立たない印象もあったが、ニバリ脱落後のツールでは積極的に逃げに乗り、ブエルタではなんとか総合9位につけ格好をつけることもでき、少しずつ総合エースとしての実力を取り戻しつつある様子。
2019年は兄とともに再び新天地に。一応は、ロペスに次ぐ総合エースとしてグランツールに挑むことはできるはずだ。
ダウンヒルとTTが強いオールラウンダータイプの彼にとっては、TTの総距離が短い2019年のツールよりも、それが長いジロの方が向いていると言えるだろう。
目指すは総合表彰台。今度こそ、輝かしい成績を残すことができるか。
アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、27歳)
脚質:ルーラー
かつては逃げスペシャリストとして、パリ~ニースやブエルタ・ア・エスパーニャで勝利を掴んできた。
そんな彼が、今年は年初のツアー・オブ・オマーンで総合優勝。終盤でもツアー・オブ・ターキーで総合2位。総合2位といっても、総合優勝のエドゥアルド・プラデスとはタイム差0秒。スプリント力のあるプラデスがステージ上位入賞の数が多かったがゆえに負けただけで、実質的には総合優勝の実力をもっていたと言える。
もちろん、この結果だけで、彼がアスタナの次期総合エース候補である、とまでは言えない。オマーンもターキーも、純粋なクライマー向けレースとは言い切れない部分もある。その他のレースの山岳ステージでは普通に遅れていることから、まだまだ、山岳エスケープスペシャリスト、山岳ルーラーといった評価から大きく外れることはないだろう。
だからこそ来期は、総合エースとしての可能性を広げる活躍に期待したい。世界選手権個人タイムトライアルでも13位という比較的高いTT能力を活かし、オールラウンダーとしての成長を望むのは決して的外れではないだろう。
その他注目選手
ゴルカ・イサギレ(スペイン、32歳)
脚質:クライマー
かつては弟ヨンより目立たない選手で、弟がバーレーンにエース待遇で移籍したときにもついていくことができなかった。
しかし、その2017年に覚醒。パリ~ニースではTT能力の意外な高さを発揮したほか、ジロ・デ・イタリアでもステージ優勝。その成績を認められてか、2018年には彼もまたバーレーンに移籍することができた。
そしてその2018年にも、パリ~ニース第1ステージでデマール、ラポルテ、ウェレンスといったスプリンター/パンチャー勢と張り合う走りを見せ、スペイン国内選手権ロードレースでも優勝。ナショナルジャージを着て走る彼は、もしかしたらヨンよりも目立っていたかもしれない。
グランツールでの総合争いではやはりヨンが一枚上手といったところだが、それでも来年のロペスの出場しないグランツールでは、兄弟ダブルエースでの出場も十分考えられるだろう。
ペリョ・ビルバオ(スペイン、29歳)
脚質:クライマー
エウスカルテル→カハルラルを経て、2017年よりアスタナ入り。2018年はジロでロペスと並んで総合6位という驚きの成果を出しただけに飽き足らず、そのままの流れでクリテリウム・ドゥ・ドーフィネまで出場してしかも山岳ステージで優勝してしまうというタフネスぶりを発揮した。
その後はブエルタでロペスをアシストしつつ総合27位。やはりアスタナではロペスに次ぐ順位で、2019年新加入のゴルカやクドゥスよりも高い順位となった。
よって、彼もまた、イサギレ兄弟やフルサングと並ぶ総合セカンドエース候補となるだろう。少なくとも、ただのアシストとして置いておくのはちょっともったいない。
エフゲニー・ギディッチ(カザフスタン、23歳)
脚質:スプリンター
スプリンターと書いたものの、その枠に捉われない足を持っている。
2018年はピュアスプリントではリカルド・ミナーリをアシストし、山が含まれると彼が主役に。ランカウイ総合8位、クロアチア総合3位と活躍するその姿は、「カザフスタンのアラフィリップ」と評しても良いかもしれない。
まだ若く、可能性は無限大。来期は、移籍したミナーリの穴を埋める存在にも、ステージレース総合上位争いの有力候補にもなりうる。
今最も将来が楽しみな選手だ。
総評
このチームの最大の目標はスカイ、モビスター、サンウェブと同様、グランツールである。ロペスをエースにツールを、そしてフルサングやイサギレ兄弟を中心にその他のグランツールを狙ってくるか。
一方、北のクラシックやスプリントでのステージ優勝に関しては正直、期待するのは難しい。アルデンヌ・クラシックに関してはフルサングは十分可能性があるだろうし、コルトニールセンやヴィレッラなどの2018年新加入組の活躍には期待したいところ。
アシストの層は悪くないが、完全に信頼できるエースというのはまだまだ少ないアスタナ。やはりルツェンコ、ギディッチなどの若手カザフスタン人選手の成長が鍵となるだろう。
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