以下の記事もチェック!
読み:バーレーン・ヴィクトリアス
国籍:バーレーン
略号:TBV
創設年:2017年
GM:ミラン・エルシェン(スロベニア)
使用機材:メリダ(台湾)
2021年UCIチームランキング:5位
(以下記事における年齢はすべて2022年12月31日時点のものとなります)
【参考:過去のシーズンチームガイド】
Bahrain Merida Pro Cycling Team 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Bahrain Merida Pro Cycling Team 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Bahrain-McLaren 2020年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Bahrain - Victorious 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
目次
※各グラフのポイントは独自に集計した2021シーズンの実績に基づきます。
同じポイントに基づいた各脚質ランキングは以下の記事を参照のこと。
各チームのプレビューをPodcastでもやっています!
スポンサーリンク
2022年ロースター
※2021年獲得UCIポイント順。
2021シーズンはジロ・デ・イタリア総合2位、ツール・ド・フランス区間3勝、ブエルタ・ア・エスパーニャ総合3位&5位、さらにはパリ~ルーベ制覇など、前評判を遥かに超えた実績を叩き出してきたバーレーン・ヴィクトリアス。しかも、ベテランから若手まで、幅広く多くのタイプの選手たちが「意外な」勝利を積み上げていったことは、チームとしての強さを非常に感じさせる1年であった。
その中心の1人であったマーク・パデュンのチーム脱退は残念ではあるものの、それ以外のキーライダーたちの多くが残り、それどころかルイスレオン・サンチェスや若手期待のTTスペシャリストのプリス=パイタスンが加入するなど、さらなる補強が実現したといって間違いない。
グランツール総合上位や各種モニュメントを安定して狙えるかどうかは確言できないしまだまだTOPチーム層には敵わない部分もあるだろうが、2022シーズンも数多くの逃げ切り勝利や「意外な」すなわちドラマチックな勝利を期待できるチームとなるだろう。
もちろん、新城幸也がしっかりと契約更新できたことが嬉しい。2021年は彼にとっても一つの(改めての)飛躍の年となった。今年はツールで彼の姿を見れたら嬉しくはあるのだが・・・。
注目選手
ソンニ・コルブレッリ(イタリア、32歳)
脚質:パンチャー
2021年の主な戦績
- パリ〜ルーベ優勝
- ベネルクスツアー総合優勝
- ヨーロッパ選手権ロードレース優勝
- ヘント〜ウェヴェルヘム4位
- ミラノ〜サンレモ8位
- 世界選手権ロードレース10位
- シーズン8勝
- UCI世界ランキング6位
昨年最も飛躍した男の1人。
元々はツール・ド・フランスの登りスプリントなどで、ペテル・サガンに次ぐ2位に入り込んだり、雨の中のパリ〜ニースで勝ったりと、強さは見せていた。
しかし、ピュアスプリントで勝てることはあまりなく、一線級のスプリンターである、とはなかなか言えない成績というのが現実のところではあった。
それは、昨年も変わったわけではない。ツール・ド・ロマンディでの勝利もマッテオ・モスケッティやエリア・ヴィヴィアーニが脱落するような丘陵レイアウトでの勝利だし、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも2位以下がアランブルやマクナルティなど、スプリントステージとは言えないリザルト。そしてツール・ド・フランスではスプリントステージでの最高位が5位であった。
しかし、昨年の彼は異様に登れた。ツール・ド・フランスではマイケル・マシューズと一緒に逃げに乗り、途中の登りではダヴィド・ゴデュと対等に登ってマシューズたちを突き放したり、第9ステージの超級山頂フィニッシュではなぜか3位に入っていた。
ベネルクスツアー(旧ビンクバンクツアー)ではリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ風ステージとロンド・ファン・フラーンデレン風ステージでそれぞれ勝利と2位に入り、最終的にはモホリッチと共に総合ワンツー(ロンドステージでは最後、登りでトム・デュムランを突き放した)。
そしてヨーロッパ選手権ロードレースでの、レムコ・エヴェネプールのアタックに食らいついての優勝(あのブノワ・コヌフロワが突き放されたエヴェネプールのアタックに食らいついた!)。
世界選手権ロードでも最後のスメイスベルフでのジュリアン・アラフィリップのアタックに唯一食らいつくなど、本当に意味のわからない足を持っていた。
もちろん極め付けは、パリ〜ルーベでの勝利。途中、ワウト・ファンアールトやイヴ・ランパールトすら突き放したマチュー・ファンデルプールの、勝負所で繰り返し仕掛けられたアタックの全てに食らいつき、最後は周回遅れの選手が残っているトラック上での難しいスプリントにも冷静に対応し、きっちりと勝利を掴んだ。
の彼は確変のような大当たり年であり・・・そして、彼の持つ強いところがすべて噛み合った、彼の全てを出し尽くしたようなシーズンとなった。
今年、同じような成績を積み上げられるかどうかは正直、なんとも言えない。それでも、欧州ジャージを着た彼が、さらに我々を驚かせてくれることを期待したい。
あとは念願のツール・ド・フランス勝利を。
マテイ・モホリッチ(スロベニア、28歳)
脚質:ルーラー
2021年の主な戦績
- ツール・ド・フランス区間2勝
- ベネルクスツアー総合2位
- ツール・ド・ポローニュ総合2位
- クラシカ・サンセバスティアン2位
- アムステルゴールドレース9位
- リエージュ~バストーニュ~リエージュ10位
- UCI世界ランキング12位
ジロ・デ・イタリア第9ステージ。
2級山岳パッソ・ゴディ頂上からの下りで、突如空中に一回転する形で飛び出し、そのまま頭からアスファルトに叩きつけられてしまったモホリッチ。
その瞬間、最悪の事態すら想像させられてしまったが――結果として、リタイアにはなったものの、脳震盪もなく怪我も軽い打撲で済んだようだった。割れたフォークがすべてのエネルギーを吸収し、そしてヘルメットの存在が、彼の命を救ってくれたようだった。
そんな衝撃の事故からわずか1ヵ月後。母国ツアー・オブ・スロベニアでのポイント賞獲得と総合7位の勢いに続き、国内選手権ロードレースを制覇。そしてツール・ド・フランスで、2度にわたるステージ勝利・・・まさに、今年のバーレーン・ヴィクトリアスを象徴するような、復活劇であった。
さらには、ベネルクスツアーにおいても、上記のソンニ・コルブレッリと「ワンツー」を分け合うかのような最終2ステージの展開。第6ステージではコルブレッリが逃げる中、彼が集団の蓋役を担い、翌日は逆に彼が逃げコルブレッリが蓋役を担った。これぞチームワーク。これもまた、今年のバーレーンを象徴するレースであった。
一方、昨年は「2位」も多いシーズンであった。ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで逃げ王の先輩トーマス・デヘントに置いていかれて2位。ツアー・オブ・スロベニアではタデイ・ポガチャルやジョン・アベラストゥリに敗れて2位。クラシカ・サンセバスティアンではニールソン・ポーレス、ツール・ド・ポローニュではジョアン・アルメイダやニキアス・アルントらに敗れて2位・・・。
いずれも、結局は決定力、スプリント力の差で負けたパターンが多い。その意味で、彼にはやはり「逃げ」しかない。今後もグランツールはもちろん、各種クラシックでも強烈な「逃げ」を見せて勝利を掴んでいってほしい。
その最終目標はやはり世界選手権やオリンピック。今年の世界選手権はちょっと厳しいかもしれないが、来年以降やパリ五輪で、世界の頂点を掴み取れるか。
ジャック・ヘイグ(オーストラリア、29歳)
脚質:クライマー
2021年の主な戦績
- ブエルタ・ア・エスパーニャ総合3位
- クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合5位
- パリ〜ニース総合7位
- ツール・ド・ラ・プロヴァンス総合7位
- UCI世界ランキング43位
オーストラリア若手育成プログラム出身。かつてはカレブ・ユアンなど、スプリンター中心だったこのプログラムの、クライマー側での成功者の1人。後輩にはルーカス・ハミルトンなどがいる。
2016年ブエルタ・ア・エスパーニャでのエステバン・チャベス総合3位のときにもその傍らにいた。2018年ジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャではサイモン・イェーツの右腕であった。
オージーチームのアダム、サイモンに続く総合エース候補として大事に育てられていたように見えてが、昨年このバーレーンに移籍。そしてツール・ド・フランスに、エースナンバーを背負っての出場。ビッグチャンスを手に入れた。
が、そのチャンスは第3ステージでの落車によって、早くも零れ落ちた。その後チームは、まるでジロでのランダリタイアのあとのカルーゾの活躍と同じように、ディラン・トゥーンスとマテイ・モホリッチによるステージ3勝など大ブレイクを果たすこととなる。
だが、モホリッチがジロでの落車から大復活を遂げたように、ヘイグもまた、ブエルタに万全の体制で復帰した。そして、目立ちはしないが着実な走りで、最終的には総合3位。イネオスのダブルエースすら退けて、ブエルタでは2009年のカデル・エヴァンス以来となるオーストラリア人による表彰台を獲得する。
正直、彼がここまで登れるとは思っていなかった。2021シーズンチームガイドではどちらかというとパンチャータイプで、1週間の短いステージレースやクライマー向けのワンデーレースに強いタイプなのではないかとも書いていた。
しかし今年はこのブエルタに限らず、パリ〜ニースやドーフィネでも結果を出しており、これからもチームのエースとして活躍していくことが期待されそうだ。
その注目選手
ジーノ・マーダー(スイス、25歳)
脚質:クライマー
タデイ・ポガチャルが制した2018年のツール・ド・ラヴニールで区間2勝と総合3位。十分に期待されて2019年にプロデビューを果たしたが、チーム・ディメンションデータ(&NTTプロサイクリング)で過ごした2年間は、その最後の最後にちょっとだけ活躍したくらいで終わってしまった。
その12月。翌年のキュベカ・アソスの名簿の中に彼の名前がなく、不安と共に過ごしていた中で発表されたバーレーン・ヴィクトリアスへの移籍。ほっと一安心し、この2年の間に少しでも結果を・・・と思っていたら、なんと2021年はジロ・デ・イタリア区間1勝とブエルタ・ア・エスパーニャ総合5位という、並々ならぬ成績。一気にグランツールエース候補の一角として数えられる存在となり、契約年が残っていながらも早々にさらなる2年間の更新延長が果たされるなど、チームとしても絶対に離したくない存在へと変貌した。
まさに、発展途上の期待の星。2022年もさらなる活躍を見せてくれるだろう。
ヨハン・プリース=パイタスン(デンマーク、23歳)
脚質:TTスペシャリスト
2021シーズンの国内・欧州・世界すべてのU23TT王者に輝いた、若手最強のTTスペシャリスト。その武器たるTTで活躍してくれるのは勿論だが、そのパワーでスプリントトレインの重要な一角として機能したり、クラシックで活躍してくれることも期待したい。登ることができれば万能なアシストとしても活躍できる。
とはいえ、まだまだ未知数。2018〜2020シーズンのTT世界選3連覇を果たしたミッケル・ビョーグも、昨シーズンはあまり目立ててなかったので・・・。
今年のデンマーク開幕のツール・ド・フランスに選ばれたとしたら本人としても嬉しいだろうから、そこまでになんとか結果は出したい。
新城幸也(日本、38歳)
脚質:パンチャー
すでに大ベテランの彼にとっても、昨シーズンは一つの新たなる発展の年となったのではないだろうか。ジロ・デ・イタリアで見せた、山岳・平坦問わず終盤までその姿を残しているアシストぶりが、ダミアーノ・カルーゾの総合2位を確かに支えた。その事実に対する評価は、ランダにカルーゾにヘイグにマーダーにパデュンにプールスにトラトニクという、全く一分の隙もないブエルタ・ア・エスパーニャの最強ロースターの中の貴重な一席を与えられたことからも、十分に感じ取ることができる。
実際、現役選手の中でもトップクラスのグランツール出場数&全完走というステータスは、アシストという役割においては特に重要なポイントなのだと思う。
ゆえに、2022シーズンも問題なく更新されたし、再びグランツールでの活躍を期待してもそれは決して贔屓目ではないだろう。
もちろん、日本人としては、彼のツール・ド・フランスへの再出場も期待したいところ。その求められる役割からは、逃げに乗ることはなかなか望むことはできないだろうが、それでもいいから・・・。
各チームへのリンク
スポンサーリンク