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Bahrain Merida Pro Cycling Team 2019年シーズンチームガイド

読み:バーレーンメリダ・プロサイクリングチーム

国籍:バーレーン

略号:TBM

創設年:2017年

GM:ブレント・コープランド(イタリア)

使用機材:Merida(台湾)

2018年UCIチームランキング:7位

(以下記事における年齢はすべて2019年12月31日時点のものとなります) 

 

  

 

2019年ロースター

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中東オイルマネーの本領発揮か。BMCレーシングチームから最強TTスペシャリストのデニスと急成長中のパンチャー/クライマーのディラン・トゥーンスを獲得した。カルーゾも総合エース候補になりうる逸材だ。

一方、イサギレ兄弟を失ったことで、ニバリに次ぐはっきりとしたエースの存在は不明確に。デニスはまだまだTTに集中したがっているようだし、ポッツォヴィーヴォもしくはカルーゾがどこまで実力を示せるか。あるいは、ブエルタの登りで良い走りを再三見せていたトゥーンスが総合エースを引き受ける可能性もある。

また、思うように結果を出せなかったボニファツィオがチームを去る中、スプリンターにおいては勢いのある若きジャーマンスプリンターの1人であるバウハウスと、グライペル親衛隊の1人であったシーベルクを獲得。特定のシチュエーションでは非常に強いコルブレッリを先頭に、どれだけ勝利を重ねられるか。

また、強力な育成チームSEGレーシングアカデミーからは才能豊かなウィリアムスを獲得した。2019年にいきなり覚醒してもおかしくない注目の若手である。

 

 

注目選手

ヴィンツェンツォ・ニバリ(イタリア、35歳)

脚質:オールラウンダー

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2018年の主な戦績

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ヴィンツェンツォ・ニバリという男は、不思議な魅力を持つ男だ。

3大グランツール制覇に加えて2つのモニュメントを制覇するという、現役では右に出るもののいない実績をもつ実力者である。本来であればクリス・フルームやナイロ・キンタナと並ぶ巨大な存在であるはずだ。

しかし、彼の走りは、そんな偉大なる実績を感じさせない、実に軽やかな走りである。実際、2018年のグランツールは散々な結果だったが、それでもこの2018年が彼にとって失敗だったとは感じさせない。むしろミラノ~サンレモの勝利とイル・ロンバルディアでの2位の輝かしさばかりが感じられる。

彼はバーレーンメリダの紛うことなきエースでありながら、エースであることのプレッシャーからは常に自由であり続けているような男であると感じられる。

 

その理由の1つは、2017年後半あたりから感じる、彼の「仲間のための走り」にあるように感じる。昔の彼はそうでもなかった気がする。しかしこのチームに入ってから彼は、ジョヴァンニ・ヴィスコンティソニー・コルブレッリなどのチームメートのために自らの力を使う姿を頻繁に見せている気がする。

彼は彼自身が勝たなければいけないという思いに囚われてはいない。むしろ、チームメートの勝利のための走りも厭わず、そして結果として自らが零れ落ちた勝利を拾えればいい。そんな思いが彼の走りを軽やかなものにしているのかもしれない。

 

では、何が彼をそんな風に、エースでありながらチームメートを、という思いにさせているのかはわからない。ただ、勝手な妄想を許していただけるならば、それは、彼が大きな重圧から解き放たれるきっかけとなったであろう、2016年のジロに原因を求められるような気がする。

あのジロで彼が逆転総合優勝を果たすきっかけとなった第19ステージで、彼は、ミケーレ・スカルポーニという偉大なる男の力を借りて、勝利を掴んだ。

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もちろん、すべては僕の勝手な想像に過ぎない。

それでも、彼が2019年もまた、チームメートと共に最高の時間を過ごしてくれればそれでいいと感じている。

 

 

ローハン・デニス(オーストラリア、29歳)

脚質:TTスペシャリスト

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2018年の主な戦績

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2018年の7勝は全て個人タイムトライアルによるものという徹底ぶり。2017年はティレーノ~アドリアティコ総合2位などステージレーサーとしての可能性を見せてもいたが、2018年はそういった色気も全く見せなかった。

結果、トム・デュムランを破っての世界選手権制覇という巨大すぎる成果。

目指すは2020年東京オリンピックにおける金メダル。あくまでもグランツールライダーとの二足のわらじとなるデュムランとの直接対決に向けて、彼は2019年もやはり個人TTに全力を尽くすのだろうか?

しかし、ニバリに次ぐ総合エースの存在に不足を感じているバーレーンへの移籍は、彼の総合エースとしての成長に期待したくなる要素ではある。

特に2019年のジロは、個人TTが長いコースレイアウトであり、そして、おそらくはフルームやデュムランといったTT能力の高いライバルたちの出場の可能性が低いジロでもあるので・・・。

 

 

マチェイ・モホリッチ(スロベニア、25歳)

脚質:ルーラー

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2018年の主な戦績

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持久力の高さと得意のダウンヒルで逃げ勝利を量産してきた一流のエスケーパー。今年はビンクバンクツアーやドイツ・ツアーでの総合優勝を果たし、ティム・ウェレンスに近い脚質といったイメージだ。そのウェレンスも近年、より山がちなステージレースでの総合優勝も重ねているので、モホリッチもその方向への進化を期待できるかもしれない。現時点で発表されているレーススケジュールでは、2月にはバレンシア1周とUAEツアー(旧ドバイ・ツアー&アブダビ・ツアー)を走る予定のようだが、いずれも彼の脚質にはあったレースだと思う。総合優勝は十分考えられるだろう。

一方、同じく2019年出場予定レースを眺めてみると、2月のオンループ・ヘット・ニウスブラットに始まり、ロンド・ファン・フラーンデレンやパリ~ルーベにも出場するなど、本来彼が得意であるはずのアルデンヌ・クラシックではなく、北のクラシックへ注力する姿勢が見られる。

確かに、バランスのとれた体付きの彼は石畳への適性も十分にあるだろう。2019年の彼のさらなる進化が楽しみだ。

また、ブエルタ、ジロと毎年グランツールでのステージ優勝を重ねている彼が、来年はいよいよツールで・・・というのも期待してしまう。

 

 

その他注目選手

ソニー・コルブレッリ(イタリア、29歳)

脚質:スプリンター

2017年のツールでは全く良いところのなかった彼が、2018年はきっちりと役目を果たした。

ピュアスプリントではまだまだ物足りない。しかし、特定のシチュエーションでは力を発揮する。

たとえばドバイ・ツアー第4ステージの激坂ハッタ・ダムでの勝利や、ツール第5ステージ登りスプリントでの2位。ピュアスプリンターが残ることのできないシチュエーションではジルベールやアラフィリップよりも勝率は高くなる。

また、ツール・ド・スイス第3ステージでサガンやガビリアを打ち倒したときやグラン・ピエモンテでの勝利など、雨の日のスプリントでは他を圧倒する唯一無二の実力を発揮する。以前、パリ~ニースでもキッテルを破っている。

2019年も、安定感のあるエースとは言えないまでも、いざというときに勝利を運び込んでくれる、頼りになる男となることだろう。

 

ディラン・トゥーンス(ベルギー、27歳)

脚質:クライマー

2017年に覚醒した激坂ハンター。2018年は単純なパンチャーとしてではなく、ブエルタや秋のイタリア・クラシックで優勝争いを繰り広げる一流クライマーとしての実力を示した。パリ~ニースでは総合6位となり、2019年バーレーンにおける総合エース候補の1人となりそうだ。

もちろん、本来の主戦場であるアルデンヌ・クラシックでの勝利にも期待。とくに、モホリッチが北のクラシックに集中することになりそうな2019年は活躍の機会だ。

 

イバン・ガルシア(スペイン、24歳)

脚質:スプリンター

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2017年はブエルタの終盤でも積極的に逃げを見せる有望な若き山岳ルーラー、という印象だった。

しかし2018年では、ライドロンドン・サリークラシックで4位に入ったかと思えば、ブエルタではスプリントステージで繰り返し上位に喰い込む走りを見せた。もはや偶然ではない。彼は、スプリンターとしての才能を突如、覚醒させたのだ。

もちろん、ただのピュアスプリンターではない。バルベルデサガンが上位に喰い込むような登り基調でのスプリントでもその存在感を発揮する。また、パリ~ニースでは、未舗装路での爆発力も見せつけた。

そんな彼だから、2019年にどんな脚質になっているかは正直、予想つかない。スプリントの足をより磨いていくのか、それともバルベルデやアラフィリップのようなオールラウンドな活躍ができる選手に近づいていくのか。はたまた石畳を乗り越えていく重量級ルーラーになるのか。

とにかく2019年の彼は、全てのステージで注目するに値する選手と言えるだろう。

 

 

総評

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ニバリに次ぐ総合エースが機能しないと4がつくような結果は出せないか。スプリントでもコルブレッリの安定感のなさに不安は残る。

北のクラシックはモホリッチの覚醒次第。アルデンヌもトゥーンス次第と、実力ある選手はいるものの、層が厚いわけではないのがこのチームの大きな不安だ。結果、まったく勝利が稼げず・・・ということも十分ありうる。

せめて、アルデンヌ・クラシックでは、ジョヴァンニ・ヴィスコンティが引き続きチームにいてくれれば安心するところもあるのだが、11月30日現在、その去就は未だ不明・・・。

 

 

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