読み:バーレーン・マクラーレン
国籍:バーレーン
略号:TBM
創設年:2017年
GM:ロッド・エリングワース(イギリス)
使用機材:メリダ(台湾)
(以下記事における年齢はすべて2020年12月31日時点のものとなります)
参考
Bahrain Merida Pro Cycling Team 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Bahrain Merida Pro Cycling Team 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
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2020年ロースター
※2019年獲得UCIポイント順。
2017年のチーム発足当時の2大エース、ヴィンツェンツォ・ニバリとヨン・イサギレをいずれも失い、チームは全く新しい2人の総合エースを据えた。すなわちミケル・ランダとワウト・プールスである。
しかし、いずれもアシストとしては超強力ではあるが、エースとしては実績に乏しい。GMも「デイヴ・ブレイルスフォードの右腕」ロッド・エリングワースに変わり、様々な面で環境が激変した
このチームは果たして一体感をもって結果を残すことができるのか。ちゃんとやらないとナセル王子もやる気を失っていきなりチーム解散とかやりかねないので不安である(そうしたら今度はサウジアラビアとかが興味を示してきそうではあるが)。
まずは様子見。2018年なんかは、意外なチームワークの良さを示すなど面白い走りをしていて好きだったチームだけに、期待してはいるのだが・・・。
注目選手
ミケル・ランダ(スペイン、31歳)
脚質:クライマー
2019年の主な戦績
- ツール・ド・フランス総合6位
- ジロ・デ・イタリア総合4位
- イツリア・バスクカントリー総合7位
- リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ7位
- 世界ランキング34位
私の知る限り、彼の台頭は2015年のジロ・デ・イタリア、当時アスタナ・プロチームのエースとして出場していたファビオ・アルを超強力にサポートしていたときである。とくにその第5ステージ
で、アルベルト・コンタドールがアタックしたときに、アル、リッチー・ポートに加えて、このランダまでがついてきたとき、彼が本物であることを確信した。
その後ランダは第15・16ステージで2連勝を果たし、一時アルを抜いて総合2位に浮上。その後再び3位に戻るが、総合を争う最終ステージである第20ステージで、逃げに乗ったランダは再び2位を得るチャンスを掴んでいた。
しかし彼は、あくまでもエースのアルの総合逆転の可能性を重視。私欲を捨て、アシストとしての責務を果たし切ったのである。
同年アルがブエルタを制したときも、これを献身的に支えた。
もちろん彼にもエースとして走りたいという強い欲望があった。そのためにジロをエースで走る条件でスカイに移籍。約束通りジロに出場するも、途中リタイア。翌年はゲラント・トーマスとのダブルエース体制で挑むも、ここでもまた、落車によって総合争いからは早々に脱落してしまった(ステージ1勝と山岳賞は獲得)。
一方で、2017年のツール・ド・フランスでは、クリス・フルームへの強力なアシストで話題となった。一時は、フルームよりも強かったのではないか、という声と共に、「ランダの反逆」を期待するアンチ・スカイやメディアの声も聞かれた。だがここでも彼はその期待に応えることはなく、粛々とわずか数秒差の総合4位を受け入れた。
とにかく、アシストとしては最強の男なのだ。それはモビスターに移籍してからも変わらず、2019年のジロ・デ・イタリアでは、紛うことなきエースだったはずが、最終的にはカラパスにマリア・ローザを着させる最高のアシストを果たしてみせた。
2020年は、本当の本当にチームの第1エースといえる立場に。しかももう一人のエース候補もアシストが板につく男。
今度こそ・・・!
ワウト・プールス(オランダ、33歳)
脚質:オールラウンダー
2019年の主な戦績
- ツアー・ダウンアンダー総合3位
- クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合4位
- ティレーノ〜アドリアティコ総合7位
- リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ10位
- ヴォルタ・アン・アルガルヴェ総合3位
- 世界ランキング48位
クリス・フルームの右腕。スカイ入りは2015年からだが、そのときから彼のマイヨ・ジョーヌの重要なアシストをし続けた。2017年に彼がマイヨ・ロホを手に入れたときも、他のチームのエース級すら千切りきってしまいかねない爆走を見せ、あやうく、アルベルト・コンタドールの感動的なアングリル勝利を奪い取りかねなかった。
もちろん、エースを任されたこともある。2019年のブエルタ・ア・エスパーニャなんかはその最大のチャンスだった。しかしシーズン序盤から怪我が続出し、その年のグランツール戦略が壊滅的になったうえで準備不足で挑んだことにより、結果はまったく出せずに終わった。
もとより、爆発力はときにフルーム以上ながら、安定性に欠けるというのが彼のよく見る評価。実力は十分だけど、完全に信頼できるエースかというと・・・。
その意味で、ワンデーの方がむしろ向いているのかもしれない。2016年にはリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで優勝し、これがもしかしたらスカイの最初のモニュメント制覇? イル・ロンバルディアもエースを任せてもらえるならば、可能性はあるかもしれない。
ソンニ・コルブレッリ(イタリア、30歳)
脚質:スプリンター
2019年の主な戦績
- グラン・プレミオ・ブルーノ・ベヘッリ優勝
- ドイツ・ツアー総合2位
- 世界選手権ロードレース11位
- サイクラシックス・ハンブルク9位
- 世界ランキング66位
プロコンチネンタルチーム時代はプロコン最強スプリンターの名を欲しいままにしていた彼は、ワールドツアーに昇格してからも割とカラーリングは変わらず、やっぱりワールドツアーレースではなかなか勝てない。
が、強さは本物。2018年はツール・ド・フランスの登りスプリントでペテル・サガンに食らいつく強さを見せていたし、大雨の荒れた展開では強いタイプ。ピュアスプリンターではなくやや特殊な展開で強いがゆえに、2020年にカヴェンディッシュが加入してくることに対しても「得意分野が違うし、色々学べるし歓迎だよ」という旨のコメントを残している。
いずれにせよ、現状チームのエーススプリンターであるという状況は変わらず。そろそろ、ツール・ド・フランスで勝ちたい。ジロでもいいから。
その他注目選手
ペリョ・ビルバオ(スペイン、30歳)
脚質:オールラウンダー
ランダにとってはこの上なくありがたいであろうバスク人の有能なるアシスト。2018年のジロ・デ・イタリアではエースのミゲルアンヘル・ロペスの総合3位を支えつつ自らも総合6位。さらにその後続けて出場したクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも1勝するというタフネスさを見せた。
2019年のジロ・デ・イタリアではステージ2勝。第20ステージではフィニッシュでランダを差し切ってのステージ優勝で、そのときのランダは悔しかっただろうが、それほどの男が自らの右腕になることは実に喜ばしいことのはずだ。
もちろん、ビルバオ自身もエースを担いうる実力はある。とりあえず初年度はグランツールでアシスト業を担いつつ、チャンスをもらったステージレースでの総合上位を狙っていきたいところ。2019年のツアー・オブ・ジ・アルプスなんかはそのチャンスの一つだったが、イマイチうまくいかなかった。
イバン・ガルシア(スペイン、24歳)
脚質:パンチャー
ネオプロ時代の2017年ツアー・オブ・ジャパンで来日し、その年のブエルタで終盤でも逃げに乗る強さを発揮。2018年は登れるスプリンターとしての才能を発揮し、ずっと注目していた選手である。
2019年はついに、ツアー・オブ・カリフォルニアでプロ初勝利。その他、GPシクリスト・ド・モンレアル3位など、トップレースでも着実に存在感を示しつつある。
2020年はさらなる段階に突き進んでくれることを期待。個人的には、ブエルタ・ア・エスパーニャでのステージ優勝が十分に可能な選手だと思っている。ただ、2020年のブエルタには、より上位互換的なマチュー・ファンデルポールが出場するため、なかなか難しいか・・・?
アルフレッド・ライト(イギリス、21歳)
脚質:スプリンター
フレッド・ライトとも。2016年トラックジュニア欧州選手権チームパーシュートで優勝。2017年には同じくジュニア欧州選手権のオムニアムでも優勝。2019年はU23カテゴリのマディソンで欧州王者となった。エリート部門でも国内マディソン王者に。
ロードレースではトラックで鍛えたスピードで、2018年に国内選手権U23部門ロードレース2位、エリート部門ロードレース5位。そして2019年には、U23版ジロ・デ・イタリアとツール・ド・ラヴニールで1勝ずつを稼ぎ出した。
U23版ジロでは独走逃げ切り勝利、ラヴニールでは逃げに乗った小集団でのスプリントでの勝利と、トラックレーサーらしく独走力とスプリント力を合わせ持った勝ち方ができる選手。東京オリンピックテストイベントではクライマーたちに混じって11位と、登りへの適性も持ち合わせている。
2019年はCCCチームのトレーニーだったため、そのまま昇格するかと思っていたが、まさかのバーレーン入り。カヴェンディッシュの件と合わせ、エリングワースの繋がりか?
今後の大成が楽しみな選手だ。
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、35歳)
脚質:スプリンター
歴史に名を残す伝説的なスプリンター。ツール・ド・フランス通算30勝は「人喰い」エディ・メルクスの34勝に次ぐ大記録。2009年~2012年の4年連続シャンゼリゼ獲得も不朽の戦果である。
そんな彼も、寄る年波には勝てないのか、同じく一時代を築いたマルセル・キッテルやアンドレ・グライペルらと共に、その存在感を失っていく。
もちろん、これで終わるつもりはない。2020年、彼は恩師ロッド・エリングワースに導かれ、新チームへ。また、トラックレースにおいては、まだまだその力が十分なものであることを示していった。
まだ、終わらない。英雄は再びこの地で輝くことができるか。
総評
チームは大きな変革の時を迎え、どのような結果になるかは未知数。
ジロ・デ・イタリア総合3位経験をもつミケル・ランダや、ときにクリス・フルーム以上の実力を発揮するワウト・プールスのもと、グランツールでの「可能性」はもつ。また、アルデンヌ(系)クラシックにおいても、リエージュ~バストーニュ~リエージュ覇者プールスやクラシカ・サンセバスティアンで可能性をもつランダで狙うことはできなくはない。アルデンヌはディラン・トゥーンスも得意分野である。
ただ、いずれにせよどの項目も中途半端さが否めない。実際に2020年シーズンを走る中で、現時点では見いだせていない可能性をいかに表現していけるか。
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