読み:ボーラ・ハンスグローエ
国籍:ドイツ
略号:BOH
創設年:2010年
GM:ラルフ・デンク(ドイツ)
使用機材:スペシャライズド(アメリカ)
2019年UCIチームランキング:2位
(以下記事における年齢はすべて2020年12月31日時点のものとなります)
参考
BORA - hansgrohe 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
BORA - hansgrohe 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
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2020年ロースター
※2019年獲得UCIポイント順。
2017年にチームが発足したとき、このチームは「チーム・サガン」であった。1人でチームの勝利数もUCIポイントも3分の1近く稼いだり、ほぼプロコンチネンタルチームのようだったボーラを十分にトップチームに渡り合えるような状況に仕立て上げたのは彼のおかげだった。
そこから3年。すでにして、このチームはサガンによるチームではなく、暦とした一つの伝統的チームとなったようだ。プロコンチネンタル時代からの叩き上げや、チームの国籍であるドイツの有力選手たちもしっかりと抱え、サガンがいなくても存在感を示せるチームとなった。2019年はパスカル・アッカーマン、エマヌエル・ブッフマン、マキシミリアン・シャフマンなど。
2020年はサム・ベネットが去る。サガンも2019年同様にうまくいかない可能性もある。それでも、このチームは強くあり続けることだろう。
注目選手
ペテル・サガン(スロバキア、30歳)
脚質:スプリンター
2019年の主な戦績
- ツール・ド・フランス区間1勝、ポイント賞
- グランプリ・シクリスト・ド・ケベック2位
- ミラノ〜サンレモ4位
- 世界選手権ロードレース5位
- パリ〜ルーベ5位
- サイクラシックス・ハンブルク6位
- 世界ランキング10位
2019年のサガンは例年に比べ決して調子は良くなかった。年初のツアー・ダウンアンダーで1勝して以来、5月のツアー・オブ・カリフォルニアまで勝利がなかった。こんなに勝てないのは2015年以来のことであった。
それでもカリフォルニア、スイスと彼が得意とするレースできっちり勝利を挙げ、ツール・ド・フランスでも「ハルクポーズ」で勝利をもぎとった彼は、結果として、いつものサガンではあったように感じる。
一時はレースへのモチベーションを失い、早期の引退やマウンテンバイクへの「再転向」なども噂されたが、ツール・ド・スイスの個人TTでの「ホットシート乱入」やシャンゼリゼでの「イネオス記念写真写り込み」など、いつもの彼のひょうきんな姿にホッとしたところもある。
チームとしては、彼に依存しなくても十分に勝利数もUCIポイントも重ねられるという状況にもなってきて、サガン自身も必要以上にプレッシャーを感じることはなくなったかもしれない。
そんな中、ツアー・オブ・カリフォルニアの中断という出来事があったがゆえかもしれないが、これまでにない試みに彼は挑むこととなる。すなわち、ジロ・デ・イタリアへの挑戦である。
これはすなわち、カリフォルニアと、そしてツール・ド・フランスへもそのまま出る以上、ツール・ド・スイスという、彼の得意とする2つのレースへの欠場を意味する。
サガン自身も大きな変化を経験することになるであろう2020年。彼がまだまだ、この世界に大きな衝撃をもたらしてくれる男であることを信じている。
パスカル・アッカーマン(ドイツ、26歳)
脚質:スプリンター
2019年の主な戦績
- エシュボルン=フランクフルト優勝
- グランプリ・ド・フルミー優勝
- ブレーデネ・コクサイデ・クラシック優勝
- クラシカ・ド・アルメリア優勝
- ジロ・デ・イタリア区間2勝&ポイント賞
- 世界ランキング7位
今やドイツ最強のスプリンターという地位が揺るぎないものとなった。2019年のジロではヴィヴィアーニやユアンがリタイアした後とはいえ、ポイント賞を獲得。年間の勝利数でも、サム・ベネットと並ぶ13勝で、チームトップを誇る。純粋なスプリント力ではサガンを上回ると言っても良さそうだ。
ただし、混戦や起伏ステージでの安定感はサガンやベネットに劣る。サイクラシックス・ハンブルクなどはまさにその展開だろう(代わりにサガンがエースとなって勝負に絡むことはできた)。
2020年は「ツールはスプリンター向きではないから」というデンクGMの思惑からツールデビューはまだ。ジロ・デ・イタリアは走るがすでにGMはサガンのマリア・チクラミーノ狙いを名言。となれば、彼が本気でエースとして走ることが完全に許されるのはブエルタだけか。課題の起伏体制をこの1年でどれだけつけられるかが、その成功の大きな鍵となるだろう。
エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、28歳)
脚質:オールラウンダー
2019年の主な戦績
- ツール・ド・フランス総合4位
- イツリア・バスクカントリー総合3位
- クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合3位
- UAEツアー総合4位
- ツール・ド・ロマンディ総合7位
- イル・ロンバルディア8位
- 世界ランキング16位
2015年、プロコンチネンタルチーム時代のボーラから在籍しており、同年のツール・ド・フランスに出場。ラファウ・マイカの優勝したトゥールマレー越えのステージで3位に入り、注目していた。
2017年にクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで新人賞を獲得したとき、いよいよか!と昂ぶったものの、同年のツールは総合15位、翌年はブエルタにのみ出場し、そこでも総合12位と、悪くはないが「そこまでか」という思いを感じてはいた。同年代のサイモン・イェーツやジュリアン・アラフィリップのようなスターには、なれないのだろうな、と。
しかし、2019年。まさかの覚醒となった。イツリア・バスクカントリー総合3位。一時は総合リーダージャージを手繰り寄せ、最後はまさかのモト先導ミスで表彰台を失いかけたが、救済されて3位に落ち着いた。執念の追走が掴み取った3位だった。
そしてそれだけでは終わらなかった。クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは、誰よりも安定した走りを見せて総合3位。そして、ツール・ド・フランス本戦においても、第14ステージ、運命のトゥールマレー山頂フィニッシュにおいて、ジョージ・ベネットによる強力な牽引で誰も身動きが取れない中、残り1㎞で攻撃の口火を切ったのが、このブッフマンだった。
その攻撃で、ゲラント・トーマスが千切れる。このステージでは4位に終わるが、彼が、今や紛れもなく世界トップクラスのクライマーになったことを証明した瞬間だった。
こうなれば、次の目的は明確。すなわち、グランツール制覇。その前に、いくつかの小さなステージレースでの総合優勝を量産していきたい。
2020年は、果たしてどんな進化した姿を見せてくれるのか。
その他注目選手
マクシミリアン・シャフマン(ドイツ、26歳)
脚質:オールラウンダー
今年飛躍した選手の1人。昨年まではクイックステップに所属し、フレーシュ・ワロンヌでの勇気ある逃げが印象的だった。
今年も独走力を活かした逃げや牽引で目立ってくれるのかと思いきや、イツリア・バスクカントリーでは登りスプリントでの連勝と、その後の山岳ステージで見せた確かな登坂力に驚愕した。
そして続くアルデンヌ3連戦では、アムステル5位、フレーシュ・ワロンヌ5位、リエージュ3位と、フールサンに劣らない好成績。
そのまま、イタリアの秋のクラシックにも注目していたのだが、ツール・ド・フランスの個人TTでまさかの落車。長期離脱を余儀なくされ、秋のクラシックには何とか間に合わせるも本調子を出せぬまま2019シーズンを終えてしまった。
2020年は再度アルデンヌ・クラシックと、そしてグランツールと秋のクラシックへのリベンジを期待する。
フェリックス・グロスシャルトナー(オーストリア、27歳)
脚質:クライマー
オーストリア若手期待の星の1人。2019年はツアー・オブ・ターキーで総合優勝。さらには、ブエルタ・ア・エスパーニャ終盤で、ラファウ・マイカの総合6位を支える強力なアシストをしていた姿が実に印象的だった。
これからまだまだ伸びる可能性のある男。総合エースの頼れるアシストとして、また自らの成績のため、さらなる活躍を楽しみにしている。
レナード・ケムナ(ドイツ、24歳)
脚質:オールラウンダー
今年のツール・ド・スイス、そしてツール・ド・フランスで、積極的な逃げを見せて山岳で印象的な姿を残し続けていた男。彼もまた、ドイツの有望な若手として、育成の実績をもつこのボーラへ。
TT能力においては昔から定評のある選手で、ジュニア時代には欧州選手権と世界選手権で金メダル、U23時代には欧州選手権で金、世界選手権では銅と銀、そして2017年には世界選手権チームタイムトライアルで、優勝したサンウェブのメンバーの1人でもあった。
逃げが得意なのもその能力のゆえかもしれないが、今後はそれを総合エースのための牽引にも使っていけることを期待する。
マルティン・ラース(エストニア、26歳)
脚質:スプリンター
元チーム・イルミネート所属で、2018年のツアー・オブ・ジャパン東京ステージでも優勝している。
2019年はコロンビア2.1でホッジに次ぐ2位に入っていたり、ツール・ド・コリアで3勝していたりする。なお、過去にツール・ド・コリアで3勝している選手にカレブ・ユアンがいる。
育成に定評があり、サム・ベネットやブッフマンなど生え抜きを世界クラスの選手に仕立て上げているボーラであれば、この男ももしかしたら数年後には新たなエース担っている可能性も。
まずは2020年の動向に注目していきたい。
総評
エマヌエル・ブッフマンは2020年もツールをメインターゲットに据えることを発表。コンラッド、シャフマン、グロスシャルトナーなど、このチームのトップクライマーたちが皆彼のアシストに回り全力で総合を狙える体制を作れれば、表彰台も決して夢ではないだろう。
北のクラシックはもちろんサガン、アルデンヌはシャフマンの活躍に注目したい(フォルモロが抜けたのは痛いが・・・)。ステージ優勝は当然、アッカーマンのスプリント。各分野で非常にレベルの高い要員を揃えていて、さすが2019年UCIランキング2位のチーム。ただ、絶対エースの代替的な存在が少ないのがやや、不安要素か?
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