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【全ステージレビュー】イツリア・バスクカントリー2019

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落車の相次いだ、波乱のバスク1週間レース。

ティレーノ〜アドリアティコ及びボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ総合2位のアダム・イェーツ、昨年総合2位のミケル・ランダ、そして昨年ツール覇者ゲラント・トーマスなど、注目されていた総合系ライダーが軒並み落車や勝負所のメカトラによりリタイアしたり振るわない結果に。

一方で実力はありながらもなかなか表彰台に乗れずにいたボーラの「叩き上げ組」がまさかの健闘。最後はオールスター軍団で臨んだアスタナ・プロチームとの間の激しい逆転劇が繰り広げられるなど、白熱の展開を迎えることとなった。

 

単なるエスケープスペシャリストからのさらなる進化を遂げるシャフマン、そしてもはや無敵状態のアラフィリップなど、見所盛沢山だったバスク1周レースを振り返る。

 

↓各ステージの詳細はこちら↓

www.ringsride.work

 

 

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第1ステージ スマラガ~スマラガ 11.3km(ITT)

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大会史上初、開幕ステージに用意された個人TT。11.3kmと短めではあるものの、後半に登坂距離2km、平均勾配9%、最大21%というとんでもない激坂が用意され、TTスペシャリストたちを軒並み苦しめた。

そんな中、誰もが驚きのトップタイムを記録したのが、元クイックステップ、今年ボーラに移籍したパワーエスケーパー、シャフマンであった。

昨年もフレッシュ・ワロンヌにてギリギリまで逃げ続け、エースのアラフィリップの勝利を導いたこの男が、激坂含みのこのステージで、TT初優勝を果たした。

今年のアルデンヌ・クラシックに向けて、幸先の良い走りとなった。

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一方で、優勝候補と目されていた選手たちの不調が軒並み気になるところ。たとえばアラフィリップ。たとえばヨン・イサギレ。

その原因は、彼ら自身の足というよりは、「登りの麓にてTTバイクに交換したかどうか」がポイントになったように思える。

さすがに今日の登りは、TTバイクで十分に登れる類のものではなかった。また、そこからの下りもクネクネと曲がるテクニカルなレイアウトだったため、車体を倒し切れないTTバイクでは逆にスピードが上がり切らない様子でもあった。雨が降って路面を濡らしたこともその傾向を強くしたと思う。

アラフィリップもヨンもTTバイクで走り抜けることを選択し、そのことが大きなタイムロスに繋がったように思える。逆にアダムは交換しないことを選択した割には、健闘した方だった。

一方、バイク交換により好成績を収めたのがトーマス、クウィアトコウスキー、そしてマルティネスである。優勝者シャフマンも交換組である。

とくにチーム・スカイは、前半を走ったローザやデラクルスによって交換すべきかどうかを判断していたように思える。このチーム全体でロジカルに勝利を狙って行くスタイルは、イネオスに名前を変えたあともこのチームのマインドであり続けるだろう。

 

 

第2ステージ スマラガ〜ゴライス 149.5㎞(丘陵)

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激しいアップダウンと、総距離5㎞に及ぶ未舗装路が用意されたミニ・ストラーデビアンケといった感じのステージ。ラストは8%の急坂登りフィニッシュで、登れるスプリンターやパンチャー向きのレイアウトだ。

 

前日5位で好発進したアダム・イェーツは、この日、残り16㎞地点でパンクに見舞われる。タイミングの悪いことに、登りの直前だった。

チームメートに助けられながら追走を仕掛けるアダムは、しかしペースアップしたメイン集団からは少しずつ引き離され、最終的には1分12秒を失い、総合優勝争いからは実質的な退場を迫られた。

 

ステージ優勝をめぐる争いは、まずは総合リーダーのシャフマンが早駆け。しかしこれを抜き去って先頭に立ったのが、今年プロ2年目の元U23リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ覇者ビョルグ・ランブレヒト。

他のライバルたちを一気に突き放し強力な加速を見せるランブレヒトだったが、ベストなタイミングで発射したアラフィリップが残り100mでこれをキャッチ。そのまま今季8勝目を記録した。

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まるでバルベルデのような走りだった。こういった地形を得意とするクウィアトコウスキーは3位でゴールし、アラフィリップはクウィアトコウスキーに対して5秒のリードを手に入れた。

総合リーダーのシャフマンも食らいつき6位でゴール。アラフィリップから5秒のリードで総合リーダージャージを守り切っている。

 

 

第3ステージ サリグレン〜エスティバリ 191.4㎞(丘陵)

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衝撃的な落車だった。

巻き込まれたのは前日勝者のジュリアン・アラフィリップや総合3位ミカル・クウィアトコウスキー、昨年ツール覇者のゲラント・トーマスや、昨年ブエルタ総合2位のエンリク・マスなど・・・前日のアダム・イェーツのパンクに続き、総合優勝候補たちが次々と脱落するカオスな展開となった。

そうして小さくなった先頭集団。この日の優勝候補は間違いなくアラフィリップやクウィアトコウスキーだっただけに、誰が勝つか判然としない状況だった。

そんな中、抜け出したのは、「総合リーダージャージマジック」に包まれたシャフマンだった。

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山岳エスケープスペシャリストにして、パンチャーとしても有望であることを示した。何せ、名パンチャーのウリッシや今年も絶好調とルツェンコを下したのだ。やはり今年のアルデンヌ・クラシックが楽しみすぎる。

 

また、そんな中、4位に入ったネオプロでU23世界王者のマルク・ヒルシにも大注目。元サンウェブのディベロップメントチーム所属で今年から昇格。

E3ビンクバンクツアーでは最初から逃げていた中で、追いついてきたボブ・ユンゲルスにしっかりと食らいついていくタフな走りを見せていた。最終成績も10位と眼を見張るものがあった。

まだまだその脚質は定まらないところではあるが、将来的には春のクラシックで活躍するファンアーフェルマートやジルベールのような名ルーラー&パンチャーとなるかもしれない。

 

 

第4ステージ ビトリア=ガステイス〜アリゴリアガ 164.1㎞(丘陵)

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前日落車したアラフィリップとクウィアトコウスキーは大事をとってリタイア。そして生憎の雨模様となったこの日も、総合優勝候補を巻き込んだ落車が起きてしまう。

終盤の3級山岳サラタモの登りの直前で、昨年ブエルタ総合2位のエンリク・マスと、今年バレンシアナ総合3位・アンダルシア総合4位で今大会も総合7位をキープしていたビルバオが、大きな落車に巻き込まれてしまった。

 

しかしすでにゴールまで残り6km。第2ステージの勝負所のパンクで同じく総合優勝争いから脱落してしまったアダム・イェーツが、これを待つ義理はなかった。

ミッチェルトン・スコットのアシストたちに牽かれ、残り4km(山頂まで2km)の地点でアタックを仕掛けた彼に対し、ついてこられたのはポガチャルとフルサング、そして総合リーダーのシャフマンだけだった。

 

昨年ラヴニール覇者のポガチャルが早駆け。しかし、パンチャー寄りのシャフマンの加速の前に、これは簡単に飲み込まれてしまった。

今大会3勝目。ハットトリックの達成。シャフマンは完全なる覚醒を遂げた。

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しかし2位につけたポガチャルのアダムに対する反応と、そして最後のスプリントは素晴らしかった。やや下りでぎこちない姿が見られたものの、アルガルヴェ制覇に続くこの快挙には目を瞠るものがある。

今後もUAEのエース格として活躍してくれるのは間違いなさそうだ。

 

 

第5ステージ アリゴリアガ~アラテ 149.8km(山岳)

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バスク1周おなじみの、1級山岳ウサルツァにフィニッシュするクイーンステージ。

最後のウサルツァだけでなく、全部で7つの山岳ポイントとカテゴリのついていない登りを含んだアップダウンの激しい151kmのコースである。獲得標高は3000mを超える。

 

レースの序盤はドゥクーニンク・クイックステップが集団を支配。アラフィリップがすでにリタイアし、マスも前日の落車で総合優勝争いから脱落しているこのチームにとって、もはや狙うべきはステージ優勝のみとなっていた。

そのためにゴールまで残り70kmを残して早くも逃げを吸収。3級山岳アリビニエタの登りの途中で集団先頭からマスが発車した。

 

しかし、あくまでも総合リーダーを抱えるボーラに対して攻撃を仕掛けたいアスタナが、ルイスレオン・サンチェスの牽引で一気にペースアップ。山頂でマスは引き戻されてしまう。

一度遅れかけていた総合リーダーのシャフマンも、山頂で集団に復帰。再び勝負は振り出しに戻った。

 

下りも終わりかけていたところで、サンチェスが再びアタック。今度は集団から抜け出す形に。

ここにしっかりとボーラ・ハンスグローエのグレゴール・ミュールベルガーが喰らいつく。2人は一気にメイン集団とのタイム差を1分以上にまで開いていく。

メイン集団からは、グルパマFDJの総合18位ヴァランタン・マデュアスのアタックをきっかけに8名が抜け出す。この中にもしっかりと、ボーラがコンラッドを、アスタナがゴルカ・イサギレを入れていた。

この2番手集団はFDJのマデュアスとルディ・モラール、そしてマスが積極的に牽引するが、先頭にチームメートを・後方にもエースを残しているコンラッドとゴルカがローテーションに加わらないことでペースが上がり切らず、1級山岳イズアの前で集団に吸収される。

 

ゴールまでの残り40km。この日、最初の山場となる1級山岳イズアの登坂が目の前に迫った。

登坂距離は3kmと短いが、平均勾配は12%。最大勾配は24%に達するという、かなりの難易度を誇る山である。

ここで先頭で逃げていたサンチェスがミュールベルガーを切り離して独走を開始する。この登りの山頂には彼の弟でサッカー選手のペドロルイス・サンチェスが待ち構えていたらしく、言ってしまえばこれは「母ちゃんアタック」みたいなものだったのかもしれない。

 

メイン集団ではゴルカ・イサギレが牽引。

先頭にチームメートが逃げている中でこれはイレギュラーのようにも思えるが、総合リーダーのシャフマンを落とすためには、ここでの強力な牽引が必要不可欠となるのだ。

実際、このペースアップで、登り始めてすぐ、シャフマンが遅れ始める。

シャフマン、絶体絶命か? 

 

 

いや、彼は冷静に、遅れ始めてからも自らのペースを守り、少しずつ少しずつ確実に登坂を続けていた。

急勾配のたびにシャフマンは遅れるが、その後の緩斜面・平坦区間で着実に前の集団に復帰する走り。

彼は確実に、このバスクの1週間の間に進化を遂げつつあった。

 

山頂まで残り1kmでヨン・イサギレがアタック。

観客も多く狭くなっている道で先行し、先頭のサンチェスにブリッジすることも狙っていたのかもしれない。

確かにサンチェスとは合流できたものの、しかし集団から抜け出すことは叶わず。

そのまま下り区間に突入し、再びシャフマンは集団復帰を果たした。

 

 

いよいよこの日も終盤。残すは3級山岳と、最後の1級山岳ウサルツァのみ。

そんな、残り32kmの平坦路。

ここでボーラ・ハンスグローエのブッフマンがアタック。これに再びサンチェスと、そしてUAEチーム・エミレーツの過去2回総合2位を記録しているセルジオ・エナオとが喰らいついた。

重要な3チームが抜け出したことで、メイン集団では追うものがいなくなり、お見合い状態。ミッチェルトン・スコットがなんとかブリッジを仕掛けようとしたものの、これは総合リーダーのシャフマンが自ら抑え込む。

 

すなわち、シャフマンはこの日、自らが総合首位から滑り落ちることを予期していたのだと思われる。そのうえで自らを囮にし、先ほどはミュールベルガーやコンラッドを、そして今回はブッフマンを先に行かせた。

ボーラ・ハンスグローエのチームワークが光る瞬間だった。

 

アスタナにとっても、今回は決して良い手ではなかった。たしかにサンチェスは強いが、総合成績ではすでに7分以上遅れており、ステージ優勝以外の獲得はできない。それに対してボーラは、総合6位のブッフマンである。彼は前待ちでも囮でもなんでもない。本命の、最後まで逃げ切ることを目的にしたエースだ。

 

このことに気がついたアスタナはサンチェスを集団に戻す。やるべきはブッフマンについていってステージ優勝だけを手に入れることではない。そうではなく、集団をしっかりと牽引させ、ブッフマンに追い付くこと、そうでなくとも彼に稼がせるタイム差を最小限に抑えることだった。

 

ゴールまで25km。3級山岳への登坂が始まる。

先頭3名と集団とのタイム差は51秒。

集団に戻ったサンチェスは、最後の力を振り絞った牽引を始める。

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残り21.7km。ブッフマンが独走を開始。3級山岳山頂まで残り2km。

残り17.1km。ブッフマンと追走メイン集団とのタイム差が1分30秒に開く。

残り15.2km。サンチェスが牽引を終えて脱落。1級山岳イズアの山頂を獲ったうえでのこの大仕事。見事であった。集団の先頭牽引はゴルカ・イサギレに代わる。

 

残り7.5km。 最後の1級山岳ウサルツァの登りを前にして、集団とのタイム差は2分にまで広がった。

残り6km。集団もウサルツァに到達。ゴルカ・イサギレが脱落。フルサングが集団の先頭に。ミケル・ランダがアタックを仕掛け、ヨン・イサギレ、ダニエル・マルティネス、少し遅れてダニエル・マーティンが追随。

残り5.5km。ランダのアタックを吸収してカウンターでフルサングがアタック。

シャフマンがここで、遅れ始める。

 

残り5km。追走のフルサング、ランダ、ヨン、アダムはブッフマンから1分45秒遅れ。少し縮まる。シャフマンは2分5秒遅れでなんとか喰らいついている。 

残り3km。追走からはランダが少し遅れ、ブッフマンと追走とのタイム差は1分30秒まで縮まる。一方のシャフマンは2分15秒遅れに留めており、その遅れを最小限に抑えている。シャフマンはただ遅れているわけではなく、しっかりと自分のペースを維持しながら走れている。

 

そして、最後はウサルツァ山頂からの短い下りを経て、ブッフマンがワールドツアー初勝利を達成。合わせて、追走のヨン・イサギレに対して1分08秒をつけたことにより、総合リーダージャージを獲得した。

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ボーラはシャフマン、コンラッド、ミュールベルガー、ブッフマンとが互いの役割をしっかりと認識し、見事なコンビネーションを発揮しての勝利であった。

シャフマン自身もしっかりとペースを保ち、最後はゴール直前に追走集団に追い付く姿も見せつけた。このときコンラッドもこのグループの最後尾でシャフマンを待つ仕草を見せていた。

 

この意味で、ボーラ・ハンスグローエはこの日、大きな収穫を手に入れることができた。

しかし一方で、アスタナもまた冷静に追走体制を敷き、そのタイムロスを最小限に抑えたこともまた事実だった。

アスタナは間違いなく最強軍団で挑んでいた今回のバスク。そのチーム力はまだ余力を残していそうで、翌日の逆転に向けた準備を着実に進めているようでもあった。

 

かくして、バスク1周は白熱の最終ステージを迎える。

 

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第6ステージ エイバル~エイバル 118.2km(山岳)

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イツリア・バスクカントリー2019 最終決戦の舞台は、2つの1級山岳を含む6つのカテゴリー山岳が詰め込まれた短距離山岳ステージ。獲得標高は2700mに達する。

 

ここまで目立った活躍のできてなかったバウケ・モレマや、前待ちを狙ったカルロス・ベローナやディエゴ・ウリッシなど18名が逃げ集団を形成するも、序盤から厳しい展開に持ち込みたいアスタナが集団で猛プッシュを仕掛け、ゴールまで65㎞以上残した1級山岳アズルキで早くも逃げが全て捕まえられてしまう。

山岳賞ジャージのアレッサンドロ・デマルキも懸命にポイントを収集するも、十分に獲得しきれないままに集団に引き戻されることに。

 

その後、先頭集団をミッチェルトン・スコットのダミアン・ホーゾンが牽引すると、集団は一気に絞り込まれ、ボーラは総合リーダーのブッフマンただ1人に。

これを見てまずはフルサングがアタック。

ブッフマンが反応できないのを見るや、続いてヨン・イサギレが抜け出してフルサングと合流した。

 

もはやブッフマンになすすべはなかった。

アダム・イェーツ、マーティン、ポガチャルも彼を捨ててフルサングとヨンにブリッジ。

ブッフマンはたった1人で、メイン集団を牽引し続けるしかなくなる。

 

ブッフマンは無理に1人で先頭を追いかけることなく、冷静に後続のチームメートたちを待ち、合流を成功させる。

しかし先頭5名とのタイム差を縮めることはできず、総合リーダーの座は彼の手からこぼれ落ちることになる。

 

 

それでも、ブッフマンは諦めていなかった。

シャフマンが、ついでコンラッドが、その力を振り絞ってブッフマンを助け、やがて再び彼は一人になるが、懸命にペダルを回し続け、最大で1分50秒近くにまで広がったタイム差を、最終的には1分24秒にまで縮め、最後の登りでは「もしかしたら・・・」という思いすら感じさせる巻き返しを見せた。

 

しかし、結局は31秒届かず。

それでも、ブッフマンと、彼を全力で支え続けたボーラのチームワークは間違いのないものだった。

 

同じメンバーで挑む可能性のあるツールでは、再びその底力を見せて欲しい。

とくにブッフマン、コンラッド、ミュールベルガーはネットアップ時代からの叩き上げ。そんな彼らが世界一の大舞台で輝く瞬間をぜひ、見てみたい。

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そして、ブッフマンから総合リーダーを奪い取ることが決まった先頭集団では、白熱のステージ優勝争いが始まった。

ゴール直前の登りで、今期絶好調のアダム・イェーツが鋭い飛び出し。総合ではすでに遅れている彼のアタックには総合1位2位を争う関係のヨンとマーティンは反応せず。

最後はヨンたちに1秒差をつけてアダムが今期3勝目を記録した。

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第2ステージの悔しい落車を経験し、それさえなければ十分に総合優勝を狙える走りを見せていたアダム。

チームとして、何か持ち帰るものを、という執念で手に入れたこの最後の勝利。

今年のアダムは確かに強い。

彼もまた、ツールで輝くことが楽しみな選手だ。

 

 

総合成績

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最終日まで大きく総合順位の入れ替わる白熱した展開が続いたイツリア・バスクカントリー。

総合優勝の座は、地元バスク出身のヨン・イサギレが手に入れた。

バスク人によるバスク1周制覇は、2003年のイバン・マヨ以来の快挙であった。 

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ヨンは今年、ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ総合優勝、ブエルタ・ア・アンダルシア総合2位に続く絶好調のシーズンを過ごしている。

まるで昨年・一昨年のバルベルデを見ているような気分である。

2017年にモビスターを飛び出してツールでのエース待遇で移籍したバーレーン・メリダでは正直、ふるわず。1年遅れて移籍してきた兄ゴルカの方が結果を出していたほどだった。

しかし、今回のアスタナ移籍により、フルサングやサンチェスといった他のエース候補とのコンビネーションや相乗効果もうまく働き、チームワークでの勝利を実現している。

バーレーンも良いチームではあったが、ヨンにとっては、このアスタナの方が性に合っていたのかもしれない。

 

今回の勝利もチームメートの支援が大きかった。

第5ステージ。サンチェスが前に出ている間、集団先頭を牽き続け、シャフマンにダメージを与え続けてくれた兄ゴルカ。そして先頭から戻ってきてからも10㎞近く前を牽き続けブッフマンとのタイム差を最小限に抑えてくれたサンチェス。

そして第5ステージでも第6ステージでも、常に傍らにいてくれた頼れるもう1人のエース、フルサング。

アスタナは類稀なるチームワークで、ドゥクーニンクと並ぶ今期22勝目(4/13現在)を記録した。クラシックとステージ勝利中心のドゥクーニンクに対し、アスタナはステージレース総合優勝の数が非常に多い。

 

今年のグランツールでもこの強さを発揮してくれるか?

かつて最強チームの一角であったアスタナの復活が楽しみだ。 

 

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