Class:ワールドツアー
Country:スペイン
Region:バスク地方
First edition:1924年
Editions:59回
Date:4/8(月)~4/13(土)
スペインでも特に自転車の熱いバスク地方で行われる1週間のステージレース。
日本語では「バスク1周」とも呼ばれる。かつてはスペイン語の「ブエルタ・アル・パイスバスコ」が正式名称として扱われていたが、昨年からバスク語と英語を混ぜた現在のレース名を使用している。
純粋なバスク語だけでは「エウスカル・エリコ・イツリア」となる。
厳しい山岳地帯が中心となり、ピュアスプリンターに出番がないのはカタルーニャと一緒。ただしカタルーニャと大きく違うのが、個人TTの存在。昨年はTTに強いログリッチェが大差をつけて総合優勝したほか、過去にもたとえば総合首位についていたセルジオ・エナオが、最終日のTTで総合優勝を逃すということも2度繰り返されている。
今年は例年より短めになったとはいえ、この個人TTが大きな影響を及ぼすことは間違いない。また、山頂フィニッシュも1回のみで、ボーナスタイムなどが重要な僅差での戦いが演出されることだろう。
今回は全6ステージのコースを詳細に解説していく。
注目選手プレビュウはこちら
- 第1ステージ スマラガ~スマラガ 11.3km(ITT)
- 第2ステージ スマラガ〜ゴライス 149.5㎞(丘陵)
- 第3ステージ サリグレン〜エスティバリ 191.4㎞(丘陵)
- 第4ステージ ビトリア=ガステイス〜アリゴリアガ 164.1㎞(丘陵)
- 第5ステージ アリゴリアガ~アラテ 149.8km(山岳)
- 第6ステージ エイバル~エイバル 118.2km(山岳)
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第1ステージ スマラガ~スマラガ 11.3km(ITT)
個人TTが必ず含まれていることがバスクの特徴の1つだったが、今年は大会史上初、開幕ステージのTTとなる。しかも例年より少し短い。
それでいてバスクのTTならではの登りも当然含まれる。登坂距離は2.3km、平均勾配は9.7%、しかもラスト800mの勾配は16%に達し、山頂の100m手前には最大勾配の21%区間が待ち受ける。短さの故にそのインパクトも相対的に大きい。山頂からの下りもクネクネとしていて非常にテクニカルだ。
実力で言えばローハン・デニスだが、今年は新チームに移籍してきて今のところ万全とは言えない状況。国内選手権でも連覇を逃し、ティレーノ~アドリアティコの個人TTでも沈んでしまった。
その中で、短い距離の激坂にも強いパンチャータイプで、ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ第1ステージの個人TT(10.3㎞)4位のディラン・トゥーンスなども好成績を期待できそう。同TTでは2位にヨン・イサギレ、3位にトニー・マルティンなども入っており、そのほかペリョ・ビルバオ、アレハンドロ・バルベルデ、ヤコブ・フルサングなどにも注目すべきだろう。
第2ステージ スマラガ〜ゴライス 149.5㎞(丘陵)
スタート直後から無等級の登りを登って、そこから立て続けの山岳ポイント。その後もひたすら登っては下ってのローリングコースである。
フィニッシュも平坦ではない。ラスト600mの平均勾配は8.1%。スプリンターはもちろん、「登れるスプリンター」でも勝つには厳しいかもしれない。
昨年の第1・第2ステージは「髭を生やした」ジュリアン・アラフィリップが連勝しており、以後現在まで続く覚醒モードの発端となったが、今年も彼が最も勝機のあるステージだと思われる。
それ以外にはアレハンドロ・バルベルデ、ダン・マーティン、ディラン・トゥーンス、ヤコブ・フルサング、アダム・イェーツ、マイケル・ウッズなどが気になる選手で、ジェイ・マッカーシーがこなせるかは微妙なライン。また今年のダウンアンダーで覚醒し、カタルーニャのスプリントでも上位に入っていたパトリック・ベヴィンも十分に可能性のある選手だろう。
なおゴール前4.8㎞には未舗装路区間が存在するようだが、勝敗に大きな影響はないだろう。
第3ステージ サリグレン〜エスティバリ 191.4㎞(丘陵)
今大会最長コース。標高1000mを超える登りも含まれるが、最後は「比較的」平坦。ラスト2㎞の平均勾配は4%だ。
前日よりかはスプリンター寄りの選手にもチャンスがあるとはいえ、やはり最有力候補はジュリアン・アラフィリップ。昨年の第3ステージの集団スプリントを制したジェイ・マッカーシーは前日より可能性を持てるだろう。パトリック・ベヴィン、ミカル・クウィアトコウスキーもまた、優勝候補と言えそう。
スタート直後の登りというレイアウトは逃げスペシャリストたちにとっては魅力的な装置である。後半にやや平坦区間が多いため微妙なところだが、場合によっては逃げ切り勝利もありうる日と言えそうだ。
第4ステージ ビトリア=ガステイス〜アリゴリアガ 164.1㎞(丘陵)
スタート地点のビトリア=ガステイスはバスク州の州都であり、この地域の慣習に従い、カスティーリャ語のビトリアとバスク語のガステイスが併記されている。
この街はバスク1周のお馴染みのスタート地点となっているが、いずれの年でもフィニッシュはダウンヒルとなっており、それは今年も同様である。2016年(レサカ)はスティーブ・カミングス、2017年(サンセバスチャン)はダビ・デラクルス、2018年(エイバル)はオマール・フライレがいずれも逃げ切り勝利を果たしている。
よって、今年も逃げ切りが決まる可能性は十分にあるだろう。その際にポイントとなるのが、ゴール前6㎞の地点に置かれた最後の3級山岳「サラタモ」。
登りの最初の1㎞は2.3%の緩斜面、続く1㎞は6.4%。そして800mの下りを経て、500m平均10%の厳しい登り、そして最後の500mは4.6%となっている。
少数の逃げ集団の中で、この登りを利用して抜け出そうとする選手はとくに10%を区間を利用して攻撃を仕掛けることだろう。
そういうのが得意なタイプとしては過去優勝者のオマール・フライレ、ダビ・デラクルスのほか、過去ブエルタ逃げ切り優勝経験のあるサンデル・アルメ、アレッサンドロ・デマルキ、ベンジャミン・キングあたりに期待したい。
第5ステージ アリゴリアガ~アラテ 149.8km(山岳)
バスク恒例のアラテ=ウサルツァに至るステージ。
過去の優勝者はサミュエル・サンチェス(2010,2011)、ホアキン・ロドリゲス(2012,2015)、ナイロ・キンタナ(2013)、ワウト・プールス(2014)、ディエゴ・ローザ(2016)、アレハンドロ・バルベルデ(2017)、そして昨年はエンリク・マスと、錚々たる顔ぶれ。今回も、最も強いクライマーが順当に勝利を飾りそうだ。
ウサルツァに至る道のりも険しい。3級山岳が4つと1級山岳。それが150㎞の中に詰め込まれている。正真正銘のクイーンステージだ。
昨年は1級イツアからモビスター勢(ランダ、キンタナ)による総合リーダーのログリッチェに対する攻撃が活発化し、彼を丸裸にすることに成功した。しかしゴールまで25㎞地点だった昨年と違い、今年は途中に3級山岳を1つ挟んだ残り50㎞地点。攻撃を仕掛けるには遠すぎるか?
最後の1級ウサルツァのプロフィールは登坂距離5㎞、平均勾配8.8%とかなり本格的。ただし山頂フィニッシュではなく、ウサルツァの頂上から2㎞ほどアップダウンが続き、最後の600mはダウンヒルとなる。
昨年は登り口の急勾配区間で逃げに乗っていたマスがアタックし独走を開始。
メイン集団ではゴールまで残り4㎞でランダとキンタナがログリッチェを突き放しマスを追いかけるが、18秒届かずにマスの逃げ切り勝利が決まった。この走りでマスは総合6位及び新人賞を獲得し、その年のブエルタ総合2位への大いなる伏線となった。
今年、マスは最初から総合を狙うことになるだろう。
また、ランダ、キンタナも昨年同様にダブルエースで参戦。ログリッチェが今年はいないため、地元ランダにとっては大きなチャンスとなるはずだ。
一方、昨年は出場しておらず、かつ今年調子の良い選手としてのアダム・イェーツの存在は油断ならないはずだ。
第6ステージ エイバル~エイバル 118.2km(山岳)
118.2㎞の短い距離に、1級山岳と2級山岳2つを含んだ6つの登り。ジェットコースターのような短距離山岳決戦だ。
総合大逆転を狙うライダーたちは、残り40㎞あたりから登り始める1級山岳カラカテで勝負を仕掛けてくるだろう。登坂距離5.2㎞の平均勾配は8.5%。しかもラスト2㎞は2桁の勾配が続くという、破壊力抜群の登りだ。
しかしそれでもまだゴールまでは遠い。残り20㎞を切ってからの2級山岳アセンシオも重要なポイントだ。登坂距離7.3㎞、平均勾配は5.1%。ただしラスト1㎞地点には10%の区間も。この頂上を超えたあとも、カテゴリのつかない小さな登りが連続し、最後はダウンヒルフィニッシュとなる。
最終日だけに、なんとか結果を残したいライダーたちによる大量逃げが発生し、総合逆転を狙うチームはそこに「前待ち」要員を入れてくるだろう。そうしてうまくここに食らいついた逆転狙いの選手と、これを全力で追いかける総合リーダーチームとの熾烈な追走劇の結果、逃げ切りが決まるか、はたまた捕まえたメイン集団の中から抜け出した選手が勝つか。
少なくとも言えるのは、逃げ切りだとしても、確かな実力がなければ勝利は得られないステージだ、ということだ。
総合をめぐる争いも、最後の瞬間までどうなるか、わからない。
次回は注目選手をプレビュー。