読み:ボーラ・ハンスグローエ
国籍:ドイツ
略号:BOH
創設年:2010年
GM:ラルフ・デンク(ドイツ)
使用機材:Specialized(アメリカ)
2018年UCIチームランキング:3位
(以下記事における年齢はすべて2019年12月31日時点のものとなります)
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2019年ロースター
サガン、ベネットの2強体制にアッカーマンが入り込む形に。マッカーシー、ゼーリッヒ、ブルグハート、オス、ボドナールなど、アシストをこなせるスプリンターやルーラーの層は厚く、そこにブエルタ勝利経験のあるドリュケール、2016年ティンコフ時代にサガンを支えたガットが加入したことで、さらなる揺るぎなさを誇ることだろう。ポテンシャルで言えば、クイックステップを喰らいかねない。
その一方、クライマー陣営は2018年、1勝もできず。マイカも明らかに不調だった。
しかしこの陣営に全く芽がない、というわけではない。ジロ総合10位のフォルモロ、ブエルタ総合12位のブッフマンはともに短めのステージレースでもそれなりの成績を出している。また、グロスチャートナーは少しずつ実力を示しているようにも思えるし、新加入のシャフマンも総合系への転身の可能性がある。
2019年はスプリント、クラシックだけではないボーラの姿を見ることは十分にできそうだ。個人的にはお気に入りのケニッグの復活も密かに願う。
注目選手
ペテル・サガン(スロバキア、29歳)
脚質:スプリンター
- パリ~ルーベ 優勝
- ヘント~ウェヴェルヘム 優勝
- ツール・ド・フランス ポイント賞
- ツール・ド・スイス ポイント賞
- ツアー・ダウンアンダー ポイント賞
- スロバキア国内選手権ロードレース 優勝
最大のライバルであったキッテルやグライペルが沈んでいく中、相対的にスプリントでの勝率が上がってきているように感じる。ピュアスプリントではやはりガビリアやフルーネヴェーヘンには敵わないところもありそうだが、彼ら以外を相手にしたときには十分勝てる力量をもっており、また少しでも登りがあれば彼ら最強のピュアスプリンターには影も踏ませない爆発力を誇る。
ある意味、その安定性においては、これまでのサガンの中でも随一だったと感じる2018シーズンだった。
となれば、期待したいのは2019年のミラノ~サンレモ制覇。2017年のようにポッジョ・ディ・サンレモでの飛び出しも悪くはないが、さすがに2年連続でやられてしまうとプロトンも平気では許すことはないだろう。真っ向勝負のバンチスプリントはほぼ必須で、そのときに勝ってこそサガンである。
そして、今年は手放したアルカンシェルジャージも、2019年のヨークシャー世界選手権においては再び優勝候補に。史上初の4勝目は十分に期待できる。
もはやただ勝つだけでは物足りない。どんな驚きを私たちに見せてくれるか、2019年も楽しみである。
サム・ベネット(アイルランド、29歳)
脚質:スプリンター
- ジロ・デ・イタリア 区間3勝
- ツアー・オブ・ターキー 区間3勝
- ルント・ウム・ケルン 優勝
2017年の彼も間違いなく強かった。ジロで3位が3回、2位が1回。ツアー・オブ・ターキーでは4勝を稼ぎ出し、サガンと並ぶ勝利数への貢献役だった。
しかし、それ以上を期待できる存在になるとは思っていなかった。何しろ、彼はワールドツアーチームで活躍していたわけでもない。プロコンチネンタルチームとしてのボーラからの叩き上げ組の1人だったのだから。
それがまさか、2018年にジロで3勝。しかも、今年絶好調のヴィヴィアーニと真正面から張り合ったうえでのこの成績である。いくら、それ以外の一線級スプリンターの出場が乏しかったとはいえ、簡単に達成できるものではない。
2019年もジロでエースを任される可能性は高いだろう。とはいえ、チームとしては、ドイツ人で2018年に大ブレイクしたアッカーマンも大事にしたい気持ちはあるだろう。勝利数でいえば、サガン、ベネット以上に稼いでいるということもある。
ということで、2019年のベネットの最大のライバルはチーム内に存在する。ジロでのエースの座を確実なものとするためにも、シーズン序盤から勝利を重ねていきたいところである。
マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、25歳)
脚質:ルーラー
- ジロ・デ・イタリア 区間1勝
- ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ 区間1勝
- ドイツ・ツアー 区間1勝
クイックステップの育てた将来有望な若手の1人。2018年は、冷雨の降りしきるカタルーニャ、1級山岳山頂フィニッシュのジロで逃げ切り勝利。また、フレッシュ・ワロンヌでも、スタートから生まれた逃げに乗り、ユイの壁を含む残り200mまで逃げ続け、チームメートのアラフィリップの勝利のきっかけを作った。
そのタフさ、そして、山岳も激坂もこなせる走りは驚異的。スプリントでも、ドイツ・ツアーでモホリッチやデュムランを破るだけのものを持っている。オールラウンダーと呼んでも差し支えない程に、各方面への才能の萌芽を感じさせる。
ということで、2019年に彼がどんな選手になるかは想像がつかない。逃げスペシャリストとして大成するか、サガンやベネットの為の牽引役として機能するか、はたまた山岳総合エースとしての開花も考えられる。
いずれにせよ、クイックステップ同様、若手の躍進が多く見られるボーラでも、彼の才能は腐ることはないだろう。
その他注目選手
オスカル・ガット(イタリア、34歳)
脚質:ルーラー
2014年のキャノンデール、そして2016年のティンコフでサガンとチームメートになっている。キャノンデール時代にはアシストに徹してくれていたガットのためにリードアウトしたつもりが、結局写真判定でサガンが勝ってしまったというエピソードもあったりする。
2017年にサガンがボドナールやマッカーシーと共にボーラへ移籍した際、ガットはアスタナへの移籍を選んだ。それはもしかしたら、クラシックエースとしての望みが少しはあったのかもしれない。かつて、ドワースドール・フラーンデレンの勝利経験もある男だ。2017年のオンループ・ヘットニュースブラッドでは5位。十分に戦える素質はあった。
しかし、2018年のオンループでは、カペルミュールを経て残った3名のアスタナの選手の中で、自ら最も勝利から遠いアシストの役回りを引き受けた。実際、彼の動きがあったからこそ、ヴァルグレンの勝利はあったと言えるかもしれない。
そして2019年、彼は再びサガンと共に走る道を選んだ。もちろんそれはエースとしてではなく、彼を支えるアシストの1人として。
2019年、ボーラがクラシックで勝利した際には、きっとその陰にガットの姿があるはずだ。
エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、27歳)
脚質:クライマー
2015年のツール、トゥールマレー峠を越える難関山岳ステージ。勝ったのはマイカだったが、そのとき共に逃げに乗り、3位でフィニッシュしたのが、当時まだ22歳だったドイツのプロコンチネンタルチーム所属のブッフマンだった。
その才能の片鱗は確かに花開いた。2017年にはクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで新人賞を獲得。そして2018年には、マイカが不調にあえぐ中、バスク総合4位、ロマンディ総合9位、ドーフィネ総合6位、ポローニュ総合7位・・・同年代のフォルモロ、1つ年上の同じく生え抜きのコンラッドと並び、チームの総合エース筆頭たるに相応しい成績を残している。
期待されていたブエルタではなかなか調子が上がらずに総合12位に終わり、悔しい結果だったが、2019年こそはいよいよ覚醒のときが訪れる気がしている。全ドイツ人期待の星であり、その意味でこのチームの顔となるべき存在だ。
フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、26歳)
脚質:クライマー
CCCスプランディ・ポルコウィチェから2018年に昇格したばかりで、まだまだ若手と言える存在。
そして、そんな中出場したパリ~ニースでいきなりの総合10位。しかも、エースのパトリック・コンラッドの勝利のためにクイーンステージで全力牽引アシストを果たしたうえで、である。新人賞でも2位。さすがに1位が総合でも1位のマルク・ソレルなのでどうしようもなかったが、そうでなければ新人賞1位も十分に可能なポテンシャルを持っていた。
そしてシーズン終盤のツアー・オブ・グアンシーでは総合2位。2019年ボーラが、クライマー陣営においても爆発する可能性の一端を担っている存在である。
なお、パリ~ニースの個人TTでは4位。個人TT能力が求められるヴォルタ・アン・アルガルヴェでも総合9位と、実はボーラのクライマーたちの中ではTT能力は高い方で、オールラウンダーと呼んでも差し支えないかもしれない。
個人TTが多くなる2019年のジロでは、もしかしたら総合エースを担っている可能性もある。その意味でも、2019年ボーラ・クライマーズの中の最注目選手として挙げておこう。
総評
2018年の実績から言っても、2019年のロースターを見てみても、スプリンター・ルーラーともに充実しているため、スプリントと北のクラシックでは十分に期待ができる。そして、グランツールを始めとする山岳ステージレースでも、個人的には期待できると思っているロースターである。
一方、アルデンヌ(系)・クラシックでは、リエージュ~バストーニュ~リエージュでフォルモロが7位、イル・ロンバルディアでマイカが7位、フレッシュ・ワロンヌでコンラッドが10位など、悪くはないように思うのだけれど、しかし勝つイメージが湧かない・・・。あるとしたら、シャフマン?
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