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BORA - hansgrohe 2018年シーズンチームガイド

読み:ボーラ・ハンスグローエ

国籍:ドイツ

略号:BOH

創設年:2010年

使用機材:Specialized(アメリカ)

2017年UCIチームランキング:8位

(以下記事における年齢はすべて2018年における数え年表記となります) 

 

 

 

 

2018年ロースター

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来年のボーラ・ハンスグローエ最大の注目新加入選手はやはり、ダニエル・オスの存在。今年のパリ~ルーベでファンアフェルマートを優勝に導いた彼を招き入れたのは、サガンが本気でルーベを獲りに来ている証拠か。

全体としてはスプリンターの数も多く、グランツールでの総合上位よりもサガンやベネットを中心にステージ優勝を多く狙っていく体制。それでもケノーやフォルモロの新加入は、今年うまくいかなかったマイカやケーニッヒのグランツール総合上位争いに向けた意気込みを感じられる。

国籍としてはやはりドイツが多く、オーストリア人の多さも特徴。CCCから昇格した新加入のグロースシャルトナーもオーストリア人期待の若手。今年はツアー・オブ・クロアチアで総合4位。

平均年齢は全チームの中でも特に若いこのチームで、今年もポストルベルガーやブッフマンなど叩き上げの若手が意外な活躍をしてくれた。そういう、勢いのある若手の強さを、来年もぜひ見せてほしいところ。

 

 

 

注目選手

ペテル・サガン(スロバキア、28歳)

脚質:スプリンター

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ツール・ド・フランスまさかの失格で2012年の初出場から続くマイヨ・ヴェール連続受賞記録は5年でストップ。エリック・ツァペルの記録は破れなかった。2連覇がかかるロンド・ファン・フラーンデレンでは落車、パリ~ルーベでは果敢にアタックするも2度も引き起こされたパンクでモニュメントが不発に終わるなど、不運にも多く見舞われたシーズンとなった。

それでも年間12勝に加え、5つのポイント賞獲得。そして前人未到の世界選手権3連覇。やっぱりサガンは強かった。強いサガンはなおも続いている。ライバルのファンアフェルマートと共に、絶好調のここ2年間を過ごしている最中だ。

2018年シーズンは果たしてどんな夢を見させてくれるのか。ミラノ~サンレモ、パリ~ルーベといった「狙える」モニュメントへの挑戦は非常に楽しみだ。ツールへのこだわりを捨て、あえてジロに出る可能性もあるかもしれない。そして、チロルの山岳地帯で行われる世界選手権では、本気で4連覇を狙ってくるのか・・・?

まだ28歳。そして、「平均して最もステージ優勝者の多い年齢」である28歳。もしかしたら実は来年こそが、サガンという男の「最高」が見れるシーズンになるかもしれない。

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クリートを外しながらも踏みなおし勝利した、ツール・ド・フランス第3ステージ。サガンという男の圧倒的な強さを感じさせた瞬間だった。しかしまさかこの直後、あんなことが起こるとは・・・。

 

 

ラファウ・マイカ(ポーランド、28歳)

脚質:クライマー

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2015年ブエルタで総合3位を獲ったとき、可能性を強く感じはしたのだが、今年のブエルタは散々だった。1勝はしたものの、まったく目立たない印象。ツアー・オブ・カリフォルニアも総合優勝目指して意気込んで乗り込んだものの、クイーンステージではタランスキーに敗れ、タイムトライアルでは苦手っぷりを露呈させて総合2位に終わる。

正直今年は残念なシーズンだった。来年は仕切り直し。ケノー、フォルモロといった新加入選手たちを引き連れ、目指すはツール総合ベスト5。

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ツアー・オブ・カリフォルニアで、クイーンステージを終えてもリーダージャージを維持していたマイカ。しかし最終日、ベネットのまさかのTT躍進と、マイカの予想通りのTT不調で夢に終わる。

 

 

サム・ベネット(アイルランド、28歳)

脚質:スプリンター

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ボーラにサガンがやってくると聞いて最も戦々恐々としていたのはこのベネットだろう。その実力差は激しく、ベネットの出る幕はない、とそんな風に思われてもおかしくはなかった。

しかし、むしろサガンの加入により、ベネット自身も高められた感があるかもしれない。ツアー・ダウンアンダーはまさにそんな感じで、初日からいきなりサガンがベネットをアシストし、ベネットの猛追スプリントを見ることができた。

その後はそこまで目立つことはなかったものの、コツコツと勝利を積み重ね、エースとして出場したジロでも勝利までは得られなかったものの、ユワン、ガヴィリアらに次ぐスプリント力を見せつけた。

そして、シーズン終盤のツアー・オブ・ターキーで鮮烈な4勝を記録。ライバルが少なかったとはいえ、やはり4勝はド派手。来年もチームの重要な稼ぎ頭として、サガンとならぶ双頭の1つとして、活躍が期待されるだろう。

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ボーラにベネットあり!と存在感を改めて示したターキー4勝。ちなみにガッツポーズはキッテルに似た印象を強く受ける。

 

 

 

その他注目選手

レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、31歳)

脚質:オールラウンダー

2014年ツールでプロコンチネンタルチームながら総合7位と驚きの成績を出し、チーム・スカイへと電撃移籍したケーニッヒ。しかし強力な選手ばかりが並ぶスカイではそこまで頭角を現すことなく、今年3年ぶりに古巣へと戻ってきた。

マイカと並ぶ総合エースとして期待されたが、怪我や病気に苦しみうまくいかないシーズンとなってしまった。昨年はそれなりの活躍を見せられたブエルタにすら出られず、残念。

来年はまず復活。実力を出し切ることができれば、ジロでも十分に活躍するだろう。

 

ダニエル・オス(イタリア、31歳)

脚質:ルーラー

今年、ファンアフェルマートをパリ~ルーベの優勝者に仕立て上げた立役者。来年サガンをその高みに導くことができれば本物だ。

しかし本来の彼のプレイスタイルは、特徴的な長髪をなびかせながら逃げて逃げて逃げまくる逃げスペシャリストである。なかなか結果には繋がらないこともあるが、来年のオスも、まずは「逃げ」での活躍を楽しみにしている。

 

ルディガー・ゼーリッヒ(ドイツ、29歳)

脚質:スプリンター

今年のジロのボーラはサガンもマイカもいなかったものの、大きな結果を叩き出していった。初日のペストルベルガーの勝利、チェーザレ・ベネデッティの山岳賞。サム・ベネットの勝利がなかったのは残念だったが、そのベネットに負けないスプリントを連日見せていたのがこのゼーリッヒだ。ツールでは元ティンコフのマッカーシー以上の活躍をしていたように思う。

今年は勝利なし。ジロ第3ステージでガヴィリアに次ぐ2位が惜しかった。来年はクラシックとかでの活躍に期待だ。基本はベネットのアシストだろうけれど。

 

エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、26歳)

脚質:クライマー

2015年にマイカが勝利したトゥールマレー峠のステージで、区間3位に入り込んだときから密かに注目していた選手。今年、躍進を予感してはいたが、まさかドーフィネで新人賞を獲るとは! そのあとのツールも、マイカ脱落の後も頑張り続け、総合15位でフィニッシュ。

来年は短いステージレースでの勝利と、ツール本戦でのマイカのアシストに期待。ツールでの区間勝利なんかも見てみたい。 

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2018年ツール 出場メンバー案

1.ペテル・サガン(エーススプリンター)

2.マチェイ・ボドナール(TTT要員&平坦アシスト)

3.ピーター・ケノー(山岳アシスト)

4.ラファウ・マイカ(総合エース)

5.ジェイ・マッカーシー(発射台)

6.ダニエル・オス(平坦アシスト&逃げ屋)

7.パウェル・ポリャンスキー(山岳アシスト)

8.ルディガー・ゼーリッヒ(発射台)

 

このチームも「サガン組」と「ベネット組」で綺麗に分かれている印象で、昨年のラインナップと大きく変わらないのではないかと予想。その中で、新加入のケノーはマイカの山岳アシストとして間違いなく重要になり、ダニエル・オスはサガン勝利のための平坦アシストとして活躍することだろう。

ユライは今年初のツール出場を果たしたが、1週目を終えたのちにリタイア。クラシックではまだ活躍の機会はあるが、3週間の戦いには役不足だったのかもしれない。

ブッフマンはむしろジロなどでの活躍に期待したい。

 

 

総評

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今年はサガンとベネットのスプリントにおんぶにだっこであった。しかしグランツール総合争いへのポテンシャルは十分持っているチームでもあり、マイカとケーニッヒの復活、ブッフマンの更なる成長、そして新加入のケノー、フォルモロの活躍に期待がかかる。

クラシックは基本的にはサガン任せ。新加入のオス含め、ルーラー力は十分にあるチームだ。一方でアルデンヌ・クラシックでのエースがいないのが難点か。マイカは結構適性あると思うのだが、どうだろう。

 

 

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