読み:ディメンションデータ
国籍:南アフリカ
略号:DDD
創設年:2007年
使用機材:Cervélo (カナダ)
2017年UCIチームランキング:18位
(以下記事における年齢はすべて2018年における数え年表記となります)
2018年ロースター
2年連続でUCIランキング最下位。今年はさすがにプロコンチネンタルチームに降格か、とも思ったが何事もなく残留。これがツールをスポンサードしている企業の力か・・・!
とはいえ唯一のアフリカ籍ワールドツアーチームとして、南アフリカを始めとするアフリカ人選手を積極的に抱えているその姿勢は応援し続けていきたい気持ちでいっぱいだ。来年は3年ぶりに、南アフリカのエースクライマー、ルイ・メインチェスが戻ってくる。グランツールでの総合上位にしっかりと入り込んで、UCIランキング最下位を脱出したいところ。
とはいえ、メインチェスに期待していた新人賞ジャージは、その期間を終えてしまう。「アフリカ人初の、シャンゼリゼでの特別賞ジャージ着用」の夢があえなく散ってしまった。その意志を継ぐのはエリトリア人総合期待の星メルハウィ・クドゥスになるのか? 今年はツアー・オブ・オマーン新人賞獲得以外は大した活躍をできていないが、来年は期待したい。
アフリカ人が多いだけでなく、若手も非常に多い。ディベロップメントチームである「ディメンションデータ・フォー・クベカ」からの登用も多く、今後もアフリカにおける自転車界の発展に貢献して頂きたいところ。
注目選手
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、33歳)
脚質:スプリンター
2011年世界選手権ロード優勝
ツール・ド・フランス通算30勝
ジロ・ディタリア通算15勝
プロ通算145勝(13年間)
13年間のプロ生活で積み上げたツール通算勝利数は30。ベルナール・イノーと並ぶ歴代2位タイの記録であり、伝説の男エディ・メルクスの記録まであと4勝。カヴェンディッシュであれば、1年で並ぶことも可能な数字だ。
その意味で今年は勿体なかった。ツール第4ステージでの落車による骨折リタイア。狭いエリアに無理して入り込んだという意味でカヴェンディッシュ自身にもやや非がある事故だったかもしれないけれど、そうでなくとも不運に見舞われ続けた2017年シーズンだった。
彼もまた、現役を退くであろう時期は少しずつ近づいてきている。その前にぜひ、前人未到の記録を創り上げてほしい。毀誉褒貶の激しい人物ではあるが、彼もまた、生きる伝説の1人であったと、世界に証明してほしい。
さいたまクリテリウムで初来日。ファンサービスにも富んでおり、人気の高さを窺わせた。
ルイ・メインチェス(南アフリカ、26歳)
脚質:クライマー
2015年アフリカ大陸選手権ロード優勝
2015年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合10位
2016年ツール・ド・フランス総合8位
2017年ツール・ド・フランス総合8位
2年連続ツール・ド・フランス総合8位。それは非常に凄いことで、簡単に真似できるものではない。しかし、新人賞も共に2位。これは非常に悔しい。あと、一歩だったのだ。
残念ながら新人賞ジャージを獲得できる時期は過ぎてしまった。アフリカ人として初めてのシャンゼリゼ表彰台に登るためには、少なくとも総合3位にまで登りつめなくてはならない。メインチェスは安定感は非常に高いものの、総合3位以上に登るだけの突き抜けた何か、を持っているわけではない。彼が表彰台に登る姿を想像するのは、正直言って難しい。
それでも、各種ステージレースやグランツールでの総合上位は十分に狙え、それゆえにチームの悩みの種であったUCIポイントをもたらす救世主にはなってくれそうだ。
3年ぶりの古巣でチームを牽引する活躍を期待すると共に、早くも後進の育成にも貢献してもらいたいところ。アフリカの希望を背負い、引っ張っていく存在であれ!
エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、31歳)
脚質:スプリンター
ツアー・オブ・ノルウェー総合優勝3回
エネコ・ツアー総合優勝2回
ツアー・オブ・ブリテン総合優勝2回
ツール・ド・フランス通算3勝
今年はある意味、ボアッソンハーゲン復活の年だったのかもしれない。もちろん、地元世界選手権で優勝したわけでもないし、ヨーロッパ選手権もライバルのクリストフに獲られてしまっていたりする。しかし、ツアー・オブ・ノルウェーでは劇的な展開で逆転総合優勝に輝き、ツール・ド・フランスでも4年ぶりの勝利を掴んだ。それも、得意なスプリントではなく、クレバーな判断力によるアタックからの逃げ切り勝利で。
そして、純粋なスプリントにおいても、キッテルに喰らいつくような走りを見せた。基本的にはカヴェンディッシュのアシストをやらされることになるだろうが、来年もその走りに期待したい。
満面の笑みと共に、その手の中のクベカのマークをアピールするボアッソンハーゲン。来年でチーム在籍4年目。かつて期待され、失望もされた若きベテランが、来年も更なる大暴れを見せられるか。個人的にはミラノ~サンレモでの勝利はアリなんじゃないかと思っている。
その他注目選手
スティーヴン・カミングス(イギリス、37歳)
脚質:ルーラー
2015年・2016年と連続でツール逃げ切り勝利を決めた生粋の逃げ屋。今年も惜しいところまでは行ったものの、さすがに3年連続とはいかなかった。それでもイギリス国内選手権でロード・ITTダブル優勝してしまうなど、年齢を感じさせない活躍を見せ続けている。
世界選手権での活躍も期待されていたが、本人曰く「チームのために」UCIポイントを稼ぐためのレース出場を優先させたのだとか。結果としてチームは最下位を脱出できなかったけれど、プロコンチネンタルチーム時代からチームの屋台骨の1人であり続けているいぶし銀だ。
来年も僕たちをわくわくさせてくれる逃げを、楽しみにしている。
トムイェルト・スラフテル(オランダ、29歳)
脚質:パンチャー
UCIポイントを獲得するための効率的な方法は、ステージレースでの総合上位のほかに、クラシックでの勝利が挙げられる。ディメンションデータはクラシックが得意では決してないのだが、その中でも特にどうしようもないであろうアルデンヌ・クラシックにおける救世主となりうるのがこの元キャノンデールのパンチャーである。
かつて、パリ~ニースで2勝。そのときはとんだ新人が出てきたものだ!という強い印象があったものだが、その後は「実力はあるけど地味な選手がたくさん集まる場所」であるキャノンデールでキャノンデールらしい走りを続けていた。
でも本当に、地味に強いのだ。今年はグランプリ・ドゥ・ケベックで6位、同モントリオールで3位。ケベックは2015年に4位にもなっており、まさに一線級のパンチャーと言っても差支えない。
来年は脂の乗る年である28歳-29歳シーズン。やるぜ、この男。
ミークセブ・デベセイ(エリトリア、27歳)
脚質:パンチャー
エリトリア個人TT王者に輝いたこの男。直近のツアー・オブ・グアンジーでガヴィリアやコルトニールスンに混じって区間5位に入ったり、かと思えばウェレンスの勝利した頂上ゴールで錚々たるメンバーに囲まれて区間9位になったりと、なかなかに謎脚質を持った男。ツアー・オブ・オーストリアのアップダウンが激しいコースでは上記のスラフテルに次ぐ区間2位にも入っている。
クラシックで勝利するタイプというよりかは、ステージレースでチャンスを掴んで勝利を狙うことのできるようなタイプに感じる。UCIポイントにはなりづらいかもしれないが、一気に名前を売ることのできるツールでの区間勝利を、来年はぜひ狙ってほしい。
ライアン・ギボンズ(南アフリカ、24歳)
脚質:スプリンター
ジロで何度かTOP10に入った、今個人的に最も期待しているアフリカンスプリンター。ツール・ド・ランカウイで総合優勝していたりと、実績も既に出している。
来年もジロに挑戦し、ぜひ勝利を目指してほしい。登りへの適性はあまりなさそうなので、ブエルタはちょっと厳しいかもしれない。
2018年ツール 出場メンバー案
1.マーク・カヴェンディッシュ(エーススプリンター)
2.エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(発射台)
3.スティーヴン・カミングス(アタッカー)
4. ベルンハルト・アイゼル(発射台)
5.ルイ・メインチェス(総合エース)
6.セルジュ・パウエルス(山岳アシスト)
7.マーク・レンショー(発射台)
8.トムイェルト・スラフテル(アタッカー)
カヴェンディッシュを中心とした体制を作り上げると共に、メインチェスを中心とした山岳布陣にどこまで力を入れるか、がポイント。また、ヴェルモトもせっかく加入させたからには入れたいところではあるが・・・
アタッカーとしてはこの2名は鉄板だと思うのだが、もしもUCIポイントを優先させるのであれば、この部分を削ってアントンやクドゥスなどの山岳アシストを増やす方向もありうるかもしれない。ボアッソンハーゲンをジロやブエルタに回すという可能性も。
総評
メインチェスの加入により、多少はグランツール総合争いに絡めるようにはなったものの、まだまだ力不足感は否めない。アルデンヌ・クラシックも、スラフテルなどがどこまで頑張れるか。
ステージ優勝(orスプリントクラシック)での、カヴェンディッシュ・ボアッソンハーゲンの荒稼ぎが来年も必要になる。カヴェンディッシュは復活を期待!
その他のチーム
AG2R La Mondiale 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Astana Pro Team 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Bahrain Merida Pro Cycling Team 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど