読み:シーシーシーチーム
国籍:ポーランド
略号:CCC
創設年:2007年
GM:ジム・オショウィッツ(アメリカ)
使用機材:ジャイアント(台湾)
2019年UCIチームランキング:20位
(以下記事における年齢はすべて2020年12月31日時点のものとなります)
参考
CCC Team 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
スポンサーリンク
2020年ロースター
※2019年獲得UCIポイント順。
2018年の春に富豪オーナーのアンディ・リース氏が亡くなったことをきっかけに、それまでチーム創設以来単独で支え続けてきてくれたバイクメーカー・BMCが突然のスポンサー撤退。そこから新スポンサーであるポーランドの大手靴製造メーカー・CCCが手を挙げたのは7月になってから。春のクラシック、ジロ、そしてツールと、重要な期間を不透明な状況で過ごしたことにより、その戦力の大半が流出してしまった。
その数、実に17名。リッチー・ポート、ローハン・デニス、ステファン・クン・・・ワールドツアー最上位クラスのチームを支えてきた有力選手たちの開けた穴を埋めたのは、夏の時点でまだ行先の決まっていなかった選手たちと、CCCが元々スポンサードしていたCCCスプランディ・ポルコウィチェを含む各プロコンチネンタルチーム所属だった選手たち。世界最強級クラシックハンターのグレッグ・ファンアーフェルマートは残ったものの、それでも半分プロコンと言ってもよい戦力であったことは間違いなかった。
2019年シーズンの勝利数は6。ワールドツアーチームランキングでも下から3番目。4つのプロコンチネンタルチームに、UCIポイント獲得合計で抜かれるという事態となった。
そのことを思えば、2020年はかなり強化されたとは思う。ファンアーフェルマートと並ぶクラシック能力をもち、2019年もツール・ド・フランス勝利を含め好成績を残し続けてきた男、マッテオ・トレンティンや、待望のグランツール総合を狙える男としてのイルヌール・ザカリンなど。
ただそれでも、まだまだと言わざるを得ないのは確か。2020年に向けた移籍市場で大成功を収めたという評価は難しいだろう。とりあえずこの陣容で、2019年目標にしながらも果たせなかった「20勝」を、今度こそ実現することができるか。
自転車ロードレースシミュレーションゲーム『Pro Cycling Manager2019』でCCCチームの「20勝リベンジ」を目指すプレイ日記を公開中。よければ見てください。
注目選手
グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、35歳)
脚質:パンチャー
2019年の主な戦績
- グランプリ・シクリスト・ド・モンレアル優勝
- オンループ・ヘット・ニュースブラッド2位
- クラシカ・サンセバスティアン2位
- E3ビンクバンク・クラシック3位
- グランプリ・シクリスト・ド・ケベック3位
- ビンクバンク・ツアー総合4位
- ツール・ド・ヨークシャー総合2位
- 世界ランキング6位
UCI世界ランキング的に見ても、間違いなく現役最強のクラシックライダーである。
しかし、勝てなかった。その要因の1つは、彼を支えるチーム力。ファンケイルスブルクも、ウィシニオウスキも、シェアーも、決して弱い選手たちではない。しかし、最終局面において、先頭にいるのは常にファンアーフェルマートただ1人だったように思われる。
もう1つの要因は、そういうチーム状況だからというのもあるだろうが、自ら仕掛けることへの強い躊躇いである。常に彼は後手を踏み、勝機を逃す。たとえばこれがドゥクーニンク・クイックステップであれば、まずはスティバルが抜け出し、これが捕まえられれば後続に控えていたジルベールが勝利を狙うというような複数の勝利の選択肢を持てたであろう。CCCチームの体制はそれを許さなかった。そしてファンアーフェルマートもチームの絶対のエースとしての責任感もあり、リスクのある賭けに出づらい状態だった。
だが、2020年はその状況に改善が見られる兆しがある。それがトレンティンの存在である。トレンティン自身も、同じく1人で戦わざるを得なかったがゆえにうまくいかない北のクラシックシーズンを過ごした。この2人がチームメートになったことが、このチームの2020年の春のクラシックに大きな影響を与える可能性を強く感じている。
そして、ファンアーフェルマート自身も、2020年に向けてすでに気合を入れている。彼は、2017年の絶頂期(オンループ優勝、ストラーデビアンケ2位、E3優勝、ヘント優勝、ロンド2位、パリ〜ルーベ優勝、世界ランキング1位)を再現すべく、長年踏襲してきた2月の中東行きを取りやめ、ヨーロッパにて準備を進める選択肢を取ることにした。
果たして2020年のファンアーフェルマートは、再度の絶頂期を迎えられるか。そしてその果てにある野望は、未だ掴みとれていない、ロンド制覇という目標だ。
それが果たされたとき、彼は真に「現役最強のクラシックライダー」と呼ばれることになるだろう。
マッテオ・トレンティン(イタリア、31歳)
脚質:スプリンター
2019年の主な戦績
- 世界選手権ロードレース2位
- ツアー・オブ・ブリテン総合2位
- E3ビンクバンク・クラシック7位
- ヘント〜ウェヴェルヘム7位
- サイクラシックス・ハンブルク7位
- オンループ・ヘット・ニュースブラッド9位
- ミラノ〜サンレモ10位
- アムステルゴールドレース10位
- 世界ランキング19位
今年は実に強かったトレンティン。シーズン初頭から勝利を重ね、ツール・ド・フランスでも山岳を乗り越えての勝利。終盤でもブリテンでマチューと競り合っての総合2位、そして世界選手権では、あのサバイバルな展開を生き残り、最後は惜しくも勝利を逃したものの、世界王者になってもおかしくない走りをしてみせた。
それがゆえに、彼もまた、クラシックで勝てなかったことが実に悔しい。本来であれば、オーストラリアTT王者にも輝き調子の良かったルーク・ダーブリッジがその相方として機能するはずだったのが、落車による戦線離脱で春のクラシックには不参加となってしまった。
ファンアーフェルマートのときと同じ話になるが、この2人が組み合わさることによるクラシックでの爆発に期待したい。また、ツールで見せた山岳エスケープ力は、2020年シーズンのCCCチームの勝利数を増やす上で非常に重要な役割を果たすことになるだろう。
イルヌール・ザッカーリン(ロシア、31歳)
脚質:オールラウンダー
2019年の主な戦績
- ジロ・デ・イタリア区間1勝、総合10位
- ツール・ド・ロマンディ総合8位
- パリ〜ニース総合10位
- ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ総合17位
- 世界ランキング141位
ロシア籍のプロコンチネンタルチーム(ルスヴェロ)からロシア籍のワールドツアーチーム(カチューシャ)へ。2015年にはツール・ド・ロマンディで総合優勝し注目を集め、2016年にはパリ〜ニースとツール・ド・フランスでステージ優勝。そのときはジロ・デ・イタリアで酷い落車に遭ってのリタイアからの復活ということで、その回復力の高さも驚くべきものであった。2017年にはジロ・デ・イタリア総合5位とブエルタ・ア・エスパーニャ総合3位。デニス・メンショフ以来のロシアの逸材として、大きな期待をかけられていた。
しかし、カチューシャというチーム自体の迷走と合わせ、ザッカーリン自身も結果を出せない2年間を過ごしてきた。その意味で、その責任は彼自身にのみ帰せられるものではないだろう。彼自身はまだまだポテンシャルを持っている。ただ、チームの状況がゆえに、それを引き出せていないだけだーーそのことを証明するべく、ついに彼は、母国ロシアのチームを去ることに決めた。
CCCチームとしても、2019年シーズンは完全に穴を開けていた状態となっていた総合狙いの選手の存在は、喉から手が出るほど欲しかったに違いない。まだまだその総合狙いの戦いをサポートできる体制が十分とは言えない状況かもしれないが、それでも本人、チーム双方にとって、2020年は勝負の年となるはずだ。
その他注目選手
ファウスト・マズナーダ(イタリア、27歳)
脚質:クライマー
エガン・ベルナルやイバン・ソーサの出身チームであり、2019年UCIランキングにおけるイタリア籍チーム最上位となったアンドローニジョカトリ・シデルメク。そのチームで2019年に活躍した3人のイタリア人のうち、最も実績を出したのがこのマズナーダである。
2019年のツアー・オブ・ジ・アルプスで区間2勝と総合5位、ジロ・デ・イタリアでも区間1勝と、プロコンチネンタルチーム離れした実力を示していた。ワールドツアー入りは確実と見られており、あとはその行き先がずっと気になっていたのだが・・・彼が選んだのは、意外と言っては失礼だが、まさかのCCCチームであった。
彼がそれを選んだ理由はもしかしたら、エースとして走れる環境だったのかもしれない。実際、ザッカーリンがいるとはいえ、ワールドツアーチームであれば総合エースは最低2人はいないといけない。マズナーダがその2人目を担いうる素質は十分にあるだろう(もしかしたらザッカーリンを凌駕する可能性すらある)。
もちろん、ザッカーリンのアシストとしての活躍も期待したい。CCCチームが「大きなプロコンチネンタルチーム」となってしまった2019年シーズンの二の舞にならないための、重要な役割が求められている。
ヤン・ヒルト(チェコ、29歳)
脚質:クライマー
そもそも彼がワールドツアーチームのアスタナ・プロチームに見初められたきっかけは、CCCチームの「前身*1」CCCスプランディ・ポルコウィチェ所属時代にジロ・デ・イタリアで活躍したがゆえであった。だから今回の移籍は、ある意味で「出戻り」である。もちろんそれはアマーロ・アントゥネスのような失意のもとの出戻りではなく、ワールドツアーとして成長した旧チームへの前向きな復帰である。
実際、この2年のアスタナ時代を経てヒルトは着実に強くなった。2019年のジロ・デ・イタリアにおいても、その特徴的なヘルメットから突き出したトゲトゲの髪をなびかせ(?)ながら、エースのミゲルアンヘル・ロペスのために働き続けた。第16ステージにおいては、山岳賞のジュリオ・チッコーネと最後の最後まで逃げながら、チームのための走りを徹底し、最後はきっちりと彼に勝利を譲った、ように見えた。
強く、献身的で、義理の厚い男。彼の存在は、総合争いにおける進化を目指すCCCチームにとって、限りなく重要なピースとなるだろう。
もちろん、彼自身が(かつてこのチームに在籍していたときのように)エースを担う可能性も十分にある。アスタナでは逃さざるをえなかったジロでの勝利も、このチームなら十分に狙っていけるだろう。
シモン・サイノック(ポーランド、23歳)
脚質:スプリンター
CCCスプランディ・ポルコウィチェ時代からの叩き上げ。まだ若くして、ポーランド最強のスプリンターと言っても過言ではない。2018年のツール・ド・ラヴニールでは区間2位。そして2019年には、ブレーデネ・コクサイデクラシックで4位、さらにはブエルタ・ア・エスパーニャ最終日のマドリードで3位に入るなど、世界の舞台においても着実にその存在感を示しつつある。
なお、ポーランド国内選手権U23タイムトライアル王者でもある。2020年、その飛躍を大いに期待すべき存在の1人だ。
総評
補強はしたが、それでもまだまだ道半ば。ザッカーリンだけではグランツールを制するのは難しいし、北のクラシックでもファンアーフェルマートとトレンティンは期待度は高いがチーム全体としてはまだまだ不足はあるだろう。
それでも、2019年のようなどん底からは這い上がれるだろう。這い上がるしかない。サイノックやツィマーマン、ヴァルターといった若手の成長も楽しみだ。
1年後、その評価がどうなっているかは、予想のつかないチームでもある。
スポンサーリンク
*1:もちろん、正確にはBMCレーシングチームが本来の意味での「前身」である。