読み:ツェツェツェ・チーム
国籍:ポーランド
略号:CPT
創設年:2007年
GM:ジム・オショウィッツ(アメリカ)
使用機材:Giant(台湾)
2018年UCIチームランキング:4位
(以下記事における年齢はすべて2019年12月31日時点のものとなります)
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2019年ロースター
2007年の創設以来、一度たりともその名前を変えることのなかったこのチームも、ついに変化を迎えることになった。きっかけは富豪オーナーのアンディ・リース氏の死? いや、以前からBMC撤退の噂は常に付きまとっていた。彼の事象はその最後の一押しを押したに過ぎない。
にもかかわらず、その衝撃は果てしなかった。撤退発表から新スポンサー獲得までは3か月。春のクラシックとジロ、そしてツールに向けてのハイ・シーズンを迎えていた中での3か月の空白はあまりにも大きかった。リッチー・ポート、ローハン・デニス、ティージェイ・ヴァンガーデレンといったスター選手たちは次々とチームを去り、7月にポーランドの大手靴製造販売メーカー「CCC(ツェツェツェ)」がタイトルスポンサーとなることが発表されたときには既に、チームは元の形を維持しかねるほどにスカスカになっていた。
だが、ファンアーフェルマートは残っていた。2016年リオ・オリンピック金メダリストにして、パリ~ルーベを始めとした北・アルデンヌの各種クラシックを次々と獲得。ツールでの2018年も2016年に続きマイヨ・ジョーヌ着用を果たしている。
2019年のこのチームは、このファンアーフェルマートを中心としたクラシック・ワンデーレース専門チームとなることだろう。勝利数やUCIワールドツアーランキングは一気に落ちることは間違いないが、それでも観るものを震わせるレースを見せてくれるだろうメンバーは残っている。
たとえばブエルタとジロ・デッレミリアで逃げ切り勝利を果たしたデマルキ、2017年ブエルタで勝利しているデニフル*1、2017年に地元最大のレース・アルガルヴェで1勝を果たしているアントゥネス、ワールドツアーのトップスプリンターに匹敵するステージ優勝数を例年記録しているマレツコなど、トップレースで勝利を掴むのは難しいかもしれないが十分に良い勝負をしてくれるであろう選手たちが揃ってはいる。
むしろ応援しがいのあるチームじゃないだろうか。半分プロコンチネンタルみたいなこのチームが、どれだけ純正ワールドツアーチームたち相手に立ち回れるか、楽しみにしていようじゃないか。
↓ファンアーフェルマートがチームについて語ったインタビュー翻訳はこちら↓
注目選手
グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、34歳)
脚質:パンチャー
- ツール・ド・ヨークシャー 総合優勝
- グランプリ・シクリスト・ドゥ・ケベック 2位
- グランプリ・シクリスト・ドゥ・モンレアル 3位
- E3ハーレルベーケ 3位
- パリ~ルーベ 4位
- クラシカ・サンセバスティアン 4位
このチームで唯一残留したエース格。そして結果を求めるのであれば、なんとか彼だけでも引き留めておこうと考えた首脳陣の選択は正しかったと思う。勝利およびUCIポイントを安定して獲れる度合いに関しては、デニスやポート以上のものがあるだろう。
とはいえ、なかなか勝てないのも彼の特徴である。多くの選手が移籍したことで、チームの総合力も確実に低下しているなか、2019年のクラシックでこれまでと同じ走り方ができると考えるのは難しいだろう。ほぼ1人で戦うのと同じ、と考えた方がよいかもしれない。
チームにとってもファンアーフェルマート自身にとっても我慢の1年となるだろう。その中で、驚くべき結果を出せるか。
パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、28歳)
脚質:TTスペシャリスト
2018年の主な戦績
- ツアー・オブ・ブリテン ポイント賞
- ツアー・オブ・ブリテン 総合4位
- ツアー・オブ・カリフォルニア 区間2位(個人TT)
- イツリア・バスク・カントリー 区間2位(個人TT)
2016年にキャノンデール(現EFエデュケーション・ファースト)に移籍。その年のパリ~ニースの短距離個人TT(6.1km)にてトム・デュムランとわずか1秒差という記録を叩き出して注目を集めた。また新たなTTスペシャリストが出てきたな、というのがそのときの印象だった。
しかし、そんな彼がまた違った姿を見せるようになったのが、2017年のツール・ド・スイスであった。
第2ステージ、獲得標高差2500mを超えるピュアスプリンターには少し厳しいレイアウトで最後の集団に残ったベヴィンは、スプリントでジルベールに次ぐ2位に入り込んだ。サガンやトレンティンもそのときのスプリントには参加していたが、彼らを打ち破ったのである。
続く第3ステージの緩やかな登りスプリントでも6位、ピュアスプリントステージとなった第5ステージでも4位と、バランス良く上位に入り込む走りを見せ、一躍中堅スプリンターの仲間入りを果たした。
2018年にはティレーノ~アドリアティコとツアー・オブ・ブリテンで総合リーダージャージを着る機会も得た。ブリテンではスプリントによるボーナスタイムを稼いで序盤の2日間を総合リーダーで過ごし、最終的にも総合4位とキャリア最大の成績で終えることができた。
もちろん、本来の得意分野である個人TTでも、2つのワールドツアークラスで区間2位という成果を出し、この点でも変わらず高い能力を持っていることを示した。
2019年の目標としては、スプリントでも個人TTでも良いので、勝利を確実に手に入れたいところ。勝利数不足にあえぐことになるであろう2019年のこのチームにとって、ベヴィンの存在はこれまで以上に重要なものとなるはずだ。
ヤコブ・マレツコ(イタリア、25歳)
脚質:スプリンター
2018年の主な戦績
- ジロ・デ・イタリア 区間2位
- ツアー・オブ・ハイナン 区間1勝
- 年間13勝(2クラス含む)
プロコンチネンタルチームのスプリンターに少しでも興味がある人ならば、誰もが知っているであろう若手最注目のスプリンター。プロ通算40勝、そのうちの36勝がアジアツアーでの勝利であり、かつ31勝が中国での勝利という特異な経歴を持つ。2015年から年間プロ勝利9勝→11勝→13勝と伸ばしており、2018年はプロ勝利は7勝に留まるが、2クラスも含めれば13勝と勝ち星の数に関してはワールドツアークラスの1級スプリンターにも負けていない。
もちろん、アジアだけで強い選手というわけではない。ジロ・デ・イタリアでは2016年から3年連続で出場しているが、直近2年で区間2位が3回。あと一歩、というところまで来ている。
問題は、そのいずれもが、長くても2週目の途中でリタイアしていること。まだまだ、3週間を問題なく完走できるだけの経験が伴っていないようだ。
その意味で、今回のワールドツアー昇格は彼にとってチャンスである。ウィリエール時代よりも格段によくなったアシスト環境の中で、完走も、集団内での位置取りも、ずっと楽になることだろう。目指すは、ワールドツアークラスでの初勝利。
なお、個人TTではいくらなんでも遅すぎじゃない?ってなくらいに弱い。本来スプリンターが得意なはずの短距離TTですら。
もしかしたら、スプリントで全力を出すために、個人TTでは徹底して力を抜いているのかもしれない。それも、プロコンチネンタルチームという環境の中で勝利を掴むための彼なりの工夫だったのかもしれず、そういった苦労が新チームで少しでも緩和されるとよいのだが。
その他注目選手
セルジュ・パウェルス(ベルギー、36歳)
脚質:クライマー
どちらかというとパンチャーに近いかもしれない。元々は、ツール・ド・フランスで総合13位にまで登り詰めるなど、総合ライダーとしての可能性を感じさせる選手ではあった。しかし、やはりそこまでが限界といったところで、最近では2017年のツール・ド・ヨークシャー総合優勝、2018年の同じくヨークシャー総合3位など、パンチャー向けのレースやアタッカーとしての活躍の方が目立っている感じだ。
しかし、総合エースを完全に失ったこの新生チームにとって、パウェルスは数少ない総合エースである。さすがにテンダムにそれを任せるのは厳しいと思うし、2017年ブエルタで勝利したデニフルも、総合エースを任せられるだけの実績はない。パウェルスも厳しいは厳しいが、それでも2018年のヴォルタ・アン・アルガルヴェではクイーンステージで区間3位に入る好走を見せ、総合8位で終えている。グランツールではさすがに厳しくても、1週間以内のステージレースであれば、ポイントを稼ぐことは十分に可能だろう。
もちろん、本来の持ち味を生かした、グランツールでのステージ勝利も期待したいところ。そろそろいい年ではあるが、まだまだ隠居するには早すぎる。
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、33歳)
脚質:クライマー
元トラックレーサーで団体追抜き種目のイタリア王者にも2度、輝いている。その独走力を活かした山岳逃げスペシャリストとして、ブエルタ・ア・エスパーニャでは通算3度の逃げ切り勝利を果たしている。
2018年にはその3度目のブエルタ勝利の他、ジロ・デッレミリアでも勝利。2019年も、積極的な逃げによって、力不足の新生チームの存在感を示していく重要な役割を担うことになるだろう。
ルカシュ・ヴィシニオウスキー(ポーランド、28歳)
脚質:ルーラー
2018年のオンループ・ヘット・ニウスブラットで2位。距離が短いとはいえ、ゴール前17kmに伝説の坂カペルミュールが設置され、より本格的なクラシック仕様にマイナーチェンジした2018年のオンループでのこの成績は、2019年におけるCCCチームのクラシックセカンドエースを任せるには十分すぎるものとなるだろう。
また、このオンループではヴァルグレンが逃げ切り勝利を果たしているため、残された集団の中のスプリントでは先頭を取ったことになる。ストゥイヴェンやジルベールを打ち負かしているのである。
翌日の、よりスプリンター向けであるクールネ~ブリュッセル~クールネでも8位。同レースでは過去に5位(逃げ切りだったので実質4位)に入り込んだこともある。
クラシック適性と、それなりのスプリント力。ということで、2019年はオンループやクールネのほか、ヘント~ウェヴェルヘムやデパンヌ3日間でもその成績に期待したいところである。
総評
はっきり言って、グランツールでの総合上位を狙うのは絶望的である。そこはきっぱり諦めよう。
逆に北のクラシックはファンアーフェルマートがいる以上期待はできそうなのだが、それでもアシスト力の低下は否めないため、厳しさは残る。セカンドエースがヴィシニオウスキーかもしくはファンケイスブルクといったところも不安材料だ。
もちろんファンアーフェルマートはアムステルなどのアルデンヌ系クラシックでも可能性を持ってはいる。パウェルスでデマルキ、ゲシュケなどが候補に上がることは上がる。
いずれにせよ、とにかく全選手が持てる限りの力を尽くし、1つでも多くの勝利、1ポイントでも多くのUCIポイントを稼ぎ出すこと、に尽きる。今後への道筋をしっかりつけたうえで、再びスポンサー危機に陥らないように励み、そして2020年こそは移籍市場において有利なアクションを取っていけるよう目指すしかない。
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*1:2018年末に、「個人的な理由により」契約を破棄。事実上の引退?