以下の記事もチェック!
読み:ユンボ・ヴィスマ
国籍:オランダ
略号:TJV
創設年:1984年
GM:リチャード・プルッヘ(オランダ)
使用機材:サーベロ(カナダ)
2021年UCIチームランキング:3位
(以下記事における年齢はすべて2022年12月31日時点のものとなります)
【参考:過去のシーズンチームガイド】
Team LottoNL-Jumbo 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Team Jumbo-Visma 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Team Jumbo-Visma 2020年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Team Jumbo-Visma 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
目次
※各グラフのポイントは独自に集計した2021シーズンの実績に基づきます。
同じポイントに基づいた各脚質ランキングは以下の記事を参照のこと。
各チームのプレビューをPodcast&Youtubeでもやっています。
スポンサーリンク
2022年ロースター
※2021年獲得UCIポイント順
世界ランキング2位と3位が集い、グランツールも、クラシックも、TTもスプリントも最強クラスの選手たちが揃っているまさに世界最強チームの一角。そのバランスはクイックステップやイネオス以上のものである。
だからこそ、頂点が欲しい。ログリッチにとってのツール・ド・フランス制覇、そしてワウト・ファンアールトにとってのロンド・ファン・フラーンデレンやパリ~ルーベの制覇。そのために、今年も全力で補強を行った。とくに、これまで不足がちだったファンアールトのための、クラシック巧者たちの補強が光る。
真の意味での最強を、今年こそ成し遂げられるか。勝負の年である。
注目選手
プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、33歳)
脚質:オールラウンダー
2021年の主な戦績
- ブエルタ・ア・エスパーニャ区間4勝&総合優勝
- 東京オリンピック個人タイムトライアル優勝
- イツリア・バスクカントリー総合優勝
- ラ・フレーシュ・ワロンヌ2位
- イル・ロンバルディア4位
- UCI世界ランキング3位
現役最高のメンタルを持つ男、と言っても過言ではないかもしれない。2020年のツール・ド・フランス、そして昨年のツール・ド・フランス。いずれもあまりにも悔しい結果に終わりながら、直後のリエージュ~バストーニュ~リエージュや東京オリンピック個人タイムトライアルで成功し、さらに共にブエルタ・ア・エスパーニャを制した。
その、史上稀なるブエルタ3連覇という偉業に至るまでの「不屈」なる道のりについては以下の記事に詳しい。
そんなログリッチにとって、今年は「3度目の正直」である。
と、いうか、2020年の段階で、正直チャンスはこの年だけだと思っていた。決して若くはなく、ベルナルやポガチャルといった若き才能も押し寄せてきており、2020年のあの段階こそがログリッチの最高峰であり、翌年にはこれが失われる可能性すらあると感じていた。
が、その強さは2021年も変わらず続き、そしておそらく、今年も。
高い安定感はそのメンタルのなせる業か。Jsportsで毎年放送されているユンボ・ヴィスマのドキュメンタリーを見ても、その人柄にはいつも魅せられる。
ただまあ、無謀というかやんちゃなときもよくあり、よくコケるのだけは心臓に悪いので何とかしてほしいけれど・・・。
2022年もまずはツール・ド・フランスが最大の目標。そして現時点では明確にはしていないが、もちろん前代未聞の「ブエルタ・ア・エスパーニャ4連覇」も、決して狙っていないということはないだろう。
ベルナルともポガチャルともマチュー・ファンデルプールともワウト・ファンアールトとも違う、決して若くはないが2020年代を代表する重要な存在。
今年もまだまだ、彼の時代は続く。
ワウト・ファンアールト(ベルギー、28歳)
脚質:オールラウンダー
2021年の主な戦績
- 東京オリンピックロードレース2位
- 世界選手権個人タイムトライアル2位
- ヘント~ウェヴェルヘム優勝
- アムステルゴールドレース優勝
- ティレーノ~アドリアティコ総合2位
- ミラノ~サンレモ3位
- UCI世界ランキング2位
もちろん前から凄い男だったが、今年の彼は本当に異様だった。
ポガチャル、ログリッチと並ぶ、2021シーズン最多勝となる13勝をマークしたわけだが、その最初の勝利はティレーノ~アドリアティコ初日ステージのピュアスプリントでのカレブ・ユアンとフェルナンド・ガビリアを退けての勝利。
2回目の勝利はそのティレーノ~アドリアティコでの個人TT、3回目の勝利はサバイバルな展開の末のヘント~ウェヴェルヘムでの勝利。さらにはアルデンヌ・クラシックのアムステルゴールドレース、国内選手権ロードレース、極めつけはツール・ド・フランスのモン・ヴァントゥ&個人TT&「スプリンターの世界選手権」シャンゼリゼ。
あらゆるタイプのコースで勝利を狙える、真の意味での――その言葉も随分使い古された表現に思えるが、これまで使われてきたどのパターンよりも正しい意味での――オールラウンダー。自転車ロードレースシミュレーションゲーム「Pro Cycling Manager」においても、すべてのパラメータの数字が、高い能力値であることを示す「色付き」になっている唯一無二の存在である。
まさに「脚質ファンアールト」。ただ、そんな彼でも、昨年もまた、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ~ルーベを制することはできなかった。
そんな「無冠の帝王」にもおさらばである。
今年はこれまで以上にチームも本人も本気だ。
いつものオフシーズンと違いランニングをしながら鍛え上げたまま迎えたシクロクロスシーズンでは彼史上最高の走りを見せ、10戦中9勝という、全盛期のマチュー・ファンデルプールに匹敵する勝率を誇っている。
そしてアメリカで開催される世界選手権には出場回避を選択。2月末のオンループ・ヘットニュースブラッドからシーズンインを果たし、今度こそクラシックの頂点を目指す。
そのためにチームも徹底した補強を図った。昨年も新加入のネイサン・ファンフーイドンクが見事な走りを見せてヘント~ウェヴェルヘム勝利をファンアールトにもたらしたし、今年もクリストフ・ラポルト、ティシュ・ベノートといった才能が彼にとって大きな助けをもたらすことになるだろう。
高い実力を持ちながらもなかなかクラシックシーズンではうまく調子を合わせられずにいるマイク・テウニッセンも万全の状態で臨むことができれば、今年のファンアールトはきっとこれまで以上に期待のできるシーズンを過ごせそうだ。
ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、26歳)
脚質:オールラウンダー
2021年の主な戦績
- ツール・ド・フランス総合2位
- イツリア・バスクカントリー総合2位
- セッティマーナ・コッピ・エ・バルタリ総合優勝
- クラシカ・サンセバスティアン8位
- UCI世界ランキング18位
昨年のツール・ド・フランスで、「唯一ポガチャルを突き放した男」。
その、2019年の「静かなるデビュー」からの道のりについては以下の記事を参照してほしい。
控えめな好青年が、突然与えられた役割と期待に、戸惑いながらも応えていこうとする様子はJsportsで見られるドキュメンタリーで十分に描かれている。
その純朴さはツール・ド・フランス第17ステージでリチャル・カラパスにしてやられて一度遅れてしまう場面などでもよく分かるが、その後しっかりとこれを追いつきなおして最後は追い抜いていくところなど、強さと意地を感じられて楽しい。
第20ステージの個人TTでのプレッシャーは半端ないものであっただろう。前年にログリッチがここで悔しい思いを味わっているだけに。TTが得意とはいえ、総合3位のリチャル・カラパスとはわずか6秒差だったのだから。
しかし最後のこのTTも彼は堂々たる走りを見せて区間3位。最終的にカラパスに2分近いタイム差をつけて総合2位を確実なものとした。
まさに、今もなお成長し続ける男、ヴィンゲゴー。チームとログリッチに対する忠誠心はゆるぎないだろうが、彼が1年後どんな立場にいるかは、全く予想がつかない。
いずれにせよ、彼にとっても重要になるに違いない、母国デンマークでのグランデパールとなる今年のツール・ド・フランス。
プリモシュ・ログリッチにとっての、最高の右腕となるのか、それとも――。
その他注目選手
クリストフ・ラポルト(フランス、30歳)
脚質:スプリンター
かつてはナセル・ブアニの発射台。2016年のツール・ド・フランスはブアニが出走前にリタイアしたことでチャンスを掴んだが、最高で5位。2018年はブアニを差し置いてツール・ド・フランスに単独出場し、区間2位にまで迫る。だが、ブアニがチームを去って正真正銘の単独エースとしてチームの中に君臨してからもなお、彼はチームにとっての至上命題であるところの「ツール勝利」を成し遂げられずにいた。
そしてそれは、彼にとって決して相応しい目標ではなかったのだと思う。彼の強みはピュアスプリントではなく、あらゆる局面に強いオールラウンドさである。たとえば昨年のエトワール・ド・ベセージュ初日ステージのような激坂フィニッシュ、あるいは短めの(できれば登りの)TT、起伏の激しいステージでのスプリントなどなど――登り、荒地、TTあらゆる局面に強さを発揮する万能さは、「小さなファンアールト」のようなイメージだ。
ゆえに、そんな彼がファンアールトの重要なアシストとしてユンボ・ヴィスマに来てくれたことは非常に心強い。昨年のドワースドール・フラーンデレン2位など、クラシックにも高い適性を見せる彼が今年のファンアールトの「頂点」をサポートできるか。
また、純粋なスプリントではなく、その登坂適性を活かした丘陵ステージでの逃げからの小集団スプリント勝利――アルント的な――を狙うこともまた、彼が彼自身の栄光を追い求めるための価値ある方法だ。昨年のツール・ド・フランス第19ステージでの2位はまさにそのチャンスであった。
ティシュ・ベノート(ベルギー、28歳)
脚質:パンチャー
2019年ツール・ド・スイス総合4位や2020年パリ~ニース総合2位など、彼もまた登りもいけるオールラウンドな脚質は魅力的。
だが、今回のユンボ・ヴィスマ移籍でやはり期待したいのは、2018年のストラーデ・ビアンケ優勝、そして2015年ロンド・ファン・フラーンデレン5位などで見せるクラシックへの適性であり、ラポルトと共に任ぜられる「ファンアールト部隊」の一員である。
だが本当に彼の才能は未知数なところもあり、気が付けばブエルタ・ア・エスパーニャなんかでプリモシュ・ログリッチの山岳アシストをしている姿なんかを見かけるかもしれない・・・。
ローハン・デニス(オーストラリア、32歳)
脚質:TTスペシャリスト
新年早々、4年ぶりの国内選手権TT王者奪還を達成。新チームでの幸先良いスタートを切った。
チームにとっては昨年末引退となったトニー・マルティンの代わりとしてこの上ない人選であり、早速ツール・ド・フランスのメンバー入り。あの黙々とした走りで常に3人分の働きをこなしていたマルティンと全く同じ役割を果たせるかは分からないが、マルティンにはなかった強みとしては、2020年ジロ・デ・イタリアでのタオ・ゲイガンハート総合優勝を強力にサポートした山岳アシスト力。何しろかつては彼自身がグランツールの総合エースを目指していたほどの男だったのだから。
彼の存在によって、「ログリッチ軍団」も着実に強化されたといえるだろう。
トム・デュムラン(オランダ、32歳)
脚質:オールラウンダー
2010年代後半を駆け抜けてきた時代の英雄の1人。そこには数多くの苦難も待ち構えており、2021シーズンの冒頭には一時的にレースを離れることを決断した。
しかし、その選択に対してのチームの彼への接し方が良かったのか。
半年後には彼はレースに復帰し、少しずつマイペースに調子を上げていき、東京オリンピックではローハン・デニスを退けて5年前のリオに続く2枚目の銀メダルを掴み取った。
そして今年。彼は再びグランツールの総合エースとしてジロ・デ・イタリアに降り立つ。いや、トビアス・フォスと共に出場することが決まっているそのジロでは、必ずしもまだ「エース」かどうかはわからない。
しかし、今年が彼にとってまた新たな歴史のスタートラインになってくれるのであれば1人のファンとしてはとても嬉しい。どうか、悔いのないシーズンを過ごしてほしい。
トビアス・フォス(ノルウェー、25歳)
脚質:オールラウンダー
2019年ツール・ド・ラヴニール総合優勝者。前々回覇者、前回覇者のエガン・ベルナルとタデイ・ポガチャルがあまりにも規格外な存在のためそこまで目立たないが、しかし着実に実力を上げてきている。昨年は初めて完走したグランツールとなったジロ・デ・イタリアで総合9位。TT能力の高さと安定した登坂能力で総合エースとしての素質を見事に見せつけてくれた。
よって、今年もジロ・デ・イタリアでのエースの座を掴み取る。もしかしたらトム・デュムランとのダブルエース体制になるかもしれないが、ある意味でステフェン・クライスヴァイクやセップ・クスを押しのけて掴んだチャンスとも言える。
チームへの期待に応える走りを見せることができるか。
ミック・ファンダイケ(オランダ、22歳)
脚質:スプリンター
190㎝の恵まれた体格を生かした高出力を得意とし、昨年のツール・ド・ラヴニールではプロローグでの3位とチームタイムトライアルでの優勝によってマイヨ・ジョーヌを獲得。5日間にわたり着用し続けた。
直後のU23カテゴリレース、「フランダース・トゥモロー・ツアー」でも最終日TTで勝利してそのまま総合優勝。9月のクロ・レースでは起伏激しいステージでも上位でフィニッシュし続けた結果、総合3位と新人賞を獲得するなど、オールラウンドな才能を持ち合わせる。
今後どんな進化を果たすのか分からない、若き未知数な男だ。
ハイス・レームライズ(オランダ、23歳)
脚質:クライマー
ユンボ・ヴィスマには昨年に加入を果たしているが、エリートレースではまだまだ結果を出してはおらず、ツール・ド・ラヴニールで総合4位、同じくU23カテゴリのレースであるロンド・ド・リザールで総合優勝しているくらいか。
まだまだこれからの選手ではあるが、若き才能の1人ではあり、2年目となる今年、このチームがどんな可能性を導き出してくれるか楽しみでもある。彼もまた、ブエルタ・ア・エスパーニャとかで突然山岳アシストとして活躍し、将来的にヨナス・ヴィンゲゴーのような存在になっていても不思議ではない。
各チームへのリンク
トレック・セガフレード
UAEチーム・エミレーツ
スポンサーリンク