りんぐすらいど

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Team Jumbo-Visma 2019年シーズンチームガイド

読み:チーム・ユンボ・ヴィスマ

国籍:オランダ

略号:TJB

創設年:1984

GM:リチャード・プルッヘ(オランダ)

使用機材:Bianchiイタリア)

2018年UCIチームランキング:10位

(以下記事における年齢はすべて2019年12月31日時点のものとなります) 

 

 

 

2019年ロースター

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2019年はログリッチェ、クライスヴァイクの2名が本格的にグランツール総合上位争いを演じ、ジョージ・ベネットがそこに喰らいつく形に。セップ・クスもネオプロながら実力を示したシーズンとなった。来期はデプルスとホフステッドの2名のクライマーを追加。よりチームとしてステージレースでの総合成績を追い求めていくことに。

この新生「ユンボ」の目標のもう1つはフルーネヴェーヘンとファンポッペルによるスプリント勝利の量産という軸である。ローセンはその重要なアシストであるものの、全体的にまだ、他チームと比べてもエーススプリンターを支える体制は作り切れていないとも言える。トニー・マルティンの補強は、彼自身のTT勝利やチームTTへの貢献だけでなく、このスプリントアシスト体制の補強という点でも重要な意味を持つことだろう。

さらに、兼ねてより噂のあった、シクロクロス世界王者ワウト・ヴァンアールトの獲得がついに実現。この春、ライバルのマチュ―・ファンデルポールとの激戦が楽しみである。

北のクラシック要員としてはもう1人、マイク・テウニッセンという才能も獲得した。マルティンも適性は十分にあり、2019年のユンボは、ステージレース、スプリント勝利に加えて、この北のクラシックという3つ目の軸を手に入れたことになる。

 

じっくりと着実にそのポテンシャルの底上げを図りつつあるこの伝統チームが、2019年は大きな爆発を見せる可能性は十分にある。

 

 

注目選手

プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、30歳)

脚質:オールラウンダー

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2018年の主な戦績

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元スキージャンパー。ジュニア世界選手権では団体優勝も果たしている。それが23歳のときに引退し、サイクルロードレースへと転向。地元の名門コンチネンタルチームで才能あるクライマーとして密かに注目を集めていた。
そして現チームに移籍した2016年。ジロ・デ・イタリアの個人タイムトライアルで、トム・デュムランと1秒未満で争う強さを発揮。まずは有力なTTスペシャリストとして、表舞台に現れた。
翌年からも登りも強いオールラウンダーとして活躍を見せ、ブエルタ・アル・パイスバスコ(現イツリア・バスクカントリー)では勝利への積極性とダウンヒルの巧みさも新たな武器として見せつけた。世界選手権個人タイムトライアルではデュムランに次ぐ銀メダルを獲得し、TT能力、登坂力、ダウンヒルの全てにおいてバランスよく高い能力を持つことを証明してみせた。
そして2018年。各種トップステージレースでの総合優勝に加え、ツール・ド・フランスでの2年連続となるステージ優勝と、そして総合4位。彼はもはや、突如現れた才能の1人、というような存在ではなく、世界最高峰の実力をもったトップレーサーの1人であることが明らかとなった。
2019年のスケジュールは現時点ではまだ明らかになっていない。しかし、ジロやブエルタであれば、とくにTTの長いジロであれば、総合優勝に輝いたとしても全くおかしくはないだろう。さらにツール・ド・フランスであっても、総合表彰台は十分に狙えるはずだ。
なお、スロベニア人のグランツール総合優勝者は過去1人も存在しない。果たして、新たな時代を創り上げることはできるか。
 
 

ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、26歳)

脚質:スプリンター

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2018年の主な戦績

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2017年ツール・ド・フランスシャンゼリゼ覇者は、その時点ではまだ、世界最強の一段下、という印象だった。しかし2018年にキッテルが沈み、グライペルカヴェンディッシュの復活の見込みも立たない中で、いよいよ彼は、世界最強クラスのスプリンターであることを証明した。
それに最適の舞台となったのはやはりツール・ド・フランス。序盤こそオランダ選手権の疲れが残っており思うように力を発揮できなかったという彼だが、1週目の後半からは、2018年イマイチ実力を発揮できずにいたガビリアを、その力でもって真正面から叩き潰すかのような勝ち方を見せつけた。

suzutamaki.hatenablog.com

ゆえに、個人的には2018年、最強ピュアスプリンターはガビリアでもサガンでもヴィヴィアーニでもなく、この男だったのではないだろうかと思っている。それだけに、アルプスの山々でガビリアやキッテル共々リタイアしてしまったのは残念でならない。

2019年はさらなる圧倒的な強さでツールを完全支配してほしい。また、2018年はそこまで成績を出せなかった各種クラシックでの勝利にも手を出せると良いだろう。

 

 

ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、32歳)

脚質:オールラウンダー

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2018年の主な戦績

 

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2016年のジロ・デ・イタリアで覚醒し、第19ステージまでマリア・ローザを着続けた。以降、オランダの新たな総合エースとして、カタルーニャ総合7位やスイス総合3位、ブエルタ総合9位などの実績を残し続けてきた彼が、2018年はついにツールで総合5位に輝いた。しかも、チームメートのログリッチェを助け、彼を総合4位に据えたうえでである。ログリッチェのために繰り出した終盤の積極的な攻撃は、かつてのモビスターのキンタナ&バルベルデのコンビネーションを思い出させるものであった。ロードレースはこういうのが面白いんだ!

そして、単独エースで臨んだブエルタでは総合4位。特に、個人タイムトライアルではTTスペシャリスト達に混じっての区間4位。ログリッチェほどではないが、ピュアクライマーたちに差をつけるには十分すぎる実力だ。

2019年は2018年同様にツール~ブエルタでの出場。彼自身の総合成績にも期待するとともに、またログリッチェとの巧みなコンビネーションを見てみたくもある。 

 

 

その他注目選手

トニー・マルティン(ドイツ、34歳)

脚質:TTスペシャリスト

18-19シーズン移籍情報の中でもとくに驚いた情報の1つであった。世界選手権4勝の稀代のTTスペシャリストが、オランダの名門チームへ。元々TTスペシャリストたちが揃っているチームだけに、さらなる強化をもって、2019年のツールにも登場するチームTTへの対策を狙って行くのか。

あるいは、その牽引力を活かして、フルーネヴェーヘンのスプリントを導くためのラスト10km牽引で役立ってもくれるだろう。

もちろん、彼本来の強みを生かした個人TTでの勝利、あるいは逃げ切り勝利にも期待したい。このままで終わるマルティンではない! それいけ黄マルティン

 

ティモ・ローセン(オランダ、26歳)

脚質:パンチャー

フルーネヴェーヘンの躍進の陰にこの男あり。ドバイ・ツアーやフェーネンダール~フェーネンダール・クラシックでは彼のリードアウトの巧みさが光った。

また、ローセンはドバイ・ツアーのハッタ・ダムで3位。ツール・デ・フィヨルド総合6位、そしてGPケベック4位、モンレアル5位など、ピュアスプリンターのフルーネヴェーヘンでは対応できない登りフィニッシュやパンチャー向けレイアウトへの対応力が高い。

2019年は引き続きフルーネヴェーヘンのための強力なアシストを担いつつ、彼自身の勝利にも繋がってほしい。

 

セップ・クス(アメリカ、25歳)

脚質:クライマー

(当時)コンチネンタルチームのラリー・サイクリングから昇格し、2018年はプロ1年目。それでいてツアー・オブ・ユタでは圧倒的な力を見せつけて区間3勝と総合優勝。そしてブエルタでは序盤の山岳ステージで終盤まで残り、クライスヴァイクやジョージ・ベネットをしっかりとアシストした。

今、最も勢いを感じるアメリカ人若手ライダーである。2019年も順調に成長し、山岳アシストに、ステージレーサーにと活躍を期待する。

 

ワウト・ヴァンアールト(ベルギー、25歳)

脚質:ルーラー

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シクロクロス世界王者に3年連続で輝いている化け物の1人。2018年はロードレースでも存在感を示し、ストラーデ・ビアンケ3位、ロンド・ファン・フラーンデレン9位、パリ~ルーベ13位、ヨーロッパ大陸選手権ロードレース3位、ポストノルド・デンマークルント総合優勝と、圧倒的すぎる成績を残している。

しかし、契約していたヴェランダス・ウィレムス・クレラン(運営母体:スナイパー・サイクリング)と対立。10月に契約を破棄するという異様な事態に。訴訟問題にも発展し、心労も溜まっていたのか、本業のシクロクロスではライバルのマチュ―・ファンデルポールに手も足も出ないような状態が続いている。

しかしつい先日、ようやくチーム・ユンボ・ヴィスマとの契約が正式に決定! 正式加入はシクロクロスシーズンが終わった後の3月となるが、これでようやく気持ちを落ち着けることもでき、4度目の世界選手権制覇に向けて準備を整えることもできそうだ。

2019年はマチュ―も本格的にロードレース参戦を果たす。このシクロクロス界の2大巨頭がロードにおいて繰り広げる激戦が楽しみだ。現状、シクロクロスではマチュ―に差をつけられているワウトも、チーム体勢の差は大きくなるので、勝てる可能性は高いはずだ。

 

 

総評

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グリッチェ、クライスヴァイク、そして2018年はそこまで目立たなかったもののジョージ・ベネットもグランツール総合上位を目指す実力は十分にある。セップ・クスやボウマン、トルホークの覚醒も期待ができそう。

北のクラシックはとりあえずヴァンアールトに大きな期待を寄せていく。もちろんそれだけでなく、テウニッセンやファンデルホールンなどの新加入組も安定して勝利を稼げそうな実力者だ。

アルデンヌ・クラシックは、勝利にまで結びつけられるかはわからないが、ヘーシンクやローセンの活躍に期待。トルホークのクラシカ・サンセバスティアンでの好走も、2019年に向けた大きな伏線になっているように思える。

トニー・マルティンが加わったことで、ツールは「ログリッチェ、クライスヴァイク、マルティン」という夢の体制でのチームTTに臨めるかも。でもこれまでも有力なTTスペシャリストが揃っていたわりにチームTTでは期待ほどの結果を出せていないのは気になるところ。