りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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EF Education First Pro Cycling Team 2019年シーズンチームガイド

読み:イーエフエデュケーションファースト・プロサイクリングチーム

国籍:アメリカ合衆国

略号:EF1

創設年:2003年

GM:ジョナサン・ヴォーターズ(アメリカ)

使用機材:Cannondale(アメリカ)

2018年UCIチームランキング:16位

(以下記事における年齢はすべて2019年12月31日時点のものとなります) 

 

 

 

2019年ロースター

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このチームも大きくメンバーを入れ替えた。とくにカンゲルト、ヴァンガーデレンといった総合系の選手を補強し、リゴベルト・ウランと今年絶好調だったマイケル・ウッズと共にステージレースでの総合成績を追い求めていく。

若手ではダニエルフェリペ・マルティネスの成長に期待がかかるとともに、モビスターのリチャル・カラパスが推薦したというエクアドルのカイセドのポテンシャルが楽しみなところ。

昔から「どちらさま」系の才能を発掘し、育て上げることに定評のあるヴォーターズGM。ウッズも元は、「遅れてきた新人」であった。

 

一方、チームを去る選手も数多く。ローランは結局、ジロで1勝はできたものの、それ以外は大きく飛躍することなく再びフランスのチームへ。ブレンダン・キャンティ、トム・スカリーといった、育てきることができないままに行先不明となる選手も。

モレーノも、さりげなく驚きの移籍をしたはいいが、結局、何かを成し得ることなく、再び路頭に迷うことに。ホアキン、バルベルデの右腕だった男は果たして、どうなるの?

 

 

注目選手

リゴベルト・ウラン(コロンビア、32歳)

脚質:クライマー

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2018年の主な戦績

  • イル・ロンバルディア 4位
  • ブエルタ・ア・エスパーニャ 総合7位
  • クラシカ・サンセバスティアン 6位
  • ツアー・オブ・グアンシー 総合6位
  • ジロ・デッレミリア 2位

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2017年にツール総合2位とキャリア最大の成績を出すことのできた彼も、2018年のツールは落車に見舞われ途中リタイア。ブエルタは総合7位と悪くはなく、チームのポイント獲得に大きく貢献はしたものの、2019年も引き続きグランツール表彰台を狙っていけるかというと、正直、不安は残る。

一方で興味深いのは、秋のイタリア・クラシックにおける、マイケル・ウッズとのコンビネーションの妙。いずれも勝ちにまでは繋げられなかったものの、このコンビネーションが2019年のアルデンヌ・クラシックなどでも継承されれば、他チームにとっては十分な驚異となるだろう。

2019年は母国コロンビアのステージレースでシーズン入りを予定している。2018年も区間1勝と総合3位で幸先の良い開幕戦となっていただけに、2019年もまずは1勝を狙って行きたい。

 

 

マイケル・ウッズ(カナダ、33歳)

脚質:クライマー

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2018年の主な戦績

  • ブエルタ・ア・エスパーニャ 区間1勝
  • 世界選手権ロードレース 3位
  • リエージュ~バストーニュ~リエージュ 2位
  • ジロ・デッレミリア 4位
  • トレ・ヴァッレ・ヴァッレジーネ 4位

 

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ワールドツアー入りは3年前。遅れてやってきた新人として、毎年着実に成績を伸ばしてきているこの男が、2018年にはついにブエルタを勝利!だけでなく、リエージュ~バストーニュ~リエージュ2位、インスブルック世界選手権3位と、クライマー向けワンデーレースへの強さを発揮してみせてくれた。

一方で、2018年はステージレースでの成績がイマイチだった。2017年にはブエルタで総合7位を記録しているため、適性がないわけではないはず。一応、2018年ジロも総合19位ではある。

よって、2019年の目標はまずはステージレース。1週間程度の短いステージレースでの総合成績を安定して獲れるようになることで、よりチームのポイント獲得に貢献できるようになってほしい。

そのうえでもちろん、アルデンヌやクライマー向けワンデーでのさらなる成績にも期待。2019年はまずは「勝利」だ!

 

 

ダニエルフェリペ・マルティネス(コロンビア、23歳)

脚質:クライマー

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  • ツアー・オブ・カリフォルニア 総合3位
  • ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ 総合7位
  • コロラド・クラシック 新人賞

 

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期待されてのワールドツアーデビュー初年度。期待通りの結果をまずは見せてくれた。とくにツアー・オブ・カリフォルニアでの総合成績は驚き。エガン・ベルナルが強すぎたせいでいまいち目立ちきれなかった印象もあるが、冷静に考えれば恐ろしい成績だ。

とくに注目しているのは、第4ステージの34.7kmの個人タイムトライアルで10位という記録を出したこと。ロマンディの個人TTでは14位、ツール・ド・フランスの個人TTでは21位と、やはり悪くない成績。TTも強いオールラウンダー!というにはまだ足りないいものの、将来的にはその領域に達するだけの素質をもっている。そこは、他のコロンビアンにはなかなかない特長である。

2018年はグランツールはツールだけ。まだまだ物足りない。2019年は更なるステージレースへの出場と、グランツールでの経験を増やしていってほしい。ベルナルやソーサに負けるな!

 

 

その他注目選手

ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、31歳)

脚質:オールラウンダー

かつてのツール新人賞+総合5位。表彰台を約束されていた男であったはずが、どこからか調子が狂い始め、うまくいかないことの連続となってしまった。

しかし今、彼は大きなプレッシャーからの解放を経て、少しずつ自らの強みを生かした新たなステージへと到達しているように思える。何よりもその独走力の高さは圧倒的なバンテージである。チームとしては彼にグランツールでのエースを任せたいところはあるだろうが、TTを含みかつそこまで厳しすぎない山岳が適度にあるステージレース――たとえばアルガルヴェ、ロマンディ、カリフォルニアなど――での総合優勝を狙う方が、着実に結果にはつながるように思える。

とにかく、彼にはまずは、伸び伸びと走れる環境が用意されてほしい。1ファンとしては、強くそのように願っている。

 

サッシャ・モドロ(イタリア、32歳)

脚質:スプリンター

ベテランも若手も活躍するイタリアのトップスプリンター戦線から少しばかり後退。アメリカのチームで過ごす1年目は、決して良いとは言えない結果に終わった。

ピュアスプリントにおいては、一応、ジロでは2位が1回。ユーロアイズ・サンクラシック・ハンブルクでは7位。UCIポイントは稼げたが、では次は勝てるかというと微妙だろう。

一方、北のクラシックではほかのピュアスプリンターに比べればそれなりの結果を残した。オムロープ・ヘット・ニウスブラット14位、ヘント~ウェヴェルヘム11位など。

2019年も勝利の量産は難しいかもしれないが、スプリンター向けの各種クラシックでの上位をコンスタントに取っていきたい。

 

ジョナタンクレベル・カイセド(エクアドル、26歳)

脚質:クライマー

2018年ブエルタ・ア・コロンビア総合優勝。同じエクアドルの英雄となったリチャル・カラパスの推薦もあり、ヴォーターズGMが獲得。将来の総合系オールラウンダーとしての成長に期待がかかる。ブエルタ・アストゥリアスではカラパスと仲良く総合ワンツー。

2019年はまずはスペイン系のステージレースで実力の程を見せてほしい。

 

 

総評

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グランツールで期待できる選手がいないわけではない。ウラン、カンゲルト、ヴァンガーデレン、ウッズ、マルティネス、ヒュー・カーシーだってまだまだ期待している。しかしいずれにしても表彰台?うーん、TOP10に入ればいい方かな・・・。

一番期待できるのはアルデンヌ(系)・クラシック。とくに2018年に見せてくれた、ウッズとウランのコンビネーションがまた十分に発揮できれば・・・

チームTTに関しては、2018年ツールはそれなりによかった。タイラー・フィニーに、新加入のヴァンガーデレンが頑張ることで、それなりの結果は出せるだろう。

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