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Team Jumbo-Visma 2020年シーズンチームガイド

 

読み:チーム・ユンボ・ヴィスマ

国籍:オランダ

略号:TJV

創設年:1984年

GM:リチャード・ブルッヘ(オランダ)

使用機材:ビアンキ(イタリア)

2019年UCIチームランキング:3位

(以下記事における年齢はすべて2020年12月31日時点のものとなります) 

 

参考 

Team LottoNL-Jumbo 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

Team Jumbo-Visma 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

 

 

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2020年ロースター

※2019年獲得UCIポイント順。

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2019年ブエルタ覇者ログリッチェにツール総合3位クライスヴァイクに加え、2017年ジロ覇者であり2018年ジロ&ツール総合2位のトム・デュムランを新たに加え、グランツールにおける実力をさらに高めることとなった2020年のユンボ・ヴィズマ。すでにツール・ド・フランスのメンバーは早くも発表しており、上記3人の「トリプルエース」に加え、デプルスとクスの若手最強山岳アシスト2人に、若手だけでは不足する経験を補うベテランのロベルト・ヘーシンク、さらには1人で3人分の働きをするトニー・マルティンに同じく平坦アシストとして信頼できるワウト・ファンアールトと、全くもって隙のない布陣である。

いよいよ、6年ぶりの「イネオス(スカイ)打倒」が実現されてしまうのか。

 

そしてこのチームの強みは、グランツール総合だけではないこと。ツール回避を決めたディラン・フルーネウェーヘンは、ジロとブエルタに初挑戦。「3大グランツール全てでのステージ優勝が夢」と語る彼が、やや失敗した2019年シーズンを吹き飛ばすような「最強」ぶりを発揮できるか。

北のクラシックではもちろんワウト。ツールの怪我からの復活が不安なところだが、先日のシクロクロスでの「復帰戦」は期待以上の走りを見せてくれた。無理せず着実に回復してほしい。また、マイク・テウニッセンもシクロクロスで勝利しており、2020年の北のクラシックのセカンドエースとしても注目したい。

ドゥクーニンク、イネオスの「最強チーム」合戦に割り込む資格をたしかにもったこのチームが、果たして2020年にどんな伝説を作るか。

 

注目選手

プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、31歳)

脚質:オールラウンダー

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2019年の主な戦績

  • ブエルタ・ア・エスパーニャ区間1勝、ポイント賞、総合優勝
  • ティレーノ〜アドリアティコ総合優勝
  • ツール・ド・ロマンディ区間3勝、総合優勝
  • UAEツアー区間1勝、総合優勝
  • ジロ・デ・イタリア区間2勝、総合3位
  • イル・ロンバルディア7位
  • 年間14勝
  • 世界ランキング1位

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ジロ・デ・イタリアまでの出場レースは3つのワールドツアーステージレース(UAEツアー、ティレーノ〜アドリアティコ、ツール・ド・ロマンディ)のみで、その全てで総合優勝。チームも本人もあまりにも絶好調な中、挑んだジロ・デ・イタリアは「失敗」に終わった。・・・総合3位を失敗と捉えられてしまうほどに、彼は調子が良かったのだ。

そのあとも慎重に冷静に駒を進めた。ツール・ド・フランスはスキップし、国内選手権以外の全てのレースをスキップし、ブエルタへ。チームメートにも恵まれ、圧倒的な実力で、余裕の総合優勝を果たした。

そして秋のイタリア・クラシックにても、その実力は衰えを見せることを知らず、ジロ・デッレミリアとトレ・ヴァッリ・ヴァレジーネを連勝した。

とにかく強かったが、それは一瞬の輝きや偶然などでは決してない、実に勝つべくして勝った、という印象だった。すなわち、これからも彼は勝ち続けるだろうと確信をもって言えるほどに。

その安定感を支えているのは間違いなくチームメートたちだった。ローレンス・デプルス、ジョージ・ベネット、セップ・クス、平坦ではトニー・マルティンなど・・・若手からベテランまで、強力無比なチームメートに支えられ、この新たな時代の皇帝は2020年も大きな成果を残すことが期待されている。

 

 

トム・デュムラン(オランダ、30歳)

脚質:オールラウンダー

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2019年の主な戦績

  • ティレーノ〜アドリアティコ総合4位
  • UAEツアー総合6位
  • ミラノ〜サンレモ11位
  • 世界ランキング148位

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2017年ジロ・デ・イタリア覇者にして、2018年ジロ・ツール総合2位の選手。ポスト・フルームの最有力候補であり、スカイ(イネオス)の牙城を最も最初に崩す男・・・と思われていたが、2019年シーズンは彼にとって悲劇の年となった。

きっかけは、ジロ・デ・イタリアでの落車。そこからの回復が遅れ、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネには出場したものの途中リタイア。ツールもブエルタもパスすることとなった。

そして、契約期間が残っていながら、サンウェブとの契約を破棄し、ユンボ・ヴィズマ入りへ。その理由は、はっきりとしたことは分からないし、部外者がとやかく言うものでもないだろう。唯一はっきりしていることは、彼が2020年をこのユンボ・ヴィズマで走り、そしてツール・ド・フランスを、ログリッチェとのダブルエースで走る、ということである。

2019年の悲劇は、彼の力が衰えたことを意味するわけでは決してない。そしてまた、彼がダブルエースができない選手ということを示す要因も何もない。何せ彼はこれまで、総合エースとして肩を並べる者がいない中で走り続けてきたのだから。

2020年のツールがどうなるかはまだまったく予想がつかない。だが、私は彼とログリッチェとユンボ・ヴィズマというチームが、最終的にトムの満足そうな笑顔をもたらすものであることを強く願う。今言えるのはそれだけだ。

 

 

ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、27歳)

脚質:スプリンター

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2019年の主な戦績

  • ドリダーフス・ブルッヘ〜デパンヌ優勝
  • ツール・ド・フランス1勝
  • パリ〜ニース2勝
  • ツアー・オブ・ブリテン3勝
  • ダンケルク4日間レース3勝
  • 年間15勝
  • 世界ランキング28位

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2018年において世界最強を名乗ってもおかしくはない実力を見せつけた男。2019年もその序盤においてはたしかにそうだったが[リンク]、やがて中盤以降、とくにツールでは、やや走りに陰りが見えた。

とにかくピュアすぎる脚質は活躍の場面が限られ、ツールがまさにそうであったように、テウニッセンやファンアールトの方に活躍のチャンスが与えられる場面も多くあった。2020年はツールには出場せず、ジロとブエルタに挑戦するという。事実、2020年のツールはピュアすぎるスプリンターには厳しく、また2020年のブエルタはブエルタらしくないほどスプリンターに優しいという。納得の選択である。

ピュアスプリントにおいても、ビンクバンクツアーなどでサム・ベネットにしてやられ続けていたのは気になるところ。はっきり言って、2019年は彼にとって成功と言えるシーズンではなかった。2020年は「復活」が求められる。

 

ワウト・ファンアールト(ベルギー、26歳)

脚質:ルーラー

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2019年の主な戦績

  • E3ビンクバンク・クラシック2位
  • ストラーデ・ビアンケ3位
  • ミラノ〜サンレモ6位
  • ベルギー国内選手権個人タイムトライアル優勝
  • ツール・ド・フランス1勝
  • クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2勝
  • 世界ランキング37位

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シクロクロス世界王者を3年連続で取っていた男。そのロードにおける才能は2018年のストラーデ・ビアンケで3位に入ったことで認められていたが、2019年に再び3位を取ったことで、それがまぐれなんかでは決してなかったことを証明した。

しかし期待されたパリ〜ルーベでは、中盤から落車やメカトラが頻発し、チームメートとの連携もうまく取れていないような場面も多く見られ、そんな中でも終盤先頭に舞い戻るほどの強さを見せたものの、最後は中盤の無理がたたって失速した。実に悔しい思いを経験することとなった。

 

だがそこから彼は復活し、そして驚くべき姿を見せた。クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでのTT優勝と、そしてスプリントでの勝利。さらにはツール・ド・フランス本戦でも、同じくスプリントで勝利を飾った。

2019年はマチュー・ファンデルポールの強すぎる姿が話題になったが、ワウトもまた同様に怪物であることを知らしめた。少なくともグランツールでのこの快挙は、マチュー にはまだ真似できないものであるから。

しかしここでもう1つの悲劇に見舞われることにも。優勝候補にもなっていたポーでの個人タイムトライアルで落車し、フェンスの形状によって大怪我を負ってしまったのだ。選手生命に関わる可能性すらあったこの怪我を乗り越えて、ワウトは2019年末にシクロクロスのレースでの復帰戦を迎えた。

無理はせぬままにリハビリを続け、再び2020年のツールで元気な姿を見せることを楽しみにしている。

 

 

その他注目選手

ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、33歳)

脚質:オールラウンダー

2016年ジロ・デ・イタリアでマリア・ローザに限りなく近づき、そして2019年ツール・ド・フランスで総合3位表彰台に登った男。オランダ最強のオールラウンダーの座はデュムランに、ユンボ・ヴィズマ最強の男の座はログリッチェに譲ったという思いがあるからかもしれない。どことなくその言葉には遠慮がちな、夢を追い求め過ぎない響きを感じ取れる。しかしその実力は紛れもなく高く、そして2020年、彼はブエルタ・ア・エスパーニャでのエースを任される。

彼は「表彰台」と口にする。だが、それをやや自信なさげに口にしたツールは見事それを掴み取った。ブエルタであれば、彼は十分に、その頂点を狙えるはずだ。堂々と、まっすぐそれに向かって欲しい。

そして、ツールではデュムランとログリッチェとチームを組んで挑む。トリプルエース、という見方もあるが、ブエルタもあるので、一応ツールではクライスヴァイクはあくまでも2人のアシストをするのではと思う。2018年のツールでも、ログリッチェとのほとんどダブルエースの体制の中で、彼を確かに支えきった。同じような走りをすることへの信頼感は強くある選手だ。

彼と2人のエースが揃えば、イネオス(スカイ)が長年作り上げてきた牙城を打ち崩すことは十分に可能だ。

 

 

ジョージ・ベネット(ニュージーランド、30歳)

脚質:クライマー

2017年ツアー・オブ・カリフォルニア覇者。前年は大きくタイムを落とす要因となったタイムトライアルをしっかりと改善したうえでの文句なき勝利であった。正直そこまでは決して名を馳せた男ではなかったが、一気にその実力の高さを世界に轟かせた。遅れてきた「黄金世代」であった。

同年のツール・ド・フランスでも、激坂ペイラギュードで強さを見せていた。が、そのあとは完走できずリタイア。2018年はジロ総合8位に留まる。

2019年はツール・ド・フランスにクライスヴァイクとのダブルエース体制で臨むが、第1週の最終日に横風によって大きくタイムを失い脱落。その悔しさは計り知れないものであっただろう。

だが、そこからの彼の山岳アシストぶりは、クライスヴァイクの総合3位を確実に支えうるものであった。そして2020年、彼は再び(おそらくは)単独エースでジロに挑む。

まずは目指すは表彰台。銀河系軍団チームの中で、その存在感を示す最大にして、もしかしたら最後のチャンスかもしれない。

 

 

ローレンス・デプルス(ベルギー、25歳)

セップ・クス(アメリカ、26歳)

脚質:クライマー

2人の共通点は、若くしてチームのエースたちを強力に支えた山岳アシストであること、そして、2人とも2019年において自らの勝利を手に入れた男であることだ。

デプルスはビンクバンクツアーで総合優勝。そしてクスは、ブエルタ・ア・エスパーニャにて逃げ切り勝利。いずれも、チームの次期エースに相応しい堂々とした走りであった。

そして、その走りが認められたからであろう。数ある優秀なアシストたちの中から、この2人がヘーシンクと並んで2020年ツールの「トリプルエース」を護る重要な役割を与えられることとなった。

2014年以来6年ぶりとなる「イネオス(スカイ)打倒」を成し遂げる、非常に重要な役割を担うことになるのがこの2人なのである。今から7月が楽しみだ・・・怪我だけは、しないように。

 

 

クリス・ハーパー(オーストラリア、26歳)

脚質:クライマー

ベネロング・スイスウェルネスやブリッジレーンに所属し、ツアー・オブ・ジャパンでもおなじみの選手。2018年には総合4位と新人賞、そして2019年には富士山ステージを制し、見事総合優勝を飾った。

そんな「おらが村」の青年が、飛ぶ鳥を落とす勢いのユンボ・ヴィズマに移籍。これは応援せざるを得ない。

もちろん、実力も折り紙つきだ。2018年にはオセアニア大陸王者に輝いており、2019年にはツール・ド・サヴォワ・モンブランでステージ2勝&総合優勝と圧勝している。2クラスのレースではあるものの、2016年にエンリク・マスが、2017年にエガン・ベルナルが総合優勝している由緒あるレースだ。

素質は十分。あとはこのチームで、どれだけの進化を見せてくれるか・・・。

  

 

トビアス・フォス(ノルウェー、23歳) 

脚質:クライマー

2019年ツール・ド・ラヴニール覇者。前年覇者のポガチャルが2019年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合3位、2018年覇者のベルナルがツール・ド・フランス総合優勝していることなどを考えるとついつい期待したくなってしまうが、フォスにはこの2人ほどの圧倒さはないようには感じる。

ただ、経験は長い。チーム・ジョーカーやウノエックスなど、有力コンチネンタルチームに所属し、地元ツアー・オブ・ノルウェーなどで早くからトップ選手たちに混じって経験を積んでいた彼は、その意味で同年代の選手たちよりも先んじているところはあるだろう。

あとはユンボがその意味で、若手育成に強みを持てるチームであるかどうか。まずは最強エースたちのアシストから始めて、数年後の完成に向けた第一歩を踏んでいくことにしよう。

 

 

総評

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グランツールの強さは文句なし。北のクラシックもワウト・ファンアールトとマイク・テウニッセンという2人のエースを抱える。チームTTも世界最強クラスのマルティン、ファンエムデンが控え、そもそもログリッチェとデュムランが世界の5本の指に入るのだから、強くないわけがない。ステージ優勝はもちろんフルーネウェーヘンと、山岳逃げもエース級の選手たちがこれだけいれば文句はないだろう。

 

唯一、手が欠けているのはアルデンヌ系クラシックである。デュムランやログリッチェはワンデーにも適性を持つが、そこの専属エースというのはなかなか難しい。

デプルスやトールクがやや可能性があるのと、ハーパーやフォスなどの新加入選手にやや期待したいところ。

 

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