読み:チーム・サンウェブ
国籍:ドイツ
略号:SUN
創設年:2005年
GM:イワン・スペケンブリンク(オランダ)
使用機材:サーベロ(カナダ)
2019年UCIチームランキング:15位
(以下記事における年齢はすべて2020年12月31日時点のものとなります)
参考
Team Sunweb 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Team Sunweb 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
スポンサーリンク
2020年ロースター
※2019年獲得UCIポイント順。
チームの顔であるデュムランの離脱がこのチームに与える影響は大きい。もう1つの顔であるマシューズや、新加入のベノートも、安心してその成績を期待できるほど安定した状況でもない。少なくとも、2015年のブエルタ以降このチームが志向してきたはずの「グランツール路線」は、一旦ストップせざるを得ないであろう。
代わってこのチームのメインテーマとなるのは、若手の育成。実際、他チームと比べると異様なまでに低い平均年齢がそれを物語っている。そして実際に、このチームは有望な若手が多い。スプリンターのボル、パンチャーのヒルシ、総合系ライダーのオーメン・・・彼らを導くべき先輩も2020年で30歳のマシューズや29歳のケルデルマンとまだまだ若くはあるが、ともかくこの有望な若手をどれだけ育て上げられるかが、2020年の「成功」を左右する。
正直、そこまで悲観はしていない。というよりは、いきのいい若手の多いチームは楽しみで仕方がない。2020年も、このチームは好きなチームであり続ける気がする。
注目選手
マイケル・マシューズ(オーストラリア、30歳)
脚質:スプリンター
2019年の主な戦績
- グランプリ・シクリスト・ド・モンレアル優勝
- ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2勝
- ロンド・ファン・フラーンデレン6位
- ラ・フレーシュ・ワロンヌ8位
- ミラノ〜サンレモ12位
- 世界ランキング33位
デュムランも去ってしまったこのチームにおける、「顔」となるべき立場に立たされている。ここ数年のマシューズも、もちろん弱くは決してないが、本来の実力を100%出せているかといえばそうでもない状況だとは思っている。しかし苦境に立たされるこのチームを救うのは、新加入のベノートと、そしてこの男なのだ。
また、いつまでも若手というイメージのあった「黄金世代」の一員ではあるものの、若手ばかりのこのチームにおいてはもはやベテランの1人。ケース・ボルやマルク・ヒルシ、あるいはマックス・カンターといった才能ある若手選手たちを導く役割も重要になるだろう。
「キラキラ」マシューズも、今やお父さん役である。時代の流れは早い。
ティシュ・ベノート(ベルギー、26歳)
脚質:ルーラー
2019年の主な戦績
- ブルターニュ・クラシック2位
- ツール・ド・スイス総合4位
- ストラーデ・ビアンケ5位
- ドワースドール・フラーンデレン5位
- ロンド・ファン・フラーンデレン9位
- ティレーノ〜アドリアティコ総合12位
- 世界ランキング30位
この男の脚質を規定するのは実に難しい。最初に名を馳せたのはデビュー年となる2015年。いきなりのロンド・ファン・フラーンデレン5位に、近い将来のフランドルクラシック王者になると誰もが想像した。
しかしそこからプロ初勝利までは長く待たされることとなり、その勝利はようやく、2018年のストラーデ・ビアンケにて果たされた。
では彼は北のクラシックスペシャリストなのか? しかし彼はまた、登りスプリントに強いなどの、パンチャー的特質を持っている。ストラーデ・ビアンケもパンチャー向きの特性も持つ。
また彼は、1週間程度のステージレースであれば、厳しい山岳を含んでいても総合争いをできる足も持つ。2019年のスイス総合4位などは、その最たる例である。
すなわち彼はクラシックスペシャリストなのか?スプリンターなのか?ステージレーサーなのか?
少なくとも言えるのは、なかなか勝ち星は稼がないものの、チーム内で存在感を示し続ける万能な才能の持ち主であるということ。ステージレース総合争いでも、スプリントでも、クラシックでも、抜け出たものに窮している現状のサンウェブにとって、重要な存在であることは間違いないだろう。
マルク・ヒルシ(スイス、22歳)
脚質:パンチャー
2019年の主な戦績
- クラシカ・サンセバスティアン3位
- ビンクバンク・ツアー総合5位
- ドイッチュラント・ツアー総合6位
- E3ビンクバンク・クラシック10位
- ツアー・オブ・ノルウェー総合15位
- 世界選手権ロードレース27位
- 世界ランキング95位
2019年最も飛躍し、才能を育んだ若手の1人だと思っている。元々の脚質はクライマー寄りのパンチャー。2018年インスブルック世界選手権を制したその登りの力は、2019年のイツリア・バスクカントリーにおける登りスプリントフィニッシュで連続して上位に入ったこと、そして、クラシカ・サンセバスティアンで、3位に入ったことに見出される。
とくにクラシカ・サンセバスティアンでは、エフェネプールが逃げ切り勝利したため、集団内では2位でゴールしたことになる。彼より上はグレッグ・ファンアーフェルマートのみ。ゴルカ・イサギレより、バウケ・モレマより、エンリク・マスよりも上位だったのだ。2019年はエフェネプールやポガチャルや才能ある若手ばかりでヒルシは決して目立ってはいなかったと思うが、冷静に見ればこの男もネオプロとは到底思えない実力の持ち主である。
また、この男の魅力的なところは、北のクラシックへの可能性を持っていること。10位で終えた「ミニ・ロンド」ことE3ビンクバンク・クラシックでは、中盤のボブ・ユンゲルスの逃げにしっかりと食らいつくなど、確かな適性を見せていた。
これからもまだまだ進化が期待できる男。2020年最大の注目株の1人だ。
なお、2020年の世界選手権はスイスで開催されるが、スイス人の中で最も期待できる優勝候補はこの男だと思っている。
その他注目選手
ケース・ボル(オランダ、25歳)
脚質:スプリンター
このチームで今最も注目すべきスプリンターだ。まずはノケレ・コールスで、登りスプリントにおいてパスカル・アッカーマンを降して優勝。続いてツアー・オブ・カリフォルニアにて、最終日にアシストの力を借りず、向かい風をものともしない強烈なスプリントで勝利を掴んだ[リンク]。
そして、ツアー・オブ・ブリテンでも、マチュー・ファンデルポールやマッテオ・トレンティンに次ぐ実力を見せたと言っても過言ではない。2020年においては、ブエルタあたりでステージ優勝を飾ってもまったくおかしくはなく、飛躍を期待できる選手だ。
ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、29歳)
脚質:オールラウンダー
デュムランが去ったこのチームにおける総合エースであることは間違いない。その素質は十分にある。あとは、ここ2年陥っている不調から抜け出すこと。
実際、2020年は彼にとって最大のチャンスである。元々、2019年は、グランツールではデュムランのアシストであることを年初に求められ、不満も感じさせていた。実際にはデュムランの負傷によりツールとブエルタのエースの座を手に入れた彼だったが、彼自身も怪我に苦しめられ、最後まで実力を発揮しきれなかった。
逆にいえば、怪我さえなければ、復活の目は十分にあるということ。大丈夫、きっと2020年は、このケルデルマンによって、サンウェブの復興が成し遂げられる。
サム・オーメン(オランダ、25歳)
脚質:クライマー
この男もまた、2019年シーズンを怪我により、本来の実力からは程遠いリザルトで終えることとなってしまった男である。2020年はケルデルマンと並び、チームの2大エースとして、何らかの爪痕を残していきたい。
とはいえ、ブエルタ総合4位経験をもつケルデルマンに比べ、オーメンはまだ、ジロ総合9位が最高の成績。まずはこれを、5位以内にまで引き上げたいところ。慌てず、着実に結果を出すシーズンとしよう。
総評
決して評価の高いチームではない。だが、ポテンシャルはある。ケルデルマンはグランツールの総合表彰台を十分狙えるし、ヒルシは北のクラシックでもアルデンヌ系クラシックでも表彰台を狙える。北のクラシックで表彰台を狙えるのはベノートもそうだし、マシューズもそろそろ、彼が得意とするはずのアムステルゴールドレースやリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで表彰台を取ってもおかしくはない。チームTTもデュムランがいなくなってもチャド・ハガやオーメン、ケルデルマンなどは相変わらず強い。スプリントではマシューズが中心にはなるが、ボルも2019年以上に稼いでくれるはずだ。
今はまだ、十分ではない。だが、1年後の評価は、大きく異なっているはずだ。きっと。
スポンサーリンク