読み:トレック・セガフレード
国籍:アメリカ
略号:TFS
創設年:2011年
GM:ルーカ・グエルチエーナ(イタリア)
使用機材:トレック(アメリカ)
2019年UCIチームランキング:11位
(以下記事における年齢はすべて2020年12月31日時点のものとなります)
参考
Trek - Segafredo 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Trek - Segafredo 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
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2020年ロースター
※2019年獲得UCIポイント順。
かつてはカンチェラーラ、コンタドール、2019年はポートで、2020年はヴィンツェンツォ・ニバリ。旬を過ぎたベテランを獲得したばかりで・・・と批判されることもあるトレックの移籍戦略。
とはいえ、ニバリは2019年にもジロ総合2位とツール区間1勝と十分過ぎる結果を出している選手。トレックも結局はセカンドスポンサーもGMもイタリアで、在籍数としてもイタリア人が最も多い実質的なイタリアチーム。この獲得は決しておかしいものではないだろう。
そして、若手育成にも力を入れている。2019年に飛躍したチッコーネはもちろん、育成チーム登録しているコメタサイクリングからも2名昇格。2019年の昇格組だったモスケッティも2年目の飛躍が楽しみだ。
そして、2人目のエフェネプールともいうべきシモンズはアメリカ人。彼らの成長をベテランが支える構図なのだとしたら、それは望ましい体制だと言える。
あとはポートの復活を、頼む・・・。
注目選手
バウケ・モレマ(オランダ、34歳)
脚質:クライマー
2019年の主な戦績
- イル・ロンバルディア優勝
- ジャパンカップ・サイクルロードレース優勝
- ジロ・デ・イタリア総合5位
- クラシカ・サンセバスティアン5位
- ラ・フレーシュ・ワロンヌ6位
- グランプリ・シクリスト・ド・モンレアル10位
- ツール・ド・フランス総合28位
- 世界ランキング11位
エースになるにはやや力不足。そんな印象の選手だったが、2019年はイル・ロンバルディア制覇という大きな成果を出す。日本人としては、勅語のジャパンカップの「2勝目」と合わせ、強く印象に残る選手となった。
そもそも、グランツールでの総合上位やステージ優勝もコンスタントに確保してくる選手である。2020年も、活躍自体は十分に期待できるだろう。
そして、2020年の現時点でのスケジュールは、リッチー・ポートと共にツールとブエルタに出ること。実績だけでいえばツール・ド・スイスなども総合優勝しているポートの方が上のように思えるが、2019年の不調のことを思うと、モレマの方がエースとして走る可能性は十分にある。
ブエルタの総合表彰台なんかは、まだまだ狙えない選手では決してない。もちろん、東京オリンピックなんかも、彼にとっては非常に向いたレースなのは間違いない。
ヴィンツェンツォ・ニバリ(イタリア、36歳)
脚質:オールラウンダー
2019年の主な戦績
- ジロ・デ・イタリア総合2位
- ツール・ド・フランス区間1勝(第20ステージ)
- ツアー・オブ・ジ・アルプス総合3位
- ミラノ〜サンレモ8位
- リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ8位
- 世界ランキング32位
この男も息の長い男である。実際、現役選手の中ではクリス・フルームと並んで3大グランツールを制しているたった2人の男の1人である。その実力は未だ衰えることなく、この年齢にしてジロ・デ・イタリアの総合2位を獲得したほか、2017年には2回目のイル・ロンバルディアを制し、2018年にはイタリア人の悲願たるミラノ〜サンレモ制覇も果たしている。2020年もまだまだ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュや東京オリンピックを制しても何らおかしくはない。
この男のさっぱりとしているところは、すでにツール・ド・フランスの総合優勝を諦めているところだ。かつて1度制した際には、圧倒的な力でステージ4勝と合わせて総合優勝を果たしていたのに、フルームもコンタドールもキンタナもいない中だったから、という評価をされているのは本人も悔しかっただろう。
しかし、今彼はそれを最優先にはしない。2019年もステージ優勝にフォーカスを当て、これをきっちりと手に入れた。2020年も東京オリンピックを優先し、出場回避を選んだ。
何よりも彼が、ある意味でツール以上にジロを愛していることが見ていて嬉しく思う。
イタリアを愛し、イタリアに愛される男。その意味で、まだまだ彼は現役であり、彼に代わる人物はまだ現れていない。
ヤスペル・スタイフェン(ベルギー、28歳)
脚質:スプリンター
2019年の主な戦績
- ドイッチュラント・ツアー総合優勝
- ライドロンドン〜サリー・クラシック4位
- グランプリ・シクリスト・ド・ケベック5位
- ツール・ド・ユーロメトロポール3位
- ブリュッセル・サイクリング・クラシック5位
- グランプリ・ド・フルミー6位
- バンシュ〜シメイ〜バンシュ6位
- 世界ランキング42位
ジャスパー・ストゥイヴェンとも。エドワード・トゥーンスと並ぶ、トレック・セガフレードの若手ベルジャンスプリンターかつクラシックハンター。だが、そちらの成績に関しては、トゥーンスと並び、2位につけることは多くてもなかなか勝つことはできずにいる。
ただ、スタイフェンの場合、もう1つの武器となるのが、適切なタイミングにおける「終盤抜け出し」からの逃げ切り勝利である。彼の場合、このパターンでの勝利が非常に多い。
たとえば2016年のクールネ〜ブリュッセル〜クールネでは残り17.2㎞で、チームメートのボーイ・ファンポッペルに牽引されてからのアタックで見事な独走逃げ切り勝利を決めた。2017年のビンクバンク・ツアー最終ステージ(カペルミュールを含んだフランドルステージ)では残り3.3㎞から飛び出してジルベールから逃げ切った。
2018年もビンクバンク・ツアーで、ピュアスプリンター向けの第4ステージの、誰もが集団スプリントを予想していた残り1㎞。複合コーナーが待ち構えるそのエリアに到達すると、スタイフェンは集団の先頭から加速。その番手につけていたのはチームメートのマッズ・ペダースンで、スタイフェンが加速したのを見るや、唐突に減速した。
これで、わずかな隙間が生まれた。終盤エスケープ巧者スタイフェンにとって、このわずかな隙間で十分だった。曲がりくねったテクニカルなラスト1㎞を駆け抜けて、カレブ・ユワンの猛追をギリギリで張り切って勝利を掴んだ。
2019年はドイッチュラント・ツアーの第3ステージで、カスパー・アスグリーンと共に集団を17秒張り切って逃げ切りに成功した。ステージ優勝はアスグリーンに奪われるが、総合リーダーの座は獲得し、翌日第4ステージもこれを守り切り、彼にとって初となるステージレースの総合優勝を手に入れた。
また、9月のプリムス・クラシックにおいても、同じくレイトアタックを繰り出そうとしてこのときは失敗するが、代わりに吸収される直前に集団からアタックしたエドワード・トゥーンスのために最後の力を振り絞って牽引し、最後にアッカーマンをごくほんのわずか張り切るトゥーンスの劇的逃げ切り勝利を演出した。仲間に助けられることも多かった彼が、仲間のために力を尽くした瞬間だった。2019年ロードレースで最も熱いレースの1つだったと思っている。
トーマス・デヘントのような逃げスペシャリストとはちょっと違う、「終盤抜け出し」型のアタッカー。2020年も、この「トレックらしさ」を活かした勝ち方を次々と見せてくれることを願う。
その他注目選手
リッチー・ポート(オーストラリア、35歳)
脚質:オールラウンダー
リッチーはもう終わったのか? かつて、クリス・フルームの最強のアシストとして台頭し、キンタナと並び彼を倒せる可能性を持つ男として注目された。しかし、2017年・2018年とツール・ド・フランスの「魔の第9ステージ」に阻まれ、これを乗り越えた2019年はそもそも年間を通して存在感をまったく示さないシーズンとなった。
リッチーはもう、終わったのか?
いや、と思いたくはある。とりあえず、まずは地元オーストラリアのツアー・ダウンアンダーで、ウィランガ・ヒル7連覇を達成させたうえで、復活のシーズンをスタートさせたい。なお、2020年は、2017年に彼がダウンアンダーを制した際にポイントとなったパラコームフィニッシュが用意されている。彼の2度目の総合優勝も十分に考えられる。
そして、2020年のツール/ブエルタは、バウケ・モレマとのダブルエース体制だ。チームとしてもリッチーに全幅の信頼を寄せられないがゆえのダブルエース体制なのだろうが、今の彼にとってはむしろ、安心できる材料となるかもしれない。
まだ終わりじゃない。あのとき、絶頂期だったキンタナすらぶち抜いて、クリス・フルームの後を追ってラ・ピエール・サン・マルタンの頂上に入線した彼の強さをもう一度。
マッズ・ペダースン(デンマーク、25歳)
脚質:ルーラー
2019年の荒れたヨークシャー世界選手権において、誰もが驚くべき勝利を成し遂げた。
だが、その勝利が決して奇跡でもまぐれでもなく必然であったことは、次の記事で書かせていただいている。
https://www.ringsride.work/entry/19WorldChampionship
マッズの武器は何だろうか? 上の記事でも書いているが、それはデンマーク人特有の高い独走力とロンド・ファン・フラーンデレン2位の経験からわかる石畳適性、そして2019年のビンクバンク・ツアーで見せたスプリント力である。
あるいは、今回のヨークシャーで見せた、冷たい雨風への強い適性とサバイバル能力も、その中に要素として加わるかもしれない。
主な役割はクラシック風味のスプリント展開で、チームのエーススプリンターを勝たせるための発射台・牽引役。比較的アシストに回ることも多い地味な役回りは、もしかしたら大きくは変わらないかもしれない。
ただそんな中、再びアルカンシェルが集団の先頭で舞う姿を見てみたい。アムステルゴールドレースとか、オンループ・ヘット・ニュースブラッドとか、ドワースドール・フラーンデレンなんかも、相性の良いレースだと思うんだけど、どうだろうか。
ジュリオ・チッコーネ(イタリア、26歳)
脚質:クライマー
2019年最も飛躍したイタリア人の1人。すでに2016年、バルディアーニCSF所属時にジロ・デ・イタリアで1勝している。あの時の勝利がまぐれでも何でもなく、確かな実力と才能に基づいているものだったんだということを2019年、証明してみせた。
それにしても強すぎである。 ジロのステージ優勝と山岳賞はもちろん、ツール・ド・フランスでもラ・プランシュ・デ・ベルフィーユで2位に入る登坂力を見せながらマイヨ・ジョーヌを着用。最終的には総合11位で終わりはしたが、彼が今後のイタリア総合勢の中で存在感を示し続けるであろうことを否応なくイメージさせる1年であった。
2020年はイタリアの伝説ヴィンツェンツォ・ニバリに付き従ってのジロ参戦。山岳賞を再び狙いつつ、この大ベテランのもとで、未来に繋がる経験をさらに積んでいくようにしよう。
ニクラス・イーグ(デンマーク、25歳)
脚質:クライマー
りんぐすらいど的未来が楽しみな選手TOP5には入りそうな選手。リザルトとしてはあまり大きなものは残っていないが、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでの積極的な走りと、ツアー・オブ・ユタでの総合5位など、ポテンシャルを見せた1年であった。
2020年は化ける可能性あり。ただし、もっと若手で強い選手も台頭してきているので、そこそこに強い選手、で終わってしまう可能性もある。
クイン・シモンズ(アメリカ、19歳)
脚質:ルーラー
2020年のエフェネプール、とでも言おうか。彼と同様に、19歳でU23カテゴリをすっ飛ばしてのワールドツアー入り。ジュニア世界選手権でも、33㎞を独走して2位に56秒差をつけての圧勝。
ただ、さすがにエフェネプールほどの圧倒的なものはない。二匹目のドジョウを狙う、というわけにはいかなそうだ。それでも、アメリカにとってみれば、グレッグ・レモン以来のヒーロー候補として、期待したくなるところだろう。
まずは1年目。どんな走りを見せるのか。
総評
ニバリはまだまだジロで結果を出してくれると期待する。あとはポートとモレマがどうなるか・・・。
ポテンシャルとしては北のクラシックもアルデンヌも持っているチーム。ハマれば絶対強いのだが、残念ながらなかなかハマらなかったのが2019年だったりもする。アルデンヌ(系)はモレマがしっかりと結果を出してくれたけど。
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