読み:トレック・セガフレード
国籍:アメリカ
略号:TFS
創設年:2011年
使用機材:Trek (アメリカ)
2017年UCIチームランキング:5位
(以下記事における年齢はすべて2018年における数え年表記となります)
2018年ロースター
2016年のカンチェラーラ引退に続き、コンタドールも引退したことで、突き抜けたスター選手がいなくなってしまったトレック。
だが、2017年からメンバー入りしているデゲンコルブと、着実に力をつけてきているフェリーネ、スタイフェンらによる北のクラシック戦略、そして2016年ツールで終盤まで総合2位をキープしていたモレマと、実力を示し続けているパンタノによるグランツール総合争いなど、まだまだ実力者は十分に揃っている。
新加入はブランビッラやスクウィンシュなど、アタッカーが揃っており、グランツール総合争い、クラシック、ステージ優勝とバランス良く上位を狙っていけそうではある。
注目選手
ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、29歳)
脚質:スプリンター
2016年1月の交通事故により、指が切断寸前までいく大怪我を負ったデゲンコルブ。2017年は新チームに移籍し、ようやく事故後初のフルシーズンを過ごすことができた。
2月のドバイでの勝利は本人にとっても良いスタートだったようだ。春のクラシックでは3つのモニュメント全てでTOP10に入れている。「もちろん大きな勝利だけが注目されるのは知っているけれども、それでも僕は自分の成果に誇りを持てたよ*1」とインタビューでも自ら語っている。
同じ年にミラノ~サンレモとパリ~ルーベを制した記録を持つ人物は彼を含めて3人しかいないという。そもそもデゲンコルブは、引退したカンチェラーラと入れ替わるようにしてトレックに招かれたのであって、トレックとしては彼に、同じように北のクラシックでの大活躍を望んでいたことは間違いない。まだ本調子ではない状態での、上記3つのモニュメントでのTOP10は、2018年に向けて彼に大きな期待を抱かせる十分な理由になりうるだろう。
もちろん、ツール・ド・フランスでの勝利にも期待したい。2017年も、(クラッシュがあったにも関わらず)なんだかんだ2位や3位を獲っていた。そして、2018年のツールには、石畳も登場する。チームメートのストゥイヴェンやフェリーネらと共に、2018年の石畳クラシックはトレックが制圧してしまうのかもしれない。
力強い走りで石畳を疾走するデゲンコルブ。石畳の振動は負傷した指に負担をかけてしまう気もするが、それでも彼は持ち前の精神力でこれを乗り越えていく。2018年は更なる結果を出すことができるか?
バウケ・モレマ(オランダ、32歳)
脚質:クライマー
2013年~2015年のツール・ド・フランスで連続して総合TOP10に入る。2016年ではモン・ヴァントゥーのステージで、キンタナも遅れる中、フルーム&ポートに唯一喰らいついていくことのできた選手である。この年は最終的に一気に順位を落とすことになるのだが、終盤まで総合2位を維持することができており、本人としても調子の良さを感じていたはずだ。
2017年はコンタドールを迎えたことで、ツールではエースを任されることはなかったが、代わりに念願のツール初勝利を獲得した。ジロでも総合7位と、実力は十分に証明しているので、コンタドールが去った2018年は、再びツールでエースを担えるチャンスとなるだろう。
2017年ツールで、念願のツール初勝利を獲得したモレマ。2018年は総合表彰台を目指したいところ。フルーム、デュムランがジロに集中することもあり、チャンスは十分にあるはずだ。
ハルリンソン・パンタノ(コロンビア、30歳)
脚質:クライマー
2016年ツールにて、雨のアンドラ・アルカリスを傘を差しながら登ったコメディ枠・・・かと思いきや、そのツール後半で恐ろしいまでの下りを見せ、視聴者の度肝を抜いた。
2017年はトレックへの移籍が決まり、コンタドールの最強登りアシストとしての活躍が期待された。そして、パリ~ニース及びブエルタの終盤戦において、その期待に見事に応える走りを見せ、コンタドールの有終の美を飾る大きな助けの一つになった。
一方で、2017年の彼自身の活躍はイマイチだったかもしれない。2016年では総合4位だったツール・ド・スイスでも、調子が出ないままにリタイア。2018年はコンタドールが去り、モレマと並んでチームの総合エースを担える可能性は高いだろう。たとえばジロとツールをモレマが走り、ブエルタはパンタノが単独エースとして走ることができる、そんな可能性も十分にありそうだ。しっかりとコンディションを整え、飛躍の年にして頂きたい。
パリ~ニース、及びブエルタ・ア・エスパーニャにて、コンタドールを力強く支えたパンタノ。2018年は、彼が総合エースとして走る機会も増えるだろう。頑張れ!
その他注目選手
ジャンルカ・ブランビッラ(イタリア、31歳)
脚質:パンチャー
かつては、自転車の上で殴り合いを始める、といったようなイメージばかりだった。
しかし、2016年のジロで逃げ切り勝利の果てにマリア・ローザを獲得。翌日の個人TTでも予想以上の走りを見せて、休息日もピンクジャージをキープした。
休息日明けのステージでは、ガールフレンドがゴールで待っているという話だった。そこで、マリア・ローザをもう1日着ることができれば、彼にとっては大きな栄光だったに違いない。
しかし、ブランビッラは、そのステージにおいて自らの為ではなく、自らのジャージを犠牲にしてでも、チームメートのボブ・ユンゲルスをアシストする動きを見せた。結果、ジャージはユンゲルスの手に。ブランビッラという漢が、ただ強いだけでない選手であるということを思い知らしめた。
そしてその年のブエルタでも1勝。そのステージはキンタナとコンタドールの大逃げという別のトピックばかりが目立ってはいたが、ブランビッラが稀代のアタッカーであることを更に強調する瞬間だった。
そういうタイプなので、グランツールで総合争いをするよりは、ワンデーレースに強い印象。クラシカ・サンセバスチャン、ストラーデ・ビアンケなどでも上位を獲得しており、トレックにとってもコンタドールが抜けた穴を埋めてUCIポイントを稼ぐうえで重要な存在となることだろう。
ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、29歳)
脚質:スプリンター
2年連続でポイント賞ジャージを獲得したジロ・ディタリア。2017年はチームスポンサーであるセガフレード社が、ポイント賞ジャージのスポンサーにもなり、本人もイタリアナショナルジャージを着ての参戦ということで、いつも以上に期待が入っていた、はずだった。
しかし膝の怪我の後遺症と、ジロ開催中に発症した花粉症によって、彼のコンディションは最悪だった。ジロを途中リタイアし、その後もクラシカ・サンセバスチャンをスタート直後にリタイアするなど、シーズン中盤をまともに走ることができなかった。ツアー・オブ・グアンジーで復帰するものの調子は戻らず。
2018年こそは真の復活が期待される。デゲンコルブはツール、ブエルタでのエースを担うことになるだろうから、ジロでのエースを担えるのは彼しかいない。2017年シーズン後半から調子を上げてきているヴィヴィアーニとの直接対決はぜひ、見てみたいものだ。
ファビオ・フェリーネ(イタリア、28歳)
脚質:パンチャー
2016年ブエルタにて、各スプリントステージで上位に食い込む足を見せながら、第20ステージの山頂ゴールでのまさかの3位フィニッシュ。キンタナ、バルベルデといった最有力候補から、マイヨ・プントスを自力で守り切った。
2017年はツール・ド・ロマンディのプロローグでの勝利や、イタリア選手権個人TT部門での2位など、独走力の高さでも才能を見せて受けた。バルベルデの後継とも言うべき脚質の持ち主であり、その意味でオールラウンダーと称して問題がなさそうな気がする。
クラシックも基本はアルデンヌ寄りだが、オンループ・ヘットニウスブラッドなどの北のクラシックでも成績を出している。クラシック的にもオールラウンダー。
ヤスペル・スタイフェン(ベルギー、26歳)
脚質:ルーラー
2016年にクールネ~ブリュッセル~クールネにて逃げ切り勝利。2017年はパリ~ルーベで4位。パンチャー気質もあり、スタイルとしてはファンアフェルマートに近いところがある。
2018年はデゲンコルブと共に北のクラシックを狙っていく予定。カンチェラーラの後継者の1人として注目されていた人物だけに、そろそろ結果を手に入れていきたい。
そして、グランツールでの積極的な逃げにも期待。2016年ツールの第2ステージは非常に惜しかった。2017年ジロも何度も上位には入り込むが勝利にまでは届いていない。そういう意味で、最後の最後で勝てない詰めの甘さというのはあるのかもしれない。
ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、24歳)
脚質:パンチャー
アクセオン所属時代の2016年ツアー・オブ・カリフォルニアで、チームメートのネイルソン・パウェルスとタオ・ゲオゲガンハートと共に新人賞上位3名分を独占した。
ワールドツアー入りした2017年は、開幕直後のダウンアンダーでパラコーム登りフィニッシュにていきなりの区間7位。ポルトガルのロード王者にもなり、トップスプリンターたちがひしめくブルターニュ・クラシックでも6位を獲った。
今後はアムステルゴールドレースやグランプリ・シクリスト・ドゥ・ケベック&モンレアルなどのアルデンヌ系クラシックでの活躍に期待したい。
2018年ツール 出場メンバー案
1.バウケ・モレマ(総合エース)
2.クーン・デコルト(発射台)
3.ジョン・デゲンコルブ(エーススプリンター)
4.ファビオ・フェリーネ(発射台)
5.ミカル・ゴグル(山岳アシスト)
6.マルケル・イリサール(平坦アシスト)
7.ハルリンソン・パンタノ(山岳アシスト兼アタッカー)
8.ヤスペル・スタイフェン(発射台兼アタッカー)
総合エースのモレマ、エーススプリンターのデゲンコルブの2頭体制。さらにはパンタノやスタイフェンなどのアタッカーがしっかりとステージ勝利を狙っていく体制。ブランビッラはジロやブエルタとの相性がいいのでそちらで狙うのがいいとは思う。
実力あるメンバーが揃っているだけに、中途半端に終わる可能性も見えてしまうものが不安。
総評
グランツール総合争い、北のクラシック、ステージ優勝という3つの目標をどこまで狙っていけるか。アルデンヌでもフェリーネやゲレイロの活躍次第では勝利、もしくは上位は十分に狙っていけるはず。
UCIランキングでは比較的上位ではあるものの、ステージ勝利数ランキングでは12位と、下から数えた方が早い順位だった。しかもそのうちの5勝をネオプロのペダースンが担っている状態。純粋なステージ勝利数を増やすためにも、デゲンコルブらスプリンターたちだけでなく、新加入のスクウィンシュ、ブランビッラらに期待したいところ。
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