読み:ユーエーイー・チーム・エミレーツ
国籍:アラブ首長国連邦
略号:UAD
創設年:1991年(ただし、1997-1998は一時消滅)
使用機材:Colnago (イタリア)
2017年UCIチームランキング:12位
(以下記事における年齢はすべて2018年における数え年表記となります)
2018年ロースター
ランプレの後継として発足したUAEチーム・エミレーツ。2018年シーズンは他チームからトップ選手たちをごっそりと移籍させ、チームとしての底力を一気に様変わりさせた。これが中東マネー・・・かつてはワールドツアーチーム随一の低予算でやってきたチームとしては、完全に生まれ変わったような心地だろう。
で、勝てるのか・・・というと、そこはまあ、やってみないと分からない。むしろ、そういった目玉ライダー以上に、モーリ、アタプマ、ウリッシ、ポランツ、コンティといった、地味ながらも実力のある選手たちによる、大逃げからのステージ勝利などが期待できるという意味で、楽しみなチームでもある。それは2017年と変わらず。
注目選手
ファビオ・アル(イタリア、28歳)
脚質:クライマー
イタリアの寵児、デビュー当初より仕えてきたアスタナを去る。契約期間中の突然の移籍という形でもって。新たなる舞台は、まだまだグランツール総合争いに不慣れな中東のチーム。とはいえ、元はイタリアのチームではあるため、本人にとって居心地はいいのかもしれない。
実力はある。しかし安定感はない。2017年ツールも、ラプランシュ・デ・ベルフィーユでの勝利やペイラギュードでのマイヨ・ジョーヌ獲得などは良かったが、その後はずるずると下がって総合5位。
2018年は前年に出られなかったジロへのリベンジが最大目標。もちろん狙うは総合優勝のみだが、現状では不安ばかり・・・。
ついにマイヨ・ジョーヌ着用を果たしたアル。次はもちろん、これを最後まで着ることではあるが、果たしてそれは実現できるのだろうか。。
アレクサンデル・クリストフ(ノルウェー、31歳)
脚質:スプリンター
2017年シーズン前半はひどく苦しみ、チームからのプレッシャーも大きくなる中で、移籍を決断。UAEとしても、勝利を量産しうる強力なプレイヤーを手に入れられたのは大きい。シーズン後半に調子を取り戻しつつあることも、チームにとっては朗報だ。
問題は、クリストフをしっかりリードアウトができる選手が揃っているかどうか。ベン・スウィフトもあまり発射台というイメージがない・・・そこは一刻も早く、新たなチームメートとのコミュニケーションを深め、慣れていくしかあるまい。
ヨーロッパ選手権ロードチャンピオンにも輝いたクリストフ。昨年は世界チャンピオンのサガンが制したために見る機会のなかったジャージだが、2018年はクリストフがしっかりとアピールしてくれる。
ダニエル・マーティン(アイルランド、32歳)
脚質:クライマー
ツール・ド・フランス2年連続総合TOP10入り。安定した走りと、終盤の鋭いアタックを大きな武器。タイミングを微妙に間違えて惜しい形になることも多いけれど・・・。
クイックステップ・フロアーズではグランツール総合争いでアシストしてくれる選手がほとんどいない状態が多かったが、移籍先のUAEでそれが解消されるかどうかは微妙。クリストフもツールに出るだろうし。
それでも、チームにとっては大切な総合エース候補であるため、それなりに環境は整えてくれる、はず・・・。彼にとってこの移籍が成功と言えるものになることを願う。
グランツールだけでなく、アルデンヌ系の各種クラシックでも強さを見せつけるマーティン。チームにとってはUCIポイント獲得源としても貴重な存在であることは間違いない。
その他注目選手
ルイ・コスタ(ポルトガル、32歳)
脚質:クライマー
2013年世界チャンピオン。ツール・ド・スイスでは3年連続で総合優勝を果たし、2017年はチームの母国であるUAEでのステージレースでの総合優勝を果たすなど、ワンデーレースや短いステージレースではめっぽう強い。
一方で、グランツールではなかなか勝利に結びつかない。惜しいところまではいくのだが・・・今年もグランツールでは総合順位でもステージでも結果を出せず。コスタにとっては初となる、ツール・ド・フランス以外のグランツールへの挑戦をしたにも関わらず、である。
2018年はチームとしても新たに総合エースを2名加え、コスタは完全にステージ優勝狙いの出場に限られることに。あるいは、2人をアシストする側に回るか。2018年の世界選手権がクライマー向けということで、そこに焦点を合わせてくる可能性もあるだろう。
ダルウィン・アタプマ(コロンビア、30歳)
脚質:クライマー
山岳逃げスペシャリスト。すなわち、私の大のお気に入りである。
2016年ではこれが功を奏し、数日間マイヨ・ロホを手に入れた。同年のジロでは総合9位と総合上位争いへの可能性も持ってはいるが、アルもマーティンもいるし、アタプマ自身には自由な走りを続けていってほしい。
2018年こそは、グランツール山岳ステージでの逃げ切り勝利があるはずだ。AG2Rのアクセル・ドモンと合わせて、ずっと応援し続けていきたい。
グランツール山岳ステージで逃げてるシーンが映ったらうるさくなります。
ディエゴ・ウリッシ(イタリア、29歳)
脚質:パンチャー
2014年~2016年の3年間、ジロで毎年勝利を挙げ、その3年だけで合計5勝もしているキング・オブ・ジロ。そんな彼が、2017年はジロに出場しない、という決断を下した。目標とするのは、全ロードレーサーにとっての栄光たる、ツール・ド・フランスでの勝利。実際、そのために彼は、クライマーばりの走りでフランスの山岳地帯を逃げに逃げた。
しかし結果として、勝利を得ることはできなかった。第15ステージは2位と惜しかったものの、結局は勝てなかった。至極、残念ではあるが、2018年は再び挑戦してほしい。アタプマと並んで、応援したくなるその勇気ある走りでもって。2018年こそはきっと、手に入れることができるだろう。
一方、グランプリ・シクリスト・ドゥ・モンレアルではきっちりと勝利を掴んだ。パンチャーにとっての憧れの的であるこのケベック&モンレアル。次の目標はもちろんもう一方であるケベックと、そしてイル・ロンバルディアかリエージュ~バストーニュ~リエージュである。
ロンバルディアは前哨戦のイタリアンクラシックにて勝利を含め経験している。可能性は十分にあるだろう。
ヤン・ポランツ(スロベニア、26歳)
脚質:クライマー
2017年ジロのエトナ山ステージで勝利。最終的にも総合11位と、コスタ以上の順位で終えている。ブエルタでも山岳逃げを繰り返し、TOP10入りが3回。山岳アタッカーとしての素質と、短いステージレースでの総合優勝を狙える候補として、今後コスタの後継的なポジションに入りうる有望株だ。
ということで2018年は、アルデンヌ系クラシックでの勝利と、短いステージレース(ロマンディやツール・ド・スイスなど)での総合表彰台と、そして世界選手権に注目していきたい。
2018年ツール 出場メンバー案
1.ダニエル・マーティン(総合エース)
2.ダルウィン・アタプマ(山岳アシスト兼アタッカー)
3.ルイ・コスタ(山岳アシスト兼アタッカー)
4.アレクサンデル・クリストフ(エーススプリンター)
5.マルコ・マルカート(発射台)
6.マヌエーレ・モーリ(平坦アシスト)
7.ローリー・サザーランド(平坦アシスト)
8.ディエゴ・ウリッシ(アタッカー兼発射台)
マーティンを総合エースに据え、それを守るように山岳アシストを配置していきたいところだが、基本的にはアタプマもコスタもウリッシも自らも勝利を狙うタイプであり、スカイのようながっちり守り役、とはならないだろう。
またクリストフの発射台というのもあまり想像できないが、マルカートと、場合によってはスウィフトがその役を担うことになるだろう。モーリとサザーランドは平坦アシストであると共にチャンスがあれば逃げ切りを狙いたい。ウリッシも山岳逃げを期待したいが、クリストフの発射台役としても十分に役立つであろう。もちろん、登りスプリントの場合は誰よりもウリッシが最強となる。
総評
新加入のアルとマーティンがグランツール総合を、クリストフがステージ優勝と北のクラシックを狙う。アルデンヌも、ウリッシが強いので狙うことは可能だが若干、層が薄い。
チームTTに関しては毎年ブエルタのチームTTでも最下位あたりに沈んでいるチームであり、新加入メンバーを見てもその辺りの改善は難しい、だろう・・・。
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