読み:チーム・サンウェブ
国籍:ドイツ
略号:SUN
創設年:2005年
使用機材:Giant (台湾)
2017年UCIチームランキング:4位
(以下記事における年齢はすべて2018年における数え年表記となります)
2018年ロースター
2018年シーズンのサンウェブの登録選手数は23と、EFエデュケーション・ファーストに次いで少ない数だ。大活躍したチームの割には少ないという印象。
それでも、2018年シーズンに向けての狙いがはっきりしており、十分に期待ができる布陣だ。まずはデュムラン・ケルデルマンを中心に据えたグランツール総合争いにおいては、テンダムやゲシュケといったベテランの山岳アシストたちが支え、さらにはアナスン、オーメン、ハミルトン、ヒンドリーといった若手の台頭も楽しみだ。
そして2017年ツールポイント賞のマイケル・マシューズを中心としたスプリンター勢は、2017年カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースを制したアルントと、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネで1勝しているバウハウスなど、若手のジャーマンスプリンターが更なる活躍をしてくれそうだ。トレックのエーススプリンターだったエドワード・トゥーンスの加入は、スプリントだけでなく北のクラシックでもプラスの結果をもたらすだろう。2018年はマシューズ以外でのグランツールの区間勝利を増やしていきたい。
ちなみにこのチーム、登録こそはドイツではあるものの、かつて所属したドイツ人エースであるキッテルやデゲンコルブが抜け、ドイツメーカーだったアルペシンもカチューシャに鞍替え。新たにデュムラン、テンダム、ケルデルマンなどが台頭し、メインスポンサーもオランダの企業となってしまった。実際にメンバーの国籍内訳を見てみるとオランダ人が最大数なのだからもう完全にこれオランダチームですやん。
さらに言うとバイクメーカーも台湾で昔のスポンサーにはシマノが入っていたりと、アジアを含む太平洋西岸との関りも深いチームであり、オーストラリア人の比率も高い。
注目選手
トム・デュムラン(オランダ、28歳)
脚質:オールラウンダー
かつてはカンチェラーラ、トニー・マルティンの次に来るTTスペシャリストとして注目されていた。それが、2015年のブエルタで、まさかの覚醒。一気にグランツール総合優勝候補の1人となった。
期待されて出場した2016年ジロ。初日の母国ITTではギリギリで勝利し、国王自らに表彰される栄光を掴んだ。しかし肝心の総合争いには、本格的に入り込む前に股ずれによってリタイアしてしまった。その後はツールにも出場するがここでは総合争いには加わらないと明言。ステージ優勝に的を絞った結果、アンドラ・アルカリスのクイーンステージで見事勝利し、クライマーとしての適性の高さも改めて証明した。さらに得意の個人TTでも優勝。目前に迫るリオ・オリンピックに向けて万全の状態であるかのように思えた。
しかし、ツール終盤の落車で左手首を骨折。オリンピックは絶望的かと思われた。それでも執念で出場し、カンチェラーラに次ぐ銀メダル。勝てはしなかったが、十分過ぎる結果だった。
そして2017年。総合争いでは結果を出せなかった2016年の借りを返すかのように、本気で挑んだジロ・ディタリア。相手はナイロ・キンタナ。2014年の覇者で、今大会の最有力優勝候補。そんなキンタナを、聖地オローパの山頂フィニッシュで完全に打ち負かした。終盤で一度マリア・ローザを奪い返されるが、それでも得意の個人TTで突き放し、見事、初のグランツール総合優勝を成し遂げた。
そしてこの優勝は、間違いなく、サンウェブというチーム全体で掴み取った結果であった。それは、この後のツールにおけるバルギルとマシューズの特別賞ジャージもそうだし、世界選手権チームTTでの優勝も同様である。
2017年最強「チーム」サンウェブ。その中心に、この男がいる。
マイケル・マシューズ(オーストラリア、28歳)
脚質:オールラウンダー
結果として、今回のチーム移籍は成功だったと言えそうだ。勝利数こそ4と少なめだが、何よりもツール2勝とポイント賞は大きい。しかもこのポイント賞は、チームの助けあってのものだったとも言える。
独走力も高く、ツール・ド・スイス区間4位など好成績を出している。2016年パリ~ニースでデュムランを破ったことも記憶に新しい。世界選手権チームTTメンバーにも選ばれ、デュムランと共に優勝を喜んでいる姿も既に上の写真で挙げている通りだ。
今年のマイヨ・ヴェールは結果として、サガン・キッテルといったライバルたちが次々と脱落していった末の獲得でもあった。しかし、その走りを見ている以上、彼らが健在であったとしても、かなり良い勝負をできた筈だと確信している。2018年シーズンは、そのあたり、きっちりと本気の勝負ができることを期待したい。
ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、27歳)
脚質:オールラウンダー
長い間オランダチームに所属し、期待はされながらもなかなか芽を出せずにいた。しかし新チームに移籍した2017年シーズン、その後半に、好調な走りを見せ始めた。
とくにブエルタ・ア・エスパーニャでは、ライバルとも言えたワレン・バルギルとのギクシャクもありながら、個人TTで区間2位となるなどの予想以上の走りを見せ、第19ステージを終えた時点で総合3位と大健闘を見せた。最終的に表彰台から転げ落ちてしまったものの、十分な結果と言えるだろう。2018年シーズンはデュムランと並ぶ総合エースとして期待していきたい。
あるいはもちろん、フルームとの直接対決を制し、ジロ2連覇を狙うデュムランにとって、最も頼れるアシストとなることも期待したい。
その他注目選手
ローレンス・テンダム(オランダ、38歳)
脚質:クライマー
かつて、オランダチームの総合エースとして期待され、実際にツール・ブエルタそれぞれで総合TOP10に入り込む活躍を見せてきた。
しかし年齢による衰えは隠すことができず、やがて少しずつ、自らの限界を感じ始めていた。2015年1月には実際にそれを言葉にしてインタビューにも応えている。
だが、翌2016年に、彼は決断を下した。すなわち、母国の新たな英雄となりうる才能、トム・デュムランの、アシストに回るという決断を。そして2017年は、彼のこの決断が、結果に結びついた年でもあった。2017年ジロの最終日、表彰台の上で、デュムランと共に喜ぶ彼の姿は、ロードレースの競技としての魅力の一つの象徴であったように思う。
今、実力をもって頂点に位置している選手たちでも、やがてそうは言っていられなくなる時期がやってくる。そのときに、新たな時代のエースを支える立場になり、実際に彼を頂点に立たせることができたとしたら、それもまた一つの成功と言えるのかもしれない。
テンダムのことを考えると、もう1人、同じジロでオランダ人エースのために尽くし、2017年限りでの引退を決めたベルギー人、ヴァンデンブロックのことを思い出す。彼に支えられたクライスヴァイクは残念ながらその後の不調でリタイアしてしまったが、それでもヴァンデンブロックの走りは非常に熱いものであった。
テンダムは2018年もまだまだ走ることを決めている。引退もチラついているようではあるが、まだまだ頂点に向けての走りの途上にある若きエースのために、あともう少しだけ、力を貸してくれるようだ。
2018年もよろしく頼むぞ、テンダム。
ニキアス・アルント(ドイツ、27歳)
脚質:スプリンター
2016年ジロ最終ステージで、ニッツォーロの降格を受けて優勝したことで名を挙げた。このとき、トレンティンやモドロよりも上位に来ていたのだ。
2017年はカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースで優勝。ツールでもボアッソンハーゲンが勝利したステージで、唯一ボアッソンハーゲンと同じルートを通って喰らいついていった選手である。
2017年はマシューズと一緒に出場し、彼の最終発射台を務めることが多かったがゆえに彼自身の勝利は上記のCEGORRのみだが、実力・実績で言えばマシューズに次ぐエーススプリンター候補と言えるだろう。
エドワード・トゥーンス(ベルギー、27歳)
脚質:スプリンター
2016年シーズンにトレックに移籍したヘント人。だが、初出場のツール・ド・フランスで激しく落車し、大切なワールドツアーチームでの初年度を、大きく失ってしまった。
2017年シーズンは後半戦から調子を取り戻す。ブエルタでは区間4位が2回。ほか、ピンクバンクツアーやツアー・オブ・ターキーで1勝ずつ獲得した。いずれもトップスプリンターたちが多く集まっていたレース、とは言い難いものではあったが、トレックチームのエーススプリンターとして、少しずつ実績を挙げつつあった。
それゆえに、今回のサンウェブへの移籍は少々驚きもある。このチームには、実力も実績もあるスプリンターたちが集まっている。純粋なスプリンターとしてエースを張ることはそんなに簡単ではないだろう。
しかし一方で、トゥーンスにはドワルスドール・フラーンデレンやパリ~ルーベなどの北のクラシックでの実績があり、そこでの活躍が期待される部分はあるだろう。期待と裏腹の2年間へのリベンジを、2018年は果たすことができるか。「もう1人のトゥーンス」に負けるな!
フィル・バウハウス(ドイツ、24歳)
脚質:スプリンター
アルントに次ぐサンウェブのジャーマンスプリンター第2弾。ノケーレ・クルス4位で登りに強いタイプかなと注目していたら、まさかのドーフィネでの勝利。ジロでも割と上位に来ていた。
マシューズやアルントとは別のグループで参戦することも多く、実力が高まっていけば彼自身の勝利もどんどん伸ばしていけそうだ。
セーレンクラーウ・アナスン(デンマーク、24歳)
脚質:パンチャー
2017年はツアー・オブ・オマーン第3ステージで、ルイ・コスタ、ベン・ヘルマンスを下してステージ優勝を果たした。また、ブエルタ第13ステージでも、トレンティン、モズコンに次ぐ区間3位。登りスプリントなどへの適性もあり、今後が非常に楽しみなパンチャータイプの選手だ。
世界選手権チームTTのメンバーで、サンウェブの優勝を支えたメンバーの1人だ。
サム・オーメン(オランダ、23歳)
脚質:オールラウンダー
2015年ツール・ド・ラヴニール総合4位、U23版パリ~トゥール優勝、2016年ツール・ド・ラン総合優勝など、期待の若手の1人として注目を集めていた。
今年は正直、あまりうまくはいかなかった。勝利もなし。それでも、ツール・ド・ポローニュ総合7位、トレ・ヴァッレ・ヴァッレジーネ6位などの一定の成果は上げている。今は経験を重ねていく時期。今年はブエルタしか出ておらず、それでも途中リタイアで終わってしまっているので、2018年は2つのグランツールに出場し、完走もできるようにしていきたいところだ
ジャイ・ヒンドリー(オーストラリア、22歳)
脚質:不詳
2017年シーズンは(コンチネンタルチームとしての)ミッチェルトン・スコットに所属していたが、ナショナルチームのメンバーとしてツアー・ダウンアンダーやカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースなどのワールドツアーレースにも出場。ヘラルド・サン・ツアーでは総合2位・新人賞獲得も果たしている。
その他、U23版ジロでは区間1勝と総合3位などの活躍も見せ、次代のオーストラリア人ニューヒーロー候補の一角である。
レナード・ケムナ(ドイツ、22歳)
脚質:TTスペシャリスト
独走力が高く、2017年はツール・ド・ロマンディ及びブエルタの個人TTステージでTOP10に入る。この若さでこの結果は凄い。
世界選手権チームTTのメンバーにも入り、チームの優勝を支えることもした。2018年でもTTでの成績に注目が集まる。
なお、世界選手権U23ロードでも2位。ただしこれは、ワールドツアーチーム所属としては当然の結果とも言えるだろう。
2018年ツール 出場メンバー案
1.ウィルコ・ケルデルマン(総合エース)
2.ニキアス・アルント(発射台)
3.ロイ・クルフェルス(平坦アシスト)
4.シモン・ゲシュケ(山岳アシスト&アタッカー)
5.レナード・ケムナ(平坦アシスト&TTT要員)
6.マイケル・マシューズ(エーススプリンター)
7.サム・オーメン(山岳アシスト&育成枠)
8.エドワード・トゥーンス(発射台&アタッカー)
デュムランがジロ2連覇を狙うという。ならば、昨年ブエルタで活躍したケルデルマンが、ツールのエースを担うのだろうか? もちろん、マシューズのマイヨ・ヴェール2連覇に向けた布陣も準備してくるだろう。
昨年はジロ-ツールと出場したテンダムは、今年はジロ-ブエルタでデュムランのアシストに徹すると予想。また、サム・オーメンは2017年はブエルタのみの出場だったが、今年はツール-ブエルタの2連戦を完走し、経験を積んでいってもらいたいところ。また、トゥーンスが新チームで、ツールでのリベンジを果たせるかどうか。
平坦アシストはベテランのクルフェルスと若手のケムナを選択してみたものの、ほかにもトゥニッセンやホフステデなどの候補がいる。独走力も高く、アタッカーとしての素質もあるアナスンを入れる可能性も十分にあるだろう。彼ならば、平坦だけでなく山岳でのアシストも期待ができるので・・・。
総評
2017年は世界選手権チームTTで優勝したサンウェブ。普段からチームTTの常勝組、というわけではないが、確かに独走力の高いメンバーも揃っているため、2018年ツールのチームTTも含め、期待は十分にできるだろう。
グランツール総合争いとスプリント勝利にはタレントが揃っているが、クラシックに関しては今一つ。北のクラシックではトゥーンス、アルデンヌ・クラシックではゲシュケかアナスンが頑張ってくれるだろうか。意外とデュムランも、ストラーデ・ビアンケとかでもそれなりの上位に来ていたりするので、ちょっと楽しみにしたいところではある。
かつてはスプリント「だけ」しか強みがなかったこのチームだったが、スカイやクイックステップと並ぶ最強チーム候補として、より成熟した戦い方を見せてほしい。
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