読み:チーム・スカイ
国籍:イギリス
略号:SKY
創設年:2009年
使用機材:Pinarello (イタリア)
2017年UCIチームランキング:1位
(以下記事における年齢はすべて2018年における数え年表記となります)
2018年ロースター
各チーム軒並み人数を減らす中、なぜかスカイだけ人数を増やして30名。潤沢な資金の為せるわざか。若手を大量に採用したのも要因か。
ニエベ、ケノー、ランダといった強力な選手たち、とくにニエベやケノーなど長い間スカイにおいて価値ある働きをしてきた選手たちが、次々と移籍をしてしまう2018年シーズン。デラクルスなど強力なベテランを新たに加えつつも、もう1つ特徴的なのが、元U23ロードチャンピオンのハルヴォーシュン、U23版ジロ総合優勝のシヴァコフ、そしてラヴニール総合優勝のベルナルなど、若き才能を次々と受け入れていることだ。これまでと変わらず、グランツールでの総合優勝を狙う走りを見せつつ、小さなステージレースにおいても、彼ら若き才能の育成のための走りを狙っていくこともあるだろう。
また、もう1つ気になるのが北のクラシックスペシャリストであるファンバールレの新加入。2016年はパリ~ルーベでロウ・スタナードらが強い走りを見せたものの落車などもあり勝利には届かなかった。2017年ロンド4位のファンバールレの加入は、北のクラシックにおけるスカイ勝利への意志の表れかもしれない。
注目選手
クリストファー・フルーム(イギリス、33歳)
脚質:オールラウンダー
最強クラスの登坂力と、世界チャンピオンに匹敵する独走力とを併せ持った、正真正銘の最強グランツールライダー。
2013年から2017年にかけて、4度のツール・ド・フランス制覇を成し遂げている。伝説の5勝クラブまであと一歩。さらに2017年シーズンはブエルタ・ア・エスパーニャも総合優勝し、史上3人目のツール-ブエルタのダブルツールを達成した。2018年はジロへの出場を宣言しており、5勝クラブ入りとジロ-ツールのダブルツール達成、そしてグランツール全制覇者入りを一気に達成する心づもりのようだ。
そんな彼の前に暗雲として立ち込めているのが、この12月に突如として沸き上がった「サルブタモール基準値越え」問題。意図的なものではなく、ルールに従って行動した結果であり、しかし基準値を超えたことは事実――この問題の行きつく先は現時点では見通しがつかないが、ロードレース界全体にとって少しでもプラスになる形で決着してほしいところ。
サイクルモードでのサイン会で、常に笑顔を絶やさずにサインをし続けていた姿が印象的だったフルーム。彼の経歴が汚れたものにならないことが最も望ましい。
ミハル・クフャトコフスキ(ポーランド、28歳)
脚質:オールラウンダー
2017年シーズンのスカイにおいて、最も予想以上の働きをした人物は彼だろう。2016年から苦しいシーズンだっただけに、今回のこの躍進はファンでなくとも嬉しい。とくに彼自身がインタビューで語っていた「フルームのための走りをしたい」という言葉が、この上ない形で実現した、というのが。
もちろん、グランツールでの活躍だけではない。ミラノ~サンレモでの優勝、クラシカ・サンセバスチャンでの優勝、そしてストラーデ・ビアンケでの2回目の優勝。アムステルゴールドレースも2度目の優勝まであと一歩だった。クラシックでも戦えて、かつグランツールでも誰にもまけない活躍を見せて。まさにオールラウンダーと言うべき存在である。
ならば2018年は何を目指すのか。2度目の3位を経験したリエージュ~バストーニュ~リエージュは目標の1つとして間違いなくあるだろう。一方で、ランダも移籍したスカイにおいて、ステージレースでのエースを任される可能性もそれなりにあるかもしれない。
「90年世代」が中心になるであろう2020年代に、スカイにおける絶対エースとなりうるのがこのクフャトコフスキのはずだ。
ツールではひたすら集団を牽引し続けたクフャトコフスキ。元々はクライマーといった感じではなかったが、この夏は圧倒的だった。
ゲラント・トーマス(イギリス、32歳)
脚質:オールラウンダー
今年はトーマスにとってジェットコースターのようなシーズンだった。
ジロでのエースを目指し意気込んで参加したティレーノ~アドリアティコで、初日のTTTからバイクトラブルによっていきなり総合争いから脱落させられる。しかしその翌日に大逃げを決めて勝利。
ツアー・オブ・ジ・アルプスで総合優勝を果たし、ランダとのコンビネーションも問題ない形で臨むことのできたジロ・ディタリアで、モトバイクとの接触事故によって落車リタイア。
そしてツール・ド・フランス初日のITTで優勝し、まさかのマイヨ・ジョーヌ着用を果たした中で、第9ステージで迎えた落車リタイア・・・良いことも悪いことも全てがまとまって何度となくやってくる、そんな激しいシーズンだった。
それでも、得られた手ごたえは十分だ。ポートもランダもいなくなったスカイにおいて、今やフルームの次に総合エースを担える唯一の存在といっても過言ではない。2018年はフルームがジロとツールに出るとのことだが、それならばブエルタの総合エースを担うことができるか? でもまあ、デラクルスもいるしなぁ。
スカイとの契約期間は2018年まで。夏以降の彼の動向にも注目が集まる。
無表情でひょうきんな行動・言動に出ることもままあるトーマス。それもまた魅力の1つか。
その他注目選手
ワウト・プールス(オランダ、31歳)
脚質:クライマー
キンタナにとってのアナコナのように、フルームにとってもはやなくてはならない存在となりつつあるオランダ人クライマー。2017年ブエルタでは最後の最後、あやうくコンタドールに追い付いてしまうのではないだろうかと不安すら覚えてしまった。2018年もジロからしっかり連れていくのだろうか。
2016年はリエージュ~バストーニュ~リエージュを制するなど、クラシックでの活躍も期待される。ミラノ~トリノが6位と惜しかった。そのあたりの秋のイタリアン・クラシックが狙い目だろう。短めのステージレースでのエースもあまり経験していないが、バレンシア一周で総合4位など可能性は十分ある。
ダビ・デラクルス(スペイン、29歳)
脚質:クライマー
2016年ブエルタで総合7位。2017年はバスク1周総合4位、ブルゴス1周総合3位など。スペインのステージレースで安定した強さを誇る。
ニエベやランダといった重要なスペイン人クライマーを失った2018年のスカイにとって、彼ほど頼りになる存在はないだろう。ツールにおいてフルームをアシストするのはもちろん、あとはジロにまでフルームのために出場するのか、それともブエルタである程度自分のために走る自由を与えられるのか。
1つ不安なのが、過去にもランダやクフャトコフスキやエリッソンドといった、「注目されて移籍してきた選手」が、その1年目においては結果を出すことができなかった、という事実だ。そのパターンが当てはまるとしたら、2018年のデラクルスは意外と沈んでしまうのかも、しれない・・・?
ディラン・ファンバールレ(オランダ、26歳)
脚質:ルーラー
注目すべき移籍の1つであるファンバールレの加入。ファンバールレは2015年ドワルスドール・フラーンデレン3位、2016年と2017年のロンド・ファン・フラーンデレンでそれぞれ6位・4位と、北のクラシックでの活躍が目覚ましい。
スカイとしては、元チームメートだったマシュー・ヘイマンが優勝した2016年のパリ~ルーベで、終盤まで4名体制という盤石の構えだった中でモズコン、ロウ、プッチョが次々と落車。最終的に残ったスタナードがスプリントで挑んだものの届かずに3位、という悔しい結果に終わっている。
2016年にリエージュ~バストーニュ~リエージュ、2017年にミラノ~サンレモと、グランツールだけでなくモニュメントに関しても順調に実績を上げているスカイにとって、ロンドもしくはルーベという「クラシックの王/女王」の制覇は悲願である。ファンバールレの加入は、そんなスカイの野望のための重要なピースの1つとなりうるだろう。
エガンアルリー・ベルナル(コロンビア、21歳)
脚質:クライマー
ティレーノ~アドリアティコ新人賞2位。ツール・ド・ラヴニール総合優勝。期待の新人選手たちの中でも、1,2を争う有望株と言えるだろう。
とはいえ、2018年はいきなりグランツールで結果を求められる、ということはなさそうだ。そもそもチーム・スカイにおいては、少なくともツールでメンバー入りすることは不可能だろう。出られてジロかブエルタか。あとは短いステージレースでの新人賞や表彰台を目指せればそれでよい。
キンタナがツールの総合表彰台を登ったのが23歳のとき。そこに間に合うように、経験を積み重ねていってほしい。
パヴェル・シヴァコフ(ロシア、21歳)
脚質:クライマー
ベルナルと並ぶ期待の新人。2017年はUCIチームには所属せず、U23版ジロで総合優勝、そしてツール・ド・ラヴニールでは総合上位にこそ入らなかったものの、最終日の山頂ゴールで優勝し、山岳賞も獲得した。
U23世界選手権では、ハルヴォーシュンやパウレスなどその他の有望株の選手たちがイマイチな走りをする中で、唯一先頭に近い集団でゴールを果たしている。
ロシア人というのがまた興味深い。ロシアにとってはザッカリンの次に来る希望の星となるだろう。その意味で、いつまでもスカイにいるということはなさそうだが。
2018年ツール 出場メンバー案
1.クリストファー・フルーム(総合エース)
2.ジョナタン・カストロビエホ(TTT要員、平坦山岳アシスト)
3.ダビ・デラクルス(山岳アシスト)
4.ヴァシル・キリエンカ(TTT要員、平坦山岳アシスト)
5.ミカル・クフャトコフスキ(山岳アシスト)
6.ワウト・プールス(山岳アシスト)
7.イアン・スタナード(石畳要員、平坦アシスト)
8.ゲラント・トーマス(山岳アシスト)
いつも最強のメンバーが揃っているだけに、人数上限が下がったことによるダメージを相対的にもっとも受ける。上記例だと平坦アシストが少なすぎるか・・・? TTTや石畳への対応も十分必要なので、組み合わせはかなり迷ってしまう。
平坦アシストを増やすならクネース、ロウ、ファンバールレが候補。デラクルスの代わりにセルヒオエナオのパターンもありうるだろう。
総括
グランツール最強、といってもフルーム以外で総合表彰台を狙えるかというと微妙だったりはする。ジロは呪いがかかっているし・・・。
ヴィヴィアーニ、ファンポッペルを失いスプリントは完全にやる気なし? ハルヴォーシュンなどの若手が1クラス~HCクラスで頑張ってくれるかもだけど。グランツールでの逃げもあまりやらないタイプのチームなので、ステージ優勝力もイマイチ。
アルデンヌはクフャトコフスキがどれくらい頑張るかにかかっており、北のクラシックはファンバールレとロウ・スタナードの本気具合。モズコンがアルデンヌで才能を爆発させる可能性も。
基本的にどのタイプのレースも勝てるようになりつつある点で、やはりスカイは強いチームである。
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