読み:チーム・サンウェブ
国籍:ドイツ
略号:SUN
創設年:2005年
GM:イワン・スペケンブリンク(オランダ)
使用機材:Cervélo(カナダ)
2018年UCIチームランキング:9位
(以下記事における年齢はすべて2019年12月31日時点のものとなります)
2019年ロースター
トム・デュムランは今や、フルームに次ぐグランツール総合優勝候補である。
その割に、スカイやモビスターなどと比べ、彼を助けるアシストの層は決して厚くはない。とくに2019年は、その中でも有力な存在であったベテラン勢が次々とチームを去り、若手を入れる格好に。
それでも十分勝てるだけの実力を、デュムランもチームも持ってはいるだろうが、不安がないと言えば嘘になる。
もちろん、グランツールの総合優勝争い以外にも目標を持とうとする意志もあるだろう。
マシューズは2018年は万全ではなかった分、2019年の再起が楽しみだし、若手のヴァルシャイドも着実に成長しつつある。
北のクラシックに関しては2018年にアンデルセンがパリ~ツールを優勝し、さらには育成チームから、シクロクロスで活躍中のニューウィンハイスが昇格してくる。
総合優勝争い以外にもバランスよく成績を求められるトップチームに進化することが2019年の目標の1つとなるだろう。
注目選手
トム・デュムラン(オランダ、29歳)
脚質:オールラウンダー
2018年の主な戦績
- ジロ・デ・イタリア 総合2位
- ツール・ド・フランス 総合2位
- 世界選手権個人タイムトライアル 2位
2015年ブエルタで総合系選手として覚醒し、2016年リオ・オリンピック個人タイムトライアルで銀メダルを獲得。
2017年はジロ・デ・イタリア総合優勝と共に世界選手権個人タイムトライアルでついにアルカンシェルジャージを着用。グランツールレーサーとTTスペシャリストの二足の草鞋を見事にこなし続けている。
そして2018年はジロ総合2位、ツール・ド・フランス総合2位、そして世界選手権個人タイムトライアルでも2位・・・他の誰もが実現不可能なレベルのシルバーコレクターを達成してみせた。残念ではあるけれど、とても凄い。
2020年東京オリンピックはローハン・デニスとのガチの勝負を繰り広げることになりそうなので、本気でツールを狙うのであれば2019年がラストチャンスか、と思っていた。
しかし、2019年、彼は再び、ジロ、ツールを狙う予定とのこと。
確かに、2019年のツールは個人TTの総距離が短く、逆にジロは長い。向いているのはジロの方なのかもしれない。同じタイミングでチームがツールに対して「つまらないんだよ」と文句を言っていたのも関係があるのかもしれない。
いずれにしても、正直なところ、ちょっと残念だな、という思いは否めない。
あるいは彼にとって、2018年ジロの第19ステージにおける失敗に対して、拭えない悔しさがあったのかもしれない。
決して楽勝というわけではないだろう。サイモン・イェーツも本気で狙ってくるだろうし、ミゲルアンヘル・ロペス、ミケル・ランダなど、強力なライバルたちは多数。
その中で、真の強者としての実力を示すことができるか。
↓2019年彼がジロを選んだ理由については以下の記事で↓
マイケル・マシューズ(オーストラリア、29歳)
脚質:スプリンター
2018年の主な戦績
2017年のマイヨ・ヴェールは、2018年シーズンを苦しい状態で過ごすこととなった。
開幕戦のオムロープ・ヘット・ニウスブラットでいきなりの落車→肩骨折。
ツール・ド・フランスでも病気に罹り、寝ることも食べることもままならなくなって序盤でのリタイアを決める。
さらに追い打ちをかけるようにして、世界選手権への出場枠も失うことに。同じモナコに住み親友でもあるリッチー・ポートをサポートすることに強い熱意を持っていただけに、深い失望を隠せない様子であった。
一方、シーズン後半は少しずつ復調していく。サドルの高さが8mmずれていたことに気づいたのも大きな要因だったのかもしれない。
8月のビンクバンクツアーでは「カペルミュール」の中腹でフィニッシュを迎える最終ステージで優勝。総合でも2位につける走りを見せた。
9月にはカナダで行われたワールドツアー2連戦を両日ともに制覇。この2連戦制覇は、同じオーストラリア人のサイモン・ゲランスが2014年に達成して以来の快挙である。
2019年の目標は? まずは、初出場のロンド・ファン・フラーンデレンへの出場を目指すという。ビンクバンクツアーでの走りを考えると、十分に良い成績を出せる余地はありそう。
さらに、このロンドに向けた各種クラシック(オムロープ、E3、ミラノ~サンレモ、ヘント~ウェヴェルヘム等)と、さらにはパリ~ルーベこそ出ないもののその後のアルデンヌ3連戦すべてにも出場する予定らしい。春のクラシックにおけるハードスケジュールは、まるで不調に終わった2018年へのリベンジを考えているかのようだ。
そして、もちろんツール・ド・フランスへの出場も予定している。加えて、9月の世界選手権は、今度こそ彼に最も大きなチャンスのある大会となるだろう。
ソーレン・クラークアンデルセン(デンマーク、25歳)
脚質:ルーラー
2018年の主な戦績
- パリ~ツール 優勝
- ツール・ド・スイス 区間1勝
- ビンクバンクツアー 第2ステージ(個人TT)3位
- ツール・ド・フランス 第20ステージ(個人TT)5位
2015年ツール・ド・ラヴニールでは2勝している。1つはプロローグで、ジャンニ・モズコンを打ち破った。もう1つは第3ステージで、マチュ―・ファンデルポールをスプリントで打ち倒している。
現チームに移籍した2016年には、ツアー・オブ・カタールで新人賞。
2017年にはツアー・オブ・オマーンの山頂フィニッシュでルイ・コスタ、ベン・ヘルマンスらを振り切っての勝利を飾り、同年に初のグランツールとしてブエルタ・ア・エスパーニャに出場。スプリントステージで2度の3位に喰い込んでいる。
個人TT能力、登坂力、スプリント力全てにおいてバランスの取れた高い能力をもったオールラウンダー。
2018年はツール・ド・フランスに出場し、1週目をマイヨ・ブランを着て過ごし、アルプスではそれを手放すこと覚悟で、アタックしたトム・デュムランを先導する重要な役割を担った。
さらにはこのツール第20ステージの個人TTで5位。デュムラン、フルーム、トーマス、クヴィアトコウスキーという錚々たるメンバーに次ぐ5位で、彼の後ろにはユンゲルス、ザッカリン、ログリッチェ、ソレルと続くのだから本当に凄い。
そして、10月のパリ~ツールである。前年にマッテオ・トレンティンとニキ・テルプストラのコンビネーションに完全にしてやられたことへのリベンジを果たした。
昨年までと打って変わって一気に北のクラシックテイストを強めたこのレースでの勝利は、彼の石畳・未舗装路適性への可能性をも感じさせるものとなった。
2019年も、平地も登りもこなせる機関車役として、デュムランやケルデルマンの頼れるアシストとして活躍してほしい。
もちろん、彼自身の逃げ切り勝利や、パリ~ツールに続くクラシックでの活躍にも注目するべきだろう。
その他注目選手
ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、28歳)
脚質:オールラウンダー
2014年ジロ・デ・イタリア総合7位、2017年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合4位。
チーム・サンウェブにおける、デュムランに次ぐ総合エースである。
2018年はシーズン序盤から怪我で戦線離脱。復帰後も国内選手権で再び負傷し、デュムランのアシストとして出場予定だったツールをパス。
エースとしてブエルタに臨んだものの、まだ本調子ではなかったのか、いまいち実力を発揮しきれず、総合10位に留まる。
2019年はデュムランが再びジロとツールを走るとのことなので、おそらく彼も、2018年当初の予定と同様に、まずはツールでデュムランのアシスト兼セカンドエース、そしてブエルタで単独エースとして今度こそ、2017年に惜しくも失った表彰台を目指すこととなるだろう。
2019年は28歳と、最も脂の乗り始める時期。確実に結果を出せる時期となりそうなので、期待しているぞ。
サム・オーメン(オランダ、24歳)
脚質:クライマー
2015年ツール・ド・ラヴニール総合4位。
次世代オランダ人総合系ライダーとして高い期待を背負わされ続けてきた彼だったが、2017年はイマイチだった。しかし2018年は、ついにジロ・デ・イタリア総合9位と、いよいよ実力を示し始めてきた。
2019年の目標はグランツールの新人賞獲得。あとは、ジロだけでなく、ブエルタにも出場するなど、2つのグランツールをこなすという経験も必須になってくるだろう。
マックス・ヴァルシャイド(ドイツ、26歳)
脚質:スプリンター
ドイツの若手スプリンターは毎年有望株が新たに出現し続けている。2018年最もインパクトがあったのは、おそらくボーラ・ハンスグローエのパスカル・アッカーマンだったであろう。
しかしこのヴァルシャイドも、ツアー・オブ・カリフォルニアの最終ステージで、ガビリアにギリギリまで喰らいついての2位。そしてスパルカッセン・ミュンスターラントジロでは、それこそアッカーマンやジロ3勝のサム・ベネットなどを打ち破っての勝利を果たすなど、十分に実力が高いことを示した。
初のグランツールとして出場したブエルタ・ア・エスパーニャでは残念ながら10位以内のリザルトを残すことはできず。2019年もグランツールでのステージ優勝を目指して頑張ってほしい。ブエルタなら行ける気がするんだよなー。
ヨリス・ニューウィンハイス(オランダ、23歳)
脚質:ルーラー
ロードレースではまだまだ実績なし。
ただしシクロクロスでは2016-2017シーズンのU23世界王者に輝いたほか、2018-2019シーズンもエリート部門にて、3大シリーズ戦の1つ、UCIワールドカップ第7戦「ヒュースデン・ゾルダー」で3位表彰台に入るなど、着実に成績を伸ばしつつある。
この「ゾルダー」の表彰台の頂点に立つのは現代シクロクロス界の怪物、マチュー・ファンデルポール。そして2位は現シクロクロス世界王者のワウト・ヴァンアールトである。この2人はすでにロードレースでも実績を出している(マチューはオランダロードチャンピオン、ワウトはストラーデ・ビアンケ3位)。2019年も北のクラシックにおける激突が楽しみにされている2人である。
そして、この2人に喰らいついたこのニューウィンハイスも当然、2019年の北のクラシックにおいて注目すべき存在であることは間違いない。
総評
まずはデュムラン、そしてケルデルマンとオーメンによるステージレースでの総合上位争いに最も期待が集まることだろう。もちろん、マシューズやヴァルシャイドによるスプリント勝利と、アンデルセンらによるステージ優勝への期待も高い。2018年のジャパンカップ優勝者であるロバート・パワーや、インスブルック世界選手権U23覇者のマルク・ヒルシなど、新加入選手たちもアタッカーとして期待が持てる。
あとは、デュムランやマシューズによるアルデンヌ勝利、アンデルセンやニューウィンハイスによる北のクラシックでの成績をどこまで伸ばせるか。マシューズも北のクラシックへのやる気は満々なので、ポテンシャルは十分にあるはずだ。