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UAE-Team Emirates 2022年シーズンチームガイド

以下の記事もチェック!

note.com

 

読み:ユーエーイー・チーム・エミレーツ

国籍:アラブ首長国連邦

略号:UAD

創設年:1991年(ただし、1997-1998は一時消滅)

GM:マチン・フェルナンデス(スペイン)

使用機材:コルナゴ(イタリア)

2021年UCIチームランキング:4位

(以下記事における年齢はすべて2022年12月31日時点のものとなります) 

 

【参考:過去のシーズンチームガイド】 

UAE-Team Emirates 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

UAE-Team Emirates 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

UAE-Team Emirates 2020年シーズンチームガイド - りんぐすらいど 

UAE-Team Emirates 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

 

目次

 

※各グラフのポイントは独自に集計した2021シーズンの実績に基づきます。

同じポイントに基づいた各脚質ランキングは以下の記事を参照のこと。

note.com

 

各チームのプレビューをPodcast&Youtubeでもやっています。

youtu.be

 

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2022年ロースター

※2021年獲得UCIポイント順

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今や世界最強のグランツールライダーとなったタデイ・ポガチャルと、これを助けるべく弱点だったチーム力の補強に乗り出したUAEチーム・エミレーツ。今年はその本気が見られ、ジョアン・アルメイダ、マルク・ソレル、ジョージ・ベネットなど、エース陣が渋滞を起こすほどの大補強。

さらにはスプリンター勢もパスカル・アッカーマンにアルバロホセ・ホッジが加わり、アレクサンデル・クリストフが抜けたとはいえ既存のフェルナンド・ガビリアとマッテオ・トレンティンと合わせスプリンター勢も大渋滞状態である。

なお、ホッジが手首・足首の怪我により戦線離脱している関係で、元々引退予定だったマキシミリアーノ・リケーゼが、ジロ終了までの期間限定でチームに残ることに。2018年のツール・ド・フランスでも輝きを見せていたガビリア&リケーゼコンビを、最後のジロで見ることができるのだろうか。

 

 

注目選手

タデイ・ポガチャル(スロベニア、24歳)

脚質:オールラウンダー

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2021年の主な戦績

  • ツール・ド・フランス総合優勝
  • リエージュ~バストーニュ~リエージュ優勝
  • イル・ロンバルディア優勝
  • ティレーノ~アドリアティコ総合優勝
  • UAEツアー総合優勝
  • 東京オリンピックロードレース3位
  • イツリア・バスクカントリー総合3位
  • UCI世界ランキング1位

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昨年も圧倒的な強さで軽々とツール・ド・フランスの2連覇を達成し、さらに同年にリエージュ~バストーニュ~リエージュとイル・ロンバルディアの2つのモニュメントを制覇。歴史に残る活躍を見せている、現役最強ライダーの一角だ。

今年はジロ・デ・イタリアに出場するという噂も一時出て1999年のマルコ・パンターニ以来となるダブルツールを狙うのか?と注目されたが、結局は今年はツール~ブエルタのダブル制覇を狙う方針となったようだ。

だが彼ならば、クリス・フルームも果たせずにいる5人目の「5勝クラブ」入りも、現代では達成不可能とすら囁かれるダブルツールすらも、十分に果たせるのではないかとも言えるポテンシャルを持っている。

今、まさに我々は歴史の瞬間に立ち会っているのかもしれない。

 

そう思わせるほどに、今年のツールは圧倒的であった。

もちろん、エガン・ベルナルもプリモシュ・ログリッチもおらず、イネオスはトリプルエース体制が早々に崩壊するなど、ライバルがいない状態での戦いだったというのもあるだろう。

しかし第1週の週末の山岳2連戦の1日目。第8ステージの残り30㎞で一人飛び出し、そのままライバルたちに2分以上のタイム差をつけて勝利。

1週目から一人だけ第3週のような走りを見せつけた彼の走りに、エンリク・マスも最初の休息日の時点で「表彰台争い」に焦点を絞るような弱気な発言をするほどであった。

 

そんな彼と彼のチームの弱点はチーム力であった。イネオス・グレナディアーズやユンボ・ヴィスマと比べ、ポガチャルの「一強」体制であり、それを支えるアシスト陣に不安がある、というのが基本的な評価であった。

しかし昨年のUAEチーム・エミレーツは、そんな評価をひっくり返しかねないチームとしての強さも見せつけていた。

www.ringsride.work

 

さらに今年、ジョアン・アルメイダとマルク・ソレル、ジョージ・ベネットの加入。

今やイネオスにも負けないくらいの豪華さを誇る布陣の中で、果たして「最強の山岳トレイン」すらも実現してしまうのだとしたら、それは本当に敵なしの状態となってしまうだろう。

 

今年もさらなる驚きを見せてくれるのか。

 

 

ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、24歳)

脚質:オールラウンダー

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2021年の主な戦績

  • ジロ・デ・イタリア総合6位
  • ツール・ド・ポローニュ総合優勝
  • ツール・ド・ルクセンブルク総合優勝
  • UAEツアー総合3位
  • ティレーノ~アドリアティコ総合6位
  • ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ総合7位
  • UCI世界ランキング9位

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かつてはレムコ・エヴェネプールの最も信頼する右腕。

www.ringsride.work

 

しかし、負傷して欠場することとなったエヴェネプールの代わりにジロ・デ・イタリアに出場し、14日間にわたりマリア・ローザを着用。

その実績をもとに、昨年のジロ・デ・イタリアにおいても、怪我明けのエヴェネプールの代わりに「表のエース」を務めるはず、だった。

だが、1週目で思わぬ失速。逆にエヴェネプールがあまりにも調子が良かったものだから、2週目の冒頭で彼が未舗装路で大きく崩れたときにはアシストを求められ、怒りを顕にする場面もあった。

丁度その時期に明らかとなった、チームからの離脱。

アルメイダは独立することを選んだ。

 

その条件でもあったであろう、単独エースの座を手に入れて乗り込む今年のジロ・デ・イタリア。今度こそ1週目から調子を落とすことなく最後まで走り抜くことができれば、表彰台は固いだろう。

その武器は、ひたすら一定ペースの高出力で走り抜く、文字通り「TTスペシャリスト系オールラウンダー」らしい走り。とくに第17ステージでは鋭い加速を見せるサイモン・イェーツのアタックに都度引き離されるが、やがて一定ペースでこれに追い付き、最後はフィニッシュ前の緩斜面でついにイェーツを突き放して彼の前でフィニッシュするという走りを見せた。

それはまるで2017年ジロ・デ・イタリアでの、トム・デュムランとナイロ・キンタナの激戦を思い起こさせるような走りであった。

サイモン・イェーツとジョアン・アルメイダ。この2人の好対照な走りでの真剣勝負を今年もまた、見てみたい。

 

なお、その素晴らしい登坂力と高出力は「5勝クラブ」入りを目指すタデイ・ポガチャルにとっても重要なアシストとして機能するはずだが、今年はツールには出ない予定でいる様子。

代わりにブエルタ・ア・エスパーニャに出場するということで、今年こそツール&ブエルタのダブル制覇を目指す予定のポガチャルにとっては、ツールの疲労をうまくカバーする存在としてこのアルメイダには期待したいところとなるだろう。

もちろん、それは場合によってはアルメイダにとっての2つ目のチャンスともなるはずだ。

 

 

パスカル・アッカーマン(ドイツ、28歳)

脚質:スプリンター

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2021年の主な戦績

  • ドイツ・ツアー総合2位
  • オキシクリーン・ブルッヘ~デパンヌ3位
  • エシュボルン・フランクフルト5位
  • シュヘルデプライス6位
  • UCI世界ランキング50位

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ドイツのコンチネンタルチームでずっと走っていて2017年のボーラ・ハンスグローエ結成当時に引き抜かれワールドツアーデビューを果たした男。

アンドレ・グライペル、マルセル・キッテル、ジョン・デゲンコルプの「ドイツ・スプリンター黄金期」を継承する存在としてのニキアス・アルントやフィル・バウハウスらが期待ほどの成果を出せずにいた頃、突如として現れたこの新星がめきめきと成績を伸ばしていき、2019年にはジロ・デ・イタリアで区間2勝とマリア・チクラミーノを獲得。一気に世界最強スプリンターの一角として認められるほどとなった。

 

だが、2020年シーズン以降の彼は、苦しい時期を過ごすこととなった。年始のチャレンジ・マヨルカで2試合連続の2位。ツール・ド・ポローニュでも2回の2位、国内選手権ロードレスでもシクロクロッサーのマルセル・マイセンに敗れての2位・・・ブエルタ・ア・エスパーニャ含め勝利がなかったわけではないが、悔しい「2位」が続いていた。

2021シーズンはさらに苦しかった。不調もあって全く勝ち星が稼げていなかった中で、7月のシビウ・ツアー以降、1クラスを中心に少しずつまた勝てるようになってきてはいたが、彼にしては珍しいTTや登りスプリントでの勝利を重ねるなど、少し意外な活躍の仕方を見せていた。

 

そして、彼は移籍を決断した。

2020シーズンではそれまでの盟友的な存在であったはずのルディガー・ゼーリッヒとのコンビネーションがうまくかみ合わないような姿も見せていたが、今回同じように移籍することを決めたゼーリッヒとは行き先が違うというのも、象徴的だ。

そして移籍先のUAEチーム・エミレーツというのは、当然のことながらツールをエースとして走ることは不可能なチームでもある。

そして実際、今年の彼に対するオーダーはブエルタ・ア・エスパーニャただ1つ。

「サム・ベネットが戻ってくるからエースの座を求めて移籍した」とはまた違った動機を感じさせる今回の移籍が、最終的に彼に満足のいく結果をもたらしてくれればいいのだが。

 

 

その他注目選手

アレッサンドロ・コーヴィ(イタリア、24歳)

脚質:パンチャー

2020年にこのチームでプロデビュー。勝利はまだなし。2021シーズンはジロ・デ・イタリアの「ストラーデ・ビアンケ」ステージで最後まで生き残るが、ネオプロのマウロ・シュミットに最後敗れ、悔しい2位に終わる。

だがそのあとのモンテ・ゾンコランで3位。クラシカ・サンセバスティアンでも5位など、いつビッグレースで勝利してもおかしくないほどの才能に溢れた男だ。2022シーズン、最注目の若手の一人と言っていいだろう。

なお、シーズン終盤のコッパ・アゴスティーニでは、マッテオ・トレンティンをアシストしながら3位。託されたトレンティンは最後にアレクセイ・ルツェンコとのスプリント勝負に敗れて2位となったが、レース後のテントの中でコーヴィに対してブチ切れる姿がカメラにしっかりと納められていた。

コーヴィにもっとアシストしろと言いたかったのかもしれないが・・・若手に厳しいトレンティン先輩である。

 

ブランドン・マクナルティ(アメリカ、24歳)

脚質:オールラウンダー

2017年のドバイ・ツアーで「残り50m」まで逃げ続けたそのときから注目し続けている男。2018年のツール・ド・ラヴニールでは山頂フィニッシュで実質的にポガチャルを倒した男でもある(ガッツポーズが早すぎて結局敗北)。

昨シーズンはその才能を認められ、世界最強の男ポガチャルの右腕として大抜擢。イツリア・バスクカントリーでは一時総合リーダーの座を掴んだが、それゆえにチームとして判断が鈍り、最終ステージでこのマクナルティのためにポガチャルが牽引するという選択をしたことで、最後は山でマクナルティもポガチャルも崩れ落ちることとなった。

www.ringsride.work

 

だがツール・ド・フランスではしっかりとポガチャルのアシストに専念。前半はやや調子を落としていたようだが、第3週ではラファウ・マイカと共に、これまでのUAEでは見られなかった見事な「山岳トレイン」を完成させてくれた。

今年もツール・ド・フランスにおいてポガチャルのアシスト筆頭を任ぜられる予定。伝説の立役者となれるか。

 

なお、東京オリンピックでも終盤のアタックで抜け出すことに成功。但し、同じように機を見るのを得意とするリチャル・カラパスに食らいつかれ、最後はこれに突き放されて集団に飲み込まれる結果に。

残念ではあったが、良い走りではあった。

 

 

フェルナンド・ガビリア(コロンビア、28歳)

脚質:スプリンター

2016年から2018年にかけて、世界最強スプリンターの一人であったことは間違いない。しかしその後、2019年のジロ・デ・イタリアでの落車のあたりから、少しずつ歯車がかみ合わなくなっていった。

もがき、可能性を見せる瞬間もあったが、未だトンネルからは抜け出せていない。

 

だが、2020年のジロ・デ・イタリアで見せた、彼と、盟友マキシミリアーノ・リケーゼと、若き才能フアン・モラノのトリオは、トレイン力という意味ではシーズン最強候補であったと思っている。

モラノは2021シーズンでもブエルタ・ア・ブルゴスで2勝するなど、場合によってはガビリアを食ってしまいかねないほどの好調。

ここでガビリアがしっかりと復活し、そして今年のジロで、引退直前のリケーゼと共に、もう一度奇跡を起こしてくれることに期待したい。

 

そしてそこから先は、かつて「ガビリア2世」なんて呼ばれ方もしていたコロンビアの新鋭アルバロホセ・ホッジが復帰して合流することで、トレインの強さは保持されるはずだ。

「最強コロンビアンスプリントトレイン」は世界に轟くことができるのか? そしてその最後尾から、この男がもう一度強さを携えて放たれる姿を見たい。

 

フィン・フィッシャーブラック(ニュージーランド、21歳)

脚質:ルーラー

ユンボ・ヴィスマ・ディヴェロップメントチーム出身ながら、昨シーズン途中突然UAEチーム・エミレーツに移籍することとなった男。

明確な実績はまだ少ない。国内選手権U23個人タイムトライアルで優勝し、ベルギー・ツアーのTTでエヴェネプール、ランパールトに次ぐ3位を記録したくらいか。登れる選手なのかどうかも定かではない。そのあたりはこれからの活躍に期待したいところ。

なお、姉のナイアム・フィッシャーブラックも、女子最強チームの「SDワークス」に昨年から所属し、ジロ・デ・イタリア・ドンナで新人賞を獲得しているような有望な存在である。

姉弟ともに注目の存在である。

 

フアン・アユソー(スペイン、20歳)

脚質:パンチャー

ジュニアを卒業してU23カテゴリ1年目でいきなり、U23版ジロ・デ・イタリアでステージ3勝&総合優勝&ポイント賞&山岳賞(&当然新人賞も)総舐め。総合成績では2位以下に3分近いタイム差をつけての圧勝ということで、規格外の成績を残した直後にこのUAEチームでプロデビュー。

クラシカ・サンセバスティアンでは集団先頭付近で展開したまま18位。デビュー初年度からいきなり勝利して見せたエヴェネプールに比べるとまだ地味かもしれないが、恐ろしいのは変わらず。2年目となる今年、何が起きても不思議ではない。

なお、当然ツール・ド・ラヴニールにも期待されていたが、落車によって残念ながらリタイア。総合優勝したトビアスハラン・ヨハンネセンは先ほどのベイビー・ジロで総合2位だった男なわけだが、果たしてアユソーが無事最後まで走れていたらこのラヴニールもどうなっていたか・・・。

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各チームへのリンク

AG2Rシトロエン・チーム

アスタナ・カザフスタンチーム

バーレーン・ヴィクトリアス

ボーラ・ハンスグローエ

コフィディス

EFエデュケーション・イージーポスト

グルパマFDJ

イネオス・グレナディアーズ

アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ

イスラエル・プレミアテック

ロット・スーダル

モビスター・チーム

クイックステップ・アルファヴィニル

チーム・バイクエクスチェンジ・ジャイコ

チームDSM

ユンボ・ヴィスマ

トレック・セガフレード

 

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