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Bahrain - Victorious 2021年シーズンチームガイド

 

読み:バーレーン・ヴィクトリアス

国籍:バーレーン

略号:TBV

創設年:2017年

GM:ミラン・エルシェン(スロベニア)

使用機材:メリダ(台湾)

2020年UCIチームランキング:13位

(以下記事における年齢はすべて2021年12月31日時点のものとなります) 

 

【参考:過去のシーズンチームガイド】 

Bahrain Merida Pro Cycling Team 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

Bahrain Merida Pro Cycling Team 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

Bahrain-McLaren 2020年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

 

目次

 

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2021年ロースター

※2020年獲得UCIポイント順。

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大きな移籍はなし。昨年にランダやプールス、ビルバオを招き入れニバリを放出するなどの大きな変動があっただけに仕方がないだろう。

代わりにブレント・コープラントの代わりに新GMとなったばかりだったロッド・エリングワースがいきなり離脱。新GMの詳細はわからないが、とりあえずは元々から経営陣にいたスロベニアの「ログリッチを見出した男」ミラン・エルシェンが代表とみてよいのだろうか。スロベニアのドーピング疑惑でも取りざたされている人物だけに今後は不透明。

新加入ではミッチェルトン・スコットの時期エース候補だったジャック・ヘイグが加入で、このチームでどういう役割を任されるのか気になるところ。2018年のツール・ド・ラヴニールで活躍したジーノ・マーダーもこのチームでの成長が期待されるところ。

 

全体としては非常に良い才能が集まっている。ツール・ド・フランス総合4位はペリョ・ビルバオやダミアーノ・カルーゾといった才能がうまくかみ合った結果でもあり、昔からはチームワークという点でも決して悪くはない。

しかし、グランツールの頂点を獲る姿は想像できない。悪くはないのだが、最終的に「最強」たるだけのまとまりを感じられない。

頻発するGM交代劇や、スポンサー問題も影を落としているのか。

スポンサーといえば、昨年はタイトルスポンサーに名を連ねたマクラーレンが下りた代わりに、ヴィクトリアスという名前が。これは企業ではないようだが、詳細は不明。

 

 

注目選手

ミケル・ランダ(スペイン、32歳)

脚質:クライマー

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2020年の主な戦績 

  • ツール・ド・フランス総合4位
  • ブエルタ・ア・ブルゴス総合2位
  • ブエルタ・ア・アンダルシア総合3位
  • UCI世界ランキング39位

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もとは2015年のジロ・デ・イタリアでファビオ・アルを強力にサポートし、総合2位となった彼に続いての総合3位を記録。

エースの座を求めてチーム・スカイに移籍するも、そこでもなかなかうまくいかず、クリス・フルームに対する強力なアシストであることは示したが、そこで終わってしまった。

モビスター・チームでは2019年のジロ・デ・イタリアでセカンドエースだったはずのリチャル・カラパスが総合優勝。ここでもランダは「良いアシスト」となった。

今のバーレーンであれば、彼は伸び伸びとエースとして走れる。そしてツール・ド・フランスでは、ペリョ・ビルバオやダミアーノ・カルーゾの助けを借りて総合4位。決して悪くはない。

だが・・・グランツールの頂点を獲る姿は想像できない。今年のツールはTTが多めなのも、不安要素である。

果たして覚醒することはできるのか。せめて、ワールドツアーのステージレースで総合優勝するくらいはしてほしいところ。

 

 

ペリョ・ビルバオ(スペイン、31歳)

脚質:オールラウンダー

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2020年の主な戦績  

  • ジロ・デ・イタリア総合5位
  • ツール・ド・フランス総合16位
  • ブエルタ・ア・アンダルシア総合6位
  • UCI世界ランキング56位

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エウスカディ・エウスカルテル、カハルラル・セグロスRGAを経て2017年からアスタナ・プロチーム入り。 当初はファビオ・アルやミゲルアンヘル・ロペスのアシストとして活躍していたが、2018年のジロ・デ・イタリアで総合6位に入賞。2019年にはブエルタ・ア・アンダルシア総合4位など、彼自身がエースとして走る機会も増えていった。

そして昨年、ミケル・ランダとワウト・プールスと共にバーレーンに。役割は彼らのアシストと共に自らもエースの一角として走ること。短いシーズンであった2020年は、そのいずれもを完璧にこなし、ツールではランダにとって最も頼れるアシストとして、ジロでは自らエースとして彼自身のグランツール最高順位記録を更新した。十分に成功したシーズンと言ってよいだろう。

3週間の安定感はプールス以上。独走力とスプリント力ではランダ以上の彼の脚質は、TTの多い来年のツールにおいてはエースとして走ってもいいんじゃないかとさえ思わせる。

30を超えて今なお進化を続ける彼は、元アシストという点も含めどこかヤコブ・フルサンに近いところを感じている。2021年、彼がいずれかのグランツールで総合表彰台に登っていたとしても、決して驚くには値しないだろう。

 

 

ジャック・ヘイグ(オーストラリア、28歳)

脚質:クライマー

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2020年の主な戦績 

  • ブエルタ・ア・アンダルシア区間1勝&総合2位
  • ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ総合2位
  • ティレーノ~アドリアティコ総合10位 
  • UCI世界ランキング96位

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オーストラリアの育成プログラム出身で、オリカ~ミッチェルトン時代にはとくに2018年のジロ・デ・イタリアでサイモン・イェーツを最後までアシストし続けた姿が印象に残っている。

ダミアン・ホーゾン、ルーカス・ハミルトンと並ぶ、オージーチームの次代エース候補として、新型コロナウイルスでスケジュールが滅茶苦茶になる前は、2020年のブエルタをハミルトンと共にエース格として出場させてもらえる予定だった。

それだけに、今回の移籍は驚いたものだった。

まだまだ実力は未知数。アシストが主だったこともあり、過去のグランツール実績としては2017年のブエルタの総合21位、2018年のブエルタの総合19位あたりが最高位。

ただどちらかというとパンチャータイプの脚質も持っており、2019年にはブルターニュ・クラシック3位、イル・ロンバルディア6位、さらにはグランプリ・シクリスト・ド・ケベックでも、エースのダリル・インピーのアシストとして終盤に素晴らしい働きをしてみせており、続くモンレアルでも自ら11位と好記録。

もしかしたらグランツールではアシストに徹し、自らは過去総合4位の経験もあるパリ~ニースなどの小さなステージレースやあるいはクライマー向けワンデーレースでチャンスを掴むタイプと言えるかもしれない。

覚醒の待たれる才能の1人。2021年は彼の大きな勝利に期待したいところだ。

 

 

その他注目選手

ソンニ・コルブレッリ(イタリア、31歳)

脚質:スプリンター

今やチームを代表するエーススプリンター。 2020年はルート・ドクシタニーでの1勝のみと、決して満足できるシーズンではなかったものの、ビンクバンクツアー総合6位など、元々持ち合わせていたクラシック適性もより伸ばしている様子が見受けられ、近いうちにクールネ~ブリュッセル~クールネやヘント~ウェヴェルヘムなどの勝利も期待ができそう。

あとはもちろん、グランツールでの勝利。過去、ツール・ド・フランスの登りスプリントではペテル・サガンに食らいつく走りも見せていた彼は、今年、チャンスを掴み取ることができるか。ジロ・デ・イタリアは可能性が大きいと思うし、ツールでもブルターニュ開催で序盤からパンチャー向けのステージがあるため、狙えなくはないと思うのだが・・・。

なお、過去2012年から2016年は(チームの関係もあって)ジロ・デ・イタリアを5年連続で出場し、翌年から2020年まで4年連続でツール・ド・フランスに出場している。グランツール出場率の高さは目を瞠るものがあるが、そろそろ年に2回出場しても良いかも?

 

ジーノ・マーダー(スイス、24歳)

脚質:クライマー

タデイ・ポガチャルが制した2018年のツール・ド・ラヴニールで区間2勝と総合3位という類稀なる成績を残し存在感をアピールした男。同年の世界選手権ではチームメートのマルク・ヒルシの勝利をサポートした。

それだけに、2019年シーズンは大きな期待をもって注目していたのだが、チームが悪かったのか、鳴かず飛ばず。2020年最後のレースのブエルタ・ア・エスパーニャの、それも最終盤でようやく、彼の強さが発揮されていった。

すなわち、第1517ステージ。第15ステージでは残り20㎞地点でプロトンから飛び出して、逃げ残りの9名を一気に追い抜いて先頭を単独で逃げるマティア・カッタネオに迫る走りを見せた。

そのときは残り11㎞であえなくメイン集団に吸収されたものの、続く第17ステージでも逃げに乗り、残り14㎞を切ってヨン・イサギレ、マーク・ドノヴァンと共に3名の先頭集団を形成した。

すでにこのブエルタでステージ勝利を経験しているヨン・イサギレが一度抜け出しかけるが、マーダーは一度遅れながらも再び追い付き、なんとか食らいつこうともがいていた。

最終的には後方から勢いよく追い上げてきたダヴィ・ゴデュに追い抜かれ、ステージ優勝も彼に奪われるものの、第15ステージと合わせマーダーの強さ、可能性を見せたシーンであった。

まだまだ結果を出しているとは言い難い。これからも大成するかどうかはわからないが、期待だけはしていよう。

また、元チームではなかなか経験できなかった「グランツール総合争い」の中にアシストとして参画するチャンスも広がるだろう。自らはまだエースとして走る資格がなくとも、集団の先頭でランダやビルバオたちを助ける役割を見事にこなせたとしたら、それだけでまずは今年の目標を達成できるだろう。

 

ジョナサン・ミラン(イタリア、21歳)

脚質:TTスペシャリスト

今年のU23イタリア国内選手権TT王者。しかし同時に、ベイビー・ジロ(U23版ジロ・デ・イタリア)でも、今年超有望な若手ジョルディ・メーウスやジェイク・スチュアートを打ち破ってスプリント勝利している。

さらには出身チームが、昨年のイタリアのレースで活躍したボーラ・ハンスグローエのマッテオ・ファッブロや、今年そのボーラ入りを果たす2019年ツール・ド・ラヴニール総合2位ジョヴァンニ・アレオッティと同じ、サイクリングチーム・フリウリ。

新たな才能の発掘場となりつつあるこのチーム出身の彼が、先達と共に大きな活躍を見せられるか。

まずはコルブレッリのアシストや逃げなどでの活躍に期待だ。

 

 

総評

 

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グランツール総合とアルデンヌ・クラシックは才能が揃っているが、正直なところ、大きな成果(グランツール総合表彰台やアルデンヌ・クラシックでの勝利)まではあまり期待ができそうにない。非モニュメントのアルデンヌ系ワンデーでの勝利は可能性がある、といったところか。

スプリントでもコルブレッリ頼りで、バウハウスやシーベルグ、 昨年ブエルタ区間4位を記録した若手フレッド・ライトがかろうじて勝利を手繰り寄せる可能性があるくらいか。ジョナサン・ミランが突然勝利してしまう可能性もあるが。

いずれにせよ、どの分野についても「そこはかとない不安」がぬぐえないチームだけに、そのイメージを払しょくするような鮮烈な成果を期待したい。

ただ、まずは首脳陣や財政基盤など、組織の問題がすっきりされることが割と重要なのかもしれないけれど・・・。

 

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