読み:アージェードゥーゼル・ラ・モンディアル
国籍:フランス
略号:ALM
創設年:1992年
GM:ヴァンサン・ラヴニュ(フランス)
使用機材:エディ・メルクス(ベルギー)
2019年UCIチームランキング:13位
(以下記事における年齢はすべて2020年12月31日時点のものとなります)
参考
AG2R La Mondiale 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
AG2R La Mondiale 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
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2020年ロースター
※2019年獲得UCIポイント順。
2019年同様、2020年も大幅な入替はなし。ロマン・バルデをエースに据え、クラシックはオリバー・ナーセンで勝利を狙う体制を堅持する。
ただ、現状、そのどちらも決して良いとは言えない状況が続いてはいる。2019年のバルデは2018年以上にツール総合で結果を出せず、ナーセンも上位には入り込むが勝利の量産とまではいかない。
バルデをカバーしうるセカンドエースについても、その期待のかかるピエール・ラトゥールが2019年は怪我に苦しみ不調のシーズン。2020年にこの辺りの噛み合わない状況が改善されるのかは未知数だ。
変化を志向する意思は選手単位では存在する。その筆頭がバルデで、2020年のジロへの初挑戦や、オリンピックおよび世界選手権への意欲を語った。
現状、バルデあってのこのチーム。まずは彼が、2019年の長い休息を経て新しい活躍を見せることを期待する。
と、同時に、コズネフロワ、ディリエ、シャンプッサンなどの若き才能が羽ばたいてチームに新たな活力をもたらしてくれることも願いたい。
注目選手
ロマン・バルデ(フランス、30歳)
脚質:クライマー
2019年の主な戦績
- ツール・ド・フランス山岳賞
- ツール・ド・フランス総合15位
- クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合10位
- パリ〜ニース総合5位
- アムステルゴールドレース9位
- モンヴァントゥ・デニヴレ・チャレンジ2位
- 世界ランキング63位
かつて、30年ぶりのフランス人ツール・ド・フランス制覇に最も近いと思われていた男。2016年には総合2位に。翌年も総合3位。2018年にはチームも彼の総合成績を第一に考える布陣を用意し、全フランスの期待を一身に背負ったままその年のツールに挑んだ。
しかし、肝心のチームメートの不運によるリタイアや負傷も重なり、彼自身も石畳による落車。思うように実力を発揮できず、夢は遠くなってしまった。
そんな彼は今、また別の夢を抱いている。彼自身が持つ、ワンデーレースへの才能。2018年にはストラーデ・ビアンケ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ、クライマー向けとなったインスブルック世界選手権ロードレースの3つすべてで2位。
2020年は同じくクライマー向けとなる東京オリンピック、スイスでの世界選手権にも意欲を示している。
2019年は早めのシーズン終了を経てリフレッシュしたという彼が、2020年、新たな夢を成就させていく姿をぜひ、見てみたい。
オリバ-・ナーセン(ベルギー、30歳)
脚質:ルーラー
2019年の主な戦績
- ミラノ〜サンレモ2位
- ビンクバンクツアー区間1勝、総合2位
- ヘント〜ウェヴェルヘム3位
- ロンド・ファン・フラーンデレン7位
- パリ〜ツール3位
- 2019年世界ランキング14位
北のクラシックにおける実力は非常に高く、毎年ロンド・ファン・フラーンデレンやパリ〜ルーベの優勝候補として挙げられる。しかし、勝てない。
その敗因の1つは、彼を支えるチームメートが乏しいこと。一応、2014年ロンド4位のファンデンベルフ、2018年パリ〜ルーベ2位のディリエなどが揃ってはいるのだが、安定感はなく、今のところうまく噛み合ってはいない。
バルデやラトゥールによるステージレース総合系でのポイント稼ぎがうまくいかない分、クラシックで稼ぐことはチームにとっても重要だと思うが、2017年にナーセンが加入したタイミングでの強化以降、特に大きな強化はなし。
そんな中、2020年は弟のローレンス・ナーセンが新加入。実力はもちろん、その深い絆と意思疎通によって、新たな成績を追い求めることはできるか。
ブノワ・コズネフロワ(フランス、25歳)
脚質:パンチャー
2019年の主な戦績
- ツール・ド・リムザン区間1勝、総合優勝
- パリ〜カマンベール優勝
- ブルターニュ・クラシック7位
- グランプリ・シクリスト・ド・ケベック10位
- 2019年世界ランキング74位
2017年のU23ロード世界王者。そして2018年には、パリ〜ツールにて、ニキ・テルプストラと共に逃げ、彼を怒らせながらも3位表彰台を獲得する走りで注目を集めた。
そして2019年。パンチャー向けのフランスの1クラスワンデーレースを3つ優勝し、新城幸也も総合優勝しているツール・ド・リムザンでは区間1勝&総合優勝。さらには、フランス系クラシックでは最高峰のブルターニュ・クラシックで7位に入る好走と、極め付けはGPシクリスト・ド・モンレアルでの終盤アタック、からのジュリアン・アラフィリップとの2人逃げであわや優勝、というところまで迫った。
この走りを受けて、2019年世界選手権のフランス代表メンバーの最後の1枠を獲得。今、着実に成長しつつあるフランス若手の1人である。
北のクラシック適性もあるため、ナーセンを助ける役回りにも期待したいところ。
その他注目の選手
アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、26歳)
脚質:パンチャー
数少ない新規加入の1人。そしてポッツォヴィーヴォ以来のイタリア人ライダーである。
2019年までイタリア籍のプロコンチネンタルチーム、アンドローニ・ジョカトリに所属。そしてジロ・デ・イタリアではとくに第19ステージ、エステバン・チャベスが逃げ切ったステージで、同じ逃げ集団内にいた彼が、チェーン落ちの状態から突如復活し、2位に入り込むという驚異的な走りを見せていた。
ほかにはGPインダストリア・アルティジアナート3位、ツール・ド・フィニステーレ2位、GPカントン・ダルゴヴィ5位、トレ・ヴァッリ・ヴァレジーネ4位など、パンチャー向けのレースでの好成績が光る。ただ、ジロでの走りを見るに、クライマーに近い役割も任せられそうで、来年もしかしたらジロに初参戦するかもしれないバルデにとっては、頼れるアシストとなりうる選手だ。
また、「ブルターニュの北のクラシック」とも呼ばれるトロ・ブロ・レオンでも3位。たしかに過去にもクライマー系の選手が勝ってたりすることもあるこのレースだが、ヴェンドラーメの脚質の幅の広さが伺える。
ピエール・ラトゥール(フランス、27歳)
脚質:オールラウンダー
2016年のブエルタ・ア・エスパーニャ最終山岳ステージで見事な山頂フィニッシュ勝利を果たし、一気に名を轟かせた。同年のイル・ロンバルディアで10位、2017年にはツール・ド・ロマンディ新人賞、そして2018年にはボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ総合3位とツール・ド・フランス新人賞ということで、バルデに次ぐチームの総合エースとしての地位を固めた。
さらには2017年・2018年と連続でフランス国内タイムトライアル王者に。バルデにはないTT能力の高さは、フランス人の期待を背負うには十分だった。
しかし、2019年は大失速。2月のトレーニング中に手首を骨折し、ツール・ド・スイスから復帰するも回復は十分でなく、国内選手権TTもロードも不調のまま、当初出場予定だったツールもスキップすることに。
なんとか持ち直したシーズン後半。ブエルタ・ア・エスパーニャではロス・マチュコス制覇まであと1歩、ジロ・デッレミリア7位やイル・ロンバルディア9位に入るまでには復調した。
2019年は苦難のシーズンを過ごした彼だが、これは不可抗力というもの。2020年はまた輝きを取り戻してくれると信じている。
クレモン・シャンプッサン(フランス、22歳)
脚質:クライマー
フランスの次代の総合エース。若手の登竜門「ツール・ド・ラヴニール」では2018年総合5位、2019年総合4位。ほか、U23版イル・ロンバルディアでは2位に入り、AG2Rのトレーニーとして参加したイル・ロンバルディア本戦でも9位と、驚異的な成績を叩き出したのである。
あとはチームがどんな風に育成していくか。来年最注目の選手の1人である。
なお、正式なチーム合流は2020年の4月から。3月までは現在所属しているアマチュアチーム、シャンベリーCFに残る予定。
総評
2020年のグランツール総合では高望みはしない。それよりはフランドル・アルデンヌのクラシック、あるいはオリンピックや世界選手権などのワンデーレース群での成績と、グランツールでも逃げ切りを中心にステージ優勝を狙うことになりそうだ。
もちろん、ジロとブエルタでのバルデの総合成績と、ラトゥール、あるいはシャンプッサンのステージレースでの成長と活躍にも注目したい。
高望みはしない、しかし2020年代への希望を探るシーズンにしていきたい。
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