以下の記事もチェック!
読み:アルペシン・フェニックス
国籍:ベルギー
略号:AFC
創設年:2008年
GM:フィリップ・ルードホフト(ベルギー)
使用機材:キャニオン(ドイツ)
2021年UCIチームランキング:7位(昨年12位)
(以下記事における年齢はすべて2022年12月31日時点のものとなります)
【参考:過去のシーズンチームガイド】
Corendon-Circus 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Alpecin-Fenix 2020年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Alpecin-Fenix 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
目次
※各グラフのポイントは独自に集計した2021シーズンの実績に基づきます。
同じポイントに基づいた各脚質ランキングは以下の記事を参照のこと。
各チームのプレビューをPodcast&Youtubeでもやっています。
スポンサーリンク
2022年ロースター
※2021年獲得UCIポイント順
もはや、マチュー・ファンデルプールのためだけのチームではなくなって久しい。
昨年はプロチームとして初めて3大グランツールすべてに出場し、そのすべてにおいて結果を残した。まだまだトリプルエース以外はプロチームらしいメンバーが残ってはいるものの、ランキングではワールドツアーチームの半数以上を押しのけて上位に入っておりり、人数も31名と、なんでこれでプロチームなのか不思議なくらいである。
新規獲得選手たちも良い選手が揃っている。若手のベン・トゥレットがイネオスに獲られたのは残念だったが、ロバート・スタナードやステファノ・オルダーニなど、他チームで期待の若手として重宝されていた選手たちを奪い取り、ミヒャエル・ゴーグルやヤクブ・マレツコなど、チームの手薄なところへの絶妙な補強も行っている。
さらに地力を増した「19番目のワールドツアーチーム」は今年もどんな活躍を見せてくれるのか。大注目である。
注目選手
マチュー・ファンデルプール(オランダ、27歳)
脚質:パンチャー
2021年の主な戦績
- ストラーデ・ビアンケ優勝
- ツール・ド・フランス区間1勝
- ロンド・ファン・フラーンデレン2位
- パリ~ルーベ3位
- E3サクソバンク・クラシック3位
- ミラノ~サンレモ5位
- 世界選手権ロードレース8位
- UCI世界ランキング7位
2021シーズンも相変わらずの怪物ぶりを見せてくれた。
まずは3月のストラーデ・ビアンケ、最後のカンポ広場へと至る石畳の激坂で、世界王者ジュリアン・アラフィリップを力でねじ伏せる強烈な加速。
そして初出場のツール・ド・フランス第2ステージで、1回目のミュール・ド・ブルターニュから積極的に攻撃を仕掛け、さらにそれが引き戻された後も、ラストのミュール・ド・ブルターニュでまた、あらゆるライバルを突き放す走りでもってステージ優勝&マイヨ・ジョーヌ獲得。
その後の個人TTでのマイヨ・ジョーヌを守るための好走や、第7ステージでの「マイヨ・ジョーヌの大逃げ」など、とにかく見せ場を作ってファンを沸き立たせてくれた。
そのまま東京オリンピック・マウンテンバイクでの金メダルを以て、最高のシーズンとするか――と、思っていたのだが。
そのマウンテンバイクでの、まさかの落車。
9月に復帰し、世界選手権ロードレースでは8位、パリ~ルーベでは3位と、十分に強い走りは見せられているものの、それでもソンニ・コルブレッリを引き離せなかったことも含め、本来の彼の全力が出せている状態ではないように思えた。
そして、その後のオフシーズンでの負傷もあり、シクロクロスでは全く力を発揮できず、早々に中断。世界選手権出場も早々と諦め、彼にとっては長いオフシーズンを過ごすこととなった。
3月にはロードレース復帰を目指すファンデルプール。果たして、完全復活はなされるのか。
これまでも常に想像を超え続けてきた男だけに、気が付けば全く問題のない状態でまた驚くべき成果を成し遂げていそうな気もするが、果たして。
ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、24歳)
脚質:スプリンター
2021年の主な戦績
- ブエルタ・ア・エスパーニャ区間2勝
- ツール・ド・フランス区間2位×3、区間3位×3
- エシュボルン・フランクフルト優勝
- オキシクリーン・ブルッヘ~デパンヌ2位
- シュヘルデプライス優勝
- グランプリ・ド・ドナン優勝
- シーズン9勝
- UCI世界ランキング15位
ワールドツアーチームからの驚きの移籍となった昨年。正直、ティム・メルリールからツール・ド・フランスのエースを奪えるのか、不安なところもあった。
実際、メルリールとの「ダブルエース」状態で出場したツールでは、最初のスプリントステージでメルリールをアシストしてこれを勝たせる結果に。
続くステージ以降はメルリールにアシストされる形となり、さらに途中で彼がリタイアしたのちは単独エースとして戦うことになったが、結局ここで勝つことはできなかった。
「エース」はやはりメルリールなのか? フィリプセンでは彼に勝つことはできないのか?
しかし、そのツールでは勝てはしなかったものの、2位が3回に3位が3回と、驚異的な安定感。
さらに、続いて出場したブエルタ・ア・エスパーニャでも、強力なライバルが決して多くなかったとはいえ、ファビオ・ヤコブセン相手にも怯むことなくステージ2勝を叩き出した。
結果、年間を通しての成績でいえば、メルリール以上のものを積み上げることに成功。
シーズン前の不安をすべて払しょくするような、素晴らしい成果となった。
今年も今のところは昨年と同様のスケジュール、すなわちジロは出場せずツールにてメルリールとのダブルエース体制で臨むらしい。
昨年と違ってメルリールもファンデルプールもラストまで残ることができれば、ツールでの勝利の可能性もまた上がることだろう。相性最悪のマーク・カヴェンディッシュが出場しないということになればさらに・・?
メルリールよりも純粋なスプリント、それもワールドツアー系のスプリンターズワンデーレースにも強いイメージがあるので、昨年のエシュボルン・フランクフルトに続く、さらなる成績も期待していきたい。
ティム・メルリール(ベルギー、30歳)
脚質:スプリンター
2021年の主な戦績
- ツール・ド・フランス区間1勝
- ジロ・デ・イタリア区間1勝
- ブレーデネ・コクサイデ・クラシック優勝
- ドワースドール・フラーンデレン3位
- シーズン9勝
- UCI世界ランキング19位
このチームを「マチュー・ファンデルプールだけのチーム」から脱却させたのは間違いなくこの男の活躍によるものだった。
ファンデルプール同様にシクロクロス出身で2018年と2019年にはポストノルド・デンマークルント(ツアー・オブ・デンマーク)でもトップロードレーサーに混じって勝利。そこからベルギー国内選手権ロードレース優勝など、次第に「単なるロードもできるシクロクロッサー」ではなく、「一流のロードレーサー」として成長していくこととなる(一方でシクロクロスの方ではやや成績が揮わなくなってくるが・・)。
今年は初出場のグランツールとなるジロ・デ・イタリアの、最初のスプリントステージでいきなりの勝利。しかも、残り250mという、一般的に考えれば仕掛けるには早すぎるタイミングで飛び出し、そのまま先頭でフィニッシュまで持ちこたえるという、強い勝ち方を見せつけた。
その後のツール・ド・フランスでの勝利も圧倒的だったが、このジロでの勝利こそ、昨年のメルリールの強さを象徴する一幕であったといえるだろう。
課題はグランツールへの適応力。ジロはツールを見越してのリタイアであっただろうが、その後のツールでも完走できなかったことは残念。最後までフィリプセンと共にアシストし合う関係が続けばチームとしての勝利ももう少し重ねられたかもしれない。
逆にフィリプセン以上に優れた点としてはクラシックへの適性。さすがシクロクロッサーというべきか、ル・サミンやブレーデネ・コクサイデ・クラシックなど、北のクラシック系レースでも好成績を出し、今年もまだ予定にはないものの、そのあたりのクラシックレースでの勝利に期待したいところ。
その他注目選手
ジャンニ・フェルメールシュ(ベルギー、30歳)
脚質:ルーラー
北のクラシックにおける、マチュー・ファンデルプールに続くチーム内2番手につけている男と言っても過言ではない。
今年出場した北のクラシックのトップレース、すなわちE3サクソバンク・クラシック&ヘント~ウェヴェルヘム&ロンド・ファン・フラーンデレンのすべてでTOP10入り。ほか、UAEツアー初日のファンデルプール勝利の際も逃げに乗った彼に付き従い、見事アシストを果たしてくれた。
ジロ・デ・イタリアではメルリールが前の方に居られないときに代わりにスプリントに参加して上位に入り込むなど、チームの様々な面で「サブエース」として活躍してくれた男である。
昨年は「フロリアン」の方のフェルメールシュに最後話題を持って行かれた感はあるが、今年は彼以上に目立って「フェルメールシュといったらジャンニ」と言われるように頑張りたいところ。
ミヒャエル・ゴーグル(オーストリア、29歳)
脚質:パンチャー
何よりも驚きは昨年のストラーデ・ビアンケでの6位。それまでは決して目立つようなタイプの選手ではなかっただけに、終盤のサバイバルな展開の中で常に前の方で姿を見せていた彼の走りは鮮烈な印象を残した。
そんな彼をアルペシン・フェニックスが獲得。石畳平坦系に強い選手が多めのアルペシンにとっては、丘陵レースでのファンデルプールのアシストとして期待がかけられることとなるだろう。
ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、27歳)
脚質:クライマー
2020年ズイフト・アカデミー・プログラム優勝者として昨年からアルペシン・フェニックス入りを果たす。
が、「それだけの男」ではないことは、2020年ヘラルドサン・ツアーでの強烈な走りや、その年末の国内シリーズ戦での活躍で証明済。
さらに2021シーズンも、ブエルタ・ア・ブルゴスの最終日山岳ステージでの区間5位の勢いをそのままに出場したブエルタ・ア・エスパーニャで、第14ステージでの「落車したうえで最終的に区間3位」という素晴らしい走りで、日本の視聴者にも強い印象を残した。
年齢的にはすでに中堅レベルといったところだが、最近はこれくらいの年齢から一気に伸びていく選手も少なくない。若手に負けない活躍を、今年もまた期待している。
ステファノ・オルダーニ(イタリア、24歳)
脚質:パンチャー
コンタドールとバッソの育成チーム「コメタ・サイクリング(現EOLOコメタ)」出身で、ロット・スーダル期待の若手として順調に育ちつつグランツールでも上位入賞してきていた有望株スプリンターがまさかの移籍。ロット・スーダルにとっては大きな痛手であり、アルペシンにとってはトレイン力向上の重要な一手となった。
ほか、ヤクブ・マレツコ獲得など、チームを去ってしまったダヴィデ・チモライの穴を埋める補強としては十分と言えるだろう。
ロバート・スタナード(オーストラリア、24歳)
脚質:パンチャー
2018年ピッコロ・ロンバルディア(U23版イル・ロンバルディア)覇者。過去にはジャンニ・モスコンやファウスト・マスナダなど有力選手が優勝者に名を連ねているこのレースでの勝者ということで期待されてミッチェルトン・スコット(現バイクエクスチェンジ・ジェイコ)にてプロデビューを飾ったのだが、なかなかそこでは飛び抜けた成績を残すことはできなかった。
とはいえ、良い走りはできていた。昨年はブラバンツペイル6位やティレーノ~アドリアティコ区間6位、さらにはチッタ・ディ・ルガーノでも、あともう少しで勝利というところでダリル・インピーの落車に巻き込まれてフィニッシュライン直前での悔しいリタイアとなった。
ゆえに、このアルペシンへの移籍は彼にとってもチャンスとなるだろう。基本はゴーグルと共にアルデンヌ系クラシックでのマチュー・ファンデルプールのアシスト。但し、ファンデルプールが出場しないときは、なかなか彼に次ぐ存在が育ちきっていないアルペシンにおいては、十分にエースとして活躍できるチャンスがあるだろう(ほかにはクサンドロ・ムーリッセやシルヴァン・ディリエなどがいるが、彼らも昨年はイマイチな状況ではあった)。
そろそろ若手と言われるような時期も終わりが近づいてきており、スタナードにとっても重要な2年となるだろう。
各チームへのリンク
スポンサーリンク