読み:アージェードゥーゼル・ラ・モンディアル
国籍:フランス
略号:ALM
創設年:1992年
使用機材:Factor(イギリス)
2017年UCIチームランキング:7位
(以下記事における年齢はすべて2018年における数え年表記となります)
2018年ロースター
2016年・2017年と連続でロマン・バルデをツール総合表彰台に押し上げた。とくに2017年ツールは、チームとしてエースを守る体制が出来上がっており、今後における可能性をより感じさせた。あとはエースのTT能力さえ改善されれば・・・。
一方、オリバー・ナーゼンやスティン・ヴァンデンベルフの加入によって強化されたはずの北のクラシックは、結局勝利を得られずに終了してしまう。今年はさらにシルヴァン・ディリエやクレモン・ヴァントゥリーニの加入によって強化を図る。グランツールだけでなく、クラシックでも結果を出せるチームに――ギャロパンの加入は、その意味でも大きな意味を持つだろう。
ポッツォヴィーヴォの移籍は、ツール以外のグランツールでの総合上位を狙える駒を失ったことを意味する。その意味で、ラトゥールの成長には大きな期待がかかっている。
注目選手
ロマン・バルデ(フランス、28歳)
脚質:クライマー
AG2R絶対唯一の総合エース。2014年にツール新人賞を獲得し、2016年・2017年と連続で総合表彰台に登る。今年のツールではフルームを凌駕するダウンヒル能力を見せつけた。
唯一最大の弱点は独走力。今年のツールでは第9ステージ、上記のダウンヒル能力で抜け出すことができた最後の10kmで、この独走力の欠如によってチャンスを失った。
そして忘れもしない、第20ステージ。マルセイユ個人TT。バッドデイが重なったこともあり、総合2位を失うどころか、あわや総合表彰台すら失いかねない事態に陥った。
来年のツールでは石畳への対応力に不安を覚える。一応、過去のツール石畳ステージでは、総合勢にはしっかりくらいつく走りを見せてはいるが・・・
もちろん、そこはチーム力でカバーするべき部分。ナーゼンやディリエらがしっかりとサポートしてくれるだろう。
今年のツール第12ステージ。ペイラギュードの激坂フィニッシュで、フルームが崩れ、アルが失速する中、最後までペースを保って見事優勝を果たした。これでバルデは、3年連続ツールステージ勝利を飾っている。
シルヴァン・ディリエ(スイス、28歳)
脚質:ルーラー
今年のジロで、ジャスパー・ストゥイヴェンを打ち破って勝利し、その名を轟かせた。
だが、その後も彼は活躍を続けている。6月のルート・デュ・スッドではトゥールマレーを越えるクイーンステージでも上位に残り、最終的に総合優勝・ポイント賞・山岳賞を総なめにした。
そしてスイス国内選手権ではロード部門優勝。来年はスイスチャンピオンジャージを着ての活躍が見られるだろう。
なお、スイス国内選手権ではITT部門でも2位に入っており、独走力も十分に期待ができる。ドワルスドール・ヴェストフラーンデレンでも2位に入るなど、北のクラシックへの適性もあるため、来年のツールでは、石畳でも平坦でも山岳でも頼れる牽引役として活躍してくれることだろう。
将来的には体重を絞っていけば、オールラウンダーとしても活躍ができるかもしれない。可能性の広がる選手だ。
この1年を経て、表情に余裕も出てきた感のあるディリエ。一気にトップライダーの仲間入りを果たせるか。
ピエール・ラトゥール(フランス、25歳)
脚質:オールラウンダー
昨年のブエルタの第20ステージで勝利し、一躍フランス期待の星となった若手。今年もその勢いは止まらず、国内選手権ITT部門で優勝した。独走力の欠如がバルデ最大の弱点だが、ラトゥールはそれを補う力があるため、もしかしたらバルデ以上に将来の総合優勝候補となりうるかもしれない。
だが、まだまだ底力が足りない。今年のツールでも序盤で新人賞ジャージを着ることができたものの、それ以降は存在感を失ってしまった。来年は新人賞ジャージが許される最後の年。ここでしっかりと、結果を残したいところ。
なお、フランスの総合エースは、期待され始めると崩れるというジンクスもある。ラトゥールももしかしたら来年は・・・
来年は新人賞ジャージが許される最後の年。様々なレースで積極的に狙っていきたい。
オリバー・ナーゼン(ベルギー、28歳)
脚質:ルーラー
AG2Rの北のクラシック対策の一環として、ヴァンデンベルフと共に移籍してきたフランドル人。確かに各種クラシックで良い走りはしたし、ベルギーチャンピオンにも輝いたものの、結局、勝利は得られず。
今年はさらにディリエやギャロパン、ヴァントゥリーニを加えたため、より強化された形で北のクラシックに挑めるかもしれない。なんとか、勝利がほしい。
もちろん、ツールにおける石畳対策としても重要な存在であることは間違いない。
端正な顔立ちも注目点。気になる人はぜひ、Getty ImagesでOliver Naesenを検索してみてほしい。
その他注目選手
トニー・ギャロパン(フランス、30歳)
脚質:パンチャー
かつて、フランス期待の星と呼ばれていた男の1人。長い間ベルギーチームに籍を置き続け、ようやくフランスのチームに戻ってきた。もちろん、エースとしてではなく、有望な後輩の最も頼れるアシストとして。
実際、ギャロパンのアシストとしての走りには十分期待を持てる。
2015年ツール。オランダの「海の上」ゴールを目指す第2ステージは、激しい雨と風によって混沌とした状況を生んでいた。ニバリ、ピノ、ペローといった前年の表彰台トリオが遅れる中、先頭集団を牽引し、エースのグライペルのための舞台を用意したのがギャロパンだった。
石畳などバルデを苦しめる要素がたっぷりと含まれている来年のツールにおいて、ギャロパンの存在は、予想されている以上に重要なものになるのは間違いない。
もちろん、一流のパンチャーとして、彼自身の勝利を狙える走りにも期待したい。とくにアルデンヌ・クラシックでは、過去イル・ロンバルディアで7位、アムステルゴールドレースで6位など結果を出している。
AG2Rはクラシックに弱いチームなので、ギャロパンも十分にエース待遇での出場が可能となるだろう。今回の移籍は、彼にとっても、チームにとっても非常に大きな価値を持つものだと感じている。
アレクシー・ヴュイエルモ(フランス、30歳)
脚質:パンチャー
2015年ツールでミュール・ド・ブルターニュを制し、一躍「激坂ハンター」の仲間入りを果たしたヴュイエルモ。しかし2016年はアムステルで落車し、2017年はフレッシュ・ワロンヌでも期待外れの結果に終わった。
一方で、今年のツール・ド・フランスでは山岳アシストとしての才能を発揮した。彼だけでなく、AG2Rというチーム全体が、バルデという1人のエースのために走る体制をしっかりと形成しつつあるように感じた。ヴュイエルモはその中心に立ち、来年もチームを引っ張っていってくれるだろう。
なお、来年のツールはミュール・ド・ブルターニュが復活する。さすがにまた勝つ、とは思わないものの、それでも期待はしてしまう。
ルディ・バルビエ(フランス、26歳)
脚質:スプリンター
ダンケルク4日間やピンクバンクツアーで、1級スプリンターたちにも引けを取らない走りを見せている、今もっとも熱いフレンチスプリンター。先日のパリ~ブールジュではついに今期初の勝利を飾った。
来年はジロかブエルタに出場し、本当の意味でのトップスプリンターの仲間入りを果たしてほしいところ。
ちなみに、2012年には日本のブリジストン・アンカーにトレーニーとして加入していたりする。
2018年ツール 出場メンバー案
1.ロマン・バルデ(エース)
2.シルヴァン・ディリエ(平地・山岳牽引役)
3.アクセル・ドモン(山岳牽引役)
4.マティアス・フランク(山岳牽引役)
5.トニー・ギャロパン(平地・山岳牽引役)
6.ピエール・ラトゥール(山岳牽引役)
7.オリバー・ナーゼン(平地牽引役・石畳対策)
8.アレクシー・ヴュイエルモ(山岳牽引役)
登りもこなせて独走力も高いディリエやラトゥールの存在は、起伏の豊かな長めのチームTTがある来年のツールには最適な存在。全体的に、例年よりもバランスの取れたメンバー構成が可能になったように思う。
あとはゴチエやジェニエなどの実力派クライマーを入れるかどうか。ガスタウアーやバークランツなど、ステージ優勝も狙えるアタッカーを捨てて総合優勝に一本化する方針なのかどうかも気になるところだ。
総評
ツール・ド・フランスでのチーム力をより高めていく方針を感じられる2018年のAG2Rロースター。もう1つの目標であるクラシック対策がうまくいくかどうかに注目。
そして、ツール・ド・フランス以外のグランツールでの総合表彰台やステージ優勝のため、ラトゥールの成長やドモン、バークランツなどのアタッカーたちの活躍が期待される。
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