※新型コロナウイルスの影響でレーススケジュールが大幅に変更される前の情報です。ご注意ください。
おススメの記事
ジロ・デ・イタリア2020 コースプレビュー 第1週 - りんぐすらいど
ジロ・デ・イタリア2020 コースプレビュー 第2週 - りんぐすらいど
ジロ・デ・イタリア2020 注目選手プレビュー - りんぐすらいど
2019年シーズン最も読まれた記事の1つが、「2019年シーズン 各チームのグランツール出場予定選手概覧」であった。
個人的にはちょっとしたメモのつもりだったのだが、やはり「どの選手がどのグランツールに出るつもりなのか」というのは誰しもが気になるようで、投稿当時のシーズン冒頭だけではなく、グランツールが近づく時期に連れてまた閲覧数が増大していった。
そして、2020年シーズンに向けて、早くもグランツール出場に関するスケジュールを語り始める選手たちがチラホラ。
今回は、それらのデータを一つにまとめていくことにする。2020年シーズンのグランツールの行方を占う上で、少しでも参考にしていただければ幸いだ。
※年齢はすべて2020/12/31時点のものとなります。
暫定一覧
- AG2Rラモンディアル
- アスタナ・プロチーム
- バーレーン・マクラーレン
- ボーラ・ハンスグローエ
- コフィディス・ソルシオンクレディ
- EFエデュケーション・ファースト
- ロット・スーダル
- ミッチェルトン・スコット
- モビスター・チーム
- NTTプロサイクリング
- チーム・イネオス
- チーム・ユンボ・ヴィズマ
- トレック・セガフレード
- UAEチーム・エミレーツ
- アルペシン・フェニックス
スポンサーリンク
AG2Rラモンディアル
バルデがツールを回避、ラトゥールがツールのエース?
2016年ツール・ド・フランス総合2位、2017年総合3位のロマン・バルデが、2013年以来欠かさず出場し続けてきたこの偉大なるレースを、2020年は回避することに決めた。
「その決断は決して簡単なものではなかった。けれど、今は何かを変えるべきときだと思った」
「何かを変えなければならない」という思いは、すでに10月末のさいたまクリテリウムでのインタビューで語られていた。そこで彼は2020年のジロ・デ・イタリアへの挑戦、そしてオリンピックとスイスで行われる世界選手権への意欲を示していた。
それでも、彼がツール・ド・フランスを欠場するという事態は、やはり驚くべきことであったと言える。
「それは僕を快適な場所から引きずり出す選択だった。しかしそれは同時に、僕を1人のライダーとして成長させることを意味し、かつ将来のツールに向けたよき経験をもたらしてくれるだろうと思っている」
この決断と同時に、バルデは、2020年シーズンにおいて二つのグランツール、すなわちジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャに共に参戦することを宣言した。
とくにジロ・デ・イタリアは彼にとって初となる経験。彼の苦手な3つの個人タイムトライアルが用意されていることも、彼の決意を揺るがす要素にはならなかった。
「ジロのルートはとても魅力的だ。とくに最終週には獲得標高の大きな長距離ステージが複数用意されている。たしかにタイムトライアルは3つもあるけれど、同じようにタイムトライアルが長距離設定された今年もクライマーが優勝している。そこで僕は自分らしさを表現してみたい」
もちろん、東京オリンピックに万全な状態で出場したいという思いも、ツール回避の決断を後押しした。彼にとって自らのもう1つの可能性であるワンデーレースへの意気込みを、東京オリンピックおよびスイスの世界選手権への出場という形で表現した。
そして、ジロ・ツールの「ダブルツール」への可能性もばっさりと切り捨ててみせた。
それは、彼が何よりもツールを愛しているからこそであった。
「ジロ・ツールの『ダブルツール』は、僕がツールにおいて小さな結果だけで満足したくはないという意味で選ぶことのできない選択だった。たしかにステージ優勝にフォーカスするとか、山岳賞を再び狙うという方法はあっただろう。しかし、僕はツールを総合上位を狙うこと以外では出場したくはなかった。ツールで総合上位を狙うか、それともまったくそれに出ないか、どっちかでしかなかった」
だからこそ、彼は再びツールの地に戻ってくるとも約束してくれた。
「ツールには戻ってくるつもりだ。この6年間、僕はツールを走り続けてきたけれど、直近の2年ーーとくに2019年はーー満足のいくものではなかった。だから何かを変えるべきなんだ。この選択は僕に新たな経験をもたらし、より良いライダーへと成長させてくれるだろう。僕は再びツールに戻ってくる。それも、より強くなって」
ではツールには誰がエースとして出場するのか?
その当然の疑問に対し、バルデは若き才能の名を挙げる。
「このチームには若き世代の選手たちがいて、その筆頭がピエールだ。今回の僕の選択は彼らにチャンスを与えることになる。それはチーム全体にとっても良いことと言えるだろう。2020年はあらゆる観点において重要な年となる気がしている」
2017年のブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝を挙げ、2018年のツール・ド・フランス新人賞を獲得した男、ピエール・ラトゥール。彼がエースとして2020年のツール・ド・フランスを走ることを示唆するバルデの発言であった。
もちろんここではまだはっきりとはしていない。ラトゥールは2019年は怪我にも悩まされイマイチ結果を出しきれずにいたシーズンでもあった。
それでも彼は、ブエルタ・ア・エスパーニャ、ロス・マチュコスの厳しい登りの終盤で、決して諦めようとしない力強い走りを見せていた。
来年は27歳になる年。彼もまた、2020年に注目すべきフランス人の1人だ。
アスタナ・プロチーム
フールサンがジロ・ツール予定、ロペスがツール初挑戦
2019年シーズンを彼史上最高の成績で終えることのできたヤコブ・フールサンが、2020年はジロ・デ・イタリアをエースで走ることに決めた。
彼がジロを走るのは2016年以来の2度目。ただしそのときはヴィンツェンツォ・ニバリのアシストとして走り、彼を総合優勝に導いた。
それでもフールサンは総合12位と十分にセカンドエースの器には収まっており、このたびエースとしては初挑戦となるジロに対しても、可能性は十分すぎるほどである。
そして、そうなれば、ツール・ド・フランスをエースで走る予定となっているのは、今やこのチームの絶対的エースであるミゲルアンヘル・ロペス。
2018年のジロ・ブエルタで総合3位。2019年はツールに挑むかと思われていた中で、それをフールサンに任せて再びジロ・ブエルタを走ったコロンビア人は、2020年に満を持してツールに初挑戦する。
一応、現時点ではフールサンもツールに出場予定だという。ただし、ロペスのアシストに集中する予定。
なにしろ彼が見据えているのはパリ・シャンゼリゼの1週間後の東京オリンピック。同じくジロに出場し、ツールをアルのアシストとして参戦していた2016年には、リオ・オリンピックで銀メダルを獲得したフールサン。
同じ良い流れのまま東京に降り立ち、今度は金色のメダルを目指す。
もちろん、アルデンヌ・クラシックにも本気で挑む。アルデンヌ、ジロ、ツール、オリンピックと忙しいスケジュールとなりそうだ。
バーレーン・マクラーレン
ランダとプールスは共にツールを走る
「生まれ変わった」バーレーンチームの新エース、ミケル・ランダとワウト・プールスは、共にツール・ド・フランスを焦点に据える。
2019年はジロ・デ・イタリアで総合4位、ツール・ド・フランスで総合6位を獲得したミケル・ランダは、ここ数年、チーム・スカイとモビスター・チームで味わってきた、ダブル、もしくはトリプルエース体制のくびきから外れ、いよいよ単独のエースとしてツール・ド・フランスに挑むこととなる。ワウト・プールスが、彼のアシストに尽くすと宣言したこともあって。
ジロ・デ・イタリアで彼は、3つのタイムトライアルで大きく総合成績を失った。それでいて山岳で強さを見せつけ、総合4位にまで上り詰めた。「今回のツールは僕にとても向いているコースだと思う。そこにはたくさんの登りがあって、タイムトライアルが少ない。チャンスだ」
プールスにとっても、もちろんこのツールは、ただ単にアシストで終えるつもりを持たない。総合成績は狙わないものの、彼がまだ経験したことのない「ツール・ド・フランスでの勝利」をこそ、彼は狙っている。
「僕はツールで勝ったことはない。ジロやブエルタではあるけれど。イネオスでも、ツール以外のレースで自分のための走りをすることはできていた。だけどこのバーレーンならば・・・より多くの自由を、僕は手に入れることができている」
もちろん、チームのトップライダーがこの2人である以上、たとえばツールをランダ、ジロとブエルタのどちらかをプールスがエースで、という方法もあっただろう。しかしチームがツールでのプールスの存在を望んでおり、3年の契約期間を保証する代わりに、ジロを主役で走ることは2021年にお預け・・・とも読めるコメントをプールスが残してもいる。
いずれにせよ、この2大エースは2020年はツールでその姿を見ることができそうだ。ではジロは? このチームの若手実力者たちの台頭の機会が得られるのであれば、それはそれで楽しみだ。
ボーラ・ハンスグローエ
サガンはジロとツールに出場予定
2020年にツアー・オブ・カリフォルニアが「中断」するためかどうかは分からないが、ペテル・サガンが彼にとって初となるジロ・デ・イタリアへの挑戦を決めた。
チーム代表のラルフ・デンクが同じリリースの場で、サガンがそのままツールに出ることも明言。これにより、カリフォルニアだけでなく、彼の得意なツール・ド・スイスも不出場がほぼ確定的となった(その代わりツール・ド・ロマンディに出る可能性は囁かれている)。
また、ジロ・デ・イタリアではきっちりと完走し、マリア・チクラミーノ(ポイント賞)を狙っていくことも示唆しており、その点でも楽しみである。
アッカーマンがジロとブエルタ、ブッフマンがツールを走る
ペテル・サガンがジロとツールに出場し、ジロでもしっかりとマリア・チクラミーノを狙うと宣言されたことで、その処遇が気になっていたパスカル・アッカーマン。2020年は再びジロに参戦したうえで、「私が考えるに2020年のツールはスプリンターには100%向いてない」というGMのラルフ・デンクの意向でツールデビューは見送られ、初のブエルタ・ア・エスパーニャ挑戦を予定する。
ジロもツールもサガンのアシストとして出場するのはアッカーマンにとっても耐えがたいだろう。とりあえずはブエルタで、2019年のサム・ベネット以上の結果を出すこと。それが喫緊の課題である。
また、2019年クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合3位、ツール・ド・フランス総合4位と大ブレイクを果たしたエマニュエル・ブッフマンは、2020年も前年のスケジュールを踏襲するようだ。すなわちUAEツアー、イツリア・バスクカントリー、ツール・ド・ロマンディ、そしてクリテリウム・ドゥ・ドーフィネとツール。チーム最強のクライマーはラファウ・マイカからブッフマンへ、明確に世代交代することとなった。
コフィディス・ソルシオンクレディ
ヴィヴィアーニがジロをスキップしツールへ
コフィディスが大枚をはたいてワールドツアーに昇格し、ヴィヴィアーニを獲得した理由はただ1つ。チームの悲願であるツール・ド・フランスを優勝を成し遂げるため。
過去、同じく大金を支払っていたナセル・ブアニはこれをまったく成し遂げられなかった。その代わりに台頭させたクリストフ・ラポートもやはり届かなかった。
だがヴィヴィアーニならば、すでにそれを成し遂げている。また、明らかに今なお世界トップクラスの強さを誇っている。彼の盟友サバティーニも、トラックにおける相棒コンソンニも引き抜いてきた。
だからこそ、ヴィヴィアーニが2020年にツール・ド・フランスに出ないなどという選択肢はあり得なかった。たとえ東京オリンピック目前の時期だったとしても。
トラック競技ならばたしかこの時期は大会もないし、むしろオリンピックへの最終調整にツール出場は悪くないかもしれない。それに、途中リタイアという方法もある。4年前のカヴェンディッシュが4勝しながらそうしたように。
というわけで、2020年のヴィヴィアーニはツール・ド・フランスに出場する。母国のグランツール、ジロ・デ・イタリアをスキップして。
代わりに彼は春のクラシックに力を入れるという。目下、目標はミラノ〜サンレモ。これまではチーム内により強い選手もいたため、チームの選択肢の1つではあったものの、それが結果につながることはなかなかなかった。
コフィディスであれば、彼のためにチームが一丸となって支えてくれるはず。果たして、イタリア人スプリンターとしての最高峰の目標を、手に入れることができるか。
また、ヴィヴィアーニが出ないことによって、クリストフ・ラポートがジロ・デ・イタリアのエーススプリンターとして出場する可能性はあるのだろうか。
そうなればもちろん彼にとっては初のジロ。ツールではさすがに敵わなかった彼も、ジロならばもしかしたら可能性を得られるかも・・・? それよりはブエルタの方が、適性ありそうだけれど。
EFエデュケーション・ファースト
ウッズはアルデンヌ、ツール、東京、スイスを目標に
2019年のEFエデュケーションにおいて最強であることを示したマイケル・ウッズ。彼は2020年の目標をアルデンヌ・クラシック、東京オリンピック、スイスの世界選手権、そしてツール・ド・フランスに置いた。
2017年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合7位、2018年のブエルタで区間1勝、そして2019年はツール・ド・フランスに初出場を果たしたウッズ。
しかし彼にとっての初のツールは、成功したシーズン全体の中に置かれると、悔しさの残る3週間であった。その原因は第11ステージでの落車。肋骨を折りながらもシャンゼリゼには辿り着いたが、目標のステージ優勝を果たせるようなコンディションには戻れなかった。
それがゆえに、彼は2020年のツールでリベンジを望む。もちろん、2018年の山岳系コースの世界選手権で3位を獲っている彼は、同じ山岳系のコースとなる東京オリンピックも視野に入れている。ツールと東京の間は1週間もない。しかし彼は、似たようなスケジュールで(台風のせいでさらにシビアなスケジュールで)敢行した2019年イル・ロンバルディア〜ジャパンカップでも好成績を残している。
毎年右肩上がりで成長している遅咲きの実力者ウッズ。2020年はさらにその上昇を続けて見せてくれるのだろうか。
カーシーがジロに
EFプロサイクリングの期待の若手、ヒュー・カーシーが、2020年はジロ・デ・イタリアに集中することに決めた。
2019年もジロ・デ・イタリアの後半戦で活躍。一時はヴィンツェンツォ・ニバリやプリモシュ・ログリッチに食らいつく走りも見せるなど、トップライダーとしての片鱗を見せつけた。最終的には総合11位で、出場したEFプロサイクリングの選手の中では最高位だった。
そして、ツール・ド・スイス最終日での、100㎞独走逃げ切り勝利。期待されていたブエルタ・ア・エスパーニャではチームを襲った不運の連続に巻き込まれ早期リタイアとなったものの、十分に成功したシーズンを過ごせたと言える。
2020年の目標はいよいよ、グランツールで総合を狙えるような走りをしてみせることである。「TOP10は現実的」と語るカーシー。目指すは、総合TOP5だ。
「ツール・ド・フランスも選択肢の1つだったけれど、僕のキャリアのこの段階では、ジロに集中したかったんだ。チームは僕の決定を喜んでくれていて、僕をサポートしてくれる予定だ。僕たちは共に、これから数ヶ月の計画を立てていく予定であり、それによってジロに完璧な状態で臨むことができるだろう」
ヒュー・カーシーの2020年シーズンはまず2月中旬のツール・ド・ラ・プロヴァンス(2.Pro)で開幕する。その後、3月にボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ、そしてジロ直前の調整レースとして、ツール・ド・ロマンディを選ぶようだ。
2020年代に注目すべき選手であると共に、イェーツ兄弟やゲオゲガンハートと並び注目すべきイギリス人クライマー。
2020年のさらなる飛躍に期待だ。
ロット・スーダル
ユアンはマイヨ・ジョーヌ着用を目指す
2015年のブエルタ・ア・エスパーニャで鮮烈な勝利を飾ったカレブ・ユアンは、翌年にはジロ・デ・イタリアデビューを飾る。勝つことはできなかったが、その年のグランツールには1つも出場しなかったライバルのフェルナンド・ガビリアに対して、そのときは確かにリードしていたようだった。
しかし、2017年には一緒に出場したジロで、ガビリアがステージ4勝とマリア・チクラミーノ。対するユアンは1勝にとどまった。
2018年はユアンは1つもグランツールに出場できず。対してガビリアは一足先にツール・ド・フランスデビューを果たし、しかも初日勝利でマイヨ・ジョーヌまで手に入れた。
ユアンは悔しかったに違いない。しかし彼は勇気を出してチームを飛び出し、新天地で挑んだ2019年で、ジロ・デ・イタリア2勝、そしてツール・ド・フランスでは、ガビリアの記録を超える3勝とシャンゼリゼ。ユアンは、ようやくライバルを打ち倒すことができた。
だからこそ彼は、まだライバルに先を越されたままのもう1つの証、マイヨ・ジョーヌを求める。2020年のツール・ド・フランスの初日はスプリンター向けのフィニッシュ。ここで勝利し、栄光のジャージを身に纏うことが、ユアンの2020年の最大の目標となるだろう。
ただ、2020年ツール・ド・フランス初日ステージは、フィニッシュこそスプリンター向きだが、その途中にはアルプスの麓ニースらしい決して小さくはない登りが複数待ち受ける。
ユアンは登りスプリントにも強いタイプだが、コース途中の起伏には力を失う例も何度かある。果たして、これを乗り越えて最後まで問題なく到達できるのか。
チーム力も重要になりそうな1日だ。
ミッチェルトン・スコット
サイモン・イェーツはジロで、再び「リベンジ」を狙う
「忘れ物を取りに行く」ために挑戦した2019年のジロは、「悲痛」な結果に終わった。しかし、彼はそこから立ち直り、即座にツール・ド・フランスで鮮烈な2勝を勝ち取った。
そして6月に宣言していた通りに、彼は2020年、もう一度「再挑戦」する。
同時に発表されたサイモン・イェーツのスケジュールには驚きが2つある。1つ目はツアー・ダウンアンダーへの初出場。そして2つ目が、東京オリンピックへの挑戦だ。
いずれも、よりパンチャー気質でワンデーレース適性の高いアダムの方が適任と思っていたが、サイモンはここに2020年、挑戦していく。ただ、2018年ジロでも強烈なスプリント力を見せてほかの総合優勝校たちを下していたため、東京でも、富士スピードウェイに先頭集団で入り込めたときには、十分に勝機がありそうだ。
まずはイギリス代表の4名の枠に入れること。リベンジと、新たな挑戦と。サイモンの2020年も、刺激のあるシーズンとなりそうだ。
モビスター・チーム
バルベルデはツールからオリンピックを目指す
40歳を目前としながらも、なおこの老舗チームの最強エースであり続けている男、アレハンドロ・バルベルデ。
彼の2020年最大の目標は東京オリンピックであるはずだが、その前にツール・ド・フランスに出ることにしたらしい。
2020年ツールはオリンピックに配慮して例年よりスケジュールが前倒しに。
ツール最終日のパリ・シャンゼリゼは7/19となるが、東京オリンピックのロードレースは開幕直前の7/25。1週間もない。
だからこそヴィンツェンツォ・ニバリやロマン・バルデなどはツールを回避したわけだが、バルベルデはそこを果敢に挑むことにした。
チームのゼネラルマネジャー、エウセビオ・ウンスエは次のように語る。
「多分これは理想的な準備とは言えないだろうね。なにせツール最終日は日曜の夕方で、時差の関係上、そのときの東京はすでに翌日なのだから。だから日本に着くのは早くても火曜日。時差や気候の違いに順応する十分な時間はないだろうね」
最もである。そこまで分かってるのに、なぜ?
ウンスエは続ける。
「まあでも、アレハンドロにとっては問題にはならないと思うよ」
根拠ゼロ! バルベルデのバルベルデらしさに対する無限の信頼感。GMとしてそれでいいのか。
まあ、さすがにエースとして走るわけではないだろうし、完走せず途中リタイアという方法もある。
さすがに無理はしない、だろう・・・多分。
NTTプロサイクリング
カンペナールツのシーズン前半最大の目標はジロ
現アワーレコード保持者ヴィクトール・カンペナールツは、2020年シーズン前半戦の最大の目標を、ジロ・デ・イタリアで行われる3つのTTステージであると宣言。その理由は・・・東京オリンピックTTでのベルギー代表選考における重要なポイント源となるからだ。
すでに2枠のうちの1つは、2019年ヨーロッパ大陸選手権TT王者に輝いたレムコ・エフェネプールが確保している。残り1枠の有力候補は、このカンペナールツとワウト・ファンアールト。ファンアールトのロード復帰の目処が立たない今、オリンピック前最後のチャンスともいうべきジロで、きっちりとポイントを稼いでおきたい。
2020年のジロ・デ・イタリアは、2019年と同様、3つのタイムトライアルステージが用意されている。
2019年は同じく3つあったタイムトライアルのうち、2つで2位になっている。しかもこの2位も、実力というよりも、落車などによってアクシデント的に失ってしまった優勝でもあり、さらに唯一2位にすらなれなかった初日ステージのTTは、激坂タイムトライアルでTTスペシャリスト向きとは言い難いレイアウトだった。
2020年のTTはいずれも比較的「ふつう」なTT。カンペナールツの実力的には、2020年3つのTTすべてを制覇したとしてもおかしくはない。そのうえで、彼がTTに集中できる環境をチームによってもたらしてもらえるなら、さらにその可能性は高まることだろう。
一応、「日本チーム」の雰囲気も漂わせているこのNTTプロサイクリングが、ジロの3つのTTをすべて制覇したら、それは結構センセーショナルなことだと思う。
そんな風景を見てみたい。頑張れカンペナールツ。
チーム・イネオス
ベルナルはジロとツールの両方に出たがっている?
これまで来期のスケジュールについては慎重に言葉を選んできた2019年ツール覇者エガン・ベルナルが、スペインの新聞によるインタビューに対し、「ツール・ド・フランスの前にジロ・デ・イタリアを走りたい」と「願望」を述べた。
もちろん、とりわけこのチームに関しては、この手の話には他チーム以上に注意を払わなくてはならない。チーム・イネオスの「内紛」を期待するメディア側の願望が込められている場合も往々にしてあるからだ。昨年もこの時期にゲラント・トーマスのジロ行きの噂はあった。
ただ、ベルナルが2020年にジロを走ること自体はとても納得のいくことだ。そもそも2019年シーズンも元々はジロに乗るつもりだった。ただ、直前の怪我により出られなくなっただけだ。
ベルナルは2018年にイネオス(当時はスカイ)に移籍するまではイタリアのプロコンチネンタルチームに所属しており、イタリアに住んで生活をしていたこともある。彼にとってイタリアは第二の故郷のようなもので、思い入れは強い。
彼のジロ行きを否定する根拠があるとすれば、それは彼がツール王者であるということだ。昨年もゲラント・トーマスのジロ行きが噂になったが、結局彼は、ディフェンディングチャンピオンとしてツールに全力で挑むことを決意した。
だが、ベルナルはまだ若い。慌ててツール連覇を狙いに行く必要性は決して高くない。また、今回はあくまでも先にジロに出るということを希望しているだけで、ツールに出ないとは言っていない。
これまでアルベルト・コンタドールもクリス・フルームも目指しながらも果たせずに終わった「ダブルツール」を、思いがけず簡単に果たしてしまう可能性すらある。ベルナルという男は、こちらの常識を軽々と乗り越えてくる男なのだから。
フルームはジロをスキップしツール5勝を目指す
と言っても、チームの正式発表ではなく、ゲラント・トーマスとルーク・ロウの人気ポッドキャストでの発言だ。
ご存知の通り、2019年クリテリウム・ドゥ・ドーフィネのTTステージの試走中に大落車を起こしたクリス・フルーム。その瞬間を目撃したダン・マーティンは彼が死んだと思ったといい、命こそ助かったものの、選手生命の危険すら十分に考えられる大事故だった。
だが、その後のフルームはさいたまクリテリウムにて人前で自転車に乗って軽く「レース」をしてみせた。驚異的な回復力を見せつつある彼は、このポッドキャストで次のように発言した。
「ジロは100%間に合わないだろうね。だから論理的に考えてツールは僕自身の野望にとって大きな意味を持つだろうね。ツール5勝という大記録は僕の大きな目標だ」
やや、奥歯にものの挟まった言い方に感じるのは気にしすぎだろうか。いずれにせよ確定情報はこのチームはまだまだ出ないだろうけど、ベルナルがとりあえずジロに集中し、フルームがツールに集中するという構図が少しは見えてきた。ではトーマスは?
なお、ポッドキャストでは、「いつも下ばかり見て走るという自分の癖は落車でも治らなかったよ」と英国ジョークを振る舞ったフルーム。とりあえず楽しそうな彼の姿を見れるのは幸せなことだね。
ベルナルはジロ回避、カラパスがジロに?
一時期はジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスのダブル出場が噂されていたエガン・ベルナル。地元コロンビアの新聞の報道によると、彼は最終的に2020年のジロを意図的にスキップし、ツール・ド・フランスに集中することに決めたようだ。
これでツール・ド・フランスにはベルナル、トーマス、フルームの3人のマイヨ・ジョーヌ経験者が揃う公算が高くなった。明確なトリプルエースではあるが、このチームならばそれもうまく回してくれるような気がする。
なお、2020年のベルナルの予定スケジュールは以下の通り。
2月のコロンビア国内選手権→ツアー・コロンビア2.1→パリ〜ニース→ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ→ツール・ド・スイスorクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ→ツール・ド・フランス
意外に思うのが、このチームのマイヨ・ジョーヌ候補が常に行うような「レースの絞り込み」を行わないということ。
昨年も、ツール後にほとんどレースに出場しなかったゲラント・トーマスとは対照的に、イタリアの秋のクラシックにまで出場し好成績を残したベルナル。
フルームやトーマスとはまた違った走り方を見せるのは、2020年も変わらなそうだ。
また記事の最後にはカラパスがジロに出場する可能性に触れており、それは大いにありそうなことではあるが、まだ根拠はなさそうだ。
チーム・ユンボ・ヴィズマ
クライスヴァイクがブエルタに
2019年のツール・ド・フランスでエースを担い、見事総合3位表彰台に登ったオランダ人、ステフェン・クライスヴァイクが、2020年はブエルタ・ア・エスパーニャに焦点を当てる予定。
2020年のブエルタ・ア・エスパーニャはオランダのユトレヒトで開幕する。その意味でも、クライスヴァイクにとっては望ましいグランツールと言えるだろう。
「ブエルタで表彰台に立つことのできる素晴らしい機会だ。とくにツールマレーとアングリルは、共に得意とする登りであり、この2つが今回のブエルタで最も重要であると理解している」
2019年にツールに挑む際に、「表彰台に立てたら嬉しい」と控えめに言ってそれを実現した男。
そんな彼に、今回のブエルタを「表彰台に立つことのできる機会」と言ってほしくはない。「マイヨ・ロホを着ることのできる機会」と言ってほしい。実際に彼は、マリア・ローザを手に入れる本当に直前まで行っていたのだから。あれは決して、マグレではない。
フルーネウェーヘンがジロとブエルタ、ジョージ・ベネットがジロに行き、ログリッチェ・デュムラン・クライスヴァイクがツールに出場
この12月最大のニュースの1つと言ってよい。ログリッチェ、デュムラン、クライスヴァイクという3人のエースを抱えるユンボ・ヴィズマのそのグランツール戦略に注目が集まり続けていたが、彼らが選んだのはいわゆる「トリプルエース」であった。
記事によると、10月のオランダでの非公開のディナーにおいて、フルーネウェーヘン、ログリッチェ、クライスヴァイク、ファンアールトが集まり、2020年のスケジュールについて話し合われたという。その場でデュムランは、ツールにおいて自分とほかのリーダーたちがともにツールを走ることを提言したという。
「僕はチームの唯一のリーダーにはなりたくなかったんだ。ここ数年、僕はツールの前に風邪を引いただけでも非難された。サンウェブの戦略は大きな成功をたくさんもたらしてくれたが、これからはまた新しいアプローチをしていきたいと思っている」
トリプルエース、その言葉に不安を覚える人も少なくないだろう。それはすなわち、モビスター・チームのこの2年の「失敗した戦略」の代名詞のように扱われてきた。
しかし、トリプルエースと言いながらも、実は今回のユンボ・ヴィズマの戦略は「そうでもない」。記事中の最後にも題として挙げられているように、鍵を握るのはクライスヴァイクの存在だ。すでに彼は、ブエルタのリーダーとなることが発表されている。で、あればツールにおける彼の役割は、3人目のエースというよりは、2人のエースのアシストという役割が強いのではないだろうか。
それは、2018年のツール・ド・フランスで、総合4位・5位をログリッチェとクライスヴァイクで占めたときに示している在り方だ。彼は、その力を発揮しながらエースを助ける技量に長けている。
「ダブルエース」なら、成功例にあふれている。むしろ、単一のエースで挑むよりも、様々な点で有利に働くことは間違いない。
すでに今回、ユンボ・ヴィズマはツールのメンバーを早くも発表した。
デュムラン、ログリッチェの「ダブルエース」に対する、アシスト陣は以下の通りだ。
山岳アシスト:ステフェン・クライスヴァイク、ローレンス・デプルス、セップ・クス、ロベルト・ヘーシンク
平坦アシスト:トニー・マルティン、ワウト・ファンアールト
まさに隙のない布陣。どの選手も、すでに実績を残している一級品である。この瞬間、ついにこのチームはイネオスにおいついた。イネオスの牙城を、2020年こそ打ち崩すことはできるか。
また、スプリントは捨てたように見せながら、当然、ファンアールトの存在は注目に値する。まずは2019年ツールでの大落車からの完全復活に、期待したい。
フルーネウェーヘンはツールには出場しない。それは彼にとってネガティブな決定ではなかった。
先の会合の場で、彼は3つのグランツールで勝利を手に入れたいということ。そして2020年にジロとブエルタでそのチャンスを得られることは望ましいことだ、と。スプリンター向けではないと言われている2020年のツールを回避し、スプリンター向けに作られているという2020年のブエルタに挑戦することは、理にかなっている。
そしてジロ・デ・イタリアの総合エースは、ジョージ・ベネットが担うという。彼にとっても、2018年のジロ以来の、エースとして出場するグランツールである。フルーネウェーヘンのための体制も用意されることだろうが、その中でなんとか、チャンスをつかんでいきたい。
トレック・セガフレード
ニバリはジロに焦点を合わせ、ツールはポートが担う
3大グランツール制覇者であり、ジロ・デ・イタリアに関しては2度の総合優勝を遂げた男、ヴィンツェンツォ・ニバリ。
新チームでの最初の年をジロ・デ・イタリアと東京オリンピック、世界選手権に焦点を合わせ、ツール・ド・フランスには参加しないことを彼は明言した。
ツール・ド・フランスのエースは2019年と変わらずリッチー・ポート。大方の予想通りの結果となった。
また、同記事では、ニバリのジロ参戦に帯同する予定のチームメートについても触れている。
すなわち、2019年ジロ山岳賞のジュリオ・チッコーネ、ジロ区間優勝の経験のあるジャンルーカ・ブランビッラと若きニコラ・コンチ。さらには2019年ジロで兄を強力にサポートしたアントニオ・ニバリ。
そして、チーム・イネオスから移籍してくるケニー・エリッソンドも、現時点ではニバリと同じスケジュールでシーズン前半を過ごし、ジロを見据える予定だという。2018年ジロの、伝説のフィネストーレでのクリス・フルームのアタックをお膳立てした名アシストである。
てっきりポートの側に回るかと思ったので、やや意外であった。
チームとしてはもしかしたら、ツールのポートよりもこのジロのニバリの方により力を入れるつもりかもしれない。まあ、2019年の実績でいえばそれは確かにそうなのだけれど・・・。
モレマとポートがツールとブエルタを走る
バウケ・モレマはオランダのメディアに、「リッチー・ポートと共にツール・ド・フランスを走る」ことを明言。また、「私たちはおそらくブエルタ・ア・エスパーニャも一緒に走るだろう」。この主語がWeなので、ポートもまた、ツールと共にブエルタも走る予定だということだろう。
また、「ヴィンツェンツォ・ニバリはジロ・デ・イタリアに集中する予定だ」とのこと。
加えてモレマは、2019年のイル・ロンバルディアの成功を引き継ぎ、2020年は「特別なジャージを着てみたい」と意欲を燃やす。すなわち、国内選手権、欧州大陸選手権、あるいは世界選手権での勝利である。
将来的にはロンド・ファン・フラーンデレンも走ってみたいと語るモレマ。ワンデーレースへの情熱を燃やす彼だが、かと言って、もはやグランツールの総合を狙えないとは思っていない。
実際、リッチー・ポートは2019年は例年以上に苦しんでおり、2020年にこれが復調するという保証はない。モレマにポートと同じ動きをさせるチームの意図としては、ポートが2020年も再びグランツールの総合を戦えない状態だったときの保険という意味合いも持っているのだろう。
UAEチーム・エミレーツ
ポガチャルはツール初挑戦
2018年ツール・ド・ラヴニール覇者としてワールドツアーに乗り込んできたスロベニア人のタデイ・ポガチャル。2019年はヴォルタ・アン・アルガルヴェとツアー・オブ・カリフォルニアで総合優勝し、ブエルタ・ア・エスパーニャではいきなりのステージ3勝と総合3位を手に入れた。
2020年のスケジュール作成には慎重を期したという。ジロ・デ・イタリアを優先するカリキュラムとするか、ツール・ド・フランスに集中くるカリキュラムとするか。
最終的に彼が選んだのは、ツールを中心に据えたプログラムのようだ。
「ジロ・プログラムはよりストレスフルだ。もし僕が2月のUAEツアーでよりよく走るつもりなら、ジロのために準備する時間はあまりない。もしツールに集中するならば、そのための時間をより多く取ることができ、ストレスも少ない」
2020年の彼のレースプログラムは2月のボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナでスタートする。そのあとにUAEツアー、そしてパリ〜ニースを通過して、ミラノ〜サンレモを挟むかもしれなくて、2019年総合6位のイツリア・バスクカントリーに向かう。そのあとはアルデンヌ・クラシックだ。
そしてツールでは、過度なプレッシャーを背負わないように、チームとしても工夫する。
「僕はツールを、ブエルタのときと同じような気持ちで走るつもりだ。できるだけたくさんのことを学びたい。もしアルの調子が良ければ、彼のマイヨ・ジョーヌのために100%アシストするつもりだ」
そう、決して慌てる必要はない。ベルナルのように、際限なく進化する男もいれば、マスのように、うまくいかない「2年目」を過ごす男もいる。アルもかつてそうだった。
必要なのはプレッシャーとうまく付き合うこと。その1つの方法はあえてツールを避けることでもあるが、ここでツールを選んだ彼は、そこでまずは自然体で走り、自然とついてくる結果をたぐり寄せる努力をすることだろう。
WT1年目のマクナルティはブエルタに
2018年のドバイ・ツアーで鮮烈な逃げを見せ、その年のラヴニールでポガチャルやイバン・ソーサと競り合ったアメリカ期待の星、ブランドン・マクナルティ。
即座にワールドツアーに行く資格も十分にあったが、彼は母国アメリカのチームに1年、残ることを決めた。未だアメリカ人にとって、ヨーロッパの地は遠い。異国にて押しつぶされないように慎重になりすぎることはない。
だが、そんな彼もついに腰を上げ、ヨーロッパの地に旅立つことに決めた。行き先はUAEチーム・エミレーツ。そしてここで、ポガチャルの1年目を支え切ったこのチームで、彼は初年度からブエルタ・ア・エスパーニャに挑戦することに。
マクナルティのワールドツアー1年目のスケジュールは、南米アルゼンチンのブエルタ・ア・サンフアンで始まる。その後、2月にブエルタ・ア・アンダルシアを走り、3月にパリ〜ニースに向かう。
その後のスケジュールは未定だが、8月に初のグランツールであるブエルタを走る予定だという。
ポガチャルの二匹目のドジョウを狙うつもりはさすがにチームにはないだろうが、それでもこの、若手新人には最適なグランツールで、マクナルティがどのようなワールドツアーチーム1年目の締めくくりを過ごすのか、楽しみである。
ジロはフォルモロとデラクルスのダブルエース、デラクルスはブエルタにも出る
2016年のブエルタ・ア・エスパーニャ総合9位、ジロ・デ・イタリアでも2年連続で総合10位となっている元ボーラ・ハンスグローエのダヴィデ・フォルモロ、そして同じく2016年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合7位になった元イネオスのダビ・デラクルス。この2人が、それぞれ自らのグランツール総合成績をさらに追い求めるべく、より「自由」のあるUAEチーム・エミレーツでリーダーの座を担う。
フォルモロとデラクルスはジロ・デ・イタリアでダブルエースとして出場。デラクルスは母国スペインのグランツールも、マクナルティと共に出場する。
自由であるということは、それだけチームが彼らを全力で支える体制ができていないということでもある。2019年のブエルタで総合3位という輝かしい成績を残したポガチャルも、ほぼ1人でもがいていた(少なくとも山岳では)。
フォルモロとデラクルスも、自らの力を極限にまで高め、一人で勝負に関われるだけの走りを見せねばならない。2人にとって、重要なシーズンとなっている。
クリストフがツールを回避しジロに
最強の北のクラシックライダーにしてスプリンターのアレクサンドル・クリストフは、ここ7年間常に出場し続けていたツール・ド・フランスを回避し、8年ぶりにジロに出場することを決めた。
「子どもが生まれてから一度も夏休みを過ごしたことがなかった。夏はいつも『フランスの父ちゃん』だった。彼らと過ごす夏は悪くないかもね」
一方、北のクラシックに全力を尽くしてきた彼にとって、ジロ・デ・イタリアはスケジュール的には難しい部分もある。3月の頭のオンループ・ヘット・ニュースブラッドから、4月中旬のパリ〜ルーベまで。長い「春のクラシック」を終えてからジロまでは1ヶ月もないのだ。
「妥協するつもりはない。クラシックのすべてに全力を尽くすつもりだ。もしそこでうまくいけばそのシーズンは調子が良いということがわかるし、ジロでもうまく行くだろうという想像がつく。ジロに対するモチベーションも高いし、春のクラシックを成功させて、短期間でジロに向けた身体作りを進めていくつもりだ」
今年、最強の北のクラシックライダーであることを示したクリストフ。
2020年も同様の成功を掴み取りつつ、ジロ・デ・イタリアでも暴れまわってくれることを期待している。
アルペシン・フェニックス
ファンデルポールの初グランツールはブエルタの見通し
2019年シーズン、わずか31日間の出走でロードレース界に衝撃をもたらした「怪物」マチュー・ファンデルポール。
2020年シーズンの彼の最大の目標は、東京オリンピックにおけるマウンテンバイク・クロスカントリー種目での金メダルだが、5月からのマウンテンバイクシーズン開幕の前に、再び春のクラシックで猛威を振るう予定のようだ。
だが一方で、彼は彼の最初のグランツールとして、ブエルタ・ア・エスパーニャへの出場を希望しているという。
「東京オリンピックは僕の大きな目標だ。その後、もう1つの大きくて新しい挑戦を考えている。それがブエルタだ」
2020年のブエルタ・ア・エスパーニャは、オランダのユトレヒトで8月14日に開幕する。オリンピックのマウンテンバイク種目は7月27日なので、開幕までは2週間以上あり、マチューであればその切り替えは決して難しくはないだろう。オリンピック金メダリストとして、母国への凱旋を行いたい。
平坦の国オランダであれば、さしものブエルタも強烈な山岳は用意できまい。初日のチームTTはともかく、第2・第3ステージは彼が早速活躍できるチャンスとなるだろう。後半の厳しい山岳ステージはさすがに彼も対応は難しいだろうが、そこを完走することができるのか、アシストとしての働きはできるのか、に注目が集まる。
なお、コレンドン自体も、このブエルタに対応できるよう、2020年シーズンは20名から25名ほどにまで戦力を増強する予定があるという。現時点ではクラシックスペシャリストやスプリンターが中心で、ブエルタに対応できるようなクライマーの姿はなさそうに思える。チームとしての動向にも注目だ。
もちろん、そもそもコレンドンが、ブエルタのワイルドカードを手に入れられるかどうかが前提のお話となってくる。すでに、
※のちに、ブエルタ・ア・エスパーニャのディレクターが「UCI改革の結果、ワイルドカードは2枚しかなくて、スペイン籍のプロコンチネンタルチームは3チーム。コレンドンが選ばれる可能性は低いよ」といった趣旨のことを発言。マチューの2020年ブエルタデビューは夢に終わってしまうのか?
(以下、随時更新)
スポンサーリンク