りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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Lotto Soudal 2020年シーズンチームガイド

 

読み:ロット・スーダル

国籍:ベルギー

略号:LTS

創設年:1985年

GM:ジョン・ルランゲ(ベルギー)

使用機材:リドレー(ベルギー)

2019年UCIチームランキング:10位

(以下記事における年齢はすべて2020年12月31日時点のものとなります) 

 

参考 

Lotto Soudal 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

Lotto Soudal 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

 

 

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2020年ロースター

※2019年獲得UCIポイント順。

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2019年はカレブ・ユアンの移籍が成功裏に終わったロット・スーダル。2020年はさらなる補強として、ジルベールとデゲンコルプを獲得する。

とくにジルベールは、2017年にクイックステップに移籍し、同年のロンド・ファン・フラーンデレンを自ら取るに留まらず、チーム全体を「ウルフパック」として大きく成長させた功績がある。今回の移籍に際しても、彼は自らの成績だけでなく、後進の育成にも意欲を燃やすと宣言している。チームが単なるスプリンターチームから、クラシックに強いチームへの進化が期待されそうだ。ベノートを失った穴を埋めるには十分な戦力と言えるだろう。

もちろん、クラシック、とくにアルデンヌにおいては、もはやチームの大黒柱の1人となったウェレンスに期待したい。いつまでも、単なる「エスケープスペシャリスト」でいるわけにはいかない(もちろん、その路線も突き詰めればチームには絶大な貢献をしてくれるのだがーーデヘントのように)。そろそろ、期待されているアルデンヌ・クラシックの制覇にも注目していきたい。ここもジルベールから学べるところは多くあるだろう。

強い選手は強いが、意外と2019年は、新加入だった若手たちの活躍が今一歩、に留まったシーズンでもあった。彼らの2年目の飛躍も楽しみにしたい。

 

注目選手

カレブ・ユアン(オーストラリア、26歳)

脚質:スプリンター

Embed from Getty Images

2019年の主な戦績

  • カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレース2位
  • サイクラシックス・ハンブルク2位
  • ブリュッセル・サイクリングクラシック優勝
  • ツール・ド・フランス3勝
  • ジロ・デ・イタリア2勝
  • 年間10勝
  • 世界ランキング20位

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2019年の最強スプリンターはこの男だったと言っても過言ではない。何しろ、ジロ・デ・イタリア2勝、ツール・ド・フランス3勝、うちシャンゼリゼ含む、である。ツールで最も強いスプリンターこそが最強スプリンターであるというある種の「真理」に則れば、彼は確かに最強スプリンターだった。

課題がないわけではない。2019年の彼は、ハッタ・ダムでの勝利が象徴するように、かつての2015年のブエルタでの勝利を思い起こさせるような、登りスプリントでの強さを取り戻しつつある。だが、まだまだコース途中に登りが含まれるステージでの安定感には欠ける。ライドロンドン〜サリー・クラシックで完走できなかったのも、ツールの疲れだけではないだろう。

2020年、彼は新たな目標を掲げる。それは、ニースで開幕を迎えるツール・ド・フランスの初日で優勝し、マイヨ・ジョーヌを身に纏うこと。2018年のツールで、彼のライバルたるフェルナンド・ガビリアが達成したその栄誉を、彼は出場することもできないままTVで見て、悔しかったはずだ。

引き続き「最強」を目指し。2020年もポケット・ロケットの大爆発を期待する。

 

 

フィリップ・ジルベール(ベルギー、38歳)

脚質:パンチャー

Embed from Getty Images

2019年の主な戦績

  • パリ〜ルーベ優勝
  • ブエルタ・ア・エスパーニャ2勝
  • オンループ・ヘット・ニュースブラッド8位
  • ハーレ・インホーイヘム3位
  • ビンクバンク・ツアー総合13位
  • パリ〜ニース総合15位
  • 世界ランキング44位

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「私はもっとレースを走りたい」。引退も間近に迫りつつあるこの「アルデンヌの皇帝」にとって、ドゥクーニンク・クイックステップから提示されたわずか1年の契約延長は満足できるものではなかった。

そして彼は、かつて在籍したもう1つのベルギーチームとの3年契約を結ぶことに決めた。当時はサイレンス・ロット、もしくはオメガファーマ・ロットと呼ばれていたこのチームでの在籍期間中に、驚異的なアルデンヌ制覇(同一年度におけるブラバンツペイル、アムステルゴールドレース、フレーシュ・ワロンヌ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ全勝利)を成し遂げている。彼が皇帝と呼ばれるに至った場所である。

だが、彼は彼自身の成績だけに興味を持っているわけではなさそうだ。

「過去数年間、このチームを外側から眺めてきて、ここには本当の意味でのリーダーが欠けていると感じていた。僕は自分の走りでだけでなく、他の選手たちをよりよくすることを通して、このチームをより高いレベルに引き上げていきたい」

実際、ジルベールが在籍した3年間で、クイックステップも非常に良いチームへと変化していった。移籍初年度から、若き(そしてのちのベルギー王者である)イフ・ランパールトのための走りを買って出て、その後も常に、「ウルフパック」の真髄を大先輩の彼自身が見せてきていた。本当に良いチームとは、そういった姿勢を見せられるエースの元に作られる。

だから、彼の存在によって、ロット・スーダルも間違いなく進化するだろう。スタン・デウルフ、ゲルベン・ティッセン、ブレント・ファンムール、あるいは2020年から合流するラスムス・イヴェルセンなど、ベノートやカンペナールツが抜けたあとにも、このチームには実に将来有望な若き才能が揃っている。「皇帝」が自ら彼らを育て、そして将来のスター選手たちを作っていくことを楽しみにしたい。

 

 

ティム・ウェレンス(ベルギー、29歳)

脚質:パンチャー

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2019年の主な戦績

  • ビンクバンク・ツアー区間1勝、総合3位
  • オンループ・ヘットニュースブラッド3位
  • GPシクリスト・ドゥ・モンレアル4位
  • ブルターニュ・クラシック8位
  • GPシクリスト・ドゥ・ケベック9位
  • リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ11位
  • 世界ランキング17位

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2014年・2015年のエネコ・ツアー(現ビンクバンク・ツアー)総合連覇も、逃げ切りで稼いだタイム差が鍵だった。2016年にはパリ〜ニースとジロ・デ・イタリアで、同じく逃げ切り勝利を果たした。まさに稀代の逃げスペシャリスト。その先駆者たるトーマス・デヘントと共に2018年・2019年のシーズンオフ期間の2人旅も話題になった。

そんなウェレンスも2020年には自転車ロードレース選手が最も勝ち星を稼ぎやすい年齢である29歳を迎える。いよいよチームの柱になりつつある彼が、2020年の目標として持つべきものは2つある。

1つは、ツール・ド・フランスでの逃げ切り勝利。もう1つは、アルデンヌ・クラシックで、ずっと期待され続けている支配的な走りを見せつけることである。

フィリップ・ジルベールの加入は、彼のそのチャンスを少なくさせてしまう要因かもしれないし、逆に彼がウェレンスを助けることでそのチャンスを大きくさせる要因かもしれない。

 

 

その他注目選手

ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、31歳)

脚質:スプリンター

ミラノ~サンレモとパリ~ルーベの覇者、ブエルタ・ア・エスパーニャで区間5勝を達成している男、そしてさいたま王。2016年の事故以来、幾度となくその復活が期待されながらも、かつての精彩を取り戻せずにいるという印象の彼がベルギーチームへ。

基本的にデゲンコルブは純粋なスプリントというよりは、起伏やクラシック系の環境の中で生き残った選手たちの中でのスプリントを得意とする。トレックでもそこを武器にして走ってきたが、最近はエドワード・トゥーンスやマッズ・ペデルセンが強力になってきて、存在感を失いつつあった。ツール・ド・スイスでも、得意なはずの登りスプリントで、むしろジャスパー・ストゥイヴェンの方が好調だった。

その意味で、ロット・スーダルは意外にもそういったクラシック系のスプリンターの有力所が少ない。ベノートがチームを去るため、なおさらだ。まだ引退するには早い。新たな環境で主役として活躍するデゲンコの姿をまた見たい。

 

 

ジャスパー・デブイスト(ベルギー、27歳)

脚質:スプリンター

2019年のカレブ・ユアンの成功を間違いなく支えた男の1人。もちろん、ユアンと共に移籍してきたクルーゲも重要な役割を果たしていたが、ジロと

ツールにおいては、このデブイストが最もユアンを支えた発射台であったように思う。

そして、2019年は、デブイスト自身も成績を重ねる機会に恵まれたシーズンだった。

たとえば8月のポストノルド・デンマークルント。デンマーク人が上位を独占したこの大会で、非デンマーク人としては最上位となる総合5位。この大会は全体的に登れるスプリンターorパンチャー向きのレイアウトが続くレースで、初日はチームメートのティシュ・ベノートが優勝し、デブイストはその後ろで2位。第4ステージは優勝し、第5ステージは3位とコンスタントに上位に入り、ポイント賞も獲得した。

その他にもツアー・オブ・ブリテンではマチュー・ファンデルポールとマッテオ・トレンティンに次ぐ総合3位、ZLMツアー総合4位にライドロンドン〜サリー・クラシック9位など、ユアンに次ぐチームのセカンドエースであると明確に宣言できるだけの実績を残した。

2020年も、ピュアスプリントはユアンに任せつつ、1クラス/HCクラスのレースや、起伏の多いレースでは稼ぎ頭として活躍してくれることだろう。

 

 

カールフレドリク・ハーゲン(ノルウェー、29歳)

脚質:パンチャー

2019年に、28歳のネオプロとして現れた新鋭パンチャー。ツール・ド・ロマンディでは何度か上位に入り、チームのエースとして活躍する姿を見て期待していたが、まさかブエルタ・ア・エスパーニャで、最終的に総合8位を守りきるほどの走りを見せるとは思いもしなかった。山岳賞を獲ったジェフリー・ブシャールと並び、近年の「早すぎる若手の台頭」と対をなすような「遅れてきた新人」の星として活躍してほしい。思えばマイケル・ウッズや言ってしまえばプリモシュ・ログリッチェも(さらに言えばクリス・フルームも?)「遅れてきた新人」だったのだ。

脚質的には、ビョルグ・ランブレヒトに近い存在だった。良いコンビになると思っていただけに、それはとても残念だった。

 

 

トーマス・デヘント(ベルギー、34歳)

脚質:オールラウンダー

2019年はこの男の格好良さをひたすら感じたシーズンだった。2018年末に冗談で始めた「全グランツール出場」を達成。しかも、その際に言ってた「ジロはユアンのために走るよ」を完璧に実行。ユアンの今年の飛躍の大きな部分を支えた。

そして、そもそも「僕はその年2回目に出たグランツールの方が調子良いみたいだからジロから出るよ」という彼の言葉を証明するかのように、ツール・ド・フランスでの逃げ切り勝利。彼にとってはいつも通りの勝利のように思えたその瞬間の、彼の歓喜に満ち溢れた表情は、これほどの男にとっても、ツール勝利の栄誉がどれほどのものかということを示していた。

なお、その背後ではジュリアン・アラフィリップとティボー・ピノが全フランスを盛り上げるアタックを繰り広げており、2016年にデヘントがモン・ヴァントゥーで初勝利したときの「ランニングフルーム」同様に、その勝利をやや影薄くしてしまうようなイベントが起きてしまったことはご愛嬌・・・。

2020年も変わらず我々を楽しませてくれること間違いなしの、ロット・スーダルの、いやプロトンの「エース」である。

 

 

総評

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ユアンのスプリント、ジルベールやデゲンコルプの北のクラシック、ウェレンスのアルデンヌ・クラシックと各方面のエースははっきりときまっており、結果も期待できる。スプリント/クラシックではデブイストの活躍もありうるだろう。もちろんデヘントによる逃げ切り勝利も、2020年の各種ステージレースで見ることができそうではある。

しかし一方でグランツール含むステージレース総合争いに期待を抱くのは厳しい。まあここは、はっきりと目的が明確なチームということで、悪くはないだろうが・・・。

 

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