読み:ロット・スーダル
国籍:ベルギー
略号:LTS
創設年:1985年
使用機材:Ridley (ベルギー)
2017年UCIチームランキング:13位
(以下記事における年齢はすべて2018年における数え年表記となります)
2018年ロースター
現存するチームの中でもとくに歴史の長いチーム。かつてはヨハン・ムセウやロビー・マキュアン、フィリップ・ジルベールなどが在籍していた。カデル・エヴァンスが世界選手権を獲ったのもこのチームに在籍していた頃である。
ベルギー人の比率が多く、とくにスプリントと北のクラシックで結果を出せる選手が多い。しかし今年のブエルタではマルチンスキーやアルメなどのクライマー組が活躍し、ウェレンスやデヘント、そしてベノートなど総合力の高い選手たちも目立っており、安定して強いチームだ。
今年はケウケレールやカンペナールツなどの実力者が加入。北のクラシックでの「勝利」がそろそろ欲しい。
また、若手ベルギー人の積極的な登用も目立つため、彼らの成長が楽しみである。とくにランブレヒトは化け物。ファンフッケもランブレヒトほどではないが力のある選手だ。
注目選手
アンドレ・グライペル(ドイツ、36歳)
脚質:オールラウンダー
プロ通算144勝
ツアー・ダウンアンダー総合優勝2回、ステージ優勝16回
グランツール合計22勝(ツール11勝、ジロ7勝、ブエルタ4勝)
2015年ツール・ド・フランスでシャンゼリゼ含む4勝。2016年は2勝以上できなかったものの、唯一の勝利をシャンゼリゼで飾り2年連続の勝利となった。
しかし、2017年は振るわなかった。5勝。10勝以上を3年連続で果たしていた彼にとっては、非常に悔しいシーズンとなった。寄る年波には勝てないのか?
しかし、一方で「ニューグライペル」も生まれつつある。パリ~ルーベ7位。例年ロンド・ファン・フラーンデレンなどでも、粘り強い走りを見せることがあり、北のクラシックへの適性の高さは折り紙つきだ。本人もルーベでの勝利を望むような発言をしている。今後、ピュアスプリントでの勝利数が失われていったとしても、新たな活躍の場を見出してくれるなら幸い。
しかし石畳に強いとか、本当ついベルギー人かと思ってしまうような選手である。
キッテルには負けない。
トーマス・デヘント(ベルギー、32歳)
脚質:クライマー
2012年ジロ・ディタリア総合3位
ツール・ド・フランスでも1000km以上の逃げを敢行していた最強の逃げ屋。また、昨年のモン・ヴァントゥーでの勝利も記憶に新しく、今年はクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで5日間にわたってマイヨ・ジョーヌを着用した、というのも彼の強さを物語っているだろう。
来年も基本は逃げに積極的に乗っていく戦いをすることになると思われる。だが、個人的にはモン・ヴァントゥーのような頂上フィニッシュでの活躍や、ステージレースでの総合争いなどにも期待したい。総合争いができるクライマーの少ないこのチームにおいて、特筆すべき存在となることを願う。
個人タイムトライアルでも区間9位と力を見せつけ、マイヨ・ジョーヌを守り続けた。途中リタイアが残念ではあったが、来年も同じような走りを見せてほしい。
ティム・ウェレンス(ベルギー、27歳)
脚質:パンチャー
2014年エネコ・ツアー総合優勝
2015年エネコ・ツアー総合優勝
2016年ツール・ド・ポローニュ総合優勝
2017年ツアー・オブ・グアンジー総合優勝
1週間程度の短いステージレースを非常に得意とし、一瞬の隙を突いたアタックからの逃げ切り勝利も十八番。アムステルゴールドレースやフレッシュ・ワロンヌなど、アルデンヌ・クラシックでの終盤アタックを持ち味としていたが、今年のそれはイマイチ振るわず。最後にツアー・オブ・グアンジーで総合優勝したことで面目は保ったが、ここ数年少しずつ結果を伸ばしてきた彼にしては若干、物足りないシーズンとなった。
来年の目標はアルデンヌでの勝利と、グランツールでの2勝目。アルデンヌハンターの夢でもあるモンレアル&ケベックもそろそろ勝利が欲しいところ。
また、今年初出場となったストラーデ・ビアンケでもいきなりの3位と活躍。フランドルとアルデンヌの合いの子のようなこのレースは、アムステルが得意なウェレンスの性には合っているように思う。
ちなみに彼の生誕地であるリンブルフ州は、フランドル地方ではあるものの、ワロン地方にかなり近い位置にある。そんな彼がアルデンヌに適性を持っているのは、やはり土地柄的なものがあるのだろうか。
毎年何かしらのWTステージレースで勝利しているウェレンス。来年は何を制するか・・・。
その他注目選手
イェンス・クークレール(ベルギー、30歳)
脚質:ルーラー
フランス、オーストラリアと他国籍のチームを渡り歩いてきたフランドル人が、満を持して母国のチームに帰還した。今年、ベルギーツアーを制し、ヘント~ウェヴェルヘムも2位と好調の北のクラシックスペシャリスト。ロット・スーダルは意外と北のクラシックの勝利が少ないので、すぐにでもエースとして活躍してくれるだろう。
スプリント力も高いので、グライペルなどスプリンターの発射台としての活躍も期待できるかもしれない。移籍したルーランツの穴を埋める存在になりうるか。
ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、27歳)
脚質:TTスペシャリスト
U23国内選手権およびU23ヨーロッパ大陸選手権にて個人タイムトライアル王者となる。ロットNLユンボ入りした2016年にはエリート部門の国内選手権で個人TT王者、そしてヨーロッパ大陸選手権エリート部門でもITT2位と活躍。そして昨年はついに、ヨーロッパ大陸選手権エリート部門ITTで優勝を果たした。めきめきと経歴を積み上げていく、現在躍進中の男。ジロのITT中にデートのお誘いをして怒られるというお茶目な一面も。
個人的には、昨年ブエルタの、ヘーシンクの勝利を導いた献身的なアシストの印象が強い。来年はデヘントなんかと組んで、グランツールでの勝利もしくはそのアシストを演出してほしい。
ティシュ・ベノート(ベルギー、24歳)
脚質:ルーラー
ウェレンスがアルデンヌの申し子なら、ヘント生まれのベノートはフランドル・クラシックの申し子である。オンループ・ヘット・ニウスブラッドからクールネ~ブリュッセル~クールネ、ストラーデ・ビアンケ、そしてE3といった「春のクラシック」では安定して良い成績を出すものの、なかなか勝利には至らない。なお、グランプリ・ド・ワロニーやケベック&モンレアルなど、アルデンヌ風味のレースでもそれなりに良い成績を出しており、パンチャーとしての素質も十分にある。
そしてベノートには、総合ライダーとしての期待も寄せられている。ヴォルタ・アン・アルガルヴェでは2年連続で新人賞。クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも最終総合成績は12位と悪くない。来年はまだ24歳で、新人賞期間もあと丸2年ある。来年はその点での成長が期待されるところである。
そして来年楽しみなのは、未だ果たされていないプロ初勝利。そろそろ、それも大きなレースで、魅せてくれるんじゃないかと期待している。
ビョーグ・ランブレヒト(ベルギー、21歳)
脚質:クライマー
才能の塊。2年前にベルギーのジュニアチャンピオン。今年はU23版リエージュ~バストーニュ~リエージュを制し、ツール・ド・ラヴニールでも総合2位と、オールラウンダーな脚質を誇る。
来年はアルデンヌ系ワンデークラシックを中心に経験を積み、グランツールなどでは無理をしない程度に慣れていってほしい。本格的に台頭するのはあと3~4年後で構わないので、今この大切な時期を丁寧に過ごしていくことを望む。
HCクラスやWTクラスのレースでどれだけの実績が詰めるか。来シーズン最も楽しみな選手の1人だ。
2018年ツール 出場メンバー案
1.アンドレ・グライペル(エーススプリンター)
2.ラースユティング・バク(平坦アシスト)
3.ヴィクトール・カンペナールツ(平坦&山岳アシスト)
4.ジャスパー・デブイスト(発射台)
5.トーマス・デヘント(アタッカー)
6.イェンス・デブッシェール(発射台)
7.イェンス・クークレール(平坦アシスト&石畳要員&発射台?)
8.ティム・ウェレンス(アタッカー)
今年は振るわなかったグライペル、来年復活はなるか? そのためにも、バク・デブイスト・デブッシェールなどのグライペル親衛隊の活躍に期待がかかる。ルーランツが抜けた穴を、クークレールが補えるかどうか。
そして、今年は期待されながらも果たせなかったウェレンスのステージ勝利。デヘントもカンペナールツと共に逃げて、逃げてチャンスを掴みに行こう。
総評
クラシックもステージ優勝も稼げるはずのポテンシャルは持っているのだが、イマイチ突き抜けた感のない実績。来年はまず勝利、勝利を重ねることが重要だ。
クークレール、カンペナールツの加入がその点でプラスになれるか。そして、ウェレンスやベノートなどの若手の成長が鍵を握る。
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