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NIPPO DELKO One Provence 2020年シーズンチームガイド

 

読み:ニッポ・デルコ・ワン・プロヴァンス

国籍:フランス

略号:NDP

創設年:1974年

GM:フレデリック・ロスタン(フランス)

使用機材:ルック(フランス)

2019年UCIチームランキング:33位

(以下記事における年齢はすべて2020年12月31日時点のものとなります) 

 

参考 

Fortuneo - Samsic 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

Arkéa Samsic 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

 

 

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2020年ロースター

※2019年獲得UCIポイント順。

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NIPPOが新たにタイトルスポンサーとなり、日本人選手も一気に4名加入することになり、日本国内でも一躍注目されることとなった南仏拠点のチーム。元々はラ・ポム・マルセイユといった名称で活動していた若手育成チームで、若き日の別府選手も所属していた。

チームの意図や日本との関係については下記の記事でまとめてある。

www.ringsride.work

 

別府同様にかつてこのチームに在籍していた実力あるベテラン選手ーージャスティン・ジュールスやホセ・ゴンサルベスなどーーたちも出戻ってきており、それでいて旧来の思想を受け継いでいるのか、各国の若き才能も集まってきている。

面白いのは、フランスのチームでありながらフランス籍の割合は決して大きくなく、多種多様な国籍から才能が集まってきていることだ。昨年パリ〜ルーベ9位のシシュケヴィチュスはリトアニア人だし、元NIPPOのグロースはルーマニア人。アフリカ籍の選手も多く、エリトリアのビニヤム・ギルメイはエフェネプールと同じく2000年生まれで、才能の迸る期待の若手である。

決して強くはない。ツール・ド・フランスのワイルドカードに選ばれる未来もきっと遠いだろう。

しかし日本人がいなくともワクワクさせてくれるチームであることは間違いない。

 

 

注目選手

ジャスティン・ジュール(フランス、34歳)

脚質:スプリンター

2017年にはグランプリ・ド・フルミーで6位、2018年にはクールネ〜ブリュッセル〜クールネで5位、2019年にはドリダーフス・ブルッヘ〜デパンヌで5位など、有力レースで度々上位に入ってきている実力者。

2019年はブエルタ・アラゴンでトマ・ブダやエドゥアルド・プラデスを破ってステージ1勝とポイント賞。ツール・ド・ルクセンブルクでも、好調だったクリストフ・ラポートに物凄い勢いで迫り、彼がやや進路を狭めるような動きをしなければもしかしたら抜いていたかもしれない、というようなスプリントを繰り出していた。

2020年もスプリントで大暴れしそうなチームの大黒柱。石上たちは、彼の走りから多くのことを学んでもらいたいところ。

 

 

ジュリアン・エルファレス(フランス、35歳)

脚質:パンチャー

Embed from Getty Images

2014年からこのチーム一筋。いよいよベテランの域に達しつつあるいぶし銀。

とはいえその実力は衰えていない。2019年はたとえば初開催のモン・ヴァントゥ・デニヴレ・チャレンジで4位。ツール・ド・ルクセンブルクでも、連日絶好調のヘスス・エラーダに食らいついていき総合7位である。

フランスのレースには多い、パンチャー向けの丘陵ワンデーが得意。勝てなくとも上位入賞を重ね、ポイントを稼いでいってほしい。

 

 

エドゥアルドミカエル・グロース(ルーマニア、28歳)

脚質:スプリンター

Embed from Getty Images

2015年から2018年の4年間に渡りNIPPOに所属していた彼が、昨年デルコ・マルセイユ・プロヴァンスに移籍したときは寂しさを覚えたものだが、結果として再びNIPPOの名を冠するチームに。

珍しいルーマニア人にして、多少の起伏はものともせず乗り越えて勝利を手に入れるパンチャー系スプリンター。2019年は5勝*1と彼史上最も成績の出せたシーズンとなり、今年は28歳と、最も脂の乗った年代を迎える。

2020年のNIPPOデルコの主役となりうる選手だ。

 

 

その他注目選手

エヴァルダス・シシュケヴィチュス(リトアニア、32歳)

脚質:ルーラー

「声に出して呼びたいロードレース選手権」があれば優勝候補のこの選手は、かつてはパリ〜ニースなどのステージレースで積極的に逃げるエスケーパーというイメージだった。

そんな彼が2019年にドラマを作った。前年のパリ〜ルーベでタイムアウトになりながらも箒車に乗ることを拒み、観客も誰もいなくなっていたヴェロドロームの扉を最後に開けて潜り抜けた男が、翌年、まさかのルーベ9位。

もちろん、この地獄のようなレースで9位になることはまぐれでは不可能だ。2020年の北のクラシックにおいては、彼の走りに注目しておきたい。

 

 

中根英登(日本、30歳)

脚質:パンチャー

Embed from Getty Images

2019年シーズンは、彼が可能性を花開かせ始めたシーズンでもあったように思える。

1クラスながらアラフィリップやベルナルなど強力なライダーたちが揃ったコロンビア2.1で区間5位。その後は体調を崩したりでなかなか思うような走りができていなかった中、シーズン終盤のジャパンカップで、ワールドツアーの選手たちに混じっての堂々たる6位。

満足のいくシーズンではなかったかもしれないが、その強さが確実に進化していることが分かった。

2020年は、フランスのトップレースを走る機会も増えるだろうが、その中でまずは積極的な逃げで目立ってほしい。

そして、1クラスやプロシリーズのレースでの、優勝争いを演じる姿をぜひ見せてほしい。

 

 

石上優大(日本、23歳)

脚質:パンチャー

日本男子ロードレース界の星。

2018年全日本選手権U23王者にしてアジア大陸選手権U23でも4位。2019年はフランスのアマチュア最高峰チームの1つである「AVCエクサンプロヴァンス」に所属し、アマチュアトップカテゴリレース「トロフェ・ド・レソール」で2位入賞を果たした。

U23時代にフランスのアマチュアトップチームで実績を出してプロチーム入りするという、浅田監督の「悲願」たるルートを辿りつつあるこの青年に懸けられた期待は実に大きい。異国の地での適応力の高さも、彼のポテンシャルを窺わせるものとなっている。

 

大分アーバンクラシックでの勝利、ジャパンカップでの走り、スペインの1クラスレース「プルエバ・ビリャフランカ・デ・オルディシア」でイェツ・ボルやアントニオ・ペドレロといったトップ選手たちをスプリントをして7位に入るなど、アップダウン適性とスプリント力とを両立させるパンチャー的な脚質をもつ彼は、新城幸也に近い才能を持っていると言えそうだ。

新城は25歳でツール・ド・フランス区間5位、30歳でアムステルゴールドレース10位を叩き出し、いずれも日本人としては最高峰の記録を樹立した。

この石上が、ここから先の数年間で、その記録を塗り替えるほどの力を見せてくれるか。

いつか見たい。彼の手による、日本人として初の、ワールドツアー勝利を。

 

 

ビニヤム・ギルメイ(エリトリア、20歳)

脚質:パンチャー

若手育成チームとして注目すべきは2000年生まれのこの男。昨年のラ・トロピカーレ・アミッサ・ボンゴで、ボニファツィオ、マンザン、グライペルといった超強力なスプリンターたちを振り切って区間1勝。ツール・デュ・ルワンダでも、地元最強の男ジョセフ・アレルヤを下した。

そして、ツール・ド・ラブニールにも出場し、最終日の逃げに乗って区間5位となった。

 

まだまだ実績は十分ではない。しかし、若さも相まって、可能性を感じさせる男。

いつか「アフリカの時代」は来るはずで、そのときにもしかしたらこの男も、その一角を担う存在となるはずだ。

 

 

総評

フランスのプロチーム(旧プロコンチネンタルチーム)の中では最弱。各国ナショナル選手権と、ジュールやグロースといったスプリンターたちによって勝利を稼ぐ以外は、なかなか結果らしい結果は出せないかもしれない。

ただ、その分、そのアグレッシブさで勝負したい。日本人もそれ以外も、ワイルドカードを手に入れたトップレースでいかに逃げで目立てるか。

 

あと、上では紹介しきれなかったが、かつてはイタリアの若手最強候補と期待していたリカルド・ミナーリの、このチームでの復活もひそかに期待しているよ。

 

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*1:2018年は6勝だったが、国内選手権の2勝も含まれているため、国際的なレースでは2019年の方が成績を出している。

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