本来のスケジュールから5か月後ろ倒しで開催されることになるジロ・デ・イタリア。せっかくのハンガリー開幕もなくなった代わりに、用意されたのはエトナステージを含んだ、ほとんど平坦のない第1週。元々平坦ステージを2つ用意していたハンガリーの代わりに、丘陵だらけのシチリアスタートにしたので必然といえば必然か・・・
しかし、ひたすらまっすぐ&下りのTTだとか、ど真ん中に高い山を置いてその前後は平坦のステージとか、相変わらず極端で独特なコースを用意してくるジロ・デ・イタリア。
まだまだ総合争いを大きく左右するようなステージは多くなく、むしろパンチャーたちによるステージ勝利争いが楽しくなりそうなこの第1週をチェックしていこう。
- 第1ステージ モンレアーレ~パレルモ 15.1㎞(個人TT)
- 第2ステージ アルカモ~アグリジェント 149㎞(丘陵)
- 第3ステージ エンナ~エトナ 150㎞(山岳)
- 第4ステージ カターニア~ヴィッラフランカ・ティッレーナ 140㎞(平坦)
- 第5ステージ ミレート~カミリアテッロ・シラノ 225㎞(丘陵)
- 第6ステージ カストロヴィッラリ~マテーラ 188㎞(平坦)
- 第7ステージ マテーラ~ブリンディジ 143㎞(平坦)
- 第8ステージ ジョヴィナッツォ~ヴィエステ 200㎞(丘陵)
- 第9ステージ サン・サルヴォ~ロッカラーゾ 207㎞(山岳)
参考リンク
ジロ・デ・イタリア2020 コースプレビュー 第2週 - りんぐすらいど
ジロ・デ・イタリア2020 コースプレビュー 第3週 - りんぐすらいど
ジロ・デ・イタリア2020 注目選手プレビュー - りんぐすらいど
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第1ステージ モンレアーレ~パレルモ 15.1㎞(個人TT)
元々はハンガリーでの開幕が予定されていた2020年のジロ・ディタリア。新型コロナウイルスの影響によりそれは取りやめとなり、代わりにシチリアでの開幕に。そして、元のハンガリー開幕同様に個人TTからのスタートとなった。
全体的に下り基調。しかも、この下りの部分はひたすらに直線。いや、本当に恐ろしいほどにまっすぐで、かなりハイスピードTTとなるだろう。重量級の典型的なTTスペシャリストがランキングの上位に並びそうだ。
ただ、下りと平坦「だけ」ではない。スタートから1㎞はモンレアーレ大聖堂に至る登りから始まる。平均勾配は6%なので昨年の初日TTのような激坂ではないものの、スタートダッシュで登りを要求されるTTというのはなかなか今まではなかったと思うので、その準備状況次第では割と影響を与えうるかも? また、ここは4級山岳が設定されているためこのスタートダッシュでの速度で最初の山岳賞ジャージ(マリア・アッズーラ)を獲得できるチャンスがある。昨年もチッコーネが狙って初日から山岳賞を手に入れた(結局彼は圧倒的な実力で最後までそれを守り切ったわけだが)。
2つ目のチェックポイント以降はいくつかの直角コーナー。市街地は結構狭いとの情報もあり、ややテクニックが必要とはなるだろうが、やはり全体的にスピードTTとなることは間違いがなさそうだ。
第2ステージ アルカモ~アグリジェント 149㎞(丘陵)
シチリアで開幕された新ジロ・デ・イタリア2020の第2ステージは平坦ではなく丘陵ステージ。しかも結構がっつりとしたアップダウンが最初と最後に用意されており、スプリンターの出番はまずないと言ってよさそうだ。
ラストのアグリジェントはイタリアらしい丘の上の街。フィニッシュも登坂距離3.7km・平均勾配5.3%でラスト3㎞を過ぎた直後に最大勾配の9%区間が存在している。
激坂というほど厳しくはないので、場合によっては「登れるスプリンター」レベルでも攻略できるかもしれないが、基本的には(クライマーというよりは)パンチャーたちによる勝負が繰り広げられることだろう。
初日のTTの頑張り次第ではマリア・ローザを着るチャンスでもある。
あと、注意しておきたいのがゴール前12.1km地点に存在する中間スプリントポイント。ツール・ド・フランスと違ってジロ・デ・イタリアでは中間スプリントポイントにもボーナスタイムが設定されており、1位から順に3秒、2秒、1秒のボーナスタイムを得られる。
最終的な総合優勝を争う選手たちにとってはそこまで重要ではないだろうが、この日マリア・ローザを獲りたいと思っているパンチャーたちにとってはここも一つの勝負所となりそうだ。
第3ステージ エンナ~エトナ 150㎞(山岳)
シチリアといえばやっぱりエトナ。前回は2年前のジロ・デ・イタリアで使われ、エステバン・チャベスとサイモン・イェーツの感動的なワンツーフィニッシュが演出され、サイモンの驚異的な走りの開幕を告げる日となった。
ただ、エトナの登りは過去5回ジロに登場しているが、今回はそれまでとはまた違った登り口を使用する。エトナの北東部、リングアロッサからの登りである。
登坂距離18.8kmの非常に長い登りはラスト4㎞を切るまではそこまでの厳しい勾配ではないため、大きな動きが起こることはないだろう(もちろん前日にマリア・アッズーラを着用したパンチャーがずるずると落ちていく姿はカメラで映し出される可能性はあるが)。
重要なのはラスト3㎞。2桁の勾配が続く区間も多く登場し、ラスト1.5㎞前後には最大勾配の13%区間も。ここで今大会最初の総合優勝候補たちによるガチバトルが展開されそうだ。
第4ステージ カターニア~ヴィッラフランカ・ティッレーナ 140㎞(平坦)
全体的には平坦基調で、ラスト64.6㎞は下りと平坦しかないのだが、そのコースのど真ん中に標高1,000m超えの登りが用意されている、実にジロ・デ・イタリアらしい極端なステージ。
この日は展開の予想がなかなかに難しい。スプリンターを引き千切ったクライマー・パンチャーたちが最後にスプリンター抜きでの集団スプリントを展開するパターンもあれば、登坂距離19.5kmと非常に長いが平均勾配は4%と決して厳しすぎるわけではない登りであることとその山頂からゴールまでも非常に長いことを踏まえ、なんだかんだで集団が復帰して集団スプリントで決着するというパターンもある。あるいは、生まれた逃げがそのまま逃げ切りをする可能性すらありうる。
ただ、ここまで1度もスプリンター向きのステージが用意されていない今大会。スプリンターズチームが結構頑張ってくれるんじゃないかとも思っている。とはいえ、すべてのスプリンターが残る、ということはないだろうが・・・。
第5ステージ ミレート~カミリアテッロ・シラノ 225㎞(丘陵)
山頂フィニッシュではないものの、ゴールまで11.6kmの地点に1級山岳ヴァリコ・ディ・モンテスクーロ(登坂距離24.2km、平均勾配5.6%)が用意されており、実質的には総合優勝候補たちによる争いが巻き起こりそうなステージ。
ただ、ステージ優勝自体は、逃げに乗った選手たちにチャンスが大きそうだ。もしかしたら今大会最初の逃げ切りステージとなるかもしれない。山岳賞争いにおいても重要なステージとなりうる。
1級山岳のプロフィールは以下の通り。真ん中に最大勾配18%が用意されているため、総合優勝候補数名が抜け出すという展開よりは、今大会総合優勝候補に参加できない選手たちが引きちぎられていく、といったような登りと見ることができそう。
第6ステージ カストロヴィッラリ~マテーラ 188㎞(平坦)
序盤に登り、そして終盤も決してスプリンター向けのレイアウトではない、というプロフィールは実に逃げ屋向き。ここまで平坦なステージも少なく総合勢も疲労が溜まっていることだろうし、結構大胆な逃げを許してしまう可能性もある。昨年のように、マリア・ローザまで奪われるパターンもありうるか?
ゴール前2.5㎞近くに10%の急勾配区間が存在し、絶好のアタックポイントとなっている。勝つのはアグレッシブな動きが得意なパンチャータイプになってくるだろう。
第7ステージ マテーラ~ブリンディジ 143㎞(平坦)
ようやく訪れた平坦ステージは本当に極端なくらいに平坦。
ラストも残り1.2㎞で最後のカーブが用意され、幅7.5mのロングストレートとなっており、しっかりとトレインの力を利用した強いスプリンターズチームが勝つだろう。
今年ツールでマイヨ・ヴェールを初めて自力で逃し、ジロでこそリベンジのマリア・チクラミーノ獲得を狙うサガンにとっても、ツールと違って中間スプリントポイントでポイントを稼げないジロでは勝利が必須事項。
だが、今年のこれまでのレースを見ている限り、今大会出場の選手たちの中ではグルパマFDJがトレイン力でずば抜けている気がするので、トラブルがなければデマール最有力か・・・?
第8ステージ ジョヴィナッツォ~ヴィエステ 200㎞(丘陵)
長靴の形をしたイタリア半島のかかとの部分を駆け上がるようにして北上していくステージ。海岸沿いだが平坦は前半だけで、マンフレドニアの街を越えて半島に入るとアップダウンが激しくなり、まずは2級山岳モンテ・サンタンジェロ。
それを越えたあとにもカテゴリのついていない登りが無数に存在し、この日もスプリンターには優しくない1日となるだろう。
ゴール前11㎞~10㎞に最大勾配17%の激坂。逃げ切りが集団でフィニッシュかはわからないが、この登りがステージの勝敗に影響を及ぼす可能性は十分にあるだろう。
第9ステージ サン・サルヴォ~ロッカラーゾ 207㎞(山岳)
アドリア海沿いの平坦な前半部分はわずか60㎞で終了し、残り140kmはアペニン山脈の厳しい登りの連続にさらされる。平坦など一切ない、登るか下るかの激しいレイアウトである。
カテゴリのついた登りだけでも1級・2級・2級・1級と4つ登場。最後の1級山岳は登坂距離9.6km、平均勾配5.7%というレイアウト自体はそこまででもないように思えるが、実際にはラスト1㎞が平均勾配10%超えの激坂フィニッシュ。
厳しい区間の距離は短いためタイム差はあまりつかないものの、有力勢がバラバラでフィニッシュし、明確に力の差が出るステージとなりそうだ。
果たして、今年の総合優勝候補は誰になるのか。そして、決定的に総合優勝争いから脱落してしまうのは誰なのか。
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