りんぐすらいど

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2019年シーズン 各チームのグランツール出場予定選手概覧 Part.1

ついに開幕した2019年シーズン。

各チームも年末年始にかけて、次々と2019年シーズンにおけるスケジュールを発表しつつある。

その中でもやはり注目してしまうのが、一体どの選手が、どのグランツールに出場するのか、ということ。

 

以下、数回にわたって、各チームが現時点で発表している2019年シーズン各グランツール出場予定メンバーについて概観していこう。

 

第1弾となる今回は、今年のツール・ド・フランスで最も総合優勝に近いあの2人の人物が所属する2チームと、そして2018年最強スプリンターとブエルタで飛躍した新生クライマーが所属するチームの計3チームを取り扱っていく。 

(記事中の年齢はすべて2019/12/31時点のものです)

 

 

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チーム・スカイ(SKY)

フルーム&トーマスがツールに、ベルナルはジロに

www.cyclingnews.com

昨年、見事ジロ・デ・イタリアにて逆転総合優勝を果たしたクリス・フルーム(イギリス、34歳)。

しかし、それがゆえに「5勝クラブ*1」入りを逃したとも言える。

よって、今年はツールに集中。伝説のライダーたちと肩を並べる栄誉を本気で狙っていく。

 

「私は今、自分のキャリアにおいて、どんな遺産を遺すべきか考えなくてはいけない時期に差し掛かっています。もしも私がツール・ド・フランスの5勝目を果たすことができたのなら、過去に4人しかいない伝説のライダーたちの仲間入りを果たすことができるのです。それはとても信じがたいことです」

 

5勝クラブ入りへの想いをここまではっきりと示すのは自分が知る限り初めてだ。

 

そんな彼にとって、最大の友であり、かつ最大のライバルにもなりうるのが、昨年の覇者ゲラント・トーマス(イギリス、33歳)である。

 

彼もまた、ジロに出る可能性はあった。

しかし、自らが掴み取ったマイヨ・ジョーヌを守るため、再びツールに集中することを選んだ。

 

「最大の目標はツールで可能な限り良い結果を出すことだ。もしも昨年、ツールで勝つことがなかったら、きっと僕はジロとブエルタをメインターゲットにしていただろう。でも僕はツールを勝った。僕は背中にゼッケンNo.1を貼り付けて走ることができるんだ。そのチャンスをわざわざ捨ててしまうなんてこと、100%できないよ」

 

この感情は当然のことだ。

そして、この2人に限って、その思いが衝突することはあるまい。

2人は共に自らの持てる限りの力を尽くすだろう。そして最後に、より良い走りを見せていた方に、残った1人が全力でサポートする。

そんな姿を見ることができるのではないだろうか。

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ただ、懸念があるとすれば、このダブルエース体制を誰がアシストするのだろうか、ということである。

昨年はその役割を、偉大なる新人エガン・ベルナル(コロンビア、22歳)が務めあげた。

しかし、今年、ベルナルはジロへの出場を表明している。

ダブルエースが真に機能するためには、2人分を支えるアシストが必要不可欠となる。

スカイは十分にそれを用意することができるのか?

 

www.cyclingnews.com

「ツール・ド・フランスの 期間中に僕は多くのことをフルームから学んだ。チームバスでは彼の隣に座ってずっと彼を見ていた。どんな風に彼がメモを取っているのか、どんな風に彼がミーティングで話すのか、そしてプロトンではほとんどいつも彼の後ろにいたので、彼が何をしていたのかをいつも見ていた」

 

と語るベルナルは、2019年の最大の目標をジロに定めていることを明らかにした。

チームとしても、彼がフルーム、トーマスと並び、チーム・スカイの最強メンバーを率いるエース足り得ると正式に認めたのである。

 

「ジロは本当に好きなレースだ。僕はイタリアに3年間住んでいて友だちもたくさんいる。イタリアのファンも大好きだし、道も良く知っている。だから僕はそこで、良いレースをすることができると思っている」

 

ジロには今のところ多くの有力選手が参加を表明している。

ニバリ、デュムラン、サイモン・イェーツ、ミゲルアンヘル・ロペス、ログリッチェ、ランダ、バルベルデ・・・。

それだけの面子の中で、ワールドツアー2年目に過ぎないわずか22歳の若造が総合優勝どころか総合表彰台に登ることすら、常識的に考えれば厳しいと言わざるを得ないだろう。

 

しかし、彼は2018年、不可能と思るようなことを次々とやり遂げていった男だ。

そしてそんな彼に、同じく不可能を可能にし続けてきた最強のチームのバックアップが控えている。

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2019年もチーム・スカイはグランツールで大暴れしてくれそうだ。

たとえ、スカイという名で走る最後のシーズンであっても。

 

 

 

チーム・サンウェブ(SUN)

デュムランとケルデルマンはジロとツールに、オーメンはツールに

昨年、ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスを共に総合2位に登りつめるという快挙を成し遂げたトム・デュムラン(オランダ、29歳)。

今年こそは本気でツールに集中してくるのではないかと思っていたが、彼は今年もまた、ジロとツールに出場するという。

なぜ、彼がジロを選んだのか。その理由についてはすでに単独で記事として書いた。 

suzutamaki.hatenablog.com

 

また、2017年ブエルタで総合4位を記録した、サンウェブのセカンドエース、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、28歳)は、デュムランと同じくジロとツールに出場し、彼を全面的にサポートすることを発表した。

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「最初にその方針を聞いたとき、正直、ちょっと残念だった。でも、グランツールでなくとも、たとえばパリ~ニースだったり、カタルーニャだったり、自分自身の成績を追い求めることのできるレースは他にもある。グランツールにおいてはまだ僕は2番手、3番手の存在なんだ。そっちの方が自分には多分合っている。影に徹して、ベストを尽くすよ」

 

ケルデルマンとしても、もしかしたら完全に納得のいく方針ではなかったのかもしれない。

だが、彼自身の言葉にある通り、まずはパリ~ニースなどの小さなステージレースでの大きな結果を目指してほしい。彼はまだ、28歳。今年の走り次第で、来年、大きな結果を出すチャンスはやってくるだろう。

 

何よりも、この男の万全なサポートがあれば、デュムランにとっては大きな助けになることは間違いない。

もしデュムランがツールで力を失うようなことがあれば・・・そのときこそ、ケルデルマンにとっての大きなチャンスだ。

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また、記事中ではサンウェブのもう1人のエース候補、サム・オーメン(オランダ、24歳)についても触れられている。

彼は今年、ジロには出場せず、ツール1本で行くらしい。デュムランたちのサポートをしつつ、彼にとって初めてのツールで経験を積むことが第一優先となる。

 

よって、サンウェブは来年、ブエルタ・ア・エスパーニャにおいては総合優勝争いを演じるつもりはないという。

代わりに、昨年、スパルカッセン・ミュンスターラントジロで勝利したスプリンター、マックス・ヴァルシャイド(ドイツ、26歳)をエースに据えてスプリントで勝ちに行くという。

 

 

 

ドゥクーニンク・クイックステップ(QST)

 マスはツール、ヴィヴィアーニはジロに出て、ツールは?

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2018年はエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、30歳)にとって最高の年となった。

ジロ・デ・イタリアで4勝とマリア・チクラミーノ、ブエルタ・ア・エスパーニャで3勝、そしてイタリアチャンピオンにも輝いた。

 

2019年の彼の目標の1つは、このジャージを着て、故郷であるヴェローナ県でフィニッシュするジロ・デ・イタリアに出場することである。

地元の街の近くでマリア・チクラミーノに身を包みながらポディウムに立つこと。

これがどれほど嬉しいことか。

 

そしてその後は、ガビリアがいなくなったチームで、エーススプリンターとしてツール・ド・フランスに臨む。

少なくとも11月の時点ではそのように話をしていたのである。

 

しかし、年末年始にかけて、エンリク・マス(スペイン、24歳)がツール・ド・フランスに出場することが判明すると、メディアの中からは、ツールでマスを重点に置くために、ヴィヴィアーニはツールをパスしてブエルタに出るのではないか?との予測も出てきたようだ。

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果たして、どうなるか。

 

ただ、個人的には、上の記事で彼自身も言っている「ツールで勝たなくては最強のスプリンターだったとは言えない」という言葉には同意する。

だからこそ、今年はツールに挑んでほしい。

そうして、最強スプリンターの座を今度こそ競い合ってほしい。

 

そう、思っている。 

 

 

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マスは完全にツールに集中するスケジュールを組み立てているようだ。

2月のアルガルヴェでシーズンを開始した後、1回目の高地トレーニングに出かけ、その後カタルーニャとバスク、フレッシュ・ワロンヌ、リエージュ~バストーニュ~リエージュに出場し、6月はツール・ド・スイス、そしてツール直前に2度目の高地トレーニングに向かうという。

 

もちろん、まだツールに行くことが完全に決まったわけでもないらしい。

この時までに、彼がどれだけの足を見せられているかで、チームの判断は変わるだろう。

 

問題は、チーム体制である。

年末のスペインのTV番組に出演していたアルベルト・コンタドールは次のように指摘する。

 

「クイックステップはエンリクを成長させるにはとても良いチームだ。しかし、ツールで勝つという彼の目的をよりサポートすることができるのは、他のチームだろう。きっと彼は、チームの強力なサポートなしでもツールで良い成績を残すことはできる。しかし、彼が今この年齢でツールを勝とうとすれば、チームの助けなしでは、事実上不可能だよ」

 

この事実があるからこそ、本気でマスにツールで勝たせようと思うのであれば、ヴィヴィアーニをツールに連れていくべきではない、という話には同意できるものがある。

 

さてさて、果たしてツールのクイックステップ体制はどうなるのか。

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もう1人、ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、27歳)もジロへの出場を固めている。

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個人タイムトライアルの総距離が長い今年のジロは確かにユンゲルスとの相性は良いだろう。

2016年に総合6位、そして2016年・2017年に共に新人賞に輝いている男だ。

2018年に初出場を果たしたツールでは総合11位と振るわなかっただけに、もう一度、まずはジロ・デ・イタリアで、総合リーダーとしてのリベンジを果たしたいところ。

 

 

 

まとめ 

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あくまでも自分が拾った記事の中で明確に記載されているものを根拠にしている。
その他の情報源で出場レースに関する情報が追加であれば、教えて頂けると幸い。

 

 

次回はミッチェルトン・スコット、モビスター・チーム、ユンボ・ヴィスマを取り挙げる(予定)。 

 

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*1:ツール・ド・フランスを5回総合優勝を果たした伝説のライダーたち。ジャック・アンクティル(フランス)、エディ・メルクス(ベルギー)、ベルナール・イノー(フランス)、ミゲル・インドゥライン(スペイン)の4名。

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