毎年恒例!のガッツポーズ選手権後編。
前後編で合計20枚選出したガッツポーズ写真から、あなたのお気に入りのベスト3を選んでいただき、以下の投票フォームから投票してください!
あるいは、20枚の中にはない、あなたのおススメのガッツポーズ写真がありましたら、それを選ぶこともできます!
締め切りは12/18(金)終日を予定!
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☆ルール☆
- 1位~3位にそれぞれ3ポイント~1ポイントを加え、最終的に獲得ポイントを合計して順位を決めます。
- 2位・3位については「空欄」も可ですが、1位を空欄で2位・3位を回答したり、1位と3位を回答して 2位を空欄にした場合は、それぞれ順位繰り上げを行います。
- 1位~3位で2つ以上、同じ回答を行った場合は無効票とします。
- あなたのおススメのガッツポーズを選んで書いていただいてもかまいません。その場合は選手名とレース名(ステージレースの場合はステージ数)を必ず添えてください。
- 11.セーアン・クラーウアナスン(ツール・ド・フランス 第14ステージ)
- 12.ミハウ・クフィアトコフスキ(ツール・ド・フランス 第18ステージ)
- 13.サム・ベネット(ツール・ド・フランス 第21ステージ)
- 14.マルク・ヒルシ(ラ・フレーシュ・ワロンヌ)
- 15.アルノー・デマール(ジロ・デ・イタリア第6ステージ)
- 16.ペテル・サガン(ジロ・デ・イタリア 第10ステージ)
- 17.イヴ・ランパールト(ドリダーフス・ブルッヘ~デパンヌ)
- 18.ジェイ・ヒンドレー(ジロ・デ・イタリア 第18ステージ)
- 19.ダヴィ・ゴデュ(ブエルタ・ア・エスパーニャ 第11ステージ)
- 20.プリモシュ・ログリッチ(ブエルタ・ア・エスパーニャ 第17ステージ)
前編はコチラ
【参考:過去のガッツポーズ選手権とその結果】
ガッツポーズ選手権 写真で振り返る2017年シーズン - りんぐすらいど
ガッツポーズ選手権 写真で振り返る2018年シーズン(前編) - りんぐすらいど
ガッツポーズ選手権 写真で振り返る2018年シーズン(後編) - りんぐすらいど
ガッツポーズ選手権 写真で振り返る2019年シーズン(前編) - りんぐすらいど
ガッツポーズ選手権 写真で振り返る2019年シーズン(後編) - りんぐすらいど
ガッツポーズ選手権2019 その他アンケート結果まとめ - りんぐすらいど
ガッツポーズ選手権2018 その他アンケート結果まとめ - りんぐすらいど
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11.セーアン・クラーウアナスン(ツール・ド・フランス 第14ステージ)
今年のチーム・サンウェブははっきりと「強かった」。
パリ〜ニースにおける連携プレーによる勝利から、ツール・ド・フランスでのステージ3勝、ジロ・デ・イタリアでの総合ツースリーにブエルタ・ア・エスパーニャでは若手のアグレッシブさが光った。
どれか一つの方向性ではなく、多岐に渡り、「最強」ではないけれどはっきりと強かった、そんなシーズンだった。
その最も象徴的かつ印象的だったのがこのツール・ド・フランスでの活躍。
その中でもとくに、この第14ステージでの「ジェットストリームアタック」であった。
↓詳細はこちら↓
マイヨ・ヴェールをサム・ベネットと争うペテル・サガンとボーラ・ハンスグローエ。
彼らの思惑通りピュアスプリンターたちを振るい落としたうえで、残った集団内でのスプリントという理想的なシチュエーションに終わりそうな、そんな中。
残り11㎞からサンウェブによる猛攻が開始された。
4級山岳ラ・デュシェール峠の登りに差し掛かると同時にまず仕掛けたのがティシュ・ベノート。
単独で抜け出したベノートに対し、ボーラ・ハンスグローエはレナード・ケムナを先頭に猛追を仕掛け、残り7.6kmで捕まえる。
そしてその勢いで今度はケムナが独走を開始。残り5.9㎞で最後の4級山岳ラ・クロワルース峠の登りに突入すると、今度はプロトンからトーマス・デヘントもアタック。
出入りの激しいこの終盤の展開にさらなるスパイスを加えたのは、残り5.3㎞でアタックしたジュリアン・アラフィリップに食らいついていったエガン・ベルナルの存在。
当然、ユンボ・ヴィズマとしてはこの奇襲に対応せざるを得ない。集団が蛇のように連なり、前を逃げるデヘント、ケムナ、そしてそれを追い抜いて先頭に立ったアラフィリップたちをものすごい勢いで飲み込んでいく。
そして残り4.2㎞。一瞬たりとも集団を落ち着かせないとでもいう意志を感じさせて、サンウェブの第二手、マルク・ヒルシがアタック。
これを逃すわけにはいかないと判断したペテル・サガンが自らブリッジ。
そして、一旦集団の先頭でペースダウンをもくろんだサガンがコースの左端に進路を変えた瞬間に――右端からセーアン・クラーウアナスンがアタック!
2018年のパリ~ツールで、お見合いをするニキ・テルプストラとブノワ・コヌフロワを尻目に独走を開始し、彼らを突き放した「独走の名手」。
このときも、コフィディス・ソルシオンクレディの選手を先頭にしたメイン集団からみるみるうちにタイム差を開いていき、最後は15秒ものタイム差をこの平坦で、集団相手につけるという圧倒的な結果でもって勝利を掴んだ。
今年のパリ~ニース第6ステージではこのクラーウアナスンがニキアス・アルントと共にベノートの勝利をアシストした。
今大会の第12ステージでは、ベノートとクラーウアナスンがヒルシの勝利をアシストした。
そして今度は、クラーウアナスンのために、ベノートとヒルシが足を使った。
まさに、チームワークの勝利だった。
そして、そんなシチュエーションの妙だけではない。
このガッツポーズ選手権の肝である、ガッツポーズ単体の美しさも見事なものである。
両手を上げ、右手を突き出し、胸のスポンサーを誇示して、もう一度両手を広げ、もう一度右手を振り上げ――そこまでしても、まだ歓喜は身体の中に残っていた彼は、最後に両手をまっすぐに伸ばし、天に向かって咆哮した。
「サンウェブの勝利」を象徴する1枚である。
12.ミハウ・クフィアトコフスキ(ツール・ド・フランス 第18ステージ)
2013年、そして2015年から2019年にかけて。
チーム・スカイ、もしくはチーム・イネオスは、2010年代の6年間、常にツール・ド・フランスの頂点を獲り続けていた。
そして迎えた、2020年。
新たなるエース、エガン・ベルナルと、過去のマイヨ・ジョーヌたるゲラント・トーマス、クリス・フルーム。あるいは昨年のジロ・デ・イタリアの覇者リチャル・カラパス。
これだけの実力者たちが集まる中、2020年もイネオスがツールを支配すると信じていた人も多いだろう。
だが、同時にもう1つの「帝国」も現れ始めていた。
その名もユンボ・ヴィズマ。昨年ブエルタ覇者プリモシュ・ログリッチに、昨年ツール総合3位ステフェン・クライスヴァイク、2年前のツール総合2位トム・デュムラン。
山岳アシストも平坦アシストも豪華な布陣を揃えた「もう1つの最強チーム」は、今年のツール前哨戦たるツール・ド・ラン、そしてクリテリウム・ドゥ・ドーフィネにおいてイネオスを圧倒した。
そしてイネオスの、ツール開幕直前に発表された、フルームとトーマスのツール出場回避の報。
「帝国」の崩壊の予兆であった。
もちろん、このフルーム、トーマスの出場回避それ自体が直接の原因とは言えないだろう。
トーマスも、とくにフルームが、ラン、ドーフィネではコンディション不十分を感じさせる走りを見せていた。
一方でパヴェル・シヴァコフやリチャル・カラパスは調子の良さを見せており、若手中心とはいえ、十分にベルナルの総合優勝を狙える布陣でツールに挑むことはできていた。
だが、初日のカオスな路面コンディションの中で、シヴァコフが度重なる落車。
そしてベルナル自身がピュイ=マリーで崩壊の兆しを見せ始め、それは翌々日のグラン・コロンビエにて、現実のものとなってしまった。
まさかの、ツールにおける、イネオスの崩壊。
これで、もうこのツール最強チームに、居場所はなくなってしまったのか?
いや、決してそんなことはなかった。
アシスト全てがエースとも言われ、実力者揃いのこのスカイ/イネオスは、兼ねてより、たとえば(このチームが不調となることの多い)ジロ・デ・イタリアなどでは、エースが脱落したあとにアシストたちが水を得た魚のように活躍する姿がよく見られている。
その事実を証明するかのごとく、週明けの第16ステージから、連日逃げに乗り続けるリチャル・カラパス。
第17ステージではコル・ド・ラ・ローズのフィニッシュまで残り9.5㎞から独走体勢に。
一時は20秒差にまで迫られながらも再び50秒差にまで開くなど粘り強さを見せたが、いよいよメイン集団にて総合争いが激化するとあっという間に詰められ、残り3㎞でセップ・クスが超牽引する集団に捕まえられてしまった。
それでも、彼は諦めなかった。
第18ステージで、三たび逃げに乗る。
今度はこのチームの最強万能アシスト、クフィアトコフスキと共に。
ライバルは山岳賞争いでも白熱している今年の主役の一人、マルク・ヒルシ。
だがそのヒルシも、クファトコフスキの老獪なる手腕によって脱落させ、最後はカラパスとクフィアトコフスキのタンデムでフィニッシュ地点にまでやってきた。
↓詳細はこちら↓
ゴール前、何度も互いに顔を見合わせながら、健闘を讃え合う2人。
そこでは一体どんな会話がなされたのか。
ここまで繰り返し逃げを打ち、常に挑戦し続けていたのはカラパス。誰よりも勝利を欲しがっていたのも彼だったはずだ。
だが、この日は終盤常にクフィアトコフスキがカラパスのために前を牽き続けていた。
そしてカラパスはそんな彼に敬意を表し、最後の勝利をクフィアトコフスキに譲った。
クフィアトコフスキ。元世界王者。クリス・フルームのツール4勝を多くの部分で支えてきた名アシスト。
そんな彼の、記念すべきグランツール初勝利であった。
肩を組み合う、クフィアトコフスキとカラパス。
正確にはガッツポーズとは言えないかもしれないが、それでも今年を象徴する、印象的なフィニッシュシーンである。
13.サム・ベネット(ツール・ド・フランス 第21ステージ)
ボーラ・ハンスグローエの前身たるプロコンチネンタルチーム時代からの叩き上げ。そんな彼が、チームと少しトラブルめいた形になりながらも古巣を抜け出し、「最強スプリンターチーム」へ。最高が約束された移籍であった。
だが一方で、最強が保証されたこのチームで走ることは大き過ぎるプレッシャーを背負うことも意味していた。事実、2年前このチームにやってきたエリア・ヴィヴィアーニは、ヘント〜ウェヴェルヘムで惜しくも2位となったことで、ゴール後に体育座りをしながら涙を流す姿さえ見せた。その後、ジロ・デ・イタリアで勝利をもぎ取った時は、心の底から安心したような表情を浮かべていた。
ベネットも同様だった。今シーズン、それなりに安定して勝利を重ねてはきていたものの、ツール・ド・フランスでは第1週に4度用意された集団スプリントの機会すべてで勝利に届かない姿を見せていた。
最高潮に高まっていた重圧。それを跳ね除けて、第10ステージのサンマルタン=ド=レのフィニッシュ地点でようやく掴み取ったツール初優勝。
フィニッシュ直後には「僕はこの勝利に値しない」といった言葉さえ漏れてくるほどに、彼は追い詰められてさえいたようだ。
だがもちろん、彼は十分に勝利に値する男であり、そして、初めて真正面からペテル・サガンに打ち勝ち、そのマイヨ・ヴェールを奪うのに相応しい男であった。
その、サム・ベネットによる「ツールの勝利」を象徴するのがこの、第21ステージ、「スプリンターたちの世界選手権」とも呼ばれるシャンゼリゼのフィニッシュを先頭で突き抜ける、マイヨ・ヴェールでの勝利のシーンである。
文句なしの「最強」が集いしこのシャンゼリゼで、あらゆるその最強のライバルたちが皆、項垂れる中、ただ一人、緑を身に纏った男が歓喜の咆哮と共に右手を突き上げる。
実にシンプルで、飾りの少ない1枚。
だからこそそこには、あらゆるスプリンターの理想の極地が表現されている。
これまでも数多くの最強を輩出してきたこのシャンゼリゼ。
果たして来年、この地で手を挙げるのは、果たして誰か。
14.マルク・ヒルシ(ラ・フレーシュ・ワロンヌ)
今年最も活躍した選手は誰か、と問われたら、その中の1人として数え上げられること間違いないのがこの男、マルク・ヒルシである。
2018年インスブルック世界選手権での、U23世界王者。翌年にチーム・サンウェブの一員としてプロデビューを果たし、早速イツリア・バスクカントリーやクラシカ・サンセバスティアンなど、アルデンヌ系/パンチャー系のレースへの強い適性を発揮していた。
そして今年のツール・ド・フランスで、彼はその才能を全世界に知らしめた。すなわち、第2ステージのジュリアン・アラフィリップのアタックに即座に反応し、最後のスプリントもギリギリまで彼と競り合ったこと。
のみならず、第9ステージでは残り2㎞まで逃げ続け、最後のスプリントではポガチャル、ログリッチに続く3位。
さらに第12ステージでは今度こそという思いで再度逃げに乗り、今度は見事に勝利を掴み取った。
さらに直後の世界選手権でも最終盤の動きにしっかりと乗り、銅メダル。
ネオプロ2年目。わずか22歳での快挙である。
そんな彼が見事クラシック初勝利を果たしたのがこのフレーシュ・ワロンヌだった。
たしかにこの10年の「ユイの壁」を支配し続けてきたアレハンドロ・バルベルデもジュリアン・アラフィリップも、昨年2位のヤコブ・フルサンも不在で、「誰が勝つか分からない」状況ではあった。そしてヒルシがこのレースに向いた脚質を持っていたのは明らかだった。
それでも、初出場の22歳が、マイケル・ウッズやダニエル・マーティンらを押しのけて、この伝統的な激坂レースを本当に制してしまうとは。
そして、その勝ち方も実に強かった。
先行したマイケル・ウッズに冷静に食らいつき、完璧なタイミングで飛び出し、追い縋るブノワ・コヌフロワを並ばせることなく突き放した。
そして両手を広げ、堂々たる姿でフィニッシュ。
若手とは思えない顔をしているのは前々からだが、その表情にももはや初々しさはなく、この栄光を持て余すこともなく自然に受け入れていく、そんなガッツポーズであった。
直後のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでも2位。ジュリアン・アラフィリップの斜行がなければもしかしたらこれすら獲っていたかもしれないほどの勢いを見せていた。
来年もきっとこの強さは衰えることはないだろう。これからも目を離すことのできない、新時代のアルデンヌマイスターである。
15.アルノー・デマール(ジロ・デ・イタリア第6ステージ)
実績だけで言えば間違いなく今年最強のスプリンター、アルノー・デマール。
何しろここ最近の「スプリンター戦国時代」で久しくなかった「4勝」を今回のジロで成し遂げてしまったのだから。
その圧倒ぶりをとくに示したのがこの第6ステージだった。
平坦ステージにカテゴライズされながらも、ラスト3㎞を切ってから10%の激坂区間を含むフィニッシュレイアウト。ラストも緩斜面の登りスプリントで、しかも道中の丘陵レイアウトでボーラ・ハンスグローエが本気のペースアップを仕掛けたことにより、エリア・ヴィヴィアーニやフェルナンド・ガビリアといったピュアスプリンターたちは軒並み脱落していっていた。
そんな中、このアルノー・デマールはしっかりとチームメートに守られ、10%区間も乗り越え、最終集団の中にも残っていた。
しかも、最後の登りスプリントにおいて、彼はマイケル・マシューズやヤコブ・フルサンにリードアウトされたファビオ・フェリーネなどの一流パンチャーたちを突き放して、圧倒的な差で単身フィニッシュに飛び込んできた。
2位のマシューズとは5秒差がついた。写真で見ても、ライバルたちの姿が小さいことがよくわかる。
そして、燦然と輝くフランスチャンピオンジャージ。
1ヶ月前の国内選手権で、終盤の登りでアタックしたジュリアン・アラフィリップにも食らいついて手に入れた誇り高いチャンピオンジャージを誇示して両手を挙げるアルノー・デマールは、この勝利によってついにマリア・チクラミーノを手に入れる。
今年の彼は間違いなく強かった。
この写真が示すのはその強さの証明であり、フランスチームのエースであることの証明であった。
来年はこの強さを、いよいよツール・ド・フランスで発揮できるか?
↓ジロ1週目の詳細はこちら↓
16.ペテル・サガン(ジロ・デ・イタリア 第10ステージ)
要望も多かったサガンの勝利シーン。
今年、ここに至るまで一度の勝利もなく、ツール・ド・フランスでは2012年以来8度目となるマイヨ・ヴェールの獲得すら逃したサガン。
このジロ・デ・イタリアでもデマールの好調さに圧され、危機的な状況にあった。
だからこそ、彼は、少し意外な手に出た。
↓詳細はこちら↓
残り13㎞から始まる4級山岳トルトレートで、メイン集団からブリッジを仕掛けてきたペリョ・ビルバオに5秒差まで迫られたとき、サガンは加速した。
そこまで伴走してきていたベン・スウィフトも突き放し、独走を開始するサガン。トルトレートの山頂ではメイン集団とのタイム差を20秒にまで開く。
そして残り11㎞。
まるで4年前ロンド・ファン・フラーンデレンを制したときのような堂々たる走りで、フィニッシュへと辿り着いた。
そのガッツポーズは、「サガンらしい」派手なものでは決してなかった。
小さく右手を挙げて観客たちに「もっと盛り上げろ」とサインを送り、そしてゆっくりと上体を起こしたうえで小さく控えめに右手を掲げた。
最後も両手を小さく挙げるにとどめ、どこか落ち着いた、大人びた静かなガッツポーズ。
それもまた、2016年「クラシックの王」となったときの彼のフィニッシュシーンと重なる部分があった。
もしかしたら彼はかつてのように、スプリントでも勝利を稼ぎ、ポイント賞ジャージを当たり前のように保持し続けるような走りはできないのかもしれない。
それでも、こういった、長年の経験と勘とを活かした勝ち方をしていくことはできるような気がする。
現在のボーラとの契約は2021年まで。そのあとの彼の未来はまだ、不透明。
だが願わくば、このロードレースの舞台でも、彼の30代を、これまでとは違った走り方でもって、見続けていたい。
17.イヴ・ランパールト(ドリダーフス・ブルッヘ~デパンヌ)
晩秋の、落ち葉が敷き詰められた道路で、遥か遠く、遠くに集団の影を望みながら、彼は静かに右手を挙げる。
1度、2度、3度と繰り返し、噛みしめるように。
そして最後に力強く右手を握りしめ、胸元のスポンサーを誇示する。
昨年のパリ~ルーベ3位。
強豪ひしめくドゥクーニンクの中でもクラシックエースとしての地位を保証された「ジルベールの後継者」。
だが、新型コロナウイルスの影響でスケジュールが混乱した今年、この最後のレースまでなかなか結果を持ち帰ることはできずにいた。
オンループ・ヘットニュースブラッド2位、ヘント~ウェヴェルヘム7位、ロンド・ファン・フラーンデレン5位と、決して悪くないどころか常に上位に入り続けているその安定感は今年最も優れていたと言えなくもないが、しかし勝ちは得られずにいた。
それは、「クラシック最強チーム」クイックステップにとっても同様であった。
とくに2017年・2018年と連続で制しているロンド・ファン・フラーンデレンに関しては、ジュリアン・アラフィリップを先頭集団に入りこませ、メイン集団ではカスパー・アスグリーンとランパールトというエース級2枚を重し役として乗せているという理想的な状況。
だがそこで巻き起こった、まさかのアラフィリップの落車リタイア。
「圧倒的優位」は一転して「完全なる劣勢」へと姿を変えてしまった。
結局は最強シクロクロッサーの2人に集団を追いつかせることはできず、ドゥクーニンクは手痛い敗北を喫してしまった。
このドリダーフス・ブルッヘ~デパンヌは、そんなドゥクーニンクにとってのリベンジ戦であった。
本来であれば集団スプリントで決着することの多いこのレースだが、シーズン最終盤であることと強く吹き荒れる晩秋のフランドルの海風によって荒れに荒れ、完走49名というサバイバルレースへと変貌した。
そして残り20㎞を切ったところで先頭24名の中に5名を入り込ませていたドゥクーニンク・クイックステップがさらなる猛プッシュ。
横風の中で集団をズタズタに切り裂き、先頭はわずか7名に。
そしてドゥクーニンク・クイックステップはそこに4名を残した。
残り3名はマッテオ・トレンティン、ジョン・デゲンコルプ、ティム・メルリエといった強力なスプリンターたちばかり。
当然、そのままフィニッシュへと向かえば、クイックステップの敗北は免れなかった。
だが、ジルベール加入後「ウルフパック」と化した彼らが、かつてよくあったような「数の優位からの敗北」なんてことを繰り返すことなどなく、残り7㎞で隙を突いてランパールトが抜け出したあと、残ったメンバーがしっかりと追走集団のローテーション妨害を敢行した。
そして辿り着いたフィニッシュ地点のランパールト。
その繰り返されたガッツポーズは、彼自身のみならず、チームとしての悔しさを晴らすためのものだったのかもしれない。
今年も39勝。縮小されたカレンダーの中で、2位のUAEチーム・エミレーツの33勝を大きく上回るこの結果はさすがとしか言いようがないが、それでも今年はまだ、ワールドツアークラスのクラシックレースの勝利がなかっただけに、この最後の勝利の価値は格別大きいものであった。
来年こそはパリ~ルーベも復活し、今度こそランパールトが栄光を掴み取ることができるか。
そして、「ウルフパック」の強さはしっかりと引き継がれていくか。
その行く末を、しっかりと見守っていきたい。
18.ジェイ・ヒンドレー(ジロ・デ・イタリア 第18ステージ)
まさに今年のジロ・デ・イタリアを象徴するかのようなステージだった。
ジロ・デ・イタリア最高峰の峠「ステルヴィオ」を通過する総獲得標高差5,600mの超難関山岳ステージ。
本来クイーンステージの予定だった第20ステージがコース変更になったことを受けて、最難関ステージの称号はこのステージに送られることとなった。
そして、その最も熱い戦いはやはりステルヴィオを舞台に巻き起こった。
↓詳細はこちら↓
ここまで15日間にわたりマリア・ローザを保持してきていたドゥクーニンク・クイックステップはもはやプロトンコントロールの力を残しておらず、代わりにこれを総合2位・3位と追いかけていたチーム・サンウェブが全力で集団牽引を試みる。
マーティン・トゥスフェルトやサム・オーメンといった準山岳アシストたちが中盤を牽引していくと、最後はケルデルマン、ヒンドレーに次ぐ実力者クリス・ハミルトンが最後の猛プッシュを開始した。
このハミルトンのペースアップによって、ついに総合首位ホアン・アルメイダが陥落する。
今年年間を通して演じられ続けてきた「サンウェブ劇場」の最終幕である。
だがここで「眠れる獅子」が目を覚ました。
前日は逃げに乗っていた元TT世界王者ローハン・デニス。かつて総合エースとしての地位も許されていたこの男が、本来持つその強烈な登坂力を解放し、総合4位テイオ・ゲイガンハートのための牽引を開始する。
世界最高峰のエンジンによる山岳拘束登坂。その結果、あっという間に集団はバラバラに粉砕され、先頭はデニス、ゲイガンハート、ヒンドレー、そしてウィルコ・ケルデルマンのみとなってしまった。
そればかりか、デニスのこの猛牽引は、アルメイダの脱落によって暫定総合首位に躍り出ていたケルデルマンをも突き放していく。
総合3位のヒンドレーはここでケルデルマンを待つべきか?
それともすでに足を失っているケルデルマンを無理に救い出そうとするのではなく、チームとしての敗北を決定的なものにしないためにも、ヒンドレーをゲイガンハートについていかせるべきか?
チームが選んだのは後者であった。
そして、ケルデルマンの傷口を最小限に抑えるためにも、ゲイガンハートの背中に張り付き続けることを選択した。
「自分らしいレースとは言えないけれど、ウィルコの勝つ姿を見たい」と述べたヒンドレーは二律背反する複雑な思いを胸に秘めながらフィニッシュ地点までやってきた。
その胸中が表れたのがこの、「無表情なるガッツポーズ」であった。
残り150mまできっちりとゲイガンハートの背後を捉え続け、そして最後の最後で抜き去り、両手を掲げて力強いガッツポーズ。そしてもう一回右手で。
夢に見続けていたジロでの勝利。それは彼にとっても、チームにとっても、大きな意味をもつ勝利であった。
それでも、決して純粋な歓喜だけではない。そういう勝利もあるのだと、教えてくれる、そんなちょっと特殊なガッツポーズであった。
19.ダヴィ・ゴデュ(ブエルタ・ア・エスパーニャ 第11ステージ)
6年前のブエルタ・ア・エスパーニャで、クリス・フルームとアルベルト・コンタドールによる激しい一騎打ちが繰り広げられたファラポーナ山頂フィニッシュ。
今年はこの舞台で、2015年ラヴニール覇者マルク・ソレルと、2016年ラヴニール覇者ダヴィ・ゴデュとの一騎打ちが繰り広げられた。
残り5㎞でアタックしたソレルに逃げ集団の中から唯一食らいつけたのはゴデュだけ。
ただし、途中メイン集団からの不意打ち気味のブリッジを仕掛け、その後も総合ジャンプアップのために積極的に前を牽き続けていたソレルは、残り1㎞を切ったあとはすでにへとへとで今にも倒れそうな様子すら見せていた。
その背後で様子を窺っていたゴデュは、残り150mで一気にアクセルを踏む。
すぐさま反応するソレルだったが、ゴデュの勢いを止めることはできなかった。
ソレルがついてこれていないことを悟ると、残り25mからゴデュはもう勝利を確信していた。
そして満面の笑みを浮かべ、ハートマークを顔の前に作ったあと、ラインを越えると同時に両手を天に突き出す。
そして、叫ぶ。
新型コロナウイルス対策の一環で無観客となった山頂で、彼の叫び声は大きく大きく響き渡った。
叫びと共に振るわれた腕と、その表情とは、きっと、フランス人としてツール・ド・ラヴニールを制したことによる大きすぎる期待の重圧の中、蓄積されていった様々な感情の爆発を表しているのだろう。
今回のブエルタではのちにもう1勝を積み重ね、合計2勝。総合成績でも最終的には8位。
ティボー・ピノのアシストとしてはすでに十分すぎる実績を残している彼が、今後はエースとして、より活躍する場が増えていくことを、期待している。
20.プリモシュ・ログリッチ(ブエルタ・ア・エスパーニャ 第17ステージ)
初めに断っておくと、これはステージ優勝者のガッツポーズではない。
しかし「勝者」ではある。ブエルタ・ア・エスパーニャ2020の第17ステージ。
翌日にマドリードを控えた、総合争いの最終日。
その残り3㎞で45秒遅れの総合2位につけるリチャル・カラパスがアタックし、すでにセップ・クスを失っていたログリッチがついていけず、突き放され――あの悪夢のようなツール・ド・フランス同様、最終日前日にその総合リーダージャージを失いかねない瞬間を迎えていた。
その後、沈みゆく太陽の光を背景に、山頂から降り立ってくるチームメート、レナード・ホフステッドの姿を捉え、その背中に乗ってタイム差の拡大をなんとか抑え込むことに成功したログリッチ。
残り1㎞でついにホフステッドも脱落し、もはや限界を迎えつつある中で、なんとか彼は、カラパスから21秒遅れでフィニッシュに到達することができた。
無線からは、彼がマイヨ・ロホを守り切ったことが告げられたのだろう。
ラインを通過するその瞬間までもがき続け、通過した直後、一瞬、彼のいつもの無表情がその顔に浮かんだかと思うと、その次の瞬間、左手に小さなガッツポーズを作ると共に、絶叫した。
それはツール・ド・フランス第20ステージで見せたあの絶望的な表情とは実に対照的であり、彼の長い長い3か月間の苦しみと努力をすべて清算した瞬間であった。
2020年はツールでの敗北という意味では「成功」とは言い切れない年だったかもしれない。
だが多くの選手がそこでシーズンを終えることもある中で、彼はその後も、強い精神力でもって戦い続け、そしてリエージュ~バストーニュ~リエージュと、2度目のブエルタ・ア・エスパーニャ制覇という偉業を成し遂げた。
今年、彼の走りを見ていて、その最も大きな彼特有の武器がその執念、粘り強さであると感じた。
それならばきっと、来年のツールで再び彼が頂点を狙える走りをしてくれるであろうことを、何の疑いもなく信じることができる。
プリモシュ・ログリッチという男の強さと走り方を見せつけてくれたシーズンであり、そしてそのすべてが詰まっているのが、この第17ステージの「ガッツポーズ」なのだと思っている。
以上、少しコメントが長くなりすぎたきらいがあるが、全20枚の「ガッツポーズ写真」の紹介とさせていただく。
なお、ここまで来て「リエージュ〜バストーニュ〜リエージュは?」と思っている方々も多いだろう。
たしかにあれは、今年を象徴するガッツポーズ、記憶に残るガッツポーズだと思われる。
だが一方で、「勝者」を称揚する意味を持つこのガッツポーズ選手権で、まるでそのガッツポーザーを揶揄するような形になりかねない一枚に票が集まるのも宜しくないということで、除外させていただいた。
あれがそのまま本当に勝っていたら、世界王者のモニュメントでのガッツポーズということで実に価値の高いものになっていたと思うだけに、残念である。
(一方でログリッチの「勝利をもたらす執念」を象徴する一枚という見方もできるが、そうなるとそれはもうガッツポーズじゃないのでご容赦を)
また、Getty Imageでもこの写真を埋め込むと下記の通りエラーが出てしまうという問題も。
どんな写真か気になる人は、下記の写真をクリックすると、リンク先で、ちゃんとした写真を見ることができるのでどうぞ。
また、こちらもガッツポーズではないということで泣く泣く除外したが、今年忘れてはいけない「勝利の瞬間」の写真も紹介しておこう。
ツール・ド・ランカウイ第6ステージ。
NIPPOデルコ・ワンプロヴァンスに所属する中根英登が、日本人としては9年ぶりとなる、UCIプロシリーズ(旧HCクラス)でのステージ優勝を果たした。
中根はその後、東京オリンピック代表選考レースこそ最後の最後で逆転されるが、同時に来期のワールドツアーチーム「EFプロサイクリング」移籍を決めた。
別府、新城に次ぐ日本の才能とマヌエーレ・モーリも認めた男。
来年のその活躍を、全力で応援していきたい。
投票は以下のGoogleフォームから。
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