前編に引き続き、今年のガッツポーズ選手権ノミネート作品を紹介していく。
以下の写真とコメントを参考に、皆さんの考える今年1番のガッツポーズを選んでください。
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(説明とかは前編に記載しているのでご確認ください)
締め切りは11/30(金)終日を予定!
多くの投票をお待ちしております。
では後編をどうぞ!
11.クリストファー・ユールイェンセン(ツール・ド・スイス 第4ステージ)
感情のこもったガッツポーズは数多くあり、その全てを選びたい気持ちはやまやまだが、そうはいかないことが多い。
その中で、どうしてもこの写真だけは外すわけにはいかなかった。
スタート直後から逃げ続けていたユールイェンセンは、唯一残った逃げ仲間のナン・ピータースと共に、ラスト10kmのバナーを潜り抜けた。その時点でメイン集団とのタイム差は20秒。残りは下りと平坦だけ。吸収されるのも、時間の問題だった。
しかし、残り3kmを切ってピータースを切り捨て、単独逃げとなったユールイェンセンは、メイン集団とのタイム差を20秒に保ったままであった。
最後は飛行場の滑走路での勝負。大雨の中、190km近くを逃げ続けてきたユールイェンセンだが、滑りやすい滑走路の地面を前にもたつく様子を見せたメイン集団を尻目に、最後の最後まで粘り続け、8秒差での勝利を掴んだ。
アシストとしての働きが目立ち、得意のクラシックでも実力は見せつつも勝ちきれなかった28歳のデンマーク人が、実に3年ぶりの勝利を手に入れた。
その表情は今日の日の逃げ続けた190kmの苦しみと、この3年間の勝ちきれなかった苦しみとを、共に深く刻み込んだ表情のように思える。
12.ディラン・フルーネヴェーヘン(ツール・ド・フランス 第7ステージ)
初日のガビリアの勝利により、今年のツールは(昨年のジロのように)ガビリアが席巻してしまうのか・・・!と感じていた中、ツール序盤は「オランダ選手権の疲れがとり切れていなかった」と調子の上がらない様子を見せていたフルーネヴェーヘンが、この第7ステージから復活。そこまでのオランダ世論の身勝手な落胆の声に対しての「黙りなさい」ポーズだというのは某解説者の意見。真実のところは不明。
フルーネヴェーヘンは次のステージも勝利。しかもいずれも、リケーゼに頼るガビリアに対して独力で圧倒的な力を見せつけての勝利となり、一気に世界最強スプリンターと呼べる地位にまでのし上がってきたことを感じさせた。背後にガビリア、サガンを従えているその姿も、「俺が最強だ」と言わんばかりである。
しかし次のステージでの「ダブルピース」と合わせ、その無表情さが独特な雰囲気を漂わせている。
ポディウムで見せる笑顔も、どこか硬質な感じ。首から上と下とのアンバランスさとも相まって、どこか人間離れした魅力を覚えるのだ。まるで、彫像のような・・・。
それは彼の実力の底知れなさにも通じる。来期はトニー・マルティンをチームメートに加え、ガビリアやヴィヴィアーニ、カレブ・ユアンなどの新時代のトップスプリンターたちとの戦いの中心に立つ人物となるだろう。
13.ジョン・デゲンコルプ(ツール・ド・フランス 第9ステージ)
この男の歓喜の雄叫びは、どうしてこうも胸を打つのだろう。
2016年事故以来、何度か「復活」と叫ばれてはその後に続く勝利も少なく、高い期待とは裏腹の結果を前にして、彼自身も苦しい時期を過ごし続けてきたことだろう。
だが、今度こそ(今度もまた)「復活」と性懲りなく叫んでもいいだろう。何しろ、かつて彼が頂点を極めた時期に手に入れた栄光「パリ~ルーベ」を模した――しかもこれまでのツールでの同様のステージの中でも特に似通った――ステージでの勝利だったのだから。しかも、グレッグ・ヴァンアーヴェルマートとイヴ・ランパールトという、2人の強力なクラシックライダーを相手取っての勝利である。
やはり彼は最強だったのだ。そう感じさせてくれる勝利だった。
勝ち方も強かった。
パリ~ルーベ本家でも終盤の重要ポイントとなる「カンファン・アン・ペヴェル」で他2人と共に抜け出し、最後のストレートでは自ら前に出てスパートをかけ、残り二人を力で引き千切るほどの圧倒的なスプリント力を見せた。クラシックスペシャリストでは、本物のトップスプリンターであるデゲンコルプの前に出ることなど、不可能だったのだ。
同じように感じられたのはつい先日のジャパンカップ・クリテリウムだった。元々は別府をエースにする予定だったというトレック。最後の局面において別府がついてこれていないことを確認したデゲンコルプは、即座に方針を転換し、集団の中を巧みに縫って前に出て、他のスプリンターを圧倒する力量を見せつけて勝利を掴んだ。やはり彼は、規格外だったのだ。
正直、現代のトップスプリンターを前にして勝てるほどの力は残っていないだろう。しかし今回のステージのように、純粋なスプリント力だけでの勝負でない局面でなら、やはりこの男は経験も豊富で強い。
来期もクラシックを中心に活躍する彼の姿が見たいものだ。
14.ナイロ・キンタナ(ツール・ド・フランス 第17ステージ)
その表情は、喜びというよりも安心の方が強かったのではないか。
誰もが勝利を期待した男、誰もがその勝利を当然と考えていた男が、ようやく、霧に包まれたポルテ峠の山頂でフィニッシュした。
2013年、衝撃のデビューを飾ってステージ1勝と山岳賞、新人賞、そして総合2位の座を手に入れた第20ステージの勝利から5年。実に、5年ぶりとなるツール・ド・フランス区間優勝となった。
この日は、今年のツールの最大の目玉でもあった「65km超超短距離決戦」の日だった。
この短さの中に、標高1500mを超える難関山岳が3つ。最後のポルテ峠は2200mを超える超級山岳であり、ここで勝負を仕掛けたのが総合10位のダニエル・マーティンと総合8位のナイロ・キンタナであった。
キンタナもすでに4分以上遅れており、それがゆえにこのアタックは見逃された部分も大きい。それでも彼は同行者マーティンを突き放し、単独で今大会最高標高地点へと挑み、これを制した。
ブエルタ・ア・エスパーニャでも力を発揮しきれずにバルベルデをエースに据えた体制に切り替えたが、終盤、バルベルデが失速したときには、むしろキンタナの走りは復活したかのように生き生きとしていた。
なかなか歯車が噛み合わない状態が続いてはいるものの、このままただ沈んでいくだけとは思えない。来年こそは、彼の強さがもう一度輝くときを信じている。
15.ゲラント・トーマス(ツール・ド・フランス 第20ステージ)
今大会最初の勝利を飾った第11ステージ、マイヨ・ジョーヌを着て連勝を飾った第12ステージと迷ったが、結局はこの、最後のガッツポーズを選択することにした。
理由はそれが「個人タイムトライアルでのガッツポーズ」という珍しいものであること。
そして、ここまでひたすらクールに過ごしてきた彼が、この瞬間、その胸の中の感情を爆発させたように見えた表情だったからだ。
クリス・フルームという絶対的なエースの存在を抱え、チームとしてもあくまでも彼を中心に据えようとする体制の中で、マイヨ・ジョーヌを着続けて走ることは最後まで居心地悪さがあったことだろう。そして、最後の最後まで、ミス1つ許されないチャンピオンとしての緊張感に、言葉にできない苦しさを覚え続けていたことだろう。
その全てが、この瞬間に解放された。
この瞬間に彼は感情の深く暗いトンネルを抜け出ることができたのだ。
頂点を掴むことはかくも苦しい。しかし、32歳のウェールズ人は、見事にそれを掴み取った。
おめでとう、G。
16.カレブ・ユアン(ツアー・オブ・ブリテン 第8ステージ)
今年はユアンにとって、辛いシーズンとなった。得意としていたツアー・ダウンアンダーでも1勝しかできず、初出場となるはずだったツール・ド・フランスでも直前でメンバー入りを拒否され、深い失望を味わったに違いない。
そういった経緯があったからこそ、このブリテンでの最後の勝利は、感慨も一入だったのだろう。
このガッツポーズのあと、彼は両手で顔を覆い、もう一度、勝利を噛み締めるように同じガッツポーズを見せ、そして最後に右手を力強く振り下ろした。
一連の長く感極まる動作の裏に、彼の感情を読み取ることができるだろう。
来年はロット・スーダルで走ることになるユアン。来年こそは、ツールでライバルたちと一線級のバトルを繰り広げる彼の姿が見られるかもしれない。
17.イエール・ワライス(ブエルタ・ア・エスパーニャ 第18ステージ)
誰もが集団スプリントを予想していたステージで、まさかの逃げ切り勝利を決めた。
2014年パリ~ツール覇者は、あのときと同じように、逃げの同伴者の背中にぴったりと貼りついて、最後の瞬間までチャンスを窺い続けた。
後方からは恐ろしい勢いでメイン集団が迫ってくる。残り500mでペテル・サガンがロングスパートをかけて襲い掛かってくる。その姿を見て、同伴者スヴェンエリック・ビストラムは堪らずにスプリントを開始した。
まだワライスは動かない。背後は振り返らない。大集団が迫ってくるのは肌で感じていた。しかし懸命にもがくビストラムの背中をじっと見つめ続け、最高のタイミングを待った。
そして200mを切ってようやく、彼は腰を上げる。もう後ろのサガンとの距離は50mもなかった。
ビストラムをゆっくりと追い抜く。
口元を下で舐めまわしながら、この日最高の集中力でもって、彼は最後までペダルを踏み続けた。
歓喜はその後にやってきた。
サガンとの距離はわずか10m程度。まさに、ギリギリの勝利だった。しかし全て計算されたうえでの戦略的な勝利でもあった。
「ツキイチでの勝利」はときに、批判されることもある難しい勝ち方でもある。しかし、ここまで劇的な勝利の仕方をされてしまうと、これはもう賞賛するほかないのではないか。
ワライスは決して最強の選手ではない。ビストラムと比べても、どちらが強いということは難しいだろう。だがそんな彼でも、その戦略と戦術、そして決して振り返らない鉄の心とでもって勝利を掴み取った。
こういう瞬間が見られることが、サイクルロードレースという競技の他にない魅力の1つである。
18.エンリク・マス(ブエルタ・ア・エスパーニャ 第20ステージ)
昨年のアングリルでコンタドールを支え「後継者」と呼ばれたエンリク・マス。
確かに実力のある選手ではあったが、まさか今年、まさしくコンタドールの後継者に相応しい結果を叩き出すとは思わなかった。
しかもチームは完全なるヴィヴィアーニシフト。山岳アシスト不在の中、ほぼたった一人で立ち向かうことになったブエルタで、彼は見事、総合2位の座に立つことになる。
その秘訣は、無駄な力を使うことを徹底的に避け、一瞬のタイミングを利用してチャンスを掴むその姿勢にある。
この第20ステージでもその走りは健在だった。総合3位のミゲルアンヘル・ロペスと共に抜け出した最後の1km。20秒後方から総合首位サイモン・イェーツが迫ってくる。
すでにこの時点で総合2位を守り切ることはほぼ確定したマスにとって、このブエルタで取り残した栄誉はステージ優勝のみ。ロペスの背後にぴったりと貼りつきながら、彼は淡々と最後の1kmを走っていく。
残り500mで一度、飛び出そうとする姿勢を見せるが、すぐにロペスを見てその余裕そうな表情に気がつき足を止める。そのあともちらちらとロペスを様子を窺いながら、決して慌てることなく淡々とペースを保っていた。
残り200mから徐々にペースを上げてロペスの前を見ながらも、その様子を窺うことは忘れない。そして、ラスト100kmでフルスロットル全開に。彼が狙っていたのは、残り50mのカーブをインで入ることだった。
イン側にいたのはロペスだった。しかしその進路を塞ぐように先行してスプリントし、見事彼の前でコーナーのインを取ることに成功したマス。
あとは、その勢いを最後まで保つだけだった。
最後まで失わない冷静さと巧みな戦術、そして最後に振り絞られた実力によって、4月のバスク1周に続くプロ2勝目を飾ったマス。そして、ブエルタ総合2位。
この成長の速さと大器は目を瞠るものがある。来年、ジロかブエルタを制してしまっても不思議ではない男だ。
19.レムコ・イヴェネプール(UCI世界選手権 ジュニア男子ロードレース)
新たな伝説が生まれた。男子ジュニア個人タイムトライアルに続き、ロードも制覇。しかも、序盤の落車に巻き込まれ2分以上の遅れを喫した状態からの大逆転、最後は独走で他を圧倒しての余裕のゴールであった。
そのときに見せたのが上記の「フィリップ・ジルベール・スタイル」。すなわち、2016年ロンド・ファン・フラーンデレンでジルベールが見せたガッツポーズである。
「プチ・カンニバル」とも呼ばれ、カンニバル(人喰い)と呼ばれた伝説のライダー、エディ・メルクスの再来とも噂される天才児。来年はU23カテゴリをすっ飛ばしていきなりのドゥクーニンク・クイックステップ入り。
エガンアルリー・ベルナルやイヴァンラミーロ・ソーサなど、若手の注目株に期待が集まる中、否応にも来年の彼の走りにも注目が集まることだろう。
彼の移籍先が、今年もネオプロに多くの活躍の機会を与えているクイックステップであることも、楽しみな要因の1つである。
20.アレハンドロ・バルベルデ(UCI世界選手権 エリート男子ロードレース)
この男は今年も多くの印象的な勝利があり、正直どれを選ぶか迷ってもいた。
しかしやはりこのときのガッツポーズを選ばざるをえなかった。それは、勝利自体が38歳による王者獲得という印象深さを持っているからだけではなく、フレッシュ・ワロンヌやブエルタ・ア・エスパーニャで見せるような「余裕の表情」での勝利ではなく、自分に起きている状況を簡単には信じることのできない、という表情だったからだ。
勝利のあとに流した涙も、彼の感情の高ぶりを想像させる。
勝利に至る過程も決して楽なものではなかった。ジュリアン・アラフィリップやジャンニ・モズコンなど、若手の強力なライバルがプロトンには控えていた。しかし最後にモノを言ったのは経験と勝負強さだった。最後は自ら牽引することを厭わず、ラストのストレートも自ら前を牽きながらのスプリントで他を圧倒した。
同世代の有名選手たちがそうであるように、彼の経歴もまた平坦なものではなかった。それがゆえにこの勝利にも様々な意見が飛び交う中ではあるが、しかしラスト8kmで見せた彼の走りには、文句のつけようのない美しさがあったと私は思う。
以上、悩みぬいた末に厳選した20枚の写真の中から、
皆さんが最も良いと思えるガッツポーズを3枚、選んで投票してみてください!
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