自転車ロードレースシミュレーションゲーム「ProCyclingManager2019」で、今年「20勝」を目指しながら6勝しか果たせなかったCCCチームのリベンジを狙って行く企画の第14弾。
前回の「春のクラシック開幕戦」オンループ・ヘットニュースブラッドでは、最終盤までチームの人数を残す理想的な展開を作れたものの、最後の最後でいくつかのミスを繰り返し、パワーを残したままスプリントできずに沈むという大失態を犯してしまった。
人は失敗を繰り返して強くなるもの。
緒戦というのはこういう失敗があって然るべき。このあと続いていく「春のクラシック」たちを重ねつつ、少しずつ勝利に近づいていけるようにしていこう。
今回は、ワールドツアー・クラシックの2戦目「ストラーデ・ビアンケ」をお届けする。
オンループやロンド・ファン・フラーンデレンと違って、トスカーナ地方の丘陵地帯を舞台とするこのレースはどちらかというパンチャー/クライマーに向いたアルデンヌ風クラシックと呼ぶべきレース。
ここで早くもオンループのリベンジを果たすことができるか、それとも。
「リトル・パリ~ルーベ」とも呼ばれる「ル・サミン」についてもおまけで触れていく。
※このゲームでは、Youtubeでも数多くの動画を配信しているBenjiNaesen氏の手掛けたMOD「WorldDB 2019」を使用しております。記事中には実際のレースと変わらないチーム名・選手名・レース名・バイクサプライヤー名・スポンサーなどが登場しますが、いずれもMODによるものが多く、実際の何もいれていない状態でのゲームとは異なる場合があることをご了承ください。
↓ここまでのシリーズ紹介↓
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ル・サミン
ストラーデ・ビアンケについて語る前に、オンループ・ヘットニュースブラッドとストラーデ・ビアンケに挟まれた週の真ん中で開催されるベルギーの1クラスレース「ル・サミン」についても触れていく。
ベルギー南西部、フランス国境沿いの、パリ~ルーベの舞台にもほど近いエノー州のほぼ全域を使用して行われる小さなレース。
オンループやロンド・ファン・フラーンデレンと違って強烈な「急坂」は登場しない平坦レースながら、難易度の高い石畳が繰り返し登場するまさに「北の地獄」の縮小版。
例年、悪天候が多い時期であることも相まって、クラシックスペシャリストたちによるサバイバルなレースが繰り広げられている。
前回のオンループのときとほぼ同じメンバー。ただし1クラスということもあり、オンループのエース、グレッグ・ファンアーフェルマートは欠場。
代わりに石畳にも強いスプリンター、ヨナス・コッホを加えている。パリ~ニースを目標レースとしてトレーニングを重ねてきている彼は、このタイミングでFitnessがピークに達しており絶好調となっている。
また、実はこのレース、2017年、当時プロコンチネンタルチームのワンティ・グループゴベールに所属していたギヨーム・ファンケイルスブルクが優勝しているレースでもある。
今回も優勝候補の1人として数えられている彼をエースに据えながら、レースを開始する。
現実のル・サミンでは、ゴール地点のドゥールの街で1周25kmの周回コースを4周する。
この中には4つの石畳区間が設けられ、合計で16の石畳を攻略する必要があるのがこのル・サミンの最大の特徴である。
ただし、ゲームでは1周につき「1個」の石畳区間となっている。また、このレースを特徴づける悪天候とも無縁な晴天となり、決して高くない難易度でゲームの中のル・サミンは進行していった。
最後の石畳区間を越えたあとでも、先頭集団には40名ほど残っていた。
この展開であれば、ファンケイルスブルクによる勝利よりも、純粋なスプリントでの勝利の方を狙うべきだろう。
残り4.4㎞。パウェル・ベルナスを先頭に、ミハエル・シャー、ネイサン・ファンフーイドンク、ファンケイルスブルク、シャイス・ファンフック、そしてコッホというトレインで集団の先頭を突き進んでいく。
ここまで、数多くのレースをこなしてきた。
その中で、段々と「スプリントの勝ち方」が分かってきた気がする。
とにかく、集団の先頭で最後のスプリントのタイミングを迎えたい。
その意味で、エーススプリンターと発射台以外のメンバーによるこの「先頭支配」は非常に重要になる。
そして、「発射台」の先頭は残り1.5㎞あたりからがちょうどよい。
今回の発射台はファンフック。残り1.2㎞まで粘るも、そこで左手からチーム・ユンボ・ヴィズマ所属で今回の優勝予想筆頭だったティモ・ローセンが上がってくるのを確認し、このタイミングでファンフックに「スプリント」を指示した。
コッホはそのファンフックに「フォロー」の体制で食らいつく。コッホの後ろには、ライバルが番手を取らないようにするためのベルナスを配置している。
残り600mでローセンが先頭に。また右手からは、ワロニー・ブリュッセルのバプティスト・プランカールトが上がってくる。
どちらも勢いは素晴らしい。
しかし、およそ残り1㎞から単独でスプリントをせざるを得ない彼らは、最後まで足が残るとは思えない。
一方のコッホは、ここからファンフックの番手を抜け出し、スプリントを開始する。
ラスト300mが、平均5%程度の登り勾配であったことも、早めのスプリントを開始したローセン、プランカールトに災いし、遅めのスプリントとなったコッホに味方した。
優勝候補たちをなぎ倒し、25歳のドイツ人がチームに7勝目をもたらした。
現実世界のCCCチームの勝利数を超えた瞬間であり、また、パトリック・ベヴィン以外が手に入れた最初の勝利であった。
CCCスプランディ・ポルコウィチェからの「昇格」組のコッホは、現実世界ではハーレ・インホーイヘム7位やツール・ド・ユーロメトロポール7位、あるいはブエルタ・ア・エスパーニャで3度のTOP10入りを果たすなどの活躍を見せている。
同じブエルタで区間3位にも入り込んだポーランド人のシモン・サイノックの方が2019年のリザルトとしては目立っていたが、ゲームでも表現されているようにコッホの方がより登りや悪路を含んだコースでは強みを発揮しやすい。
2020年シーズンも、このサイノックと共に、「叩き上げ組」として活躍してほしい選手である。
ストラーデ・ビアンケ
それではいよいよストラーデ・ビアンケ本戦について確認していく。
ストラーデ・ビアンケはイタリア語で「白い道」を意味する。
その名の通り、白く輝く未舗装路が特徴的なイタリアの「北のクラシック」である。
とはいえ、未舗装路と同じくらい、トスカーナの丘陵地帯を由来とする強烈なアップダウンもこのレースをユニークなものとしている。
その結果、過去の優勝者や上位入賞者もアラフィリップ、クウィアトコウスキー、バルデ、バルベルデ、トム・デュムランなど、北のクラシックスペシャリストというよりはアルデンヌ向きのパンチャーやクライマーたちが名を連ねている。
実際、ゲーム中の優勝予想でも、上位はクライマー系ワンデーレース巧者の名前が並んだ。
現実世界でのリエージュ~バストーニュ~リエージュ2位ダヴィデ・フォルモロやイル・ロンバルディア2位マイケル・ウッズ、あるいはグランツールライダーのミゲルアンヘル・ロペスなど。
その中で、CCCチームからはやはりアルデンヌ向きのアレッサンドロ・デマルキと、石畳も丘陵もいけるオールマイティクラシックスペシャリストのグレッグ・ファンアーフェルマートの名前が掲載された。
今回のCCCチームのメンバーは以下の通り。
全体的には北のクラシック班を連れてきている(現実世界でのロースターもそういった傾向だった)が、もうちょっとアルデンヌ系の選手も用意しておくべきだったかもしれない。
コース全体は174㎞と、まだまだシーズン冒頭らしく決して距離は長くはない。
しかしところどころに設けられたアップダウンは激しく、総獲得標高もこの距離で2,100mと、グランツールの中級山岳並みの難易度を誇るレイアウト。
その特徴的な「白い道」を突き進みながら、この日形成された逃げは4名。
現実世界では世界選手権個人TT銅メダリストとなった今最も勢いのあるイタリア人の1人、フィリッポ・ガンナ(チーム・イネオス)に、2018年ツアー・ダウンアンダー山岳賞獲得者のニクラス・ドラミニ(ディメンションデータ)、さらには2020年はイスラエル・サイクリングアカデミーに移籍が決まっているアンドレ・グライペル(アルケア・サムシック)など(のちにコフィディスのマティアス・ルトゥルニエが加わり5名に)。
人数は少ないがいずれも強力な選手たちばかりであり、終盤になっていよいよ勝負どころが近づいてきてもなお、なかなかタイム差は縮まっていかない。
残り20㎞を切ってなおも2分差以上残っているのは、かなりの危機的状況。しかもこの2分というタイム差は、残り40㎞くらいからずっと維持されており、20㎞を切ってからもほぼ変わらずに推移しているのである。
だから残り16㎞から、CCCチームは自ら動き出すことに決めた。
平坦系アシストたちをすべて使い切ってしまう勢いで前を牽かせ、集団を千切りにかかる。
やがてアレクセイ・ルツェンコやダヴィデ・フォルモロなどの優勝候補たちも積極的に前を牽き始め、集団はぶちぶちと千切れていく。
優勝候補の一人だった2016年アムステルゴールドレース覇者エンリーコ・ガスパロットも、ここで脱落。
残り11㎞にしてようやく、単独先頭のガンナとのタイム差も45秒にまで縮めた。
メイン集団の人数は23名に。CCCチームはそこに、デマルキ、ファンアーフェルマート、そして牽引力の高いミカエル・シャーの3名を入り込ませている。
逃げ集団は残り4.5㎞で吸収。
そしていよいよ、最終決戦の地、シエナ・カンポ広場へ。
通例、独走かごく少数で突入することが多いこのカンポ広場。
今回は20名以上という大所帯で挑むこととなった。
だが、10%を超える石畳の激坂を前にして、シャー、そしてデマルキと、CCCチームのアシストたちも次々と千切れていく。
最後はマッテオ・トレンティン、ファンアーフェルマート、ウッズ、フォルモロ、ロペス、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォの6名での一騎打ちに。
残り100mで先頭に立っていたのはトレンティン。しかし勢いはファンアーフェルマートがこれを上回る。
このままであれば、ついにファンアーフェルマートの初優勝か――。
!?
最後の最後で加速を見せたマイケル・ウッズが、残り50mでトレンティンとファンアーフェルマートの2人を追い抜いて、先頭でゴールラインを突き抜けた。
最後の瞬間の速度ではトレンティンが54km/h、ファンアーフェルマートが56km/hに対し、ウッズは63km/hを出していた。
最後の瞬間は下り基調とはいえ、フォルモロもこのとき61km/hを出していたので、直前の急勾配の登りで足を貯められていたピュアクライマータイプが最後に力を出し切れた形か。
あと50m短ければファンアーフェルマートが勝っていた。実に悔しい敗北であった。
(最後がこんなにも集団で突入することになるとは思っていなかったため、終盤はファンアーフェルマートにデマルキを牽かせていたのも敗因かもしれない)
ただ、結果としての2位は、上出来だったと思う。
オンループでは大失敗をしてしまったが、ワールドツアー・春のクラシック第2戦でのこの成績は、プレイヤーとしても順調に仕上がってきていることの証左だと信じておきたい。
次回からは、本格的なヨーロッパでのステージレースシーズン突入となる「ティレーノ~アドリアティコ」をお送りする予定。
ファンアーフェルマート、パトリック・ベヴィン、そしてデマルキと、チームのエース陣を総投入する総力戦。
ここでいよいよ「総合優勝」を手にすることができるか。
目標の「20勝」まであと・・・13勝
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