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獲得UCIポイントで見る 2021北のクラシック最強選手ランキング10位~1位

 

少し間が空いたが、前回の「20位~11位」に引き続き、今年の北のクラシックで獲得したUCIポイントによる最強選手ランキングの10位~1位をお届けする。

今年、北のクラシックで最も活躍した選手はこの人!

 

注意事項などは前回の記事も参照にしてほしい。

 

20位~11位はこちらから

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対象6レース

  1. オンループ・ヘットニュースブラッド(2/27)
  2. オキシクリーン・クラシック・ブルッヘ~デパンヌ(3/24)
  3. E3サクソバンク・クラシック(3/26)
  4. ヘント~ウェヴェルヘム(3/28)
  5. ドワースドール・フラーンデレン(3/31)
  6. ロンド・ファン・フラーンデレン(4/4)

 

過去のランキングはこちらから。

獲得UCIポイントで見る 2019北のクラシック最強選手ランキング20位~11位 - りんぐすらいど

獲得UCIポイントで見る 2019北のクラシック最強選手ランキング10位~1位 - りんぐすらいど

獲得UCIポイントで見る 2020北のクラシック最強選手ランキング20位~11位 - りんぐすらいど

獲得UCIポイントで見る 2020北のクラシック最強選手ランキング10位~1位 - りんぐすらいど

 

それではいってみよう。

 

 

年齢表記はすべて2021/12/31時点のものとします。

 

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10位 アントニー・テュルジ(フランス、27歳)

昨年12位、チーム・トタル・ディレクトエネルジー所属

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2019年のドワースドール・フラーンデレンでマチュー・ファンデルプールに競り負けて非常に悔しそうにしている姿が印象深かったこの男も、昨年のロンド・ファン・フラーンデレンあたりから一皮剥けて、今や立派な世界トップクラスのクラシックライダーに。上記表を見てみても、そのバランスの良さ、安定感の高さは目を瞠るものがあることがよくわかるだろう。

あとは勝利すること、ただ一つ。プロ勝利数は6回でHCクラス(現Proシリーズ)以上はツール・ド・ルクセンブルクの区間勝利1回だけ。最後の勝利から2年も遠ざかっており、実力に比して勝ち星に恵まれる数は極端に少ない。

今年のこのあとのシーズン、もしくは来年の爆発を期待したい選手だ。

 

 

9位 マッテオ・トレンティン(イタリア、32歳)

昨年2位、UAEチーム・エミレーツ所属

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昨年はCCCチーム移籍でファンアーヴェルマートとのコンビネーションが期待されたが、そのファンアーヴェルマートが怪我で北のクラシックを欠場している間にまさかのチーム解散。今度はアレクサンダー・クリストフのいるUAEチーム・エミレーツに。

結果として、こちらも比較的バランス良く北のクラシックで活躍し、クリストフが不調(不運)だった分をなんとか穴埋めしてはいるといったところ。アルデンヌの方でも前哨戦ブラバンツペイルで3位など活躍しており、このあとのシーズンも幅広く存在感を示してくれそうだ。

なお、今年の世界選手権の舞台はこのブラバンツペイルの舞台を中心としている。

2年前は本当に惜しいところで逃してしまったアルカンシェルを、今度こそ。

 

 

8位 セップ・ファンマルク(ベルギー、33歳)

昨年27位、イスラエル・スタートアップネーション所属

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なんだかあまり目立たなかった印象があるのに、気がついたらかなり好成績を残していた北のクラシックスペシャリスト、ファンマルク。

パリ〜ルーベもロンド・ファン・フラーンデレンも、勝ったことはないがTOP5に入ったことは7回ある、無冠の帝王。

今年もまた、その実力を遺憾なく発揮し・・・そして、勝てなかった。

2019年には当時のチームメート、アルベルト・ベッティオルへの素晴らしいアシストをこなし、その優勝を支えたファンマルク。

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今年から移籍したものの、今度はともに戦う仲間には恵まれていないともいえ、チームの中でのクラシック班の強化が喫緊の課題となりそうだ。

 

 

7位 フロリアン・セネシャル(フランス、28歳)

昨年5位、ドゥクーニンク・クイックステップ所属

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最強クラシックチーム、ドゥクーニンクの、隠れた要となる存在。今年もオンループでは優勝したダヴィド・バッレリーニの最終発射台を務め、E3ではゼネク・スティバルと共に波状攻撃を仕掛け優勝者カスパー・アスグリーンが抜け出すきっかけを作った。もちろんそのあとは、巧みなローテーション妨害。

セネシャル自身がビッグレースの表彰台の頂点に立つことはまだないが、その勝利の大きな部分を貢献していることはリザルトを見ても間違いない。

来年こそは彼の勝利が見たい。

 

 

6位 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、32歳)

昨年ランク外、チーム・キュベカ・アソス所属

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昨年から好調が続くヨーロッパ王者。今回のポイント源はいずれもスプリンター向けのレースだが、元々荒れた展開には強いタイプなので不思議ではない。

今回は相手があまりにも悪かったが、いつかヘント〜ウェヴェルヘムは勝っても全然おかしくないだけに、来年もこの好調を続け、ぜひ実現してほしい。

そして目前に迫ったジロ・デ・イタリアでも・・・カレブ・ユアンに次ぐ実力者として出場できるはずなので、期待したい。

 

 

5位 グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、36歳)

昨年46位、AG2Rシトロエン・チーム所属

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昨年はマッテオ・トレンティンとのコンビネーションに期待していたが、肝心の「秋のクラシックシーズン」に怪我でレース出場できず。

今年は今度はオリバー・ナーセンとのコンビを組んで挑み、リザルトは悪くない。だが、それはもういつもの通りといったところで、勝てると信じられるところまでにはなかなかいかない。

ファンアーヴェルマートに必要なのはタッグというよりは、彼を最後の最後まで運んでくれる忠実なアシストなのかもしれない。彼が2017年のパリ〜ルーベを勝ったときにそれを支えてくれたダニエル・オスのような。

このままファンアーヴェルマートは同じような成績を続けながらそのキャリアを終えてしまうのか?

最後にもう一花、期待したいところである。

 

 

4位 ディラン・ファンバーレ(オランダ、29歳)

昨年22位、イネオス・グレナディアーズ所属

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キャノンデール(現EFエデュケーション・NIPPO)時代の2017年にロンド・ファン・フラーンデレン4位。2019年のロンド・ファン・フラーンデレンでも、リザルトで見れば18位だが、終盤では強力なアタックでしばらく独走を続けていた場面も。

実力は間違いなく、すぐにでも勝利を掴んでもおかしくはなかったこの男、しかし、ようやく、ようやく手に入れた。クラシックでの初勝利。しかもそれを、このワールドツアーレースで掴み取ることができたのだ。

 

そしてそれだけでなく、表にある通り、今年出場した4つの北のクラシックレースでいずれもTOP10リザルトを記録している半端ない安定感の高さ。

来年はトム・ピドコックがさらなる進化をすることで、このファンバーレと合わせ、イネオスのクラシック班が再び栄光を掴み取ることも夢ではなくなりそうだ。

 

 

3位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、26歳)

昨年3位、アルペシン・フェニックス所属

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昨年に続き3位。ただ、ロンドでもE3でもカスパー・アスグリーンに敗れてしまったことで、今年は勝ち星なしでの3位となってしまった。

ストラーデビアンケ、ティレーノ〜アドリアティコでも活躍をしており、その幅は北のクラシックに留まらないことを含めて考えれば、この成績は十分と言えるだろう。

特に今年はこのあと、ツール・ド・フランスも存在する。

規格外の男がこのツールで何を見せてくれるのか、非常に楽しみだ。

 

 

2位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、27歳)

昨年4位、チーム・ユンボ・ヴィスマ所属

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ロンド、E3では終盤で力なく崩れていく場面が見られたファンアールト。2019年のパリ〜ルーベもそうだが、意外とチーム、アシストがクラシック班においては弱いところの多いユンボ・ヴィスマ。せめて、マイク・テウニッセンが怪我で離脱していなければ・・・。

だが、ヘント〜ウェヴェルヘムではそのアシストが最高に機能した。CCCチーム(旧BMCレーシングチーム)から今年移籍してきたネイサン・ファンフーイドンク。彼が最後の最後まで(クルイスベルグでは遅れる姿も見せながらしっかりと復帰して)残り続けたことで、ファンアールトはクラシックのビッグタイトルを初制覇することができた。

ロンドでも途中牽引で活躍し続けていたファンフーイドンク。しかしやはり最後まで傍にいることができず結局はファンアールトが一人になってしまったものの、このファンフーイドンクが中心となって、テウニッセンが復帰して、よりユンボのクラシック班が強化されさえすれば、ファンアールトはさらなる高みにへと到達できるはずだ。

頼むぞユンボ・ヴィスマ。

 

 

そして、今年の「北のクラシック最強選手」はもちろん・・・

 

 

 

1位 カスパー・アスグリーン(デンマーク、26歳)

昨年18位、ドゥクーニンク・クイックステップ所属

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2018年のニキ・テルプストラに続く、「前哨戦」E3とロンド・ファン・フラーンデレンのW優勝。

事前の予想では多少意外ではありながらも、結果から見ればなんの文句のつけようもない納得の結果である。

 

カスパー・アスグリーンはエガン・ベルナル、パヴェル・シヴァコフ、ファビオ・ヤコブセン、アルバロホセ・ホッジらと並ぶ「2017年ラヴニール組」である。

しかし彼は2018年にいきなりドゥクーニンク・クイックステップにいったわけではなく、最初は地元デンマークのコンチネンタルチーム、「ヴィルトゥ・サイクリング」でそのまま新シーズンを迎えていた。

そんな中、同年の3月にクイックステップに移籍。初年度こそそこまでの活躍は見せられず、ヤコブセン&ホッジらの恐ろしい勢いでの躍進の陰に隠れていたものの、翌年2019年にはロンド・ファン・フラーンデレンで最前線で展開し続け、最終的にも集団から抜け出しての2位。

そのことを思えば、今回の優勝は何もおかしくはないことだっただろう。

 

だが、勝ち方はいずれも、非常にデンマーク人らしい「執念」によるものだった。

まずはE3サクソバンク・クラシック。

残り67㎞地点で、メイン集団から抜け出した小集団精鋭集団の中にいたドゥクーニンク・クイックステップのフロリアン・セネシャル、ゼネク・スティバルが次々とアタック。これらが捕まえられたあと、第3の矢として飛び出したのがアスグリーンだった。

そのまま彼は、単独でひたすら逃げ続ける。残り13㎞地点で捕まえられたものの、そのとき集団はすでにセネシャル、スティバル、マチュー・ファンデルプール、グレッグ・ファンアーヴェルマート、オリバー・ナーセン、ディラン・ファンバーレといった本当の精鋭しか残っていない状況となっていた。

 

すでに50㎞以上逃げ続けていたアスグリーン。しかしこのあと、残り5㎞で彼は再びアタックした。それは、すでに足を使い切っていたはずの彼にとって、勝利を狙うというよりは集団に残るセネシャル、スティバルのための動きであったはずだ。だが、思いのほかその足は力強く動き、そしてセネシャルたちもまた、しっかりと集団の中でのコントロールをこなしてみせた。

結果、アスグリーンは2度目のアタックにて逃げ切り。鮮烈な勝利を飾った。

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さらに、ロンド・ファン・フラーンデレンにおいては、残り100㎞からアスグリーンはむしろ自ら積極的に動き続けた。常に自分からレースを動かし、また残り55㎞地点でマチュー・ファンデルプールがアタックしたときにはそこにチェックをかけた。

残り45㎞地点のコッペンベルフに向かう平坦路においてはセネシャルとアラフィリップがともに抜け出す場面もあったが、そのときはで遅れたファンデルプールをやはりマークするような役回りを任じており、全体を通してアスグリーンはあくまでもアシスト、エースはアラフィリップ、という風に見えていた。

 

だが、残り27㎞地点の「クルイスベルグ後の平坦路」。過去、幾度となく決定的な動きが巻き起こってきたこの場所で、アラフィリップが脱落する。

そしてアスグリーンはファンデルプール、ワウト・ファンアールトという昨年のワンツーを相手取って1人で戦わなくはならないという状況に陥った。

 

しかしここからが彼の強さの本領発揮であった。最後のパテルベルクでは、ワウト・ファンアールトを突き放し、そしてファンデルプールに先行して先頭を駆け抜けるという、誰もが驚く強さを発揮して見せてくれた。

 

そして何よりも、最後のあのスプリント――この日、誰よりも積極的に動き続けたこの男が、最後の最後で最も体力を残していた。

2019年の世界選手権におけるマッズ・ピーダスンのように、圧倒的なタフネスさというデンマーク人の得意分野を生かした、見事な2つの勝利であった。

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そしてこの勝利は、彼にとって、さらなる可能性への入口となるかもしれない。

彼がロンドで2位を獲った2019年は、ツアー・オブ・カリフォルニアでも総合3位に入り込むなど、TTと登坂での力も見せつけていた年であった。

元々独走力は高く、スプリントでのラスト1㎞からの猛牽引役としても優秀なこの男。

今週半ばから始まるヴォルタ・アン・アルガルヴェでも、少し注目すべき存在のようにも感じている。

 

 

これから、果たしてこの男はどんな進化を遂げるのか。

単なるクラシックスペシャリストでは収まり切らない才能を抱えているのは確かなので、非常に楽しみである。

 

 

 

チームランキング

最後に、チームランキングを作成してみたので参考にしてほしい。

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ドゥクーニンク・クイックステップが今年もダントツなのは何も不思議ではない。アルペシン・フェニックスがUCIプロチームにも関わらずこの位置なのもまあ、なっとくだろう。

なんだかんだでナーセンとファンアーヴェルマートは頑張っており、AG2Rシトロエン・チームがユンボ・ヴィスマを抜いて3位に。ユンボ・ヴィスマはテウニッセンがいなかったのは痛いが、結局のところはファンアールトワンマンチームとなってしまっているので、オラフ・クーイやエドアルド・アッフィーニを育てたり新たな強力な選手を手に入れたりと強化を図らないと厳しい。

 

そして苦しいのが、ワールドツアー最下位常連であったアスタナをさらに下回ってのEFエデュケーション・NIPPO。2019年ロンドを制したこのチームの、まさかの惨状。セップ・ファンマルクが抜けたのはやはり痛く、チームとして全体的にスケールダウンしてしまった今年はどうしようもなかったのかもしれないが・・・。セバスティアン・ランゲフェルトはエースになるのはやはり厳しいのか。

 

この表もまた、何かの参考になれば幸い。

  

20位~11位はこちらから

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