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獲得UCIポイントで見る 2020北のクラシック最強選手ランキング10位~1位

 

前回に引き続き、 「北のクラシック最強選手ランキング」をお送りする。

今回は10位から1位までの、上位10名。昨年に引き続き、今年も「意外」な選手が1位、そして2位についている。

 

今年はレース数自体が減ったこともあり、対象レースも4つと少ない。

結果、ビッグレースを1つ勝っただけで上位に来てしまうなど、不適切な部分も多分にある。

それでも上位ともなればやはりどのレースもまんべんなく強い選手が揃ってきており、今この「北のクラシック」で本当に強い選手は誰なのか?という問いに対する答えにはなんとかなったかなと思う。

上位に入りながらもそこまで派手に活躍したように思えなかった選手たちは、来年に大きな勝利を期待できる存在でもある。ぜひ注目しておこう。

 

また、最後に「チームランキング」も載せている。

今年も最も「北のクラシック」に強かったチームはどこか、そして「最も北のクラシックで結果を出せなかったワールドツアーチーム」はどこなのか、にも注目していこう。 

 

対象4レース

  1. オンループ・ヘットニュースブラッド(2/29)
  2. ヘント~ウェヴェルヘム(10/11)
  3. ロンド・ファン・フラーンデレン(10/18)
  4. ドリダーフス・ブルッヘ~デパンヌ(10/21)

※19あるワールドツアーチーム全てが出場している「北のクラシック(石畳クラシック)」レースを抜粋した。

 

 

【20位~11位はこちらから】

www.ringsride.work

 

【昨年のランキングはこちらから】

www.ringsride.work

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10位 シュテファン・キュング(グルパマFDJ)

スイス、27歳

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今年ヨーロッパ選手権個人タイムトライアル優勝、世界選手権個人タイムトライアルでも3位と非常に躍進した現役最強のスイスTTスペシャリスト。

そしてかつてその座にいたカンチェラーラをリスペクトするがごとく、北のクラシックでもその成績を伸ばしつつある。オンループとヘントでは初のシングルリザルト(ドリダーフスではかつてTTステージが含まれたステージレースであったときには何度か上位に入っている)。

実はYouTube実況企画でもロンド・ファン・フラーンデレンで4位を取るなど「バーチャル」でも活躍していた今年のキュング。

youtu.be

 

来年はこれを現実にできるか。

 

 

9位 アレクサンダー・クリストフ(UAEチーム・エミレーツ)

ノルウェー、33歳、昨年1位

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昨年の「最強の北のクラシックライダー」は今年は順位ダウン。

とはいえ上位ではあり、やはり安定した実力を持っている。

というか、ロンドの集団先頭は昨年に続き・・・彼は実際昔から「逃げ切られたときの集団先頭」のパターンが非常に多かったりもする。

 

気になって調べてみたら、なんと2013年、2014年、2016年、2017年、2019年、そして今年で6回目。

ロンド・ファン・フラーンデレン9回出場中の実に6回で、「逃げ切られた後の大集団スプリントの先頭」を取っている。

ちゃんとは調べられていないが、ジャスパー・ストゥイヴェンの勝った2016年のクールネ〜ブリュッセル〜クールネなど、ロンド以外でも結構多い印象だ。

 

それだけ安定して強いということだが、なんとも・・・。

来年ももしかして?

 

 

8位 ティム・デクレルク(ドゥクーニンク・クイックステップ)

ベルギー、31歳

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言わずと知れたクイックステップの屋台骨。

「トラクター」の異名で知られる、平坦の大牽引役である。

 

そんな彼が、今年は、勝てはしなかったものの北のクラシックでは上位に入り込み、実力の高さを窺わせた。

もちろんそれは、彼の最大の目標たるアシストをこなしたうえで、である。

 

たとえばオンループ・ヘットニュースブラッド。残り70㎞地点のレケルベルグで形成された7名の先頭集団にイヴ・ランパールトと共に入り込んだデクレルクは、その後献身的な牽引を続け、精鋭集う追走集団に2分以上縮めさせることがなかった。

最終的にはカペルミュールで発射させたイヴ・ランパールトにジャスパー・ストゥイヴェンがしっかりと食らいつき、最後はスプリントで敗れてしまったものの、このときのことを反省したシーズン最終戦ドリダーフス・ブルッヘ〜デパンヌでは、今度は終盤で形成された7名の先頭集団にこのデクレルクとランパールトを含んだ4名の選手を入り込ませたクイックステップ。

数の利を活かし今度こそ単独で抜け出すことに成功したランパールト。そして残った集団では、デクレルクらがきっちりとローテーション妨害を仕掛け、逃げ切りを成功させた。

そのまま疲弊したライバルたちを尻目に、集団先頭をデクレルクが奪い、クイックステップのワンツー。

結果として北のクラシックランキングでこの位置にいるデクレルクだが、それは彼の完璧なアシストの末に手に入れたものであった。

 

ただ、今年は同じく忠実なアシストを務めるドリス・デヴェナインスが、やはり同じようにアシストの動きの中で見事にカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースでの勝利を掴み取っている。

デクレルクもまた、実力があるのは間違いないので、その献身が報われて彼自身のクラシック勝利が得られる瞬間を、期待していきたい。

 

 

7位 ジョン・デゲンコルプ(ロット・スーダル)

ドイツ、31歳、昨年10位

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フィリップ・ジルベールと共にこのロット・スーダルへと今年やってきた元ミラノ〜サンレモ&パリ〜ルーベ覇者。

ジルベールが今年奮わなかった代わりに、ツール・ド・ルクセンブルクでは1年半ぶりの勝利。

そしてクラシックでも、勝てはしなかったものの、非常に優秀な成績を収めた。

 

来年、ジルベールが本来の調子を取り戻したとき、この二人のタッグが最高の結果を生み出してくれることを期待したい。

そしてそれは、このチームにいる若き才能たちにとっても、大きな刺激となることだろう。

さっきも言及しているYouTubeの動画の方では、実際にこの二人が完璧なコンビネーションで活躍する姿を見せてくれてもいるので、ぜひ。

 

 

6位 マッズ・ピーダスン(トレック・セガフレード)

デンマーク、25歳

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正直、昨年の世界選手権ロードレースで勝利した瞬間「誰?!」と思った人も多いだろう。

だが、今年はそこから一気に急成長を遂げたかのように、まず年初のツアー・ダウンアンダーで完璧なアシスト力を発揮。

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そしてシーズン再開後は、ツール・ド・ポローニュでパスカル・アッカーマンを破り、ツール・ド・フランスでは第1ステージと最終日シャンゼリゼで共に2位という文句なしの実績を叩き出し、その旨に輝くアルカンシェルに相応しい男であることを証明した。

 

そして、実に北のクラシックらしいサバイバルな展開となったヘント〜ウェヴェルヘムでは、牽制し合うマチュー・ファンデルポールとワウト・ファンアールトを置いて先行するマッテオ・トレンティンに対してブリッジを架けることに成功したピーダスン。

その後は、それこそ昨年の世界選手権の再現であった。そしてあの時と違って、それは決して「ありえない結末」ではなかった。

むしろ必然のようにして、ピーダスンを振り払えなかったトレンティンの敗北が予見されていた。

 

かくして伝統あるクラシックレースでの勝利を掴んだピーダスン。

そもそも彼は、2年前のロンド・ファン・フラーンデレンで、独走勝利したニキ・テルプストラに最後まで食らいついていた唯一の男でもあった。

 

そう考えれば、決して去年、いきなり出てきた男ではないのだ。

その秘めたるクラシックへの才能は本物。これからもどんどん飛躍していくだろう。

【参考リンク:昨年の世界選手権での勝ち方】

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5位 フロリアン・セネシャル(ドゥクーニンク・クイックステップ)

フランス、27歳

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今年のUCIワールドランキング個人でも16位は入っており、そこでも言及している。

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決して大きな勝利はないながらも、重要な北のクラシックレースでは常に帯同し、信頼は厚い。

今年はこのヘント〜ウェヴェルヘムだけでなく、ブルターニュ・クラシックでも3位。

来年、ビッグレースでの勝利が最も期待されうる存在の1人である。

 

ただ、やはり勝ちきれないのはそれなりに理由があるとも思う。

オンループやロンドにおける難易度の高い急坂を利用した残り数十㎞の決定的な動きに乗れるほどではなく、またトップクラスのクラシカルスプリンターーーアレクサンダー・クリストフや、マッテオ・トレンティン、今年でいえばマッズ・ピーダスンなどーーと真正面からぶつかって勝てるほどでもない。

ル・サミンのような1クラス、プロシリーズなら勝てても、ワールドツアーの最高峰レースに勝つためにはやはりあと一歩、必要なのだろう。

そうでなければ、不意打ち気味のアタックで勝負を決めるか。その勝負勘と勇気が、この男にはあるのか。

 

そう言った部分の進化を、来年の彼には見出していきたい。

 

 

4位 ワウト・ファンアールト(チーム・ユンボ・ヴィズマ)

ベルギー、26歳、昨年12位

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北のクラシックが、というよりはあらゆるレースで強さを見せつけたこの男。

むしろ昨年のルーベでの悔しい敗北に続き、今回もまた、ロンド・ファン・フラーンデレンという大舞台であまりにも悔しい思いを味わうことに。

来年はルーベも復活し、共にリベンジを狙えることを期待したい。

 

なお、このロンドにおける、あのマチューとアラフィリップが抜け出した後に単独で追いついてきたファンアールトの漫画みたいな姿がものすごく印象的だった。

2人の背後から、尋常じゃない勢いで、バイクを斜めに倒しながら現れるファンアールト。

のちにナーセンも随分抜け出すのに苦労したあの集団の中からどうやって一人で出てきたのか、その瞬間の映像がないことが実に悔やまれる。

 

 

3位 マチュー・ファンデルポール(アルペシン・フェニックス)

オランダ、25歳、昨年2位

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昨年4位だったヘント〜ウェヴェルヘムではファンアールトとの牽制もあり9位にランクダウン。

一方でロンド・ファン・フラーンデレンではついに頂点に。

さすがのファンデルポールも、立ったまま涙を流すほどの感激ぶりだった。

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もちろん、彼は北のクラシックのためだけの男ではない。今年は‪グラン・ピエモンテ3位やリエージュ~バストーニュ~リエージュ6位、イル・ロンバルディア10位‬などアルデンヌ系のクラシックでも軒並み好成績を叩き出した。

そして来年はついにグランツール、おそらくツール・ド・フランスにも初挑戦となる見込み。

そこでどんな走りを見せてくれるのか。

無限の可能性をもつ「自転車の天才」の更なる活躍に期待だ。

 

 

2位 マッテオ・トレンティン(CCCチーム)

イタリア、31歳

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さて、目覚ましい活躍をしてみせたファンアールトやファンデルポールを超えて、もしかしたら「意外にも」な位置に立った選手の1人目がこの男。

残念ながら今年は勝利なし。それでも主要レースでは常に上位に入り続けた安定感が光った。

本来、今年はグレッグ・ファンアーヴェルマートとチームメートとなり、互いにこれまで報われなかった環境を支え合う存在となるはずだった。

事実、オンループ・ヘットニュースブラッドでのコメントからは、その可能性を感じさせる手応えを得ていたことがわかる。

 

しかし、肝心の「秋のクラシック」のタイミングでファンアーヴェルマートが怪我による離脱。「黄金コンビ」は幻に終わった。

CCCチームは移籍初年度で解散となり、来年はUAEチーム・エミレーツへ。

アレクサンダー・クリストフという、ファンアーヴェルマート以上に脚質が似通ったクラシックエースとの協業は、果たして吉と出るか凶と出るか。

ファンアーヴェルマートもまた、オリバー・ナーセンとのコンビを組む。来年はこの2つの「黄金コンビ」の存在が、きっと北のクラシックを面白くしてくれるはずだ。

 

 

 

そして、これもまた「意外」な、しかし「納得」の、今年の「北のクラシック最強選手」は―― 

 

 

 

 

 

1位 イヴ・ランパールト(ドゥクーニンク・クイックステップ)

ベルギー、29歳

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元々は、それこそ今のフロリアン・セネシャルのような、強いけれどそこまで目立ちはしない、第一線級のスター選手、という印象はなかった。

2017年、フィリップ・ジルベールがクイックステップ入りした初年度に、ドワースドール・フラーンデレンにてジルベールがその存在感を囮にして「勝たせた」選手として、初めてその存在を認知した、というのが正直なところだった。

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しかしそこから着実に彼は成長し、翌年は今度は自らの力でドワースドール・フラーンデレンを制する。

そして昨年、パリ〜ルーベにて、今度はあのときの恩を返すかのように、ランパールトはジルベールを勝たせた。そして自らも3位に。

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そのとき彼は「自分でも勝てた」と述べたという。

そしてそれは真実ではあっただろう。

ジルベールが離脱した今年、今度こそ彼は、チームのクラシックエースとして、最前線に立つこととなった。

 

その結果は、決して期待されていたものではなかった。

オンループ・ヘットニュースブラッドではスプリントで敗北し、ヘント〜ウェヴェルヘムでは終盤の激しい攻防戦の中でトレンティンやベッティオルのようにチャンスを掴み取ることができなかった。

なんとか最後の最後、ドリダーフス・ブルッヘ〜デパンヌでは、得意のソロアタックでしっかりと勝利を掴むことができた。

オンループのときのトラウマもあり、絶対にスプリントに持ち込ませたくないと考えた彼が決めた勝ち方であり、すでに何度も言及しているように、最終盤で形成された7名の先頭集団のうち4名をドゥクーニンク・クイックステップが占めた結果であった。

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確かに今年もドゥクーニンク・クイックステップは強かった。それはこのあとに示す「チームランキング」を見れば一目瞭然。

そしてイヴ・ランパールトは、その「最強クラシックチーム」のエースたる力を見せつける結果となった。

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だが、もちろんこれで満足はしていない。

彼が目指すべきは、今年幻に終わった「ルーベ」の頂点であり、真の「クイックステップ最強のクラシックライダー」としての称号である。

いつまでも、彼は「ウルフの一員」ではいられない。

 

来年の彼が、一人の「最強の男」になる瞬間を、期待して待っている。

 

 

 

 

UCIワールドツアーチーム(+α)ランキング

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最後に、各チームの獲得UCIポイントをランキングして表に表した。

ワールドツアーチーム最下位のアスタナ・プロチーム以上のUCIプロチームを含めた23チームのランキング。

1位は当然、というか圧倒的にドゥクーニンク・クイックステップ。

UCIプロチームでありながらマチュー・ファンデルポールとティム・メルリエの2人を上位に入り込ませたアルペシン・フェニックスが2位となった。

 

来年はもちろん大きな移籍もあり、このランキングは色々と変化することはあるだろう。

たとえばグレッグ・ファンアーヴェルマートやボブ・ユンゲルスが移籍して、一気にクラシックチーム化するAG2Rラモンディアルの飛躍なんかには注目だ。

(来期は名称が大きく変わりそうな)ミッチェルトン・スコットやアスタナも、そろそろ挽回はできるだろうか。

 

そして何よりも、来年は完全な状態で「北のクラシック」が開催されることを、強く願うばかりである。 

 

【20位~11位はこちらから】

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