昨年の春にお送りした「北のクラシック最強選手ランキング」。
どうしてもレース選択に恣意性が含まれるため、あまりオフィシャルな統計が取りづらいこの観点だが、ただのファンサイトたるりんぐすらいどだからこそできる、という思いで始めてみた。
昨年はアレクサンダー・クリストフという、意外だが納得のいく結果だったこのランキング。今年は多くのレースがキャンセルされイレギュラーなシーズンだったために昨年よりも「適切な」ランキングにはならなかった部分があるかもしれないが、それでも今年の1位も「意外だが、納得のいく」選手だったりもした。
まずは前半戦。20位から11位までの10名。
この時点で十分に「確かに強い」という選手たちばかりであり、来年もまた期待のできる選手たちだろう。
それでは行ってみよう。
対象4レース
- オンループ・ヘットニュースブラッド(2/29)
- ヘント~ウェヴェルヘム(10/11)
- ロンド・ファン・フラーンデレン(10/18)
- ドリダーフス・ブルッヘ~デパンヌ(10/21)
※19あるワールドツアーチーム全てが出場している「北のクラシック(石畳クラシック)」レースを抜粋した。
目次
- 20位 ディラン・トゥーンス(バーレーン・マクラーレン)
- 19位 ディミトリ・クレイス(コフィディス・ソルシオンクレディ)
- 18位 カスパー・アスグリーン(ドゥクーニンク・クイックステップ)
- 17位 ジャンピエール・ドリュケール(ボーラ・ハンスグローエ)
- 16位 セーアン・クラーウアナスン(チーム・サンウェブ)
- 15位 ティム・メルリエ(アルペシン・フェニックス)
- 14位 オリバー・ナーセン(AG2Rラモンディアル)
- 13位 アルベルト・ベッティオル(EFプロサイクリング)
- 12位 アントニー・テュルジ(チーム・トタル・ディレクトエネルジー)
- 11位 ジャスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード)
【昨年のランキングはこちらから】
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20位 ディラン・トゥーンス(バーレーン・マクラーレン)
ベルギー、28歳
2017年にラ・フレーシュ・ワロンヌで3位に入ったときは、新たな「アルデンヌの王」になると確信していた。同年の夏にツール・ド・ワロニー、ツール・ド・ポローニュ、アークティックレース・オブ・ノルウェーと立て続けに総合優勝したときは、その確信はより深まった。
しかし、いつのまにか彼は、丘陵系レースだけでなく北のクラシックでも強くなっていた。昨年はオンループ・ヘットニュースブラッドで5位。ただそれ以外はやはりアルデンヌ・クラシックやイル・ロンバルディアを終点とするイタリア秋のクラシックへの出場ばかりで北のクラシックには出場していなかったのだが、今年に関しては表中の通りである。というか、ロンド・ファン・フラーンデレン11位って普通にすごいぞ。
フィリップ・ジルベールやグレッグ・ファンアーヴェルマートのように、アルデンヌも北のクラシックも強い選手は決して珍しくはない。
いわゆる「クラシックスペシャリスト」として、これからの活躍にも期待だ。
(と、言いつつ昨年はラ・プランシュ・デ・ベルフィーユで勝ったりブエルタ・ア・エスパーニャで総合12位だったり今年はブエルタ・ア・アンダルシアで総合5位だったりと山もがっつり登れて本当によく分からないわけだが・・・)
19位 ディミトリ・クレイス(コフィディス・ソルシオンクレディ)
ベルギー、33歳
ロンド・ファン・フラーンデレンでまさかの6位。その一発でこの順位に。
ただのまぐれではない。2018年にはダンケルク4日間レースで総合優勝。ずっとプロコンチネンタルチーム以下で走り続けてきた男だが、北のクラシックへの適性は高い。
来期はチーム・キュベカ・アソス(旧NTTプロサイクリング)へ。多数の有力選手を放出してしまったこのチームのクラシックエースとして、立て直しの先頭に立てるか。
18位 カスパー・アスグリーン(ドゥクーニンク・クイックステップ)
デンマーク、25歳、昨年13位
ロンド・ファン・フラーンデレンで2位となった昨年は13位。そこからはランクダウンしたとはいえ、今年も各レースで上位に安定して入り込む。スター選手たちが並ぶクイックステップの北のクラシック班のトップライダーの1人である。
それでいて忘れてはいけないのが、デンマークTT王者であり世界選手権でも6位に入り込むTT能力の高さと、昨年のツアー・オブ・カリフォルニアで総合3位に入り込む登坂力も兼ね備えていること。
デンマーク人らしい多彩さをもったこの男はまだまだ若く、来年はさらに違った進化をしていてもまったく不思議ではない。
17位 ジャンピエール・ドリュケール(ボーラ・ハンスグローエ)
ルクセンブルク、34歳
2016年のブエルタ・ア・エスパーニャの集団スプリントで1勝。過去にはライドロンドン・サリークラシックで優勝していたり、BMC時代には秋のベルギースプリントクラシックで上位に入り込んでいたりと、クラシカルなスプリントに強いイメージのあった男だった。
しかしボーラに加入した昨年にオンループ・ヘットニュースブラッドで6位。そして今年はサガンのいない北のクラシックでチーム上位のフィニッシュを繰り返す。
そんな彼は来年コフィディスに。先のディミトリ・クレイスと共に、北のクラシックでの実績の少ないこのチームに勝利をもたらすべく奮闘する。
願わくばまた、ワールドツアーでの勝利を、といったところだが、果たして。
16位 セーアン・クラーウアナスン(チーム・サンウェブ)
デンマーク、28歳
今年の主役の1人。ツール・ド・フランスでは衝撃のステージ2勝。そしてパリ〜ニースでは強烈な山岳登坂力でティシュ・ベノートの区間1勝と総合2位を導いたこの男が、同じ頃にオンループで3位を記録していた。
今年はその結果だけでこの順位だが、「北のクラシック化」初年度のパリ〜ツール2018年でも得意の逃げ切り勝利を見せている。適性は十分にあるし、北のクラシック以外でも来年以降、まだまだ活躍を見せ続けてくれることだろう。
15位 ティム・メルリエ(アルペシン・フェニックス)
ベルギー、28歳
「シクロクロッサーなのにベルギーロード王者になったりして強い」という印象は昨年まで。今年はもうすでにシクロクロッサーという肩書きは関係なく、純粋に「ベルギーで最も強いスプリンターの1人」である。実際、ジャスパー・フィリプセンと並び、ベルジャンスプリンターの双璧を成すといって良いだろう。ファンアールト加えると3傑?
その意味で決して「北のクラシックスペシャリスト」ではない。今回も、一応スプリンターズクラシックのドリダーフスで稼いでいる形に。
・・・いや、今年のドリダーフスは本当にサバイバルなクラシックレースだったし、終盤のあの7名中4名がクイックステップという地獄の先頭集団にしっかりと入り込めていた時点で、やはり北のクラシック適性は高いと言わざるを得ない。
今年はロードに集中してシクロクロス入りを遅らせているなど、彼ももうその活動の軸足はロードに移していると言ってもよさそうだ。
いまやマチュー・ファンデルポールと並ぶアルペシン・フェニックスの「顔」として、さらなる飛躍を期待したい。来年はチームが全ワールドツアーレース出場権も得ているため、ビッグレースでの勝利のチャンスも大きいだけに。
なお来年はその双璧のもう片方、フィリプセンがチームに。チーム内競走も白熱しそうである。
14位 オリバー・ナーセン(AG2Rラモンディアル)
ベルギー、30歳、昨年6位
いやー、今年も強かった。間違いなく強かったんだけどなー。
ビンクバンクツアー最終日でも得意の圧倒的独走勝利を収めようとしていたマチュー・ファンデルポールを、ギリギリまで追い詰める追い上げを見せていた。そこから調子が良いことは分かっていたからロンドでも期待していたし、実際にロンドでは抜け出したマチュー、ワウト、アラフィリップに対して最も積極的に追撃を試みようと常にプッシュし続けていた。
だが、そこで抜け出せないのが彼の「あと一歩」なところである。そしてそのとき彼を助けてくれるチームメートがいないことも。
そして来年はそんな、「あと一歩」同盟のファンアーヴェルマートがチームにやってくる。これは大きなチャンスである。
もちろん、その結果が、2人仲良く後続集団でもたついている、ということがあってはならない。
来年こそナーセンにビッグタイトルを・・・強く強く願い続ける。
13位 アルベルト・ベッティオル(EFプロサイクリング)
イタリア、27歳、昨年5位
言わずもがな昨年のロンド覇者。とはいえ彼は決して生粋の北のクラシックライダーではなく、むしろアルデンヌ系に強いパンチャータイプ。今年もエトワール・ド・ベセージュの激坂TTで勝ったりストラーデビアンケで4位だったりとパンチャーとしての存在感も強かった。
来年はチームのクラシックエースだったセップ・ファンマルクが離脱。代わりに、脚質的にもベッティオルに近いミケル・ヴァルグレンが加入。
これが二人にとってプラスになるかどうか。また違った戦略が繰り広げられそうな来年のクラシックシーンにもぜひ注目だ。
12位 アントニー・テュルジ(チーム・トタル・ディレクトエネルジー)
フランス、26歳、昨年16位
UCIプロチーム随一のクラシックスペシャリスト、テュルジ。今年もしっかりと活躍してくれた。というか昨年よりも順位を上げた。すごい。
とくにロンド・ファン・フラーンデレンでは、超激坂コッペンベルフで先頭に躍り出て、直後のジュリアン・アラフィリップのアタックのきっかけを作った。
その後もうまく精鋭集団の中で立ち回り、最終的には4位。来年あたり突然その頂点を取ったとしても何ら不思議ではない。
というか、いつワールドツアーチームに行ってもおかしくはないとも思っている。トタルとしても手放したくないのか、今のところ2022年まで契約が残っている。
一方、テルプストラは今年も絶不調。全くその名を聞かないシーズンだったようにすら思う。
11位 ジャスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード)
ベルギー、28歳
2016年に23歳の若さで衝撃的なクールネ〜ブリュッセル〜クールネ逃げ切り勝利を果たしたストゥイヴェン。同じトレックにいたことから「カンチェラーラの後継者」なんて呼ばれ方もしたこともある彼は、その後も得意の逃げで常に存在感をアピールしてきた。
一方で、北のクラシックでのビッグタイトル獲得はなかなか実現できず。パリ〜ルーベでは2017年4位、2018年5位、ロンド・ファン・フラーンデレンでも2018年7位と強さを示してはいるが、頂点には立てずにいた。
そんな中、今年のオンループでは勝負所カペルミュールできっちりと力で抜け出す。同行者はイヴ・ランパールト。強敵だったが、最後の難関ボスベルグでも引き離されることなく食らいつき、最後は得意のスプリント勝負に持ち込んだことで危なげなく勝つことができた。
ワールドツアークラスの北のクラシックでは初勝利。今後はさらなる栄光、すなわちロンドやルーベの表彰台を目指し、飛躍していきたい。
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