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獲得UCIポイントで見る 2019北のクラシック最強選手ランキング20位~11位

今年も白熱の「北のクラシック」シーズンが幕を閉じた。

数多くの英雄が生まれ、そして意外な台頭を見せた男たちもいた。


2019年シーズンの「北のクラシック」のうち6レースを抜粋し、その6レースに出場した選手たちを「獲得UCIポイント」でランク付けした。

 

対象6レース

  1. オンループ・ヘットニュースブラッド(3/2)
  2. E3・ビンクバンククラシック(3/29)
  3. ヘント~ウェヴェルヘム(3/31)
  4. ドワーズ・ドール・フラーンデレン(4/3)
  5. ロンド・ファン・フラーンデレン(4/7)
  6. パリ~ルーベ(4/14)

※18あるワールドツアーチーム全てが出場している「北のクラシック(石畳クラシック)」レースを抜粋した。

 

この春、ベルギー~フランスの石畳の地獄で最も強さを見せつけた選手は誰だ?

今回は20位~11位の選手たちを紹介。

(年齢は全て2019/12/31時点ものとします)

 

↓10位~1位はこちら↓

www.ringsride.work

 

 

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第20位 アドリアン・プティ(フランス、29歳)

ディレクトエネルジー 獲得UCIポイント:260

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スプリンターとしては新加入のボニファツィオ、ブダには届かないながらも、石畳クラシックとの相性においては上手。今回もE3以外の5戦全てに出場。

ヘント〜ウェヴェルヘムはあくまでもスプリンター向きのレースのため、クラシックエースのテルプストラも終盤でアタックしてライバルチームを牽制するなど、プティのために働いてくれた。

最後のスプリントは残り300mでプティが先頭発車。最後にはクリストフをはじめとした錚々たるメンバーに追い抜かれたものの、しっかりと6位でポイントを稼いだ。

もっと厳しい石畳レースのパリ〜ルーベでも終盤まで生き残る。昨年のル・サミンでは4位だし、これからもこのチームのクラシック班のエース候補として、活躍し続けてくれるだろう。


 

第19位 ティシュ・ベノート(ベルギー、25歳)

ロット・スーダル 獲得UCIポイント:294

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一時期はステージレーサーとしての可能性を感じさせたこともあったが、やっぱりこの男は生粋のクラシックスペシャリスト。それも、アルデンヌ寄りのウェレンスに対し、よりフランドル向けの。

しかし・・・やはり勝ちきれない。昨年のストラーデビアンケ勝利は一つの殻を打ち破った感もあったが、結局はいつもと変わらないシーズンとなった。ストラーデビアンケ5位、ロンド9位。悪くはないけれども・・。

オンループの落車、ルーベでの「チームカー突っ込み」?など、不運も続く。現在はこのルーベでの鎖骨骨折からの回復待ち。

今年がロット・スーダルとの契約最終年だが、来年はドゥクーニンクあたりに移籍した方が、勝利を狙えるような気はする。

 

 

第18位 セップ・ファンマルク(ベルギー、31歳)

EFエデュケーション・ファースト 獲得UCIポイント:295

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セップにとってこの春は、地獄と、天国と、地獄とを同時に味わったような1ヶ月だった。

「ホーリー・ウィーク」の前哨戦となるE3でいきなりの落車。左膝の怪我の具合は、本来であれば治療に1ヶ月を要すると言われるほどのものであった。

 

しかし彼は執念でロンドへの参戦を決める。「この5ヶ月やってきたことが全て無駄になってしまう」ことを彼は恐れた。

そして痛々しい左膝のテーピングを見せながら、彼は自ら先頭を走るこれまでにないほどのアグレッシブな走りを見せ続けた。

結果、彼の走りがレースを動かした。そして、チームメートのベッティオルの勝利を導いた。

今年も彼はロンドを勝てなかった。しかし彼は確かに、勝者の1人となったのだ。

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だからこそ、1週間後のパリ~ルーベで先頭集団を走れていたとき、彼はこれまでで最大のチャンスを目の前にしていると感じ取っていた。

ライバルはジルベールにサガンと決して簡単な相手ではない。だが、ロンドで感じ取っていた調子の良さ、精神が、彼を勝利に導いてくれるという確信をもっていた。

そんな中で起きた、突然のメカトラブル。

 

僕はここ数週間、肉体的にも精神的にも地獄を味わい続けてきた。でも先週のロンドで、自分でも驚くような走りができたことで、希望を強く持つことができた。今週僕は十分過ぎるほどに準備をしてきた。すべてが完璧に進めばまだ僕にもチャンスがあることを知っていた。そしてすべては完璧に進んだんだ。これまでのようにガス欠になったわけでもないし、戦術的にも体力的にもまったく問題はなかった

 

家でソファに座って過ごしていればよかった。そうすればこんな失望を味わわずにすんだのに」 

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第17位 ペテル・サガン(スロバキア、29歳)

ボーラ・ハンスグローエ 獲得UCIポイント:329

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調子悪い悪いと言われつつ実際には割と上位に入るなどしてこれで調子悪いってのも贅沢だよなーと思いつつこうして集計してみるとこの順位というのは驚きで、やっぱり調子悪いんだなと思う。ヘントは順位だけで見るとやばいけど、実際には常に前でレースを展開した中で、最後に大集団スプリントに飲み込まれてのこの順位なので走り自体は悪くはなかった。

ルーベでの動きは完璧に近かった。というかそんな状態のサガンに対してナーセンにせよファンアーフェルマートにせよ何をやってるんだという感じではある。しかし最後はまさかの「ガス欠」。やっぱり何かがおかしい。ティレーノ前の体調不良?  嘘だー、ベルゲン世界選手権も体調不良直後で結果を出していたじゃないか。

今年は初出場のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに合わせてきているから・・・という話もあるし、そこで本当に結果出せれば安心なんだけど、そこでもてんでダメダメな結果で終わればいよいよ心配である。モチベーションとか。


 

第16位 アントニー・トゥルギ(フランス、25歳)

ディレクトエネルジー 獲得UCIポイント:330

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プティと並んでディレクトエネルジーから2人目。テルプストラはロンドでの落車も影響してランクインできなかった中で、このプロコン生え抜き組2人の活躍は素晴らしい。ステージレース総合とスプリントではコフィディスに遅れをとりつつも、北のクラシックではプロコン最強として今後も存在感を示してほしいところ。

テュルジの活躍はドワーズ・ドール・フラーンデレン。残り65㎞地点でのマチュー・ファンデルポールの飛び出しにしっかりとついていってのこの結果だから、実力は間違いなくあった。最後のロングスプリントも強かった。マチューが相手でなければ間違いなく勝っていた。

だからこそ、悔しさはあまりにも大きかったのだろう。何度も何度もハンドルを叩きつけるその姿は印象的。ある意味でマチュー以上に。

その悔しさをバネに、次こそはワールドツアーでの勝利、つかみとりたい。

 

 

第15位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、26歳)

チーム・ユンボ・ヴィズマ 獲得UCIポイント:340

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かつてブエルタで勝利し、それ以降は実力はあるものの・・・とイマイチ目立てていなかった彼。しかし年初のダウンアンダーでは登り適性の高さを見せつけ、そして今回の北のクラシックでの活躍。同チーム内のフルーネウェーヘンとはまた違ったタイプのスプリンターとして今後も活躍の機会は多そうだ。

しかし勝つためには、まだまだ立ち塞がる壁が多そうだ。まだ若く、これから経験を積み重ねていくことで、やがてロンドやルーベでの勝利が狙えるくらいのクラシックハンター・スプリンターとなれそうではある。


 

第14位 マッテオ・トレンティン(イタリア、30歳)

ミッチェルトン・スコット 獲得UCIポイント:360

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さすが元クイックステップ。安定感が半端なかった。しかし、のちにチーム編でも触れるつもりだが、チームの他のメンバーが正直あまりにも不甲斐なかった。結果、彼単独で戦うしかなく、取れる戦略は限られていた。ファンアーフェルマートみたいなもので、彼ほどのクラシック専門特化していないがゆえのこの結果だ。

彼もまた、今年が契約最終年。思い切って移籍するか、あるいはチームがより北のクラシック強化に本腰を入れなければ、彼の北のクラシックでの勝利は難しいものと思われる・・・。


 

第13位 カスパー・アスグリーン(デンマーク、24歳)

ドゥクーニンク・クイックステップ 獲得UCIポイント:418

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あまりにも意外な活躍だった。ユンゲルスはまあ、まだわかるにせよ、まさかこの若手が・・・。2017年U23ヨーロッパITT王者。これまでは決して北のクラシックでの適性を見せてはいなかったはずの彼を思い切って今年の北のクラシックに投入したチーム首脳陣の戦略が見事に嵌った形だ。ロンドではジルベールやスティバルが早々に崩れる中、常に先頭でレースを動かし続けた。

昨年の3月に突如として加入させた後、期待していたような結果がすぐには出てこなかったことに残念な思いを感じてはいたが、まさかこんな形で花開くとは思っていなかった。テルプストラやガビリア、キッテル、トレンティンなど強力なベテランたちを手放していく一方、次から次へと若手から才能を発掘していくこのチームの手腕は本当に驚きだ。

 

 

第12位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、25歳)

チーム・ユンボ・ヴィズマ 獲得UCIポイント:430

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本来であればこの位置にいるべき実力ではない。もっと上位にいて然るべき走りを見せていた。今回は対象レースに含めていないE3やミラノ〜サンレモでの活躍も印象的だったことがよりそう感じさせる。

しかしどんなに彼の肩を持とうとしても、やはり「ファンデルポールに水を開けられた」のは事実だろう・・・ロンドでの致命的な落車から復活して最後にも4位に入ったマチューと、ルーベでのトラブルから復活はしたものの最後には力を失って崩れ落ちたワウトとを比べてもはっきりする。

一方、あのルーベはチームの動きとしてはどうだったんだろう、とも感じる。大ベテランのステイン・デヴォルデルの献身的なアシストもあって集団復帰を果たしたマチューと、チームメートの助けがなかなか降りてこず単身で足を使いながら戻らざるをえなかったワウト。

とにかくもマチューありきのチームを作り上げているコレンドンサーカスと3月から合流の伝統あるユンボ・ヴィズマの違いなんだろうか。チームとしての今後の変革も求められるのかもしれない。このままでは、ワウトという宝の持ち腐れである。


 

第11位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、27歳)

ドゥクーニンク・クイックステップ 獲得UCIポイント:445

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昨年成功したアルデンヌを捨て、勇気あるチャレンジに挑んだ彼は、見事成功をつかみ取った。それも、おそらくは彼が期待していた以上に。

チームとしても、失ったテルプストラの代わりを十分に務め上げるような実績であった。彼がいなければ、今年のドゥクーニンクの成功はその半分を失っていたと言っても言い過ぎではない。

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彼自身も、かつてはジロの新人賞を2年連続で取るなど、グランツールでの活躍を期待されていた中での、ここ数年の不調に苦しむときはあっただろう。昨年のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ優勝はあったものの、そこにはアラフィリップという同年代のあまりにも偉大な才能の存在が。

そんな中つかみ取った、この北のクラシックでの成功。これは彼にとっても大いなる自信となったであろう。

この自信を背に、再びこの春、ジロでの復活を期待する。

 

 

次回は10位~1位を発表。

 

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