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2021シーズン 7月主要レース振り返り

 

1年で最も熱い1ヵ月。もちろんそれはツール・ド・フランスなわけだが、今年はそこに東京オリンピックもまた入り込んできた。見慣れた日本の風景で繰り広げられる、世界トップライダーたちによる激戦。

もちろん、「女子版ツール・ド・フランス」とでもあえて言いたくなるような存在であるジロ・デ・イタリア・ドンナ、さらにはバスクのワンデーレース、クラシカ・サンセバスティアンまで。

ツールの「裏番組」はどうしても少なくなりがちなのでビッグレースの数は少なめだが、十分に熱い1ヵ月を振り返っていく。 

 

目次

   

参考:過去の「主要レース振り返り」シリーズ

主要レース振り返り(2018年) カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど

主要レース振り返り(2019年) カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど

主要レース振り返り(2020年) カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど

主要レース振り返り(2021年) カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど

  

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ツール・ド・フランス(2.WT)

ワールドツアークラス 開催国:フランス 開催期間:6/26(土)~7/18(日)

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最後の最後で劇的な逆転劇を見せた2020年と比べ、今年のツール・ド・フランスはやや、面白みに欠けていた、とする感想も見られたりはする。

その要因の一つは総合系でもスプリンター系でも、プリモシュ・ログリッチやゲラント・トーマス、カレブ・ユアンなどの有力選手たちが落車したりリタイアしたりとトラブルに巻き込まれまくったことが一因ではあるだろう。

結果、総合争いではタデイ・ポガチャルが第1週から圧倒的な走りを見せ、早くも戦いの主眼は表彰台争いに陥ってしまった。

 

ただ、個人的にはそれでもなお、面白かった。ポガチャルの圧倒ぶりはそれ自体見所があったし、2010年代のクリス・フルームの再来のような面白さがあった。そして、それだけでは終わらず、反撃の可能性を見せる新たな才能、ヨナス・ヴィンゲゴーの台頭。

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最終週にはUAEチーム・エミレーツもチームとしての動きを見せ始めたほか、ある意味で「原点回帰」とも言えるシンプルな超級山岳山頂フィニッシュ2連戦は、「3強」が互いに裸で殴り合うブエルタ・ア・エスパーニャ的な面白さもあった。

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そしてもちろん、マーク・カヴェンディッシュの復活。

ミケル・モルコフを始めとするチームがあまりにも強すぎたのもあるが、序盤ではむしろカヴェンディッシュ自身の強さが発揮された勝ち方もあり、決して簡単ではない4勝を以下に積み上げていくかはドラマティックであった。

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その他、グランツール初勝利が半数以上を占めていた今年のジロ・デ・イタリアに対して、ベテランがその強すぎる常識を超えた走りで大活躍をした「超人大会」とも言える様相を呈した今大会。

以下、全チームレビューや全ステージレビューなどで、詳細を確認してほしい。

獲得UCIポイントで見る ツール・ド・フランス2021 全チームランキング&レビュー(11位~1位) - りんぐすらいど

獲得UCIポイントで見る ツール・ド・フランス2021 全チームランキング&レビュー(23位~12位) - りんぐすらいど

【全ステージレビュー】ツール・ド・フランス2021 第1週(前編) - りんぐすらいど

【全ステージレビュー】ツール・ド・フランス2021 第1週(後編) - りんぐすらいど

【全ステージレビュー】ツール・ド・フランス2021 第2週 - りんぐすらいど

【全ステージレビュー】ツール・ド・フランス2021 第3週 - りんぐすらいど

 

 

ジロ・デ・イタリア・ドンナ(2.Pro)

UCIプロシリーズ 開催国:イタリア 開催期間:7/2(金)~7/11(日)

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女子版ジロ・デ・イタリア。とはいうものの、32年という女子レース随一の歴史の長さ、格の高さ、このレースだけが許された10日間という長さ、開催時期などを考えれば、むしろ真の意味での女子版ツール・ド・フランスというべきか。

なお、昨年まではジロ・ローザと呼ばれていたが、今年は主催者が変わった?ことにより名称変更。正式名称は「ジロ・デ・イタリア・インテルナツィオナーレ・フェミニーレ」。ただそれ以外はほとんど変更はない。

いや、クラスは変わった。今までは当然ウィメンズ・ワールドツアーの1つではあったが、今年は1つランクが落ちてProシリーズに。これは、昨年このレースがUCIの基準に従わずライブ放送を一切行わなかったから。それもあり今年は最後の15㎞をライブ放送することを約束しており、来年のワールドツアー復帰が内定している。

そしてもう1つ、世界最強クラスのライダーであるアネミエク・ファンフルーテンやカタジナ・ニエウィアドマが、東京オリンピックに集中するために欠場したこと。

さらに今年絶好調でファンデルブレッヘン/ファンフルーテンに匹敵する実力を見せていたはずのエリーザ・ロンゴボルギーニの不調。

そんなこともあって、女子界最強チームのSDワークスと、その頂点に立つ世界王者アンナ・ファンデルブレッヘンとが、ずば抜けてしまう結果となった。

 

第2ステージでいきなり訪れる1級山岳プラトー・ネヴォソ(登坂距離13.1km、平均勾配7.2%)山頂フィニッシュ。残り8㎞地点でチームメートのアシュリー・ムールマンがアタックしたのに合わせ、自らも飛び出したファンデルブレッヘンは、ムールマンをも突き放して早くも独走を開始。ライバルたちを2分以上突き放したうえに、2位ムールマン、3位デミ・フォレリングと、SDワークスだけで表彰台を独占する圧倒ぶりを見せた。

それは第4ステージに用意された名物山岳TTでも同様だった。11.2㎞で500mを駆け上がる本格的な登坂TTで、ここでもSDワークスは2位フォレリング、4位ムールマン、そして1位ファンデルブレッヘンと、ワンツーフォーを独占する。

しかもファンデルブレッヘンは2位フォレリングに1分以上のタイム差をつけるという圧倒ぶり。裏開催のツールのタデイ・ポガチャルも大概だったが、ある意味それ以上の暴れぶりとなってしまった。

 

よって、総合争いは早くも終焉の空気。後半戦はスプリンターたちによる祭典となった。

まず強さを見せたのが、女子界のマルセル・キッテルとも言うべき最強のピュアスプリンター、ロレーナ・ウィーベス。自身エースとしても走れる実力をもったコリン・リヴェラのアシストを受けて、今年大活躍の新鋭スプリンター、エマセシル・ノースガードも寄せ付けることなく、たちまちのうちに2勝を叩き出してしまう。

もちろん、今年のエルシー・ジェイコブスで区間2勝&総合優勝など、まさに急成長中のノースガードも、得意のアップダウンスプリントのレイアウトで、(登りが苦手な)ウィーベスの代わりにエースを務めたリヴェラを打ち破って1勝。

そしてそのリヴェラも、最終日でリベンジを果たした。この日は何と、総合リーダーのファンデルブレッヘンが自ら逃げに乗る驚きの展開で、リヴェラもエリザベス・ダイグナンなどの実力者たちと共にここに入り込み、そして最後は4名のスプリントをしっかりと制し、チームに大会3勝目をもたらした。

 

その他、レジェンドのフォスが大会通算30勝目を記録する2勝を重ねるなど、ある意味男子のツール・ド・フランスと似たような展開もあったりした今年の女子版ジロ。

そして、ファンデルブレッヘンは4度目の女子版ジロ制覇。今年引退を決めた女王が、有終の美を飾る勝利となった。

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ツール・ド・ワロニー(2.Pro)

UCIプロシリーズ 開催国:ベルギー 開催期間:7/20(水)~7/24(日)

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ベルギー・ワロン地方(南部のフランス語圏)を舞台にしたステージレース。アルデンヌ・クラシックの舞台らしい丘陵地帯のアップダウンが総合争いに影響を及ぼし、今大会も第2・第3ステージ、とくに第2ステージがクイーンステージとして設定されていたが・・・同時期に起きたオランダ・ベルギー地方の大雨と洪水被害の影響で、本来の第2ステージがキャンセル。代替ステージはオールフラットなスプリントステージとなってしまった。

結果、総合争いの舞台は第3ステージだけに。その第3ステージで、逃げに乗った「第2のエヴェネプール」ことクイン・シモンズが、最後はロット・スーダルのスタン・デウルフとのスプリントを制してプロ初勝利。最後は先にスプリントを開始する中で勝ちきっているあたり、その実力の高さをしっかりと見せつけた形だ。

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総合はそのままシモンズが獲得。

一方、スプリントではディラン・フルーネウェーヘンとファビオ・ヤコブセンといういわくつきの二人が、それぞれ復帰後初勝利。しかも2勝ずつ。

ヤコブセンはもしかしたらブエルタにも出るかも。この勝利が、完全復活に向けての良いきっかけになればよいのだが。 

 

 

東京オリンピック男子ロードレース

開催国:日本 開催期間:7/24(土)

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レースレポートはこちらから

東京オリンピック初日に開催された、東京・武蔵の森公園から多摩丘陵地帯を抜け、相模原から道志みち、山中湖畔を抜けて籠坂峠・富士山麓・富士スピードウェイを2周・激坂の三国峠を越えて最後にもう1度富士スピードウェイへと戻ってくるという、総獲得標高5,000m弱の純粋クライマーズコース。

ツール・ド・フランスを走り終えたばかりのトップクライマーたちも含め、世界の頂点に近い男たちが激戦を繰り広げた。

 

最初に逃げに乗ったのはユライ・サガン(スロバキア)やニコラス・ドラミニ(南アフリカ)、あるいは元NIPPOのエドゥアルド・グロス(ルーマニア)や日本のJプロツアーでも走っていたオールイス・アウラール(ベネズエラ)など8名。

道志みちの山頂に至る道のりで最大20分以上にまで開いたこの逃げではあったが、その後ベルギーチームの前回覇者グレッグ・ファンアーヴェルマートや、スロベニアチームのヤン・トラトニクなどがそれぞれのエースのために猛牽引。勝負所の三国峠に突入するまでにはこの逃げもすべて捕まえられた。

 

登坂距離6.7㎞で平均勾配10%超という非常に厳しい三国峠の登り。

ここでツール覇者タデイ・ポガチャル(スロベニア)がアタックし、ここにブランドン・マクナルティ(アメリカ)やマイケル・ウッズ(カナダ)が食らいつく場面もあったが、ツール第1週のような圧倒的な力でポガチャルが突き放すまでにはいかなかった。

そのまま三国峠を越えて2回目の山中湖畔へ。最後の籠坂峠へと向かう平坦路で散発的にアタックが繰り返される中、残り25㎞地点でのマクナルティのアタックにツール総合3位リチャル・カラパス(エクアドル)が反応し、2人だけで抜け出すことに成功。

後続ではポガチャルやワウト・ファンアールト(ベルギー)といった優勝候補を警戒し牽制状態に陥ったことで追撃の手が緩まりタイム差は拡大。それでも最後の富士スピードウェイへと至る道のりでファンアールトが自ら前を牽いてタイム差を一気に縮めにかかるが、残り6㎞でカラパスがもう一段階ギアを上げ、マクナルティを突き放す。

そのまま後続を近づけないまま独走でフィニッシュラインにやってくるリチャル・カラパス。

エクアドル人として2人目のオリンピック金メダリスト。2年前のジロ制覇、今回のツール総合表彰台に続く母国の英雄として、最高の栄誉を掴み取ることに成功した。

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マクナルティを吸収し一塊となった集団の方では、最後ポガチャルとファンアールトがスプリントで争い、写真判定の末にファンアールトが銀、ポガチャルが金に。

表彰台3名がすべて1週間前までツール・ド・フランスを走っていたという驚きの結末。男子ロードレースは純粋な強者同士による熱戦が繰り広げられる形となった。

 

 

東京オリンピック女子ロードレース

開催国:日本 開催期間:7/25(日)

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一方、女子レースの方は驚きの展開となった。

0㎞アタックでマイナー国を含む5名の逃げが形成され、そのタイム差が一気に拡大していくところまでは男子と一緒だった。

しかし男子と違うところがある。女子は道志みちと籠坂峠の2つの登りだけであり、富士山麓や三国峠といった、タイム差を一気に縮めうる強烈な登りが存在しない。

そして男子と違い、オランダのほぼ一強体制となったため、どれだけタイム差が拡大しても誰もオランダ以外は前を牽こうとしないこと。そしてオランダもエースばかりを連れてきた結果、男子におけるファンアーヴェルマートやトラトニクのような献身的に牽き続ける存在を欠いていた。

結果、道志みちの登りにさしかかる頃にはタイム差は10分を超える。ここからオランダチームがエース陣による波状攻撃を仕掛ける。まずはセカンドエース級のデミ・フォレリング。ついでファンフルーテン、そしてマリアンヌ・フォス、最後にアンナ・ファンデルブレッヘン・・・いずれも優勝候補といえる強力なライダーたちによる立て続けの攻撃に集団はダメージを受けるものの、先頭とのタイム差は思うようには縮まらなかった。

そして道志みち山頂まで1㎞といったところでファンフルーテンが独走を開始。それでも3名になった先頭とファンフルーテンとのタイム差は5分以上開いており、残り距離は60㎞弱。

逃げ切りの可能性もかなり高くなりつつあった。

 

そして0㎞からアタックし、この逃げができるきっかけを作ったアンナ・キーセンホーファー(オーストリア)が、籠坂峠の登りで加速し、同伴者2名を振り切る。

フィニッシュまで40㎞を残して独走を開始したキーセンホーファー。その勢いは衰えることを知らず、逆にファンフルーテンへ富士スピードウェイを前にして集団に吸収。ラスト18㎞でなおも集団に4分以上のタイム差をつけていたキーセンホーファーは、もう逃げ切りを確定させたといっても良い状況となっていた。

さらに、オランダチームは逃げ残りの2名を捕まえた時点で逃げを全て捕まえたと勘違いしていたようだ。残り6㎞で抜け出したファンフルーテンがフィニッシュラインまでやってくると、歓喜の叫びを上げてフィニッシュへ。

しかし、すでに彼女の1分前には、キーセンホーファーが勝利のガッツポーズを見せていた。

たった1人で最強国オランダに挑んだアマチュア選手。0㎞からのアタックと、自らの力を信じて踏み続けていった結果が、このあまりにも大きな栄光に繋がった。

オランダチームの油断、その他の国もオランダに任せきりだったことが、この結果を産んだのは間違いなかった。

しかしキーセンホーファーは間違いなく強かった。この金メダルは、たしかに間違いなく、彼女に相応しいものであった。

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その他オリンピックリザルト(RR,MTB,TT)

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ロードレースファンとしてはマチュー・ファンデルプール(オランダ)とトム・ピドコック(イギリス)の成績に注目の集まっていた男子マウンテンバイクだが、ファンデルプールがまさかの落車。すぐに起き上がり再走するも、やがてリタイアとなってしまった。

そして最後はレジェンドのニノ・シューター、今年のワールドカップ最強のマティアス・フルッキガーらスイス最強コンビを振り切って、4列目スタートだった昨年U23王者ピドコックが、エリート昇格1年目にして早くも世界の頂点を獲った。

このあとはブエルタに出場予定のピドコック。果たしてどんな規格外な走りを見せてくれるのか。

 

女子マウンテンバイクはヨランダ・ネフ、シーナ・フライ、リンダ・インダーガンドのスイス人3名が表彰台を独占。現世界王者のポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)は10位、ワールドカップ全勝で今年女子MTB界を圧倒しているロアナ・ルコント(フランス)は6位に沈む結果となった。

 

タイムトライアルではロードで悔しい思いをしたファンフルーテンと、ツール・ド・フランスでは早期リタイアとこちらも悔しい思いをしていたプリモシュ・ログリッチとがそれぞれ優勝。ログリッチは相変わらず、挫折からのあまりにも早い復活が特徴的で、そのマインドの強さは恐ろしい。

予定していたものの結局休むことに決めたポガチャルに対し、ログリッチの方はブエルタまで出場することに決めており、3連覇ももはや夢ではない気がしてくる。

男子タイムトライアルの銀メダルはこちらも「復活」のトム・デュムラン。ここまで調子を取り戻していたのは純粋に凄いものの、彼にとってはリオに続く銀と悔しい結果でもあった。

銅メダルは元世界王者ローハン・デニス。彼もユンボ入りが噂されており、真実となればユンボはTTオリンピック表彰台3名をすべて揃えることとなる。

しかしこの世界王者級のTTスペシャリストを下して頂点を獲ったログリッチはやはり凄い。丘陵系のレイアウトだったとはいえ。

BMXまではさすがにカバーしていないので省略するが、8月に入れば今度はトラック種目。こちらは日本人によるメダル獲得も現実味がかなりあるため、期待したいところだ。

 

クラシカ・サンセバスティアン(1.WT)

ワールドツアークラス 開催国:スペイン 開催期間:7/31(土)

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レースレポートはこちら

バスクの丘陵地帯を利用した総獲得標高4,000m弱のクライマーズクラシック。昨年は新型コロナウイルスの影響により中止となり、2年ぶりの開催となる。

天気はあいにくの雨。総勢13名もの逃げができるが、残り70㎞を切ったところから始まる最初の勝負所「ハイスキベル」の登りで、その逃げの中からネオプロのハビエル・ロモ(アスタナ・プレミアテック)が単独で抜け出す。

その後残りの全ての逃げが集団に吸収されたあとも一人で先頭を投げ続けたロモだったが、残り50㎞を切ったところから始まる「エライツ」の登りで集団がペースアップ。そこから飛び出したミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)とサイモン・カー(EFエデュケーション・NIPPO)に追い抜かれ、さらにカーはランダも突き放して独走を開始する。

その後、サンセバスティアンのフィニッシュ地点を一度通過するが、この平坦路で集団からさらに4名がアタックしてカーに合流。先頭は5名となり、この中にEFエデュケーション・NIPPOはもう1人ニールソン・ポーレスを入れたことで有利な状況を作る。

そして最後の勝負所「ムルギル・トントーラ」。フィニッシュまで残り10㎞から始まるこの最後の登りを前にして集団とのタイム差は1分10秒。

先頭にミケルフローリヒ・ホノレを入れたことで優勝候補アラフィリップを抱えるドゥクーニンク・クイックステップもローテーションに回らず、ほぼトレック・セガフレードだけが牽引することとなったメイン集団はまったくペースが上がらず。

勝負権は先頭の5名に委ねられた。

 

先頭5名が例年勝負の決まるムルギル・トントーラの山頂ラスト1㎞、最大勾配18%の区間に突入すると、チームメートのカーの牽引に導かれてポーレスがアタックする。

一度は単独で抜け出すことに成功したポーレスだったが、山頂間際でホノレとマテイ・モホリッチに追いつかれ、その後の平坦でロレンツォ・ロタにも追いつかれたことで先頭は4名に。

さらに、ムルギル・トントーラからの雨の下りでモホリッチがバランスを崩し、その背後にいたホノレがガードレールにクラッシュ。この煽りを受けてロタも落車する。

最後は何とか追いついたホノレを含めて3名によるスプリント。

最も体力もスプリント力があると思われたモホリッチが先頭のままラスト200mでスプリントを開始するが、最後はその背後にいたポーレスがギリギリでこれを差し切る。

ニールソン・ポーレス。期待され続けていたアメリカの新鋭が、プロ4年目でようやく掴んだ初勝利となった。

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集団は1分遅れでフィニッシュ。最後はUAEのアレッサンドロ・コーヴィがアラフィリップをスプリントで下し集団先頭の5位。

この男も今後注目すべき才能であると言えそうだ。

 

クラシカ・サンセバスティアン女子(1.WWT)

ウィメンズ・ワールドツアー 開催国:スペイン 開催期間:7/31(土)

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男子レースの前に開催された、139.8㎞の女子レース。距離は短いが、勝負所のムルギル・トントーラはしっかりと用意され、難易度は変わらない。

出場選手の層は決して厚くはないが、3日前(!)の東京で個人TTを勝ったばかりのファンフルーテンが、残り8㎞、ムルギル・トントーラの登りで抜け出して、いとも簡単に独走状態に持ち込む。

そのまま、地元スペインチームに勝利をもたらしたファンフルーテン。格の違いをいやというほど思い知らせることとなった。

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なお、レース後のインタビューで時差ボケがまだ残っていると告白するファンフルーテン。

そのファンフルーテンに全く歯が立たなかったライバルたちの立つ瀬がない・・・まあ、オリンピック女子ロードで勝ちきれなかったことからのフラストレーションが有り余っていたのだろう。

 

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