2019シーズンを振り返るシリーズ第2弾は、こちらも毎年恒例の「ワールドランキング」上位選手紹介。
今年からUCIのランキングルールが変わり、これまであった「ワールドツアーランキング」がなくなり、「ワールドランキング」に一本化された。代わりに「ワンデーレースランキング」と「ステージレースランキング」というのが別に用意された。
以下のランキングでは、ワールドランキングと合わせ、ワンデー/ステージレースランキングでの順位も併載した。
実は、自分がロードレースを見始めたとき、とあるブログに熱中していた(このブログはそのブログに大きな影響を受けている)。そのときに同じような世界ランキング上位選手のレビューを行っていて、それがロードレース初心者の自分にとっては非常に参考になった。
以下のランキング&レビューでも、そういった願いが込められている。ぜひ、実はまだまだロードレースに詳しくない、これから見ていきたいと思っている、という人にこそ、このランキングは参考にしてほしい。
今、世界で最も上位にいる選手たちはこういう選手たちなんだ、というのを確認していってほしい。
なお、昨年までの同企画は以下の通りである。
↓10位~1位はこちらから↓
- カレブ・ユアン(オーストラリア、25歳)
- マッテオ・トレンティン(イタリア、30歳)
- アダム・イェーツ(イギリス、27歳)
- ティム・ウェレンス(ベルギー、28歳)
- エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、27歳)
- タデイ・ポガチャル(スロベニア、21歳)
- オリバー・ナーセン(ベルギー、29歳)
- ディエゴ・ウリッシ(イタリア、30歳)
- マチュー・ファンデルポール(オランダ、24歳)
- バウケ・モレマ(オランダ、33歳)
※以下の記載の年齢はすべて2019/12/31時点のものとなります。
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第20位(昨年74位)ステージレースランキング17位
カレブ・ユアン(オーストラリア、25歳)
ロット・スーダル所属、スプリンター
母国オーストラリアの育成プロジェクトで育ち、母国のワールドツアーチームにて目覚ましい成長を遂げてきた男も、いよいよそのチームを去ることとなった。理由の1つは、このチームが急激にグランツールで勝つためのチームへと変貌していく中で、ユアンの居場所が失われていったことである。事実、2018年のユアンはグランツールに1つも出場できなかった。
そして、彼は盟友ロジャー・クルーゲを連れて、初めての異邦のチームへと身を移した。不安もあったことだろう、プレッシャーも大きかっただろう。それでも彼は、2019年最初のレースであるダウンアンダー・クラシックでしっかりと勝利し、その後も少しずつ、かつての彼の弱点を克服するような勝ち方なども重ねつつ、チームへフィットしていった。
そして、ジロ・デ・イタリアでの2勝、さらにはツール・ド・フランスでの3勝。これまでにない、最高のリザルトを残し、今年最強のスプリンターの1人として、その名を轟かせた。
ただ、まだまだ大きなワンデーレースでの勝利は少ない。サイクラシックス・ハンブルクも、カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースも、エリア・ヴィヴィアーニに敗れての2位である。
2位は安定して手に入れられる。ただ、このワンデーレースでも彼を倒して安定して1位を取れるようになって初めて、唯一無二の最強スプリンターとなれる。それが課題である。
なお、今年の彼を支えたアシストとしては、クルーゲはもちろん、もう1人、ジャスパー・デブイストの存在を忘れてはいけない。
そして、ジロ・デ・イタリアにおいては、平坦をひたすら牽引し、スプリントに突入する直前の牽引役としても常に存在感を示し続けてくれたトーマス・デヘントのことも。
最強スプリンターは決して一人では戦えない。彼らアシストへの存在あってこそである。
第19位(昨年94位)ワンデーレースランキング12位
マッテオ・トレンティン(イタリア、30歳)
ミッチェルトン・スコット所属、スプリンター
シーズン序盤からコンスタントに勝利を重ね、ツール・ド・フランスでは山も軽々と登り、アルプスの麓で逃げ切り勝利も果たした。少し起伏のあるステージでのスプリント上位に入る安定感は素晴らしく、きわめつけは世界選手権ロード2位。ヨーロッパ王者として相応しい、プロ9年目にしてキャリア最大の実績を伴った年となった。カレブ・ユアンが抜けた後のチームの穴を十分に埋めたと言ってもよいだろう。
ただ、惜しむらくは北のクラシックで勝ちきれなかったこと。勝つために十分な実力は伴いながらも、チームのもう1人のクラシックエースであるダーブリッジが怪我によりこの時期戦線離脱したこともあり、ほぼ一人で戦わなくてはならないことが、結果に影響を与えた。
来年はCCCチームに移籍。同じく実力はありながらもほぼ一人で戦わざるをえなく厳しい結果となってしまったファンアーフェルマートと共に、良いコンビネーションを発揮してクラシックを席巻してくれることを期待している。
第18位(昨年45位)ステージレースランキング10位
アダム・イェーツ(イギリス、27歳)
ミッチェルトン・スコット所属、クライマー
双子の兄弟のサイモン・イェーツが2018年のグランツールを席巻したとき、アダムは自らがエースとして出場したツール・ド・フランスでも結果を出せず、辛いシーズンを過ごすこととなった。それでも、ブエルタの3週目でサイモンの総合優勝を支えるアシストをこなす姿は、2019年の成功を予感させるような強さを示していた。
そう、2019年は、アダムの年のはずだった。実際、シーズン初頭は、悪くない走りを見せていた。ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナでは、1年前にアレハンドロ・バルベルデに敗れた激坂フィニッシュで、逆に彼を突き放す走りを見せた。ティレーノ〜アドリアティコでは、最終的にプリモシュ・ログリッチェに敗れるものの、登りでは彼を打ち倒し、大きなビハインドを背負ったTTに関しても、かつてと比べ着実に改善が見られていた。
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャでは今度はサイモンに助けられての、総合2位。その後も調子は悪くなく、今年こそ、ツールにおける成功は約束されたであろう、と感じていた。
が、蓋を開けてみれば、まるで昨年の焼き直しであるかのように、大失速。サイモンがステージ2勝し、トレンティンとインピーも1勝ずつ。チームとしては大成功を収めたツールだったが、そこにアダムの存在感はなかった。
だが、失意のままでシーズンを終わらせるつもりはなかった。シーズン終盤、10月初頭に開催されたCROレース(旧ツアー・オブ・クロアチア)で総合優勝し、続くイタリア秋のクラシックではミラノ〜トリノに参戦し3位。
今年はリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで4位になるなど、グランツールライダータイプのサイモンと違い、アダムはワンデーレースへの適性があるという特徴が感じ取られるようになってきた。
事実、今年の世界選手権ロードレースに選ばれたのは、サイモンの方ではなくてアダムの方。来年の東京オリンピックのロードレースはクライマー向けであり、イギリスチームのエースとして、アダムが抜擢される可能性はありそうだ。
もしかしたら来年もツールは厳しいかもしれない。それでも、ワンデーを中心に活躍するアダムの姿が見られたら十分に幸せだ。頑張れ、アダム。
第17位(昨年13位)ワンデーレースランキング14位
ティム・ウェレンス(ベルギー、28歳)
ロット・スーダル所属、パンチャー
かつては不意打ちのようなアタックから逃げ切るエスケープスペシャリストという印象だったウェレンスだったが、最近ははっきりとしたエースとして走る姿が多く見られる。
ブラパンツペイルでもGPモンレアルでも、彼は他のチームのエース集団と共に動き、しっかりと上位に入ってくる。ベルギーツアーでもビンクバンク・ツアーでも、彼は最もマークされる優勝候補であり、それを前提とした走りを求められている。
それがゆえに、かつてのような鮮烈な勝利はなかなか量産できないが、安定して上位に入り込むことで2年連続のUCIランキングTOP20入り。エヴェネプールとかも、こういうタイプの選手になるのかもしれない。
ただ、やはりもう一歩、突き抜けてほしくはある。イル・ロンバルディアやリエージュ〜バストーニュ〜リエージュなどは狙っていけると思うから。
第16位(昨年61位)ステージレースランキング8位
エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、27歳)
ボーラ・ハンスグローエ所属、オールラウンダー
綺麗に並んだ総合上位の記録の数々。しかも、出場数が極端に少ないだけで、割と出場しているクライマー向けのワンデーレースでもそこそこ良い成績を出しており、バランスのとれた実力を持った選手だ。
マイカ、フォルモロ、コンラッド、グロスチャートナー、最近でいえばシャフマンなど、総合を狙える選手の層は割と厚いボーラの中で、今年はしっかりと存在感を示すことができたと思う。待望のドイツ人ツール覇者に今最も近い男であることは間違いない。
あとはツールで彼のためのチームが作ることができさえすれば、さらに高みへと行けると思う。シャフマン、コンラッド、グロスチャートナーがブッフマンを支える体制。
チームとしてはサガン、彼がいなくともアッカーマンやサム・ベネットでスプリント勝利を狙っていきたいところだけに、なかなか難しいかもしれないが。
第15位(昨年263位)ステージレースランキング5位
タデイ・ポガチャル(スロベニア、21歳)
UAEチーム・エミレーツ所属、オールラウンダー
驚異の男。たしかに2018年のツール・ド・ラヴニールの覇者ではあったものの、エガン・ベルナルなどとは違い、コンチネンタルチームで活躍していただけの無名の存在のようにも思っていた。
だが、2月のアルガルヴェでいきなりエンリク・マスとワウト・プールスを軽々と破り、5月のツアー・オブ・カリフォルニアでは前評判通りの圧倒的な勝ち方でワールドツアー総合優勝最年少記録を更新し、さらには初グランツールのブエルタ・ア・エスパーニャでのステージ3勝、新人賞、総合3位。
それも、UAEチーム・エミレーツという、決してグランツールには万全の体制で臨めるわけではないチームで。
ある意味で、ベルナル以上の衝撃でもってデビューした驚異の新人。来年は果たして、どんな成績を見せてくれるのか。
第14位(昨年20位)ワンデーレースランキング9位
オリバー・ナーセン(ベルギー、29歳)
AG2Rラモンディアル所属、ルーラー
今年もまた、勝ちきれないリザルトが並ぶ。間違いなく強く、昨年よりも順位は上げたけれども。
彼もまた、トレンティンやファンアーフェルマートと同じ課題を持つ。すなわち、クラシックにおいて、実質的に一人で戦わざるを得ないということ。トレンティンたちは来年同じチームになるが、AG2Rは、新たなクラシックの補強はあるのか? ファンデンベルフは頑張ってくれてはいるが、それでもまだ足りない・・・
来年入ってくる弟に期待か?
第13位(昨年59位)ワンデーレースランキング13位
ディエゴ・ウリッシ(イタリア、30歳)
UAEチーム・エミレーツ所属、パンチャー
かつてのキング・オブ・ジロ。生粋のパンチャー。そこから、ツール・ド・フランスへの挑戦をしてみた時期もあったけれど、うまくいかず、しばらくは影を潜めていたように思う。
しかし今年は強いウリッシが帰ってきた。フレーシュ・ワロンヌ3位、ツアー・オブ・スロベニア総合優勝、カナダ2連戦での好調、さらには東京オリンピックテストイベントでの優勝。
純粋なクライマー向けよりは緩やかで、かつスプリンターには厳しすぎるレイアウトでは常に安心して勝利を期待できる男というのは、チームにとっても貴重な稼ぎ頭であり、重宝する。
来年のUAEはまた色々と強化するようではあるが、引き続き、唯一無二の活躍を見せていってほしい。
第12位(昨年150位)ワンデーレースランキング5位
マチュー・ファンデルポール(オランダ、24歳)
コレンドン・サーカス所属、パンチャー
サイクルロードレースの常識を変えた男。優勝ばかりが並ぶこの表もとても気持ち良い。
彼がいかに規格外かを示すデータとして、彼の今年のロードレースの出場日数がわずか31日でしかないという事実がある。普通、ランキング上位に来るようなエース級の選手たちは、年間7〜80日間はレースをしている。少なめのポガチャルやブッフマンでも62日間である。
それらの半分以下の出場日数で、この順位である。もちろんそれ以外は休んでいたわけではなく、シクロクロスやマウンテンバイクをこなし、それぞれで高い成績を残しながらである。
来年もあくまでも最大の目標は東京オリンピックのマウンテンバイク。その影響で、春のクラシックにも今年ほどは出場しないかもしれない。
いつか必ずくるであろう、彼の本格的なロード参戦のときが楽しみだ。
そのとき、彼はどんな、想像も及ばないような成績を積み上げてくれるのか・・・。
第11位(昨年24位)ワンデーレースランキング7位
バウケ・モレマ(オランダ、33歳)
トレック・セガフレード所属、オールラウンダー
念願のモニュメント初優勝。それは、決して最強だったから、というわけではないかもしれない。それでも、自らの武器をよく理解し、これを信頼し、仲間の力を借りて、手に入れた勝利だった。
もちろんその勢いのまま(そしてロンバルディア同様チッコーネの力を借りて)ジャパンカップも2度目の勝利。
シーズン最後に、一気にその存在感を示すこととなった。
来年はまたニバリが入ってきて、再びグランツールエースの座は脅かされるかもしれない。
しかし個人的には、彼はそれで良いとは思っている。確かに今年のジロ総合5位など、出場すれば上位は間違いなく狙えるが、それよりは自由な立場からのステージ優勝などに期待したい。2年前のツールのように。
それこそ、来年は東京オリンピック。クライマーにもチャンスがあるレイアウトで、相性の良い日本で、彼が再び、世界の中心に立てるような気が、している。
↓10位~1位はこちらから↓
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