ベスト21と中途半端なのはピノを入れたかったから。
イル・ロンバルディア前まではピノがちょうど20位だったんだけどなぁ。
10位~1位はこちら。
第21位(昨年10位)
ティボー・ピノ(26歳、フランス)
FDJ所属。2018年まで契約を延長することを発表した。
シーズン前半はツール・ド・ロマンディのTTステージ優勝(トム・デュムランを破っての!)や、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネのステージ優勝、また、クリテリウム・インテルナシオナルでのTT活躍と総合優勝、そしてフランス選手権でのTT部門優勝など、十分に期待できる活躍を見せていた。
しかし肝心のツール・ド・フランス本戦では、序盤こそラファル・マイカなどと山岳賞争いに加わるなど脚力を見せながらも、体調不良により途中リタイア。オリンピックでも優勝の可能性を持ちながらも活躍できずに終わった。
そして因縁のライバルであるロメン・バルデに、ツール総合2位という活躍を見せつけられてしまったキャプテン・ネガティブは、来期立ち直ることができるのか?
いやいや、むしろプレッシャーから解放されるほうが、彼にとっては結果を出しやすくなるはずだ。グランツールの総合表彰台なんていう大層なものは狙わなくてもいい。各種ステージレースでの活躍、山岳ステージでの活躍、あるいは山岳賞を狙うなど、そういう活躍で十分だ。
2015年第20ステージ、ラルプ・デュエズでの勝利で見せた彼のガッツポーズが心に残っている。2012年のツールのときから、ずっと、彼の勝利に一目惚れし続けている。来年も彼を応援し続けるよ。
第20位(昨年19位)
ヴィンツェンツォ・ニーバリ(32歳、イタリア)
アスタナ・プロチームのエースとして活躍していた彼も、来期からはバーレーン・メリダへ。人間関係の悪化が囁かれていた中、新天地での活躍となるか。
しかし今年は、散々だった昨年へのリベンジを果たす年となった。ジロ・ディタリア総合優勝。それが周囲を思うほどに簡単な道でなかったことは、第19ステージのゴール直後に泣き崩れた姿からもよくわかった。正確に難がある? 力にムラがある? 上等。スマートなだけがロードレーサーの魅力じゃあない。判官びいきかもしれないけれど、隙が無いくらいに強い男よりも、たくさん隙があるけれども無理やりこじ開けて勝利を掴む泥臭い奴のほうが魅力的に僕は感じる。
来期はどこまでいくんだろうか。今度こそ、ツールでしっかりとフルームやキンタナに張り合っていただきたい。彼らに勝つのは難しいかもしれないけれど・・・でも、それでも2015年でも執念の総合4位だったのだ。観戦する僕らを楽しませてくれるだけの走りは、きっとしてくれるはずだ。
第19位(昨年15位)
トム・デュムラン(26歳、オランダ)
ジャイアント・アルペシン所属。来期もチームは変わらないがスポンサーの変更によりチーム名自体は「サンウェブ・ジャイアント」に変更される。キッテルも抜け、デゲンコルブも抜けることで、チームの脱ドイツ化、再オランダ化、そしてデュムランのための総合狙いチームへと変貌していくのかもしれない。
昨年のデュムランが「期待を大きく超えた活躍を見せた男」であれば、今年のデュムランは「期待通りの結果を出してくれた男」であった。そして往々にして後者のほうが難しく、そして格好良いのだ。
もちろんそれは、総合表彰台上位、という意味での「期待通り」ではない。シーズン序盤でこそマイケル・マシューズに敗北したりヨン・イサギーレに敗北したり(この男は後にカンチェラーラすら負かすので仕方あるまい)ティボー・ピノに敗北したりと2位続きだったITTも、ジロ・ディタリアの地元戦で昨年のリベンジを果たしたのを皮切りに、国内選手権でも優勝、ツール・ド・フランスの平坦ITTでもしっかりと優勝を果たした。
ツール終盤で落車して怪我を負うものの、万全の状態ではないながらもオリンピックに参戦し、復活のカンチェラーラには届かずに銀メダルとなってしまったが、総合表彰台を最初から目指さないことで余計なプレッシャーからも距離を置き、アンドラ・アルカリスにおけるツール初ステージ勝利などを、思う存分に楽しむ姿を見せてくれた。今、最も魅力的なオールラウンダーの一人。ツール、とは言わないまでも、ジロやブエルタでの総合優勝を今後は期待したい。オランダの星である。
第18位(昨年ランク外)
ブライアン・コカール(24歳、フランス)
ディレクトエネルジー所属。昨年もツールで勝利こそ得られなかったものの常にいい位置につけていた若きフランス人スプリンターは、今年、ツール初勝利まであとごくわずか、というところにまで到達した。あまりの悔しさに膝を抱えて座り込む姿も。だが、あのキッテルにあそこまで迫ったのだ。この男は本当に、すごい。
ジロやブエルタなら、とっくに勝利していてもおかしくない、というとジロやブエルタにあまりにも失礼だろうか。だが、彼にはツールでこそ勝利してほしい。そしてその資格がある。あの、最強スプリンターたちばかりが集まって、一段劣るスプリンターではなかなか勝ちに預かれない世界最強の舞台で、しっかりと勝利を掴むだけの資格が、この男にはあるように感じる。
ローランが去り、ヴォクレールも引退すると言われているディレクトエネルジーで、しっかりとエースを張ることのできる人物でもある。実に楽しみだ!
第17位(昨年56位)
ジャコモ・ニッツォーロ(27歳、イタリア)
トレック・セガフレード所属のエーススプリンター。今年も期待通りの2位ッツォーロ。ドバイ・ツアーで早速のステージ2位を叩き出したあとに総合でも2位になったのはさすがに笑った。ジロ・ディタリアでは2位2回、3位2回、4位1回と続いて挙句の果てには最終日勝利かと思えばまさかの降格処分。総合ポイント賞は獲得できたものの、その表彰台におけるあの仏頂面は伝説に残る映像だ。
それでも国内選手権ロードレースではしっかりと勝利して、そして秋のジロ・デル・ピエモンテでもきっちりと勝利を決めた。来年こそは、もっともっと活躍できるはず。なんだか応援したくなっちゃうキャラである。
第16位(昨年20位)
マイケル・マシューズ(26歳、オーストラリア)
華の1990年世代。オリカ・グリーンエッジに所属してサイモン・ゲランスの後継者かと目されていたが来期からはチーム・サンウェブ・ジャイアントに。まあゲランスとあんまり仲良くはなさそうだった?からね。あだ名はキラ☆キラ。別に日本人が勝手につけたわけではなく、彼自身もツイッターの名前にしている (blingmatthews)くらいだ。要はパリピ。
パンチャー気質のスプリンターで、ピュアスプリントでは最強軍団には勝てないが登りスプリントならいい勝負ができて、単距離ならTTでもよい結果を出す。今年はパリ~ニースで大暴れしたあと、ツール・ド・フランスでもしっかりと結果を出す。ケベックとモントリオールでは惜しかった。まだまだ可能性を秘めた男で、将来的にはクラシックとかでももっと活躍できるんじゃないだろうか。デゲンコルブなきジャイアントでは貴重な存在となるだろう。
第15位(昨年28位)
ジュリアン・アラフィリップ(24歳、フランス)
フランス若手の期待の星!・・・というとトニー・ギャロパンとか、ワレン・バルギルとか、ティボー・ピノとか、そういう人たちを想像してしまって「うぅうむ?」とかって思ってしまうけれどこの男は間違いなく実力を持っており大成する気しかしない。いや、それでやっぱり来年・再来年と鳴かず飛ばずになるとか不安に思ってしまうけれど、でもこの男はすでに逆境も経験しているしチームメートにも恵まれているし、来期はさらに飛翔しそうな気がするのだ。
脚質はクライマーというよりはパンチャー、山向けのルーラーといったところのようにも思え、ステージレースの総合優勝を狙うというよりかは、ワンデーレースでの優勝や、あるいはステージレースならば逃げからの逃げ切り勝利などに適性がありそうなキャラである。カリフォルニア勝ったし、ダウンアンダーとかとも相性が良いのでは?
ヨーロッパ選手権では惜しくも2位。ってかこの人、スプリントでもガンガン勝利に絡んでくるあたり、やはりクライマーとは決して言えない気がする。
第14位(昨年ランク外)
ソニー・コルブレッリ(26歳、イタリア)
バルディアーニCSF → バーレーン・メリダ。脚質はルーラー/スプリンター。
誰?という感じだったが昨年から引き続きツール・ド・リムザンで活躍。区間2勝。総合2位。ジロでも区間3位に入るなど派手な優勝はないが堅実にポイントを稼いでいた。プロコンチネンタルチームで唯一のベスト20入りだ。
なお、来年はバーレーン・メリダに移籍。山岳で強いメンバーを揃えているバーレーンにおける、平坦カテゴリーのエースを任される可能性も。ボニファツィオもいるのでどうだろう。
第13位(昨年11位)
リッチー・ポート(31歳、オーストラリア)
グランツールでは期待外れの男だとか、3週間戦う力はないなどと散々の言われようだったが、そんなことはない、やはり他チームに移籍することによってツール総合上位を狙う走りを見せられるのだ、ということを、今年のツールでしっかりと証明してくれた。相変わらずの不運で、序盤で落としてしまったタイムを考慮すれば、総合表彰台も十分に狙えた。おそらく今年のツールで、最もフルームに近づけた男だったと思える。万全のキンタナには劣るかもしれないが、それでも来年、ニバリやコンタドールを抑えての総合3位などは十分に考えられる力量だ。TTも速いし。
フルームとよく一緒にいるので本当はそこまでではないのに背が低く見えるし、笑顔も印象的だし、「タスマニアン・デビル」なんて相性も持つしでどことなく可愛いキャラに見える。2013年は「いえーいアシストついでにステージ2位とっちゃえー」って言ったまま次の日に大きくタイムロスしたりするし。来年も文句なしのエースを張って、大活躍を期待したいところである。
第12位(昨年67位)
ファビアン・カンチェラーラ(35歳、スイス)
今年引退を決めた、伝説の男。最盛期ほどの力は発揮しきれなかった場面も多かったが、それでもそのロード人生のラストを、伝説の男に相応しい結果で締めくくった。
シーズン開始直後のマヨルカ島レースで早速のステージ優勝を見せて、幸先の良さをアピール。北のクラシック開幕戦とも言えるストラーデ・ビアンキでもサガンを下して勝利。ITTでの勝利も、アルガルヴェ一周、ティレーノ~アドリアティコ、ツール・ド・スイスでしっかりと獲得した。
確かに、ロンド・ファン・フラーンデレンでは、判断ミスもあって、優勝は逃した。それでもあの位置からのワンアタックで、サガンとヴァンマルク以外のすべてのライダーを突き放し、2位を獲得したのはさすがとしか言いようがない。あれはサガンが強すぎたのだ。
人生最後のグランツールはイマイチ結果を出し切れなかった。それでも、最後の最後で、オリンピックITT金メダルという大いなる結果を叩き出した。やはりこの男は別次元の存在だ。
正直、自分はカンチェラーラという選手にそこまで強い思い入れはなかった。今年引退とみんなが騒いでいる中で、ふーん、という思いでシーズン前半を過ごしていたのは事実だ。しかし、ロンド・ファン・フラーンデレンでの活躍、パリ~ルーベでの姿、そういったものを見ているうちに、自然と応援したくなる選手だったように感じた。彼は間違いなく一時代を築き上げた天性のスターであった。
彼がいなくなることは間違いなく寂しいことなのだろう。それでも、時代は先へ進んでいく。彼に代わる新たなスターは間違いなく台頭していく。彼が残してくれた遺産を、我々は大切に守っていく必要があるだろう。
第11位(昨年30位)
ヨン・イサギーレ・インサウスティ(27歳、スペイン)
ゴルカの弟ちゃん。今、ひそかに最も期待しているスペイン人ロードレーサである。何しろ、TTの速さはときにあのカンチェラーラを凌ぐほどで、とくにその下り坂のスピードは頭がおかしいレベルを発揮していた。ツール第20ステージでもその力量を如何なく発揮し、ニバリとパンタノという2大下り巧者を突き放しての勝利となった。うまくハマればイル・ロンバルディアとか、そういうのでも結果を出せるんじゃないだろうか。
ステージレースでは昨年のツール・ド・ポローニュ総合優勝に続き、今年はロマンディ総合3位、スイス総合2位、エネコ・ツアー総合8位とまあまあ。この辺りのレースでもっと優勝を増やしていきたい。
グラン=プレミオ・ミゲル・インドゥラインの優勝は本人もとりわけ嬉しいのではないだろうか。スペインの名だたる強豪が優勝者に名を連ね、何より同じスペイン人でTTが得意だったインドゥラインの名を冠したレース。個人的にはデュムラン以上に、ステージレースで大化けしてほしいと思える選手である。
次回は10位~1位までレビュー。