毎年恒例の「ワールドランキング」上位選手紹介。
昨年・一昨年は事情もあり21位からの紹介という微妙な感じだったが、今年はきっちりと20位から紹介する。
なお、「ワールドランキング」とは、おそらく一番有名な「ワールドツアーランキング」とは似て非なるものである。
もちろんどちらもUCI公式のものではあるが、ワールドツアーランキングがその名の通りワールドツアークラスのレースの成績のみを対象にしているのに対し、こちらは各コンチネンタルサーキットのレース(HCクラス以下のレース)や世界選手権の成績も対象にしている。
選手たちは何も、ワールドツアークラスのレースのみを目標として走っているわけではない。こちらのランキングの方がより、「世界最強は誰だ!」という問いに対する正確な答えが出せるものではないのかな・・・と個人的には思っていたりする。
ポイントは全てUCIの公式サイトを参照した。
実はチームTTの配点が小数点以下に及ぶ(おそらくは獲得ポイントを各メンバーに割って分配しているのだろう)ことが原因で、いくつかの選手の合計ポイントにも小数点以下が存在している。
が、そこは煩雑となるので切り捨てで対応している。ご了承頂きたい。
また、各選手が取得したUCIポイントの上位6レースも付記した。
これを参考にしつつ、現在の各レースのUCIポイントの配点ってこうなっているのか、と確認していただくとともに、そこに存在する問題点や課題などについても思いを馳せてもらうきっかけとして頂ければ幸い。
一応、来年以降、大きな改訂が入るようではあるけれど・・・。
さて、では早速ランキングにいってみよう。
まずは20位から11位までの10名。
この辺りの選手は、今年「成功」した選手というよりも、彼らの実力を考えると「成功」の一歩手前で「惜しかった!」と言うべき成績を残した選手たちである。
彼らにしてみれば来年こそはリベンジを果たしていきたいと思うだろうし、若手であればさらなる躍進を望むことだろう。
来期注目していきたい選手たちとも言える。
じっくり確認していってほしい。
第20位(昨年37位)
オリバー・ナーセン(ベルギー、28歳)
AG2Rラモンディアル所属、ルーラー
昨年のベルギーチャンピオンで、今年の春のクラシックをナショナルジャージを着て走った。つまりはベルギー最強の男だったのであり、その名に恥じぬ安定したクラシック適性の高さで各種レースの上位をバランスよく獲得してポイントを集めた。
が、勝利はブルターニュ・クラシックのみ。確かに安定して高い能力は持つが、クラシック適性も、スプリント力も、その時の集団/小集団の中で「最強」というわけではない何とも言えぬ中途半端さで、上位には入るが勝ちは得られず、ということが続いた。
来年はもっと「勝ち」がほしい。AG2Rの、唯一無二のクラシックエースとして・・・。
第19位(昨年18位)
アルノー・デマール(フランス、27歳)
グルパマFDJ所属、スプリンター
ナーセン以上に中途半端な結果に終わってしまったデマール。ツールでの勝利も、有力勢が次々とリタイアしてしまった後でのことで、純粋には喜べない。サガン、ヴィヴィアーニ、フルーネヴェーヘンといった、今年一線級の活躍をしていたスプリンターたちと比較して、確実に一歩劣る位置についてしまっているのは事実だ。
そんな中、ポワトゥ=シャラントは凄かった。1クラスとはいえ、(個人タイムトライアルも含めた)全ステージで勝利、もちろん総合優勝。
その実力が衰えているわけではない。まだ伸びる可能性は十分ある。今年のツールは昨年のように途中でチームが崩壊ということもなく、多くの有力スプリンターが脱落したアルプスとピレネーをチーム一丸となって乗り越えてきた。それがゆえの1勝だった。
来年もツールでの活躍を期待している。目指すは、3年連続のステージ優勝だ。
第18位(昨年104位)
ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、26歳)
アスタナ・プロチーム所属、ルーラー
昨年順位からの伸びを見てもわかるように、今年大きな躍進を果たしたクラシックハンター。オンループやロンドの成績を出しながら、アムステルやモンレアル、さらにはクライマー向けに近い世界選手権での成績を出していることから、ルーラーとパンチャーの両方の適性を持つ、すなわちジルベールやヴァンアーヴェルマートのような才能と見ていいだろう。来年のヨークシャー世界選手権の最有力候補の1人だ。
そんな来年はディメンションデータへの移籍が決まっている。クラシックエースの座は約束されたようなものか? なかなかUCIポイントを稼げずにいるこのチームに福音をもたらすことができるか。
第17位(昨年8位)
ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、28歳)
チーム・スカイ所属、オールラウンダー
昨年同様、今年も絶好調!という印象だったが、蓋を開けてみるとティレーノ、ポローニャ以外はそうでもなかった。まあ、シーズン全体を通して働き過ぎていたし、自分の勝利というよりはアシストとしての働きの凄さの方が印象的だったからね。
また、ブエルタは彼の総合エースとしての可能性をアピールする絶好のチャンスだったように思うが、あえなく撃沈。疲れからか、それとも最初から考えていなかったのか。
いずれにしても、来期も彼の主戦場はアシストとクラシックであることには変わりはなさそうで、フルームに次ぐ総合エースの座はトーマスとベルナル(と可能性としてのモズコン)に託されると見て良いだろう。
来期は思い切ってクラシックに全振りしたスケジュールで走る彼の姿を見たくもある。昨年はミラノ~サンレモを制したクウィアトコウスキーだが、リエージュ~バストーニュ~リエージュあたりも十分狙うことができるだろう。
第16位(昨年34位)
ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、26歳)
トレック・セガフレード所属、ルーラー
ナーセンと並び、惜しい結果の続いた今シーズン。ただ、印象ベースでは、昨年にあまり目立った姿を見られなかったことを考えると、一応ワールドツアー含め3勝しているし、その強さを感じ取れる結果が並んだように思える。
若くして注目され過ぎた感はあり、その意味でベノートなどに境遇は近い。今年26歳と意外とまだ若く(ユンゲルスやアラフィリップ、イェーツ兄弟と同世代)、来年あたりパリ~ルーベやロンド・ファン・フラーンデレンあたりを取ってもおかしくはない存在である。復活しつつあるデゲンコルプとのコンビネーションが今年も光っていたが、その辺りを来年も発揮して、クラシックで大暴れをするトレックが見たいところ。
一歩間違えればファンマルケみたいになりそうなところもあるため、本当、来年あたりで大きな勝利を挙げてほしい。
第15位(昨年2位)
クリストファー・フルーム(イギリス、33歳)
チーム・スカイ所属、オールラウンダー
2年連続ワールドランキング2位だったフルームも、今年は一気に順位を落とすことに。というかそれだけツール・ド・フランス総合優勝の配点が大きいのだ。1000ポイントだからね。加えて今年はドーフィネの総合優勝がなかったのも響いたようだ。
とはいえ彼自身もチームもフルームのUCIポイントはさして気にしてはいないだろう。来年もただマイヨ・ジョーヌのために。来年で34歳? いやいや、なんの問題もなく「5勝クラブ」入りを決めてしまう彼の姿が十分に想像できる。
もちろん、それを阻むライバルの存在も楽しみではある。キンタナ、デュムラン、あるいは・・・ベルナル?
第14位(昨年78位)
ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、24歳)
アスタナ・プロチーム所属、クライマー
ブエルタ2勝した昨年から順調に躍進。今年は2つのグランツールで表彰台をゲットし、一躍世界トップクラスのクライマーとして名を馳せた。
昨年に続きチャンスを与えられたフルサングが今年も結局それをモノにできなかったため、来年はロペスがいよいよツールをエースで走ることになりそう。来年のツールはクライマー向けとも言われているし、安定した強さを見せている今期の姿を見るに、総合表彰台も十分に狙えそうだ。
だが、アルだとかチャベスだとかの前例を見てると、次はロペスの番だ・・・という不安はつきまとう。やはりツールの表彰台に上がるというのは、それだけ他2つのグランツールと比べて大きな壁があるのだ。それを割とさらっと成し遂げたデュムランやバルデは、やはり偉大だったのだと思う。
果たしてロペスが「そっち側」につけるかどうか。来年は、彼にとってこれまで以上に重要なシーズンとなりそうだ。
第13位(昨年20位)
ティム・ウェレンス(ベルギー、27歳)
ロット・スーダル所属、パンチャー
今年のウェレンスはこれまでのようなパンチャー/アタッカーとしてだけでなく、登りもこなせるステージレーサーとしての成長が著しかった。
昨年末のグアンシー総合優勝もそうだったが、今年はブエルタ・ア・アンダルシア(ルタ・デル・ソル)の激坂フィニッシュでミケル・ランダを突き放す強さを見せつけてのステージ優勝、からの総合優勝。
さらにはパリ~ニースでの活躍と、今シーズン序盤はクライマーとしての可能性を強く感じた。
シーズン末はイル・ロンバルディアでも5位。来期は、また小さなステージレースでの総合上位やリエージュ~バストーニュ~リエージュやクラシカ・サンセバスティアンなどでの優勝を狙っていってほしい。
第12位(昨年14位)
ティボー・ピノ(フランス、28歳)
グルパマFDJ所属、クライマー
ついにロンバルディアを制覇! そしてブエルタでの活躍もあり、毎年じわじわと順位を上げている。一度ピークを迎えて終わったようにも感じられていた彼がこうして少しずつ復活していくのを見るのは嬉しい。ヴァンガーデレンとかも、どうなのよ。
あとはもちろん、ジロでのリタイアさえなければ、もっと上位にはいけたのだろう。来年に関しては個人的にはツールは諦めてジロのリベンジとブエルタでのさらなる上位を目指してほしいとは思っている。が、ピノ自身がツールを望むならば、応援するしかない。
頑張れ、ピノ。
第11位(昨年21位)
チーム・ロットNLユンボ所属、オールラウンダー
この男は本当に、想像を超えるスピードで進化を続けている。わずか2年前、ジロで多くの視聴者に注目されたときはまだ、高いレベルのTTスペシャリストといった印象だった。それが翌年には小さなステージレースでの総合優勝やワールドツアークラスでの勝利、総合上位入り、そしてツール・ド・フランスでの勝利。
今年に入ってからはワールドツアークラスのステージレースでの総合優勝に加えてツールでの総合4位・・・誰もが期待はしていたが予想はしていなかったのではないか。これほどのは走りを見せてくれるなんて。
来年は再びツールで総合優勝争いに挑むのか、それともジロやブエルタでの表彰台をまずは狙ってくるのか。間違いなく言えるのは、来年もまた彼は進化する。今、世界で5本の指に入るグランツールライダーである。
後編はいよいよ10位~1位をレビュウ!